扶桑の兄妹外伝~ブレイブウィッチーズ 佐世保の英雄の弟妹~   作:u-ya

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改訂版9話です!


第9話「ペンネーム“佐世保の三毛猫”」

1944年5月中旬、オラーシャ帝国ペテルブルグ――

 

ペテルブルグのほぼ中心に位置するペトロ・パウロ要塞。現在は、連合軍第502統合戦闘航空団『ブレイブウィッチーズ』の基地に利用されている。

当基地の本部内には娯楽室が存在し、日々の戦闘で疲れた航空歩兵達のリラックスルームとなっている。

尤も娯楽室とは名ばかりで、ただテーブルとソファーが置いてあるだけの殺風景な部屋である。

コーヒー飲み放題という利点はあるものの、所詮はタンポポで作った代用コーヒー。オラーシャやアフリカのように過酷な戦場でもなければ、決して歓迎されない代物だ。

同じ統合戦闘航空団でも、ブリタニアに基地を構える501部隊とは雲泥の差である。

あちらの基地は、ドーバー海峡に突き出した古城に航空ウィッチ部隊運用の為の施設を増築し、小規模ながら港も存在する。

補給路の延びきっているペテルブルグとは違い、ブリタニア軍から直接。或いは、扶桑やリベリオンからの海運により、補給を効率的に受けられる。

そのため、ストライカーユニットを含むあらゆる物資が潤沢に供給される。

福祉厚生も充実しており、ネウロイの襲撃がない休日にはアフタヌーン・ティーが開催され、さらには扶桑海軍設営隊が空いたスペースを利用し、ローマ式の大浴場を作り上げてしまうほど。

ペテルブルグも軍事拠点としてはかなり恵まれている方だが、501基地には及ばない。

 

「~♪」

 

娯楽室には、扶桑皇国海軍より502部隊へ派遣されている航空ウィッチ――管野直枝少尉の姿があった。

ソファーに座り込み、なにやら御機嫌そうに鼻歌を口ずさんでいる。

暇な時間を見つけては自主訓練や読書に勤しんでいる管野だが、今日は自室から持ってきた本を開かず、代わりに首から下げたペンダントの先端を手に取り、1時間もの間矯めつ眇めつ眺めていた。

布製の紐の先端に吊り下げられた装飾品。所謂ペンダントヘッドは、小さなアメトリン――扶桑名“紫黄水晶”――の付いた銀色の星となっている。ちなみにアメトリンは管野の誕生石だ。

 

(佐世保の三毛猫さん、俺の誕生石を覚えてくれてたんだな)

 

ペンダントは大切な異性の友人から贈られたものであり、管野は大変気に入っていた。

普段から御守り代わりに身に付けているが、無闇矢鱈に見せびらかすような真似はせず、服やマフラーの下に上手く隠している。

変なところで鼻が利く“偽伯爵”ことクルピンスキーあたりに追及されでもしたら面倒、という考えただけでウンザリするような理由の他。自分みたいな女にアクセサリーは似合わない、という自嘲気味な考えもあるからだ。

管野は強過ぎる敢闘精神が高じて、短気且つ強気。一匹狼的な気質故に不機嫌さを前面に出すことも多い彼女だが、親しい同僚に対して笑顔を見せる。軽口を叩いたりする。読書好きな文学少女の一面を持つ等。決して無愛想だったり、粗雑なだけの人間というわけではない。

しかし、やたらと感情的かったり、言葉遣いが乱暴だったり、前述の通り不機嫌さを隠そうともしなかったりと、これらの特徴から「いつも機嫌悪い」「常に半ギレ状態」「恋愛やおしゃれ等の少女らしいもの興味が無い」「戦バカ」と誤解する人間も少なくない。

そんな輩が今の彼女――異性からの贈り物に心踊らせる管野を見たら、一体どんな反応を示すだろうか。

 

「カンノいる?」

 

ふと馴染みのある声と小気味良いノック音がドア越しに響いた。

管野は慌ててペンダントを服の中へ潜り込ませ、首元にマフラーを巻く。これならペンダントは見えない。

 

「お、おう!」

 

ドアの向こう側にいる相手に管野は返事をする。平静を装ったつもりだが、焦りと動揺で声が裏返ってしまっている。

 

「あ、やっぱりここだった!」

 

