ISげもの   作:マイク横須賀

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そうや、アッパラパーな兎さんなんておらんかったんや(錯乱)


兎さん来襲

「うん、見間違えかな。何か兎さんが見えるんですけど」

 

「姉さん……何をしているのか」

 

食堂で受け取った定食を持って、空いている隅の席に着こうとした一夏と箒。向かってみれば、紫の長い髪とウサミミが特徴の知り合いが海苔弁当を貪っていた。

 

「あ、ハロハロー。待ちきれずに早弁しちゃってました〜」

 

「姉さん、言いたいことは山程あるが一つだけ言わせてもらおう」

 

「ほへ?」

 

「何故此処で弁当なぞ食っているのか。そして何故のり弁なのだ、しかもほか弁風の」

 

突っ込むところ其処かよ、と適当に流しつつ兎の対面に座る。箒は箒で隣にちゃっかり座り、フシャーと実の姉を威嚇している。猫かおまいは。

 

束さんはそんな猫に対し、やたら慈愛に満ちた眼差しを向けている。箒を少し羨ましく思いつつ、前の海苔弁兎を見る。白身フライを美味しそうに食べるその姿は、とても世界中で指名手配されている愉快犯と同一には思えなかった。

 

「相変わらず可愛いね箒ちゃんは。うん、いっくんとお似合いだ」

 

「可愛いのは貴女もですよ束さん。ところで、何故ここに?」

 

ギロリと隣からは殺気を、向かい側からは何処と無く甘い香りを感じつつ兎さんに尋ねてみる。兎さんは何だか気勢を殺がれた面持ちであったが、ああそうだと思い出したかのように話し始めた。

 

曰く、来週の月曜日に向けての準備をするために来たとか。既に機体の方は『倉持』から最終調整の為束さんの所に預けられており、その報告がてら学園まで来たという。色々と無茶し過ぎです。

 

「なら電話かメールで遅れば良いでしょう。態々学園まで来たのは」

 

「ストップ箒ちゃん。そうだよ、いっくんと箒ちゃんに会いたかったのだよ」

 

「千……織斑先生には?」

 

「ちーちゃんとは何時も会ってるから大丈夫。……今会うと此処で働かされそうだし」

 

良かった、何時ものニートな束さんだ。熱するのも速いが冷めるのも速い兎さん、ウン年前にISであれやこれややらかしたけど、今は何か違う。落ち着いたのか飽きたのか解らないが、かなりおとなしくなった。その分、身内限定で大騒ぎするけど。

 

「さてさて、とりあえず二人の機体についてなんだけど」

 

「姉さん、ここ食堂ですよ。誰が聞いているか」

 

「いや、大丈夫だろ。だれもこっち見ていないし。というより見えていない?」

 

「あ、判る?ほんのすこーし認識障害させて貰っているのさ。ここのスペース限定で」

 

なんというIS技術の無駄遣い、とでもいえばいいのか。隣のモッピーは呆れた顔で実の姉を見て、見られている姉はフフンと妹に負けず劣らずの胸を張っている。いかん、何処を見ていた俺。

 

視線に気付いたのか姉妹二人が此方をジロリと見据えてきた。改めて見られると妙に緊張するのが判る。まるで初めて会った時の様だ。

 

「ニュフフ、照れてるいっくんもか〜わいい」

 

「こら姉さん、あまり一夏を弄ぶな。一夏も一夏だ、見たいのなら私のを見ろ」

 

「いや、それはおかしい」

 

いやね、男としてね?何か矢鱈明け透けにヤられるエロスより、もっと無防備で間接的なセクシーに心奪われるんですよ箒さん。中学生の時?普通にエロスな本探してましたよ。土手とか草むらで。

 

「ちなみにちーちゃんからは『食わず嫌いもなくバランスよく集めていたな。コンビニとかで売ってないのも何人かとカモフラして収集し、見事』だって」

 

「ほう、つまり性的な歪みは無いのか、安心した。幼女しか愛せないとか、同性愛とかでなくてよかった」

 

「よかねーよ!何人の性癖暴露してんの?というより千冬姉、弟のお宝吟味しないで!何かこう死にたくなっちゃうのぉ!」

 

好いている女性達に疚しい想い知られるとか、紐なしバンジーを無性にしたくなってきた。姉様よ、親友に家族の事を話すのは構いませんが、話題は選んでくださいイヤホントマジで。

 

さて、このままだとまっ昼間からエロ談義まっしぐらなので話を戻す。飯時なので、食事を摂りつつ自分の機体の調子を聞く。

 

「うんうん、白ちんね。元気も元気だよー、暇さえあればお酒飲んでるし」

 

「畜生、聞いた俺が馬鹿だった。少しでも寂しいと感じた俺の気持ちを返せ」

 

「ん?ISが酒?どういうことだ一夏」

 

しまった、箒がいたんだ。そら疑問に思うわな、機械が酒飲むかって。訝しがる箒に言うべきかどうか悩む此方を尻目に兎さんが即答する。

 

「まあまあ、大丈夫だよいっくん。箒ちゃんももうこちら側だし」

 

「姉さん?」

 

「前にプレゼントした腕輪、まだつけてくれてるんだ。ありがとうね」

 

そう言いながら箒の腕輪に兎さんは手を延ばす。妹は一瞬戸惑っていたが、姉にされるがまま受け入れていた。その光景に何だかとても暖かな気持ちを覚えた。

 

