もしも、美綴綾子の迷言が、本当に伏線だったなら。   作:夜中 雨

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《第二話、Fate/Stay Night 》

 

 

「居合ってヤツを説明する時、三分割するのがやりやすいって言うの、覚えてるか?」

 

 道場の真ん中、(はかま)をはいて正座している俺の前に、一人分の人影があった。

 その人影も、俺と同じに(はかま)をヒラリと()いている。

 そいつは立ったまま、右手の、人差し指を一本立てた。

 

「アレだよアレ、“序・破・急”ってヤツ。始まりがあって、安定感の破壊があって、それで“無速”の抜刀になる」

 

 稽古(けいこ)()を着たそいつは女だけど、かなり男らしい喋り方をしている。

 

「三分割の3つ目、これをな、私たちは“離れ”って呼んでる」

「それって確か、弓道のと同じ名前だ」

「弓道射法の七節目、だろ。ワザと同じのを付けたんだ。だって、感覚は同じなんだから」

 

 彼女は和弓と真剣とを持って、弓と居合の感覚を、俺に実演してくれていた。

 

「難しい話は忘れていいから。ほら、やってみようぜ、衛宮!」

 

 そうやって笑った彼女の顔が、俺にはぼやけて見えていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 目が覚めた時、辺りは暗く、俯向(うつむ)きの頬に当たる下草は少し夜露に濡れている。

 

 夢の内容は、すでに(こぼ)れた後だった。

 誰の夢なんだったっけ。

 え〜っと、確か。

 

「あれっ? シキって誰だ」

 

 わからない。シキって誰だ? 

 というか夢って、いったい何を()たんだっけ? 

 と、その時———身体(からだ)が勝手に、左に跳んだ。

 

「————————ッツ!」

 

 奇襲かっ! 

 前回りのように受身を取りつつ魔力による空間把握……開けた場所だ。そして少し離れた場所で、莫大(ばくだい)な魔力が渦巻いている。

 ———知っている。

 俺は、この感覚を知っている。

 鳴動(めいどう)し、渦巻き、収束する魔力。

 衛宮士郎の左手側、10mほどの距離にある。

 その収束点に目を向ける。

 俺の目が認識したのは二つ。

 

 後ろ向きに吹き飛ぶ(あお)と、それを追いかける赤い槍。

 吹き飛ばされた蒼いドレスを着た少女と、それを追い打つ赤い槍を持つ男。

 青い髪の青い男は、身体(からだ)の右側に槍を保持して追いかける。左手は穂先(ほさき)(がわ)、右手は石突(いしつき)側を握ってる。上半身は地面と平行になるほどに倒して、槍を地面スレスレに構えていた。

 男が持つ、魔力が渦巻く赤い槍、その槍が一緒、強烈な赤に光った。

 

 それを目で追っている俺はただ、手を伸ばすことしか出来ない。

 アレは、発動させてはいけないものだ。

 アレが発動すれば、人が死ぬ。

 

 衛宮士郎は高校に上がってからずっと、暇があれば人助けをやってきた。

 衛宮士郎はいくつもの戦場を知っている。

 衛宮士郎は戦争の凄惨さを知っている。

 でも、未だに慣れないモノがある。

 でも、未だに受け入れられないモノがある。

 だから走った、間に合わないと知りながら。

 手を伸ばす、決して届かないとわかっていても。

 

 少女に放たれる赤い槍、アレはヤバい。

 俺は最早、無意識に槍を解析する。観ても何も変わらないって、自分が一番わかっているのに。

 槍の名は“ゲイ・ボルク”、一刺一殺(いっしいっさつ)の呪いの槍。呪いによって、相手に必ず当たる槍。一度当たれば、必ず相手を殺す槍。

 どんな呪いか、というのを言葉で言い表すと、“心臓を穿つという()()()()()呪い”といったところだろうか。留意すべきは()()()()()ってとこだ。

 過程は別に何でもいいんだ。胸側から突かれようが背中側から突かれようが、槍が勝手に爆走しようが、挙げ句の果てに空間が捻じ曲がって槍が心臓に当たろうが、そんなのは別に何でもよくて、呪いによって確定するのは“心臓を穿つという結果”だけ。

