この素晴らしき隊長に祝福を   作:パライソオタマ

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旅立ち

 「え、ええええぇーっ!?」

 

 部屋中に男の驚愕の声が響く、当然だろう。

突然自分の目の前に自分と全く同じ姿の少女が現れたのだから。

 

 そして声を上げた事により気づく、自分の身体があの死人と入れ替わっていた事に。

 

 「ふぅ、どうやら成功したみたいだな。さて、もう気付いているとは思うがお前の身体と俺の

身体を交換させて貰った。」

 

 「当然このままではそっちも困るんじゃないか、と言う訳で一つ俺のお願いを聞いて欲しいのだが。」

 

 「ひぃッ!」

 

 本来なら地獄に堕ちる程の悪人、邪悪に微笑む顔、密室で二人きり、人質に取られた自分の身体。何も起きないはずが無い、考え得る様々な最悪の展開を想像しエリスの顔が青ざめ小さく悲鳴が漏れる。

 

 「なに、ささやかな願いだ。俺を生き返らせてフリーザ様の元へ送っもらう、それだけでいいんだ。」

 

 「フリーザ様が憎きサイヤ人達を倒すお姿を

この目で見届け、再びフリーザ様が宇宙に君臨しこの俺が祝福のダンスを披露する。それが成されるまで俺はまだ死ねんのだ!」

 

 「で、ですから天界の規定でギニューさんを

現世に戻す事は…」

 

 「そうか、それじゃあしばらくそのままでいてもらおう。…それにしても何だこの服は!ヒラヒラと動き難い割に全然丈夫そうじゃないじゃないか!」

 

 少女が要件をのみそうに無かったのでしばらく放置し様子を見る事にしたギニュー…であったが普段から動き易い戦闘服を着ていて、しかもこの数年間蛙の姿、つまり全裸だった彼にとって彼女の着ていたドレスは最悪の着心地だったらしくガサガサと服を触りだす。

 

 「…!?や、やめて下さいっ!!」

 

 ギニューが服を乱して行くのを止めさせようとするエリス。当然だろう、女性にとって見知らぬ男に服や身体をベタベタ触られるのは最悪の屈辱。現にエリスは見事なまでの涙目と赤面を晒している、身体がギニューなのがもったいない程だ。

 

 尤もギニューにそれが解る筈も無く手が止まる事はない。

 

 「とは言ってもこのむず痒さ、それに胸部にも違和感が…。何だこれは、布か?ブラジャーではないな。こんな物で胸部への攻撃を防げ…」

 

 「わぁーッ!!!!解りました、方法が無いわけじゃ無いんです!だからもうそれ以上は本当に、やめてくださいぃ。」

 

 ギニューの奇行によりついに泣き崩れる

エリス、その余りにも可哀想な姿にギニューは思わずPADをもとの位置に戻し手を止めた。

 

 「すまない、やり過ぎた?様だな。とりあえず話を聞かせてもらおうか、納得できれば身体は傷つけずに返してやるから落ち着け。」

 

 「ひぐぅ、でもとても難しい条件でこれを話しても恐らく身体を返して貰えそうに、無くて。」

 

 「ほう、厳しい条件か。まあ生き返れるのならそれも仕方あるまい、話してくれ。」

 

 「は、はい。」

 

 エリスは蘇る条件が厳しいと解ればまた酷い事をされると思い掠れるような声で喋っていたが、どうやらギニューは気にしていないらしくそれを見て少し安心し、エリスはぐずりながらもゆっくりと話し出す。

 

 「とある別世界で魔王の軍勢により人間の方々が日々沢山お亡くなりになっているのですが、その魔物達に恐れてしまいその世界では誰も次の命として産まれようとせず人口が減る一方になっているのです。」

 

 「そこで神々はこの対策として他の世界の死者の中から望む者をその世界へ前世の姿のままで、なおかつ転生者が望むものを一つ与え転生させているのですが、やはり危険な世界なので命を落とす人が後を断ちません。」

 

 「ですが、もしギニューさんが魔王を倒す事ができればどんな願いも一つだけ叶える事ができます。」

 

 「しかし先程もおっしゃった通りとても危険な世界な上に今までギニューさんが暮らしていた全王様という神の管轄外の辺境の世界、ギニューさんの世界と細部では物理法則などが違う可能性も…」

 

 「ふふふ…、はははははははっ!」

 

 「ひぃ!ごめんなさい、でも私の権限ではこの方法しか無理なんです。」

 

 「ああ悪い、違うんだ、怒っているんじゃない。むしろ最高だ!」

 

 「え?」

 

 「おい、女!魔王制圧の期限はいつまでとなっている?」

 

 「い、いえ、期限等はありません。強いていうのなら他の方が魔王を倒されるまででしょうか?」

 

 「ふふふふふふふっ、どこまで最高なのだ!これならしばらくの期間修行し、フリーザ様の足手まといにならなくなるまで鍛えてから魔王とか言うやつを倒し、フリーザ様の前へ現れる事も可能!」

 

 「いいだろう早速この身体を返してやる。チェーンジ!!」

 

 再度眩い光が二人を包み、二人の心はあるべき場所へと戻った。

 

 「さて、それじゃあ早速その世界へ送って貰おうか。」

 

 「待って下さい、その前に転生特典の方を選んで下さい。」

 

 「転生特典?ああ、何でも好きなものを持って行けるんだったな。そうかそれなら…。」

 

 「おい、女!俺は知っての通り相手と姿を入れ替える事ができる、実はこの身体もそうだ。」

 

 「そこで俺がもって行きたいのはこの身体の一つ前が…忌まわしい蛙の身体。そしてその前が忘れもしない、俺を蛙にしたサイヤ人の身体。そして更にもう一つ前!とぉーってもダンディで!ハンサムな身体を俺は持っていた!」

 

 「ずばり!俺の転生特典はそのハンサムで素晴らしかった時の姿に戻して欲しい!以上だ。」

 

 「わ、解りました。それでは…。」

 

 エリスが手をかざすとギニューの足元に魔法陣が現れ、ギニューの身体が光に包まれる。そして光が晴れると紫色の皮膚、頭に黒い角を2本生やした男へと変貌を遂げた。

 

 「おおおおお!これだ、まさにこの姿だ!!馴染む、馴染むぞ!数年ぶりだと言うのに最高のフィット感だ!」

 

 幾年もの時を経て元の姿に戻ったギニュー。その嬉しさに無邪気に、そして先程までとは考えられない程純粋な笑顔を浮かばせる彼にエリスも思わず微笑んだ。

 

 「それではギニューさん、お待たせしました。今から貴方を新たなる世界へお導き致します。」

 

 彼女がそう言うとギニューの足元の魔法陣が青く変色し、少しづつギニューの身体が浮かんでゆく。

 

 「おお、そうか。あんたには迷惑をかけたな、本来ならお前に謝罪のダンスを、そしてフリーザ様の元に再び仕えるチャンスを与えて貰った事に喜びのダンスを贈ってやりたい所だったが、まあそれは次の機会に置いておこう。改て感謝しているぞ!死後の世界の女よ!」

 

 「はい、それではギニューさんが魔王を倒し、この場所へ戻った時の楽しみとさせていただきます。」

 

 「さぁ、旅立ちなさい。願わくば、貴方が魔王を倒す事を心より祈っています。」

 

 こうしてギニューは新たなる世界へと旅立った。




姉貴が使ってたPADが布製だったから勝手にエリス様のPADも布製にしたけどマンガ等宿PADってシリコン材質っぽく描かれてんだよなぁ…。
何が正しいPADか自分には解らない…。

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