綺麗な鈴が二つ、赤い組紐に結ばれて輪の彩となっている。動いていても凛とした音を僅かに鳴らすが、それ以外の余計な余韻を残す事の無い良い品だ。

 

「ほむほむ、やっぱり箒ちゃんらしいね。この子も侍っぽいや」

 

「え?」

 

「あー、束さん。それもしかして……IS?」

 

ご名答、とばかりに兎さんは気持ちの良い笑顔でサムズアップしてきた。なお、本当は七夕辺りでお披露目したかったんだけどねと、何やら怪しげな事を企んでいた模様。勘弁してくだしあ。

 

「何せ束さんと同じく、大層な引き籠りだからねこの子。今、箒ちゃんが意識して吃驚してるよ」

 

「自覚あったんですね姉さん。というより腕輪に向かって話さないで下さいよ、電波に見える」

 

「おお、確かに箒そっくりだ。顔は白と同じくスッゲームカつく面構えだけど」

 

「一夏、お前もか」

 

何やら怖ろしいモノを見るかの如き目つきで箒がこっちを向く。いや、驚きたいのはこっちだよ。何で本人の自覚が無いのに、ISの自我が目覚めているのか。

 

自分もモンドの時に死にかけて漸く出てきたというのに、等と見当違いの不満を抑えつつ箒にある程度教える。こちらとしても、全部が全部知っている訳も無いし。

 

「自我、か」

 

「あんまり姉さん責めてあげるなよ。一応護身の為に渡したのだろうし」

 

「ちょ、いっくん。それは」

 

「ああ、すいません。言わないと伝わらないことも、まあありますし」

 

ワタワタとする束さんを一旦放置し、箒と共に腕輪を見る。箒が顔近いと抗議しているが、説得力がないので続行した。離れようとしたらシュンとなる娘が何を仰るのか。

 

「成る程、コアは兎も角ガワは『打鉄』のままですか。いや、箒の性質からしてブレオン一択なのは判りますが」

 

「そうだよー。キチガイ染みた剣豪系女子の箒ちゃんには『疾風』より『打鉄』の方が扱いやすいと思ってね」

 

「誰がシグルイですか、マジキチのマッドが言うことではありませんよ。姉さん」

 

「あはは、言う様になったね。昔はお姉ちゃんの後ろにくっついて来たのに」

 

姉妹でも喧嘩することってあるよね、大抵口喧嘩で終わるだろうけど。

 

眼前で押し合い圧し合い首締め愛やらかしている二人に、一体私は何と言葉を掛ければ良いのでしょうか。教えてください生協の白石さん。

 

「ハイハイドウドウ。落ち着きなさいな二人とも、落ち着いてミルクでも飲もうぜ」

 

まだ喘いでいる二人にそっと頼んだ牛乳を渡す。低温殺菌だから多分吃驚するだろうと予想して。

 

「何これ?牛乳?」

 

「すまん、もう一杯」

 

うん、予想的中だ。兎さんは一口飲んで唖然としている。可愛い。そしてモッピー、ごめんなさいそれ一人一杯限定なんですよ。

 

この食堂のルート確保の力の入れ様は何なのか気になりながらも、落ち着いてきた二人を見て安心する。やはり美味いもんは世界を救うね味王様。GODも真っ青ですよ。

 

「イイね、ここ。ご飯は美味しいし、私を見ても誰も何も言わないし」

 

「見て見ぬふりをしているだけだと思うんですがね、どうやって入ってきたのか」

 

「門番の人に菓子折り持って行ってねー、『可愛い可愛い箒ちゃんに会いに来ましたー』って」

 

「もういい」

 

内心ウワァと思いながら引きつった頬を元に戻す。箒が助けてくれと目で訴えているが、知らん振りした。お前も同じことしただろうがと、ちゃちい復讐を完遂し胸中に仄暗い愉悦が出来た。うーんこの。

 

おそらく門番さんは正気を喪ったかもしれない。何せこの兎さん、喋るだけでSAN値削ってくるのだもの。俺もエイボンの書が無ければ即死だった。

 

「ちょっといっくん。人を神話生物みたいにいわないでくれるかなあ。気にしているんだよこれでも?」

 

「安心してください。無貌の神であろうと黄衣の王だろうと、束さんは素敵な人ですから」

 

「フヒッ?も、もういっくんたら、そんなに褒めないでようコポポポ」

 

隣の妹が倒れた。そらもうドサッと目を回しながら気を喪っている。いかん、刺激が強すぎたか。

 

取り敢えず『ふんぐるいふんぐるい』と呻いているモッピーをソファーに寝かせる。呼び出したら人生終わるぞソレ、と零しつつ束さんを見る。やはりというべきか、複雑な顔をしていた。

 

「うう、また失敗した」

 

「こっちからしたら普通に聞こえるんだけどなあ。正に一人バベルの塔やね」

 

「だったら、二世になってくれる?」

 

「ライセの旦那と戦わないで良いのなら」

 

判る人がいるのだろうか、微妙なネタを振りまきながら二人は一緒に妹の安否を確認する。

 

取り敢えず午後の授業は出れそうもないなと諦める一夏。初めての保健室組やで、と如何わしいことを考えながら箒をおんぶする。ジト目で兎さんが『リア充氏ね』と呟くのをいなし、食堂から保健室へと向かうのであった。

 

 

 

 




SAN値直送系ヒロイン、まるで這い寄るあの人やで/(^O^)\
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