 心臓を穿つ過程の方は後から適当に決まるって事だ。“槍がひとりでに爆走すれば心臓を穿つ結果に繋がる”という事になれば槍は勝手に爆走するし、“空間が捻じ曲がる事実があれば心臓を穿つ結果に繋がる”という事になれば空間は捻じ曲がる。

 

 だから、“こうすれば防げる”っていう防御方法が確立出来ない。

 使い手を殺しても意味がない。心臓に当たるまで槍は爆走してくるだろう。盾を持っても意味がない。空間が捻じ曲がったり、槍が(むち)みたいになったりして、盾の隙間から心臓に刺さってくるだろう。だから、衛宮士郎は、少女を助ける(すべ)を知らない。

 

「“———————刺し穿つ(ゲイ)”」

 

 男が槍に魔力を注ぐ。

 槍から紅い光が漏れる。

 

「“—————————死棘の槍(ボルク)———! ”」

 

 男が槍を突き出した。

 この槍はかわせない。この槍は防げない。

 “そんな事は不可能だ”と衛宮士郎は知っていたから。

 

 この夜、俺は生まれて初めて、“運命が覆される瞬間”を見たんだ。

 突き出された槍が少女に迫る。蒼いドレスの金髪の少女は、何と、その槍を、彼女の持つ剣で弾いた。剣は透明だったからどんな剣か判らなかったけど、俺の目が解析した結果、ソレは確かに剣だった。

 少女から見て左から右へ、手に持つ剣で槍を弾き、軌道を逸らす。槍はそのまま少女の右側を通り過ぎる——————ワケがない。

 突き出した槍は心臓から逸らされた、なら“やり直せばいい”。

 時間の逆行、因果の逆転、事象の改竄(かいざん)。理由なんてなんでもいいんだ、どうせ後づけなんだから。

 槍の状態は元に戻った、それを突き出した瞬間に。

 そうだ、再び突き出す赤槍(せきそう)は、もう一度少女へ疾走する。

 ————瞬間、少女の剣がまた弾く。今度は右から左に向かって。

 穂先はついに出鱈目(でたらめ)を向いた。かなり勢いがついていたのか、男の腕ごと弾きだし、槍の穂先は後ろを向いた。

 

 そして何より、ドレスの少女は空中で、一度もバランスを崩さなかった。吹き飛ばされている時も、槍を左右に弾いた時も。だからこそ、今、この瞬間に、反撃のチャンスを掴めたんだ。

 彼女は(まん)()して、左から剣を薙ぎ払い———

 その身を槍が貫通した。

 

 刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)はかわせない、解っていた事だった。鞭のようにしなってでも、必ず対象を貫くことなど。

 そして、一度(ひとたび)槍が穿ったならば、穂先は無数に枝分かれ体内を蹂躙するという。その傷は決して、癒える事はないという。

 初めて見た時から、わかっていたハズだった。

 だから。

 

「躱しやがったのか! オレの槍(ゲイボルグ)を!!」

 

 だから俺は“少女が死を回避した事”が、とても信じられなかった。

 あの時俺は、能力の発動を確認し、少女の死を予見して、勝手に諦めてしまっていた。

 正に、未来予知めいた身体操作だった。

 少女の最後の薙ぎ払い、それはちゃんと、()()()()()()()が出来ていたのだ。

 しかし、触れたと言っても、それで槍が届かなくなる道理はない。だが現実として、呪いの槍は、彼女の心臓に届かなかった。

 どうやって、彼女が槍の呪いから、己の死という結果から、逃れる事が出来たのか、(つい)に俺にはわからなかった。

 可能性は幾つかあるけど、確かなことは、何もわからなかった。

 でも、俺はそれで良いと思った。

 

