ISげもの   作:マイク横須賀

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弁当だと汁物がないのです。


二人の主夫

「条約とか機構の数が多くて死ねますわ、主にテストで」

 

「略称に設立年度とか、おまけに抑揚のない声で教えられたら赤ペンチェックも無理やね」

 

「お手上げ侍!」

 

現在お昼休み。織斑一夏、ただいまシャルルと共に中庭に向かっている。手には綺麗にラッピングされた弁当箱が、それぞれ二つ。

 

早朝、部屋の相方に叩き起こされた時は何事と思いもしたが。どうやら知遇の乙女達の為に弁当を作ろうとした様で、それに付き合わされたのだ。

 

「お陰様で真昼間なのに睡魔が強襲してきます。具体的にはチェーンマイン投げてくるMS並に」

 

「要点チェック以外、殆どダウンしてた奴が何をいうのか。その甲斐あって出来ばえはよろしおすが」

 

そういって、自分達の分と友人達の弁当を見てニハハと眩しい笑顔を作る金髪。周囲は眼福眼福とでもいうのか、やけに満ち足りた視線を二人に送っている。

 

「でも一夏、それ本当に箒食べきれるかな?」

 

「そうか?アイツ道場稽古の時、これくらいペロリと平らげてたが」

 

「それ小学生の時だよね?相手、一応女子だよ?」

 

どうやら弁当の量について、シャルルは心配している様だ。男子中高生御用達の、アルマイト製の巨大な弁当箱には豚に卵、コーンと中々に高カロリーな献立が詰められている。

 

「大丈夫だって。昨日稽古終わった後に聞いたら、これで良いって確認貰ったから」

 

「女子である前に体育会系の武士だったか、モッピェ……」

 

「沢山食べて貰える分には嬉しいんだがね、作る側としては」

 

やれやれと呆れた表情をするシャルルを尻目に、『ルネッサンス情熱』と歌いながら、朝料理に勤しんでいた自分の姿を思い出す。

 

幼い頃からパブロフの犬の如く、横のシャルルと共に姉の調理作業に従事していた時の癖で、リズムに乗ると口ずさむのだ。時折、金髪も便乗して『カカカ』と叫びながら作ったりする。主に中華で。

 

「せめて中〇一番辺りにしろよ。何で鉄鍋なんだよ」

 

「そこまで中華得意でもないから。マ〇兄は鈴に譲るさ」

 

「あー、そうだな。確かにそうだ」

 

元気してるかなと、中国に帰省というか遠征に行った馴染みを思う。親父さんのツテで、武侠のたまり場に行くと聞いた時は頭の心配をしたが。

 

最近来たメールには髑髏弔ったら、何か変なアル中に御礼参りされたという。何か罰当たりな事をしたのではないかと不安になった。

 

「酢豚の返事、どうすんの?」

 

「おい、思い出させるな。善処します、とか言えないこっちの身にもなれ 」

 

「受けちゃったら、十傑衆候補の仲間入り。断ったら断ったらで、九大天王に殺されちゃうね」

 

「ふざけんなー!こちとらまだ気功波出したり巨大ラジコンロボを見つけてもねーよ!」

 

まだという辺り、ぼちぼち人間から離れてきている一夏であるが、本人としては周りと自分を比較している為、自覚はあんまりない。

 

「司令官には会ったけどね、崖から落ちる方の」

 

「ああ、戦士としては逸材だけど、作戦立案はお粗末くんな司令官ね」

 

聞く人が聞けば、自然なディスりにしか聞こえない会話を交わす二人。本人が聞けば『出撃(アタック)』を掛けるだろう、誰とは言わないが。

 

「でもタフだよね、会長。朝出ていく姿見たけど、普通にピンピンしてたよ」

 

「マジか。千冬姉のデコピン喰らって平気とか……」

 

本当に人間なのかと、此処にいない会長に対し疑問を抱く。こちらはまだ昨日撃たれたデコの痛みが残っているというのに。実際には会長も我慢していただけであるが、一夏にそれを知る術はなかった。

 

「とりあえずプロポーズ受けるにしても、今のままじゃいかんわな」

 

「箒にも?」

 

「おう、後束さんにもな」

 

「三股って、貴方って最低の屑だわ!」

 

「煩い『エロフ姫』、民の為に黙っとけ。そしてお前がいうな」

 

シルキーもびっくりなコントをかます二人。会話を聞かれてないから良いものの、聞かれていたらアウトである。ドン引きです。

 

裸一貫とはいわないが、それに近い立場でありながらハーレム宣言していることに変わりはなく、本人的にも嘘偽りなく言ってるので余計に危うい。

 

「絶対私人関係だけじゃなく、あちこちからボロクソに言われると思うけどなぁ。それこそ男女問わず」

 

「だって好きになっちゃったんだもん」

 

「気持ち悪い」

 

男、しかも顔が整っていて身体つきもガッシリとしている奴が『もん』とか語尾につけてはいけない。隣からクレームを受け、少し凹む一夏モン。

 

ジョグレス進化はできません。

 

「まあそれらの問題は置いといて、中庭だ。ベンチ確保はできているのか、それが問題だ」

 

「置くなよ。お腹すいて思考停止してるのは理解するけど」

 

