いや原作知識なんて無意味じゃねーか! 【永久凍結】   作:光車

11 / 13
十一話 締まらないプロローグのエピローグ そして未来は続く!

(三人称視点)

 

事件から二日が経った。

 

今の時間はまだ朝どころか夜に近い。

まだ日も上がっていないのだから。

エシェルはそんな時間に起きた事などなかったが、どうやら王都といえどこの時間帯は静かなようである。

 

エシェルは、そんな中一人で大坑道に(・・・・)行っていた。

 

「ふう。………見落としはない、ね。痕跡は魔法痕含め全て消した。奈落の方にも無いし……。よし。帰ろっか」

 

理由は簡単である。

先日の戦闘痕全てを消すためである。

流石に魔力量的な問題で大地は修復できないが。

しかし、証拠は全て消滅させている。

なので、絶対に見つかる事はない。

その後、エシェルは座標魔法でオスカーの近くに転移した。

 

そしてその少し前、オスカーは、工房に向かっていた。

 

オスカーはオルクス工房で仕事をしていたが、そこに入れてくれたのはそこの棟梁、カーグ・オルクスである。

 

「……おやじさんには、きちんと別れの挨拶をしておきたっかな」

 

そう言うように、彼は今会えなければ手紙を書く予定だった。

だが。

 

「来たか、オスカー」

 

来ることがわかっていたかのような物言い。

それにオスカーは少なからず衝撃を受けながら、

 

「どうして……」

 

そう、呟いた。

 

「お前が、何も言わずに出て行くわけがねぇからな」

 

オスカーにとっては父親代わり、カーグにとっては息子のようなもの。

その絆は本物の親子とも遜色のないものだからか。

父親だから、息子の事などお見通しだという事だろう。

 

「行くのか?」

「うん。ディラン達を治す方法を手に入れなきゃいけないから」

「戻ってくるのか?」

「分からない。少なくとも、長い旅にはなると思う。

「そうか……」

 

僅かな沈黙が走る。

 

カーグはオスカーが着けているそれぞれの服を一通り見て、

 

「すげぇじゃねぇか」

 

ありきたりでも、紛れもない称賛を送った。

 

「まぁ、ね」

 

少し照れたオスカーは、嬉しさを隠しきれないというように頷く。

カーグは少し瞑目し、オスカーの前に歩み出た。

 

(三人称視点終了、エシェル視点)

 

これ以上ないほど嬉しそうに破顔するカーグさんと覚悟を決めた顔のオー兄を見て、私は思わず微笑を浮かべる。

二人は一体何を話していたのか、それは知らない。

けど、二人にとってとてもいい事だったのは間違いなかった。

それはこの先どんな影響をもたらすかなど、分からない。

けど、その後のオー兄の足取りはとても軽くて。

 

私は、オー兄より一足先にこの王都を出た。

 

王都を出た所で合流して、カーグさんと何を話していたのか聞いてみたり。

ミー姉の事とか、色々聞いた。

 

そして。

 

「おはよう、オーくん。いい朝だね」

「その割には、退屈そうに見えるけど?」

 

ミー姉と合流した。

 

「待ってるのは、やっぱり性に合わないよ。私は突撃派だしさ」

「だったら突撃すればよかったんじゃ?」

「確かにね。今更だろ?むしろ、いつ湧いて出るだろうと旅の準備をしながら警戒してたのに、肩透かしを食らった気分だ」

「湧いて出るって、二人ともひどい!」

 

ぷんすかと怒るミー姉。

そして、三人であの後の話をする。

思いの外盛り上がってしまったけれど、もうその話のネタは尽いて。

 

沈黙が場を支配し始めた所でオー兄が口を開く。

 

「君には、家族が世話になった。ディランやケティも保護してもらった。……感謝してるよ。受けた恩は莫大だ。君が望むなら組織に入ることも——」

「大切なのは、オーくんが望むかどうか、だよ」

 

オー兄の言葉を遮り、そういうミー姉。

なら私は。

 

「じゃあ私は入るよ」

「エシェル?」

「私も恩を感じているから、そんな所もない訳じゃない。けど………。それでもエヒトは一発ぶっ放さないと気が済まない。だから………ね?」

 

「そっか」

 

一言。

そして、ミー姉は言う。

 

「恩なんてどうでもいい。君の道は、君が決めるんだよ。自分の意思で。私と違う道を選びたいなら、それでいいんだよ。それでも、私は絶対に君の家族を見放したりしない。家族を理由に私に従おうなんて、間違っても思わないで」

「ミレディ……」

 

……やっぱり、すごい。

私には前世の知識が、記憶がある。

それだけの、この少女より多い積み重ねがあるはず。

なのに、これだけの覚悟を抱けるか、と聞かれたら……。

無理、と答えるだろうから。

 

どれだけ欲しくても、どれだけ手に入れたくても、本当の意味で強引に手に入れようとはしない。

ある意味それが上手い、とも言えるだろうけれど。

それでも、私は尊敬する。

 

「けれど、叶うなら……」

 

ミー姉、いや、『ミレディ・ライセン』の目の中には、今は『オスカー・オルクス』しか写っていない。

 

「これが、最後の勧誘だよ。………。

稀代の練成師オスカー・オルクス。自由の意思の下に生きられる世界を、見てみたくはない?唯一の思想を否定し、絶対の価値観に否を唱え理不尽を理不尽と叫べる……そんな世界を見てみたくはない?私と一緒に……」

 

——世界を変えてみない?

 

オー兄の、そして私の息が止まる。

私は、オー兄のようになにかを言われた訳じゃない。

直接勧誘されたわけでもない。

それでも、それでも——

 

「君は………誰だい?」

 

そう、オー兄が聞く。

きっとわかってる、その上で聞いてしまうもの。

その答えは。

 

「私は——〝解放者〟ミレディ・ライセン。神の意思に抗う者」

 

………。

最早言葉はない。

私は魅せられた。魅せられてしまった。

この生き様に。

その道がどれだけ苦しかろうと、辛かろうと、例えその命を投げ捨てる事になろうとも——。

きっと彼女はその歩みを止めないと、そう確信めいたものがあった。

だから。

 

「たとえ、地獄の底だろうと付き合うよ」

 

……。

…………?

………………んん?

 

「ぷっは!」

 

「え、いや、地獄の底とかはちょっと……流石に重いっていうかぁ。オーくんがミレディちゃんに参っちゃってるのは分かるけど、ヤンデレは趣味じゃないんで〜。ごめんねっ、オーくん!」

「流石にそれはない、オー兄!」

 

私の笑いを堪える声が何故か響く。

 

そして、静寂が満ち。

 

オー兄のメガネが光った!

オー兄が顔を真っ赤にした!

オー兄は小刻みに震えている!

 

そして、

 

オー兄が黒傘を抜いた!

 

「ミレディイイイイイッ!エシェルゥゥゥゥゥゥッ!てめぇらぶっ殺してやるぅうううううっ」

「「きゃぁああああっ〜〜、オーくん/オー兄がキレたぁ〜〜」」

 

オー兄が追いかけてきた!

 

私たちはそんな締まらない始まりと共に。

 

未知なる未来へと、足を一歩踏み出したのだった。

 

私たちは、追いかけられながらも、幸せそうに笑っていた。




ひとまず一章は終了です。
一日六話書くの初めてでした。
疲れた。

感想を教えてください。

  • とても面白い
  • どちらかといえば面白い
  • どちらとも言えない
  • どちらかといえば面白くない
  • 全く面白くない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。