 理由なんて、わからなくでも良いと思った。

 

 この世に()る事象全てに、理由があるなんて事はない。彼女は今、“偶然”や“奇跡”と言ったものが確かにあるんだって事を、俺に思い知らせてくれた。

 

 本来に綺麗な、剣舞だった。

 惚れ惚れするような剣捌きだった。

 彼女の剣を見て俺は、運命の可能性ってヤツが見えた気がした。

 

 うん。

 

 とても良いものを見せてもらった。

 なら、お返しくらいはするべきだろう。

 

「おい、二対一は卑怯じゃないのか?」

 

 蒼い少女を護るように、槍男の矢面(やおもて)に立つ。視界の端で、追いかけてきたスーツ女の姿も見えた。

 漂う空気が弛緩する。

 よし。これですぐには、戦闘とはならないだろう。

 話し合いに、持ち込める。

 

「どう見ます? ランサー」

 

 口火を切ったのは、パンツスーツで短髪の女。槍使いに追いつくなりの発言だった。

 

「こっから先は泥仕合、消耗戦になるってこった。まぁ、それでも良ければ言ってくれや」

 

 ハァ、と息を吐いたのは、スーツ女だ。それは貴方の望むものではないでしょうに、とかなんとか。

 

「では、ここまでにしましょうか。ランサー、引き上げますよ」

「おうよ。じゃあなボーズ、セイバー。次はお互い万全でやろうや」

 

 槍を持っていない方、左手を上げて振っている。

 意外だ。退()かせるのは、もっと大変だと思ってた。

 俺も、仕切り直しに否はない。こちとら何もわかってないんだ。聖杯戦争やらなんやら、色々と整理しないといけない。

 後ろの少女も、治療が必要な訳だし。

 

 俺は、構えを解いて向き合った。

 

「助かる。こっちも、そうしてくれると有り難い」

「逃げるのか? ランサー」

 

 後ろから、少女の声が割ってきた。その声には気迫を感じる。

 槍が体を貫いた割に、元気そうでなによりだった。

 槍使いは肩をすくめて、半笑いで応答した。

 

「まぁ、確かにな。宝具を使った以上はどちらかが消えるまでやりあうのがセオリーだが……あいにく、この状況でそれをやると蹴り殺される未来しか見えねぇんでな」

 

 槍兵は、精悍な顔をニヤリとくずした。

 

「そっちはマスターとサーヴァント、どちらとも、オレたち相手に二対一で生き延びたんだ。なら、それくらいはあっても良いんじゃねぇか?」

 

 振り返って、2歩ほど歩く。

 すでに自然公園から帰りはじめているスーツ女を追いかけるかと思いきや、顔だけひねってこっちを向いた。

 

「オレはまだ死ぬのはゴメンだし、そっちは今も万全じゃねぇ。ここは一旦引いておこうや。まぁ、追撃するなら好きにしろ、オレは一向に構わなねぇぜ」

 

 面白い男だと、俺は思った。

 少女も、止める事はしなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 俺と少女は一先ず、公園から立ち去る事にした。

 この冬木が“戦争”なんてモノの舞台になっているのなら、一度戦闘が起きた場所に長居するのは得策ではないからだ。

 それに、聖杯戦争について、聴いておきたかったっていうのもある。

 彼女はいくらか知ってる見たいだったし、教えてほしいという、俺の願いも受け入れてくれた。

 

 なら、問題なのは一つだけ。今が深夜だって事だけだ。冬木の飲食店は軒並み閉まっているし、それ以外の店も同様だろう。

 取りあえず歩く。新都(しんと)の中心部に行けば、何かあるだろうか? 