すぐにドアが開かれ、プラチナブロンドの短髪が印象的な北欧系美少女がひょっこりと顔を出す。

スオムス空軍飛行第24戦隊から502へ派遣されている航空ウィッチ――ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン曹長。通称“ニパ”だ。

 

「ニパ……って、中尉もいるのかよ」

 

ニパの後に続いて入ってきたのは、ヴァルトルート・クルピンスキー中尉。彼女も航空ウィッチで、カールスラント空軍第52戦闘航空団――略称は“JG52”――から派遣されている。

JG52は、エース級の航空ウィッチが多数所属しているカールスラントウィッチの中でも、特に精鋭が揃っていたことで有名だ。

腕利きばかりの部隊に身を置いていただけあって、彼女は502内でも1、2を争うほどの実力者。人類3位の撃墜数を誇る502部隊司令――グンドュラ・ラル少佐にも引けは取らない。

 

「やぁ直ちゃん♪今日も可愛いねぇ♪」

 

クルピンスキーは軽く手を上げ、挨拶代わりといった風に扶桑海軍ウィッチを口説く。

男装の麗人という表現が相応しい容姿の持ち主であるクルピンスキー。長身且つ制服の上からでも起伏が分かる豊満な肢体も併せ持つ。

外見は男受けも女受けも良さそうで、黙っていれば異性と同性の双方から凄まじくモテることだろう。そう黙っていれば……。

 

「そういうのを“馬鹿の一つ覚え”って言うんだ。口説き文句くらい幾つか用意してこいよ」

 

露骨に顔を顰め、管野は辛辣な言葉を浴びせる。毎度のことながら、この“偽伯爵”殿――侮蔑を孕んだクルピンスキーの渾名――の口説き癖にはウンザリさせられる。

クルピンスキーは本大戦初期――オストマルク防衛戦以来のベテランであり、柏葉付騎士鉄十字章を受けるほどの多大な戦果も挙げている。

その反面、酒と女が大好きな享楽主義者の楽天家でもあり、女性――特にウィッチ――を目にすると見境無く口説こうとする悪癖を持っている。

空では頼れる年長者兼部隊屈指の実力者。しかし、地上では先述の性分故、仲間達から呆れられたり軽蔑されたりしている。

管野とニパとクルピンスキー。この3人は、オラーシャの過酷な戦場を経験したエース級だけあって、相応の実力と敢闘精神を持つものの、ネウロイとの戦闘や不慮の事故等で度々機材を破損させるというマイナスな共通点が存在する。

性格や趣味・趣向が異なりながらも、そう言った面では似た者同士と言え、行動を共にすることも多い。

“伯爵(グレーフィン)”のクルピンスキー。“ツイてない”カタヤイネン。“デストロイヤー”の管野。

ストライカーユニットの壊し屋として名高い――当然悪名である――この3人組は、部隊名の『ブレイブウィッチーズ』をもじり、502の仲間内から“ブレイクウィッチーズ”と呼ばれている。

 

「隣座るよ?」

 

と言い、ニパ返事を待たずに管野のすぐ隣に腰を下ろす。

歳下2人が座るソファーは定員なので、クルピンスキーはもう1つの1人掛けソファーに座った。

娯楽に姿を見せた2人に視線を走らせ、管野は小さく嘆息を吐く。

ストライカーユニットの壊し屋という特徴以外にブレイクウィッチーズ3名の共通点を上げるならば、ボーイッシュな点であろう。

しかし、ニパやクルピンスキーは容姿や言動が中性的ながら、細かな所作や身体的特徴から歳相応の女性らしさが垣間見える。

服越しでもハッキリ分かる発育の良さに加え、尚且つ髪や瞳に華やかな色彩を生まれつき持ち合わせている2人のことを、管野は密かに羨ましく思っていた。

自分にも2人くらいの女性らしさが備わっていれば、首からペンダントを下げて堂々と表を歩けただろうか。

 

「あれ?本読んでたんじゃなかったんだね?」

 

ニパが首を傾げる。娯楽室を利用する際、管野は決まって私物の本を持ち込み、旨くもないコーヒーを味わいながら耽読することが多い。

しかし、今日は彼女の愛読書らしき本が何処にも見見当たらない。代用コーヒーの注がれたカップもだ。

 

