シズ・デルタ、任務遂行中!   作:ミッドレンジハンター

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 2話と3話の間に短編が一つ挟まっています。アインズ様とジルクニフとお友達になりたいお話。
 この物語の本筋には関係しないので、飛ばしても大丈夫です。

「骨とモグラと皇帝と ~熱き友情物語~」
https://syosetu.org/novel/192277/1.html

追記
佐藤東沙様。誤字報告ありがとうございます。非常に助かりました。


第3話

 先ほどジルクニフが体調不良により退室してしまった。念のため解毒のポーションを飲ませてみたが、どうやら精神的な疲労のようで効果が出なかった。

 彼も自分と同じ国を代表する者として、忙しい日々を送っているのだろう。一刻も早く安定した統治を実現し、彼に楽な生活をさせてやりたい。体は資本なのだから。

 

 

 

 アインズはある部屋の扉の前で立ち止まり、一つ深呼吸をする。この部屋にいるのは既に何度か会っている人物だが、やはり慣れない。なにしろ会話の内容のほとんどが知ったかぶりになってしまうのだ。いつかぼろを出してしまわないだろうか。アインズは内心冷や冷やしながら扉を開ける。

 

「入るぞ」

「おお! よくぞお越しくださいました。我が師よ」

 

 これでもかというほど深々と頭を下げる。貯えられた白い髭が床につき、まるでモップのようになっている。

 

「顔を上げよ。……さて、今回はお前の知識を試そうと思って来たのだ」

「なんと! 師の叡智と比べれば、私はあまりにも浅く……お聞き苦しい結果にならなければよいのですが」

「そう卑下するな。仮にも人類最高峰と呼ばれている魔法詠唱者なのだろう? 自信を持って答えればよい」

 

 アインズは事前に考えておいた作戦の初手を投げかける。今日はフールーダから魔法を教えてもらう日なのだ。彼には自分の意見を持ってもらわなければ困る。

 

「課題はこの二枚を解読することだ。できるか?」

「拝見致します。……おおお!? これは、これはぁあああ! ひゃははははは!」

「うわキモッ。あ、いや、どうだ?」

「さすがは我が師! いと深き御方! 貴方様は必ず私が欲する知識を授けてくださる!」

 

 全く意味が分からないが、幸運にも望んでいたものだったらしい。ならば利用するほかない。

 

「落ち着け。……その魔法陣がどんな効果を持つか、分かるんだな?」

「失礼致しました、つい取り乱してしまいました。もちろんでございます。これは死者召喚と転移の魔法陣、それも非常に高位のもの。これならばデス・ナイトの支配や、以前師がお使いになられていた<上位転移(グレーター・テレポーテーション)>の再現も可能かもしれませんな」

 

 アインズは心の中で破顔する。これだけネタが分かってしまえば、奴らの目的は丸裸も同然だ。

 

「素晴らしい。では、この魔法陣の解読と研究を今後の課題としようか」

「畏まりました! 師の叡智の欠片を授かったこと、心から感謝致します」

 

 再度深々と頭を下げる。

 

(良かった。無事に終わった。今回もなんとか誤魔化せたぞ……。願わくは、この課題でたくさん時間を稼げますように)

 

 心の中で神に祈りながら<転移門(ゲート)>を発動しかけ……寸前で止める。この魔法に興味を持たれるのも面倒だ。

 危ない危ない、と帝城の転移用の部屋を思い浮かべ、<上位転移>の魔法を唱えて部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 アインズはエ・ランテルの執務室に戻り、すぐにアルベドとデミウルゴスを招集した。明日の件について計画を練るためである。

 

 

「──と、いうわけだ。つまり、敵の狙いはまず間違いなく……」

 

 少しもったいぶったような言い方をすると、案の定デミウルゴスから答えが返ってきた。

 

「はい、魔導国の信頼失墜、ですね。アンデッドを民衆にけしかけることで、アインズ様による支配が不完全であったと吹聴するつもりなのでしょう」

 

 アインズは内心ほっとする。これで見当違いなことを言ってしまったら目も当てられなかった。

 

「その通りだ。そして敵の作戦の日付、場所、そして魔法。これだけの情報があれば対策も容易というもの。せっかくだから、奴らの行動を利用してやろうではないか」

「名案かと。では、プレアデスを動員してはいかがでしょうか?」

 

 アルベドの提案こそ、アインズの主たる目的であった。

ナザリックが誇る知恵者達の思考に近づけていることに、アインズは喜色をあらわにする。

 

「それがいいだろう。ただし、全員連れ出すのはなしだ」

 

 アインズは先日のプレアデスによる戦隊ショーを思い起こす。色とりどりの麗しいメイドが何人も現れ悪を撃退……そんなことをしたら、自作自演と捉えられかねない。

 

「私はシズを推そう。人間に対して友好的だし、マスコット的な人気が出そうだからな」

「畏まりました。では、そのように計画を立てましょう」

「ちょっと待ちなさいデミウルゴス。まだあなたが指揮を執ると決まったわけではないわ。アインズ様! このアルベドにご命令頂ければ、必ず御満足頂ける結果を収めてみせます!」

 

 二人の間でバチバチと火花が飛び散る。既視感のあるこの光景を、アインズは呆れながら見ていた。

 

「二人とも、そのくらいにしておけ。今回の作戦は急を要するのだ。喧嘩する暇があるなら、協力して事にあたったらどうだ?」

「し、失礼致しました。アインズ様のおっしゃる通りでございます。では、私とアルベドで明日の計画を練りましょう。アルベド、よろしいですね?」

「アインズ様がそうおっしゃるのなら……」

 