 

俺たちがいるのは新都の郊外、とは言っても、この近くに海はなかった。冬木市の外人墓地は、新都のさらに奥、山際(やまぎわ)に存在している。

そんなところに大した施設があるわけもなく、蒼いドレスの少女と共に、新都の中心、オフィスビルの明かりが(まぶ)しい一角(いっかく)まで、わざわざ歩いてやってきた。

一瞬、手持ち無沙汰(ぶさた)になって、煌々(こうこう)(とも)る高いビルの窓明かりを見ながら、一人、首筋を()いている。

 ———まいった。いくらなんでも、初対面の男の家に誘う訳にもいかないし……。

俺は、隣の少女を覗き込むように、彼女の目を見た。

 

「悪い、この時間に案内出来そうなのが、ホテルくらいしか思いつかないんだ」

「私はどこでも構いません、マスター」

 

 俺に目を向けず、前を見て、金髪の彼女は、一定のリズムで歩いている。

 

「そのあたりも聴いておきたいんだ。しばらく時間を貰うぞ。えー、なんだ」

 

 しまった。そう言えば、名前を聴くのを忘れてた。

 俺は思わず、言葉に詰まった。金髪の彼女は、緑色の瞳で俺の目を見た。

 

「私の事はセイバーとお呼び下さい、マスター」

 

「わかった、セイバーだな。

 それじゃあ、俺のコトをマスターだって、そう呼ぶのもやめてくれ。なんと言うか、いろんなところがムズムズするんだ。俺の名前は衛宮士郎っていうんだ。だから、今度からはそっちで頼む」

「では、シロウ、と」

 

 それだけ言って、彼女はまた黙ってしまった。

 あまり、コミュニケーションが取れそうにない。俺もちょっと身構えてしまっているからか、会話が全然弾まなかった。

 

 到着したのは、冬木市ハイアットホテル。

 かなり高層型の典型的な四角いビルだ。

 

 こんな田舎の街には不釣り合いな程大きなホテルで、まるで、というか、実際高級ホテルな訳で、本来なら俺なんかのお金で足りるような場所じゃないハズなんだけど、実はここ、割とリーズナブルなんだ。

 

 何年も前に原因不明の崩落で、建物が吹っ飛んだらしい。

 当然事故物件扱いされて、かなり値切られたとかなんとか。

 吹っ飛んだ事を知っている近隣住民ならなおのこと、割安の値段で泊まれる訳だ。

 もっとも、このホテルの新しいオーナーも事あるごとにそれをネタにして、キャンペーンとかやってるみたいだから、商魂たくましいというかなんというか。

 

「ここ、割とセキュリティとかしっかりしてるから、ホテルごと爆破されたりしない限り、それなりに安全だと思うんだ」

 

 両手をコートのポケットに突っ込んで、ハイアットホテルを見上げながら、セイバーに質問する。

 さっきの槍使いみたいなのがいっぱいいるなら、それでも安心できないんだけど、野宿するよりは幾らかマシだと思うから。

 

「ここで良いか? セイバー」

 

 セイバーの目を見ると、緑の目で見返して、セイバーは頷いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 冬木市ハイアットホテル、8階。

 部屋の広さは全部合わせて18平米。間取りはワンルーム、風呂トイレ別、大きめのベッドが一つ。

 かなり安く手に入れたせいか、装飾品その他の部屋を飾るモノは一切なく、壁紙は真っ白。汚れとかどうやってるんだろうか。

 部屋に備えて付けてあるのは、簡素なベッドと四角いテーブル、椅子がニ脚。

 部屋の奥にベッドがあって、入り口側にテーブルと椅子がある。俺たちは、椅子に二人して座っている。

 俺の対面にいる彼女、セイバーと名乗った少女は静かに、両手を膝に置いて座ってる。銀色の胸当ては外されていて、青いワンピースドレスだけになっていた。

 

「何もなしで悪いんだけど、手短に話してくれないか? そしたら俺は出て行くからさ、お前も安心出来るだろうし」

「ん? どうしてシロウが出て行くのです?」

「いや、どうしてって」

 

 頭を抱えた。

 

「えっとだな、セイバーは女の子だろ。だから、男の俺と一緒にいるのは問題ありって言うか——」

「何を言うのです、シロウ。貴方はマスターだ。ならば、むしろ一緒に居ない方が問題ではないですか」

 