歳15の男子、まだ色気より食い気だ。満腹になれば多少色にも食指が動くだろうが、超高燃費な体質持ちにそれは無意味な問いだ。

 

機体だけでなく、本人も燃費悪すぎな一夏。名は体を表すというが、些か表現が過ぎる。いっそのこと流出といっても差し支えない程だ。

 

「このままじゃ、飢え死にする。何か食べないと死んでしまう!」

 

「ハラヘラズでもつけるか」

 

「空腹感じなくなるって一種の呪いよね?」

 

 

 

若干ゲーム脳になりながらも、なんとかポニテと縦ロールを発見した織斑一夏、探検隊。『、』がついているのは仕様です。

 

「またせたな」

 

「ああ待ったさ。飲み物は麦茶で良かったか?」

 

サンクス、と御礼を言い飲み物を受け取る。ボトルに映る噺家の顔が若干凹んでいた。おいお茶、違った。ミネラル麦茶だ。

 

「ほい本日の弁当」

 

「ありがとう、そしていただきます」

 

持ってきた弁当箱を渡す際、箒がとても嬉しそうな顔をしているのを見た。好みが変わってなければ良いが、何分急拵えだ。そこら辺は許してヒヤシンス。

 

等と言い訳して、箒を見る。箱を開けてさらに御満悦の様子、やったねシャルル。モッピー喜んでるよ!涎垂らしながら。

 

「ソテーに挽き肉入りのオムレツ、コーンサラダ。そして日の丸、梅干しでかいな」

 

「油ギッシュなおかずで白飯を貪る。男子の本懐也」

 

「私は女だっ!」

 

色的に黄色が目立つ弁当に驚きながら、ツッコミを入れるモッピー。良いスナップだ、将来漫才してもいいかもしれない。あ、痛い痛い手刀すんな。

 

「私とて好きでしている訳ではない。こうでもしないと、お前延々とボケるだろうが」

 

「流石プライマリの幼なじみ、よく判ってらっしゃる」

 

「そのままジュニアハイも一緒だったら良かったのにな、って何言わせるか」

 

「言ったの自分やん!?」

 

そうして日本男女で掛け合いながら、待っていた金髪男女と共に食事に入る。シャルルはオーソドックスなサンドイッチにフルーツサンド、おにぎり。おかずとして卵焼きにウインナー、勿論タコさんにしている。あざとい、シャルルあざといわ。

 

「喧しいわ一夏、男に対してあざとい言うな」

 

「そのまま婿養子にでもなってしまえ、この一家に一台性能が」

 

「家電か僕は」

 

そういって、こっちにも卵焼きやらおにぎりやら出してくるから言われる事には気がつかない様だ。気配りも出来るとか、いかん、婿に出したくなくなってきた。ずっと家に居てほしい。

 

「ゴメン、やっぱりマスオさんにならんといて。いやむしろ家にむ」

 

「それ以上喋るな」

 

隣を見れば、オルコットさんがグギギと臍を噛んでいた。前には目が怖いシャルル、我関せずの箒。

 

助けてと目線で訴えても、弁当を食べるのに夢中か無視かわからんが通じていなかった。おのれ竹馬の友よ、よくも裏切ってくれたのう。

 

「あの、織斑さん」

 

「いやすまんオルコットさん。余計な事言いそうになった。あ、後一夏でいいよ」

 

「い、いえ。私もセシリアで構いませんので」

 

しどろもどもに会話をする日本男子と英国淑女、それを見て毒気を抜かれたのか、貴公子も少しやんわりとした雰囲気に戻った。

 

「一夏のバーカ、唐変木。あと甲斐性なし」

 

「むくれても可愛いだけだぞシャル」

 

「可愛いとか言わないで」

 

普通の男がしたらきめぇと一蹴される動作なのに、どうしてこの朋輩には恐ろしい程似合うのだろうか。隣の縦ロールが思わず吐息を漏らす位には。

 

「なんか、そっちも大変そうだな。セシリア」

 

「解って下さいますか箒さん。英国に居たときも、気が気ではありませんでしたわ」

 

なにやら女子二人は仲良くなっていそうだ。原因は俺達にあるようだが、皆目つかん。御免嘘です。

 

「そういえばシャルよ、何でセシリア呼ばなかったん?箒と違って特に用事は無かったろうに」

 

「知りたい?今度教えてあげるよ、調理実習の時とかに」

 

その目は笑っておらず、むしろ狂気に満ちていた。え、何?暗黒物質でも生み出せるの彼女。黒焦げくらいならむしろ大丈夫とは思うが。

 

「錬金術の範囲外からナニカ持ってくるんだよ、セシリアは」

 

「え?」

 

なにそれこわい。一緒にする分にはともかくとして、一人にすると調味料から何から彼女の流儀でスパイスしてしまうようだ。大さじ小さじとか、んなチャちぃレベルではなく、砂糖一袋とか常識がおかしい。

 

「だから次調理実習あったら、僕絶対セシリアと組むから。死人出す訳にもいかないし」

 

「大変だのう」

 

そう納得しながらおにぎりを食べる。梅の酸っぱさからか、目の前の執事の気苦労を知ったからか、その味は妙にしょっぱかった。




セシリアさん貴族ですので。
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