 アルベドは渋々了解する。

しかしこの二人が力を合わせたのなら、向かう所敵なしというものだ。

 

「話はまとまったな。では解散としよう。お前達の働きを楽しみにしているぞ」

 

 

 

 アルベドとデミウルゴスの二人は、第九階層の廊下を歩きながら言葉を交わす。

 

「しかしアインズ様があの二人組について自ら調査するとおっしゃられた時は驚きましたが……こういうことでしたか。仮に私共が調査に乗り出していても、結局はアインズ様の叡智をお貸し頂くしかなかった。いやはや、アインズ様には何一つ敵いませんね」

「そうね。本当にアインズ様には驚かされるわ。これ以上なく的確、そして最小限で、敵の何もかもを暴いてしまうその手腕。ああ、私の愛しき至高の御方……。将来の妻として、相応しい女にならなければ」

「まぁ、貴女はなによりもまず節度をわきまえるべきだと思いますが」

 

 またしても意図せず自分のハードルを上げてしまうアインズであった。

 

 

 

 

 

「むう。思ったよりも人が多いな」

 

 魔導国の冒険者組合に所属するベテラン冒険者チーム『虹』のリーダーであるモックナックは、建国以来初のある催しに参加するべく、中央広場に向かっていた。

 

「お、リーダーこっちこっち!」

 

 こちらに手招きしているのは、首に()()()()()()のプレートを下げる茶髪の男。チームメイトの野伏(レンジャー)だ。隣には森祭祀(ドルイド)の姿もある。

 そう。エ・ランテルで冒険者を始めてから数年が経ち、しばらくミスリル級止まりであった『虹』は、ここ最近の成果が認められオリハルコン級に昇級していた。今ではアダマンタイト級である『漆黒』に次いで、魔導国冒険者組合No2の実力を持つチームである。

 

「すごい行列だな」

「そうですね~。見た感じ、帝国に加えて王国の貴族や商人達も来てるっぽいんで」

 

 ごく最近中央広場近くに建てられた施設の入り口には人だかりができていた。身なりの良い者、明らかに冒険者という装備をしている者が多い。

 それも当然のことだ。今日ここで開かれるのは、世にも珍しいマジックアイテムが取り揃えられた競売(オークション)なのだから。人だかりの中には、カタログを捲りながら真剣に話している集団も見受けられる。きっと入札における作戦でも考えているのだろう。

 

 ようやく行列の先頭になり、入場券を見せて施設の中に入る。やはりかなりの人数が集まっていた。なんとか人数分の席を見つけて座ると、目のやり場に困るような恰好をした女性が、ワゴンを引きながら近づいてくる。

 

「お飲み物はいかがですか?」

「ああ、頂こう。いくらかな?」

「いえ、お代は必要ございませんよ」

 

 ニコッと笑顔を返されて、つい動揺してしまう。まさかタダとは思わなかった。

魔導王陛下の太っ腹に感謝し果実水入りのコップを受け取る。直接手に持って分かったが、このガラスは非常に精緻な細工が施されている。滑り止めの加工もなされているものの、うっかり割ってしまわないだろうかと不安になるほどだ。

 一息つき、競売カタログを開いて中を見る。このカタログも大変見事なもので、ツルツルとした不思議な肌触りの紙質に、本物と見紛うような競売品の絵がこれでもかというほど載せられている。一体どれだけ金をかけているのか。いや、もしかするとなんらかの魔法を使って一瞬で出来上がってしまうのだろうか。

 既に何度目かの感動を味わっていると、隣に座った森祭祀の男に声を掛けられる。

 

「リーダー。今回の目玉商品はやっぱりコレですかね?」

「うむ。かなり高額の値がつくのは間違いない」

 

 彼が指をさしていたのは、小さな鳥の翼が象られた蒼銀色のネックレス。説明欄には、第三位階魔法<飛行(フライ)>の魔法を発動できると書いてある。

 これが本当なら、この世のあらゆるマジックアイテムの常識を覆す代物である。これさえあれば、だれもが夢見る鳥になり、自由に空をはばたくことができるのだ。ぜひとも欲しい、しかし……

 

「俺たちの資金じゃ絶対無理。諦めて別の品狙いましょ」

 

 野伏の言う通りだ。オリハルコン冒険者という名誉ある身分だが、本気を出した貴族や商人相手に資金面で勝てるはずもない。となれば

 

「やはり狙いはこれらだな。無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)と、無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)

 

 後者は水に限定されるが、どうやら重量を無視して物を大量に収納できるらしい。これも革新的なマジックアイテムだ。

彼らは職業柄あらゆる状況に適応できるよう、種々の道具の携帯が欠かせない。代表的な物は食料や野宿用のテントである。そして当然のことながら、数日間街に戻れない依頼もある。そうなれば、一人が背負う荷物だけで50kgを超えることも珍しくない。

それらの問題をすべて解決可能なこのアイテムは、冒険者である彼らからすれば、まさに喉から手が出るほど欲しい一品である。もちろんこの場にいる冒険者らしき者達も皆、これを目当てに来ていることだろう。もっともどの競売品も目を引く代物ばかりなため、どれを選んでもライバルは絶えないだろうが。

 

「お、そろそろ始まるみたいだな」

 

 広々としたステージに、マイクを持った一人の司会の男が現れた。客席のざわめきはしんと静まる。

 

「皆様、本日はようこそおいで下さいました! ここに集められたマジックアイテムは、どれも比類なき至高の一品! どうか後悔なさらぬようご参加頂ければ幸いでございます。それではこれより、魔導国オークションを開催いたします!」

 




結局シズちゃん出てこない!ごめんなさい!次回(最終話)は大活躍で終わらせる予定です!
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