 セイバーは目に力を込める。眉間にちょっとシワが寄った。

 

「マスターもヘチマもない。だいたい、セイバーは女の子なんだから、そう言うとこは気にしないとダメだ」

「ダメではありません! 女である前に私は騎士だ。そのような発言は騎士に対する侮辱です、シロウ」

 

 撤回を求めます、と詰め寄るセイバー。

 俺たちの間にはテーブルがあるから、ちょっと身を乗り出すだけだけど、気迫はちゃんと伝わってきた。だからひとつ、確認しなければならなくなった。

 

「ずっと、そう言う風に生きてきたのか? 」

「ええ、それが私です」

「……だいたい判った、セイバー。

 それじゃあ、聖杯戦争について話せるところだけでいい、教えてくれないか?」

「えぇ、では“聖杯戦争とは何か”と“マスターとサーヴァントについて”、お話しましょう」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「元々、聖杯と呼ばれる万能の願望器がこの地にあって、マスターとサーヴァントは二人一組になって“聖杯に願う権利”を奪い合う。その権利を手にできるのは———」

「最後まで残った一組のみです」

 

 理解した、と頷いて、腕を組んだ。

 

「けど解らないな。聖杯戦争に参加する魔術師は()ず、聖杯とやらの能力(ちから)を借りて英雄を召喚するんだろ? でも俺、召喚なんてしてないぞ」

「しかし私はあの場に呼ばれた。それにシロウ、私と貴方は魔力のパスが繋がっています。ですので間違いなく、私のマスターはシロウなのです」

 

 そうか。まぁ、そこはもう終わった事、今更突っ込んでもしょうがない、か。

 これで、聖杯戦争の事も判った。

 

「よし。それじゃあセイバー、この部屋は自由に使ってくれ。二週間分とってあるから」

 

 そう言いながら立ち上がる。鍵はテーブルの上にあるから、見落とす事もないだろう。さっそうと肩で風を切り、玄関からト———

 

「なっ! 話を聞いていたのですかシロウ! 私は騎士です。死後に英霊となったモノだ! そんな気遣いは迷惑です!」

 

 ドアノブにかけた手を止める。

 果たして、後ろから聞こえる彼女の声に、どう返答したものか。

 

「何言ってるんだよ、セイバー。お前、槍で刺されたんだぞ! いくら魔力のゴリ押しで治癒してるからって、休まなくていいなんて事はない」

「それこそ無用なお節介です! この身は魔力で編まれたモノ……本質は精霊なのですから、休息など必要ない!」

 

 ドンっとセイバーがテーブルを叩く。部屋が、揺れた気がした。

 言いたい事はよくわかる。よくわかるんだが、だからこそ。その理屈は気にいらない。

 

「精霊だってことは、精神体だってことだろ。なら、やっぱり休息は必要な筈だ。俺が見張りをするから、部屋でゆっくり休んでてくれ」

「でしたらシロウも居て下さい。いざという時にマスターを護れないなど、サーヴァントとして有ってはならない事態です」

 

 俺は固まった。

 

「とは言ってもな、セイバー。俺は隣町に家があるんだ。聖杯戦争に参加するなら、準備は整えて置かないと————」

「ならば私も付いて行きます。マスターを護るのはサーヴァントの義務だ」

 

 はぁ、と溜め息がこぼれた。今のセイバーを遠坂たちに会わせてしまえば、休息の余地など無くなるだろう。ゴタゴタしている間、セイバーの性格では緊張しっぱなしな気がする。つまり、セイバーを休ませるには————。

 

 

 冬木市深山(みやま)町、そこに俺の家がある。

 衛宮邸に帰るのは朝になるな、と俺は思った。桜と遠坂、居てくれたらいいんだけど、と。

 






次回、Fate/stay night [Destiney Movement ]

———第三話、遠坂 凛
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