「べ、別にいいだろ!娯楽室で何してようが俺の勝手じゃねぇか!」

 

「うわっ!?何怒ってんだよ?」

 

突然、怒声を張り上げた管野の剣幕に圧され、ニパは反射的に身体を仰け反らせる。

ニパとしては、素朴な疑問を口に出しただけのつもりだったのだが、何故か管野は御冠なのだ。

もしや地雷を踏んでしまったのかと、スオムスウィッチは狼狽える。

 

「あ、いや。わりぃ……」

 

戦友の反応を見て、ばつが悪くなったのか。ニパから目を逸らしつつも、管野は気まずそうに謝罪する。

 

「つーか、2人こそ何だ?揃って娯楽室なんか来て、暇なのか?」

 

管野が怪訝そうな表情で訊ねると、偽伯爵ことクルピンスキーが「当たり!」と応じた。

 

「今日はもうネウロイも来ないだろうし。特にやることもないからさ」

 

「ワタシも同じだよ。カンノなら相手してくれると思って……」

 

と、ニパがクルピンスキーの言葉を継いだ。本日、モスクワ方面より飛来した中型飛行ネウロイはサーシャ、ロスマン、ジョゼ、下原の4名によって撃破され、しばらくは次も来ないだろう。

ブリタニアに最初の統合戦闘航空である第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』が結成されたのと時を同じくして、各地でネウロイの襲撃がほぼ定期化し始めた。

人類にとってネウロイが難敵である事実に変わりはないが、戦いの後に小休止を貰えるのはウィッチ含む全将兵にとって非常に有難いことだった。

飛行脚整備中隊からすれば、ブレイクウィッチーズがネウロイ迎撃に出撃せず、ストライカーユニットを壊されなかったことも大変有難かった。

 

「俺はお前等みたいに暇じゃねぇぞ?」

 

「けど、娯楽室にいるってことはカンノも暇なんでしょ?」

 

「…………」

 

ニパの指摘に反論出来ず、管野は閉口する。確かに娯楽室のソファーで寛いでおきながら、忙しいというのもおかしな話だ。

管野は小さく舌打ちすると、カップを手にソファーから立ち上がった。代用コーヒーをお代わりするついでに、奇妙な友情で結ばれた戦友2人にも同じものを用意する。

 

「ありがとう!」

 

まずニパにカップを渡す。彼女は屈託のない笑顔を管野へ向けて礼を述べる。

 

「ありがとう、直ちゃん♪戦争が終わったら、僕の実家でメイドさんとして働いてみないかい?」

 

舌の根も乾かぬうちに自分を口説いてきたクルピンスキーに対し、管野は少なからず苛立ちを覚える。

このままカップの中身を顔面に叩きつけてやろうかとも思った。しかし、代用と言えどもコーヒーだ。そんなことをしてはさすがに勿体無い。

管野は腹の底から沸き上がる怒りをなんとか抑え、鋭い視線で一瞥するに留めた。対し、コーヒーを渡されたクルピンには「つれないなぁ」と言わんばかりに肩を竦める。

 

「で、ニパ。そりゃ何だ?」

 

ソファーに再度腰を下ろした管野は、ニパの膝に置かれた紙袋へ目をやる。

 

「あ、忘れてた!」

 

ニパはテヘヘと歯を見せて照れ臭そうに笑い、袋から中身を取り出した。

出てきたのは扶桑製のキャラメルの紙箱が3個。戦場の兵にとって武器、弾薬、水、食糧と同じ……いや、それら以上に貴重な甘味料だ。

 

「お茶請けに持ってきたんだ!2人にもあげるよ!」

 

と、ニパは管野とクルピンスキーにキャラメルを1つずつ手渡す。

 

「悪いな。けどよ、キャラメルなんてどうやって手に入れたんだ?」

 

ふと管野が素朴な疑問をぶつけた。ペテルブルグにおいて補給の問題から酒、タバコ、甘味類等の趣向品の補充は後回しとなっている。

基地内にある売店も例外ではない。長いこと品薄状態で続き、閑古鳥が鳴いている。

そんな状況下。ツイてないことで非常に有名な目の前のスオムスウィッチは、どうやってキャラメルを箱3個分も手に入れたのか。

管野はもちろん、クルピンスキーも気になるらしく、ニパを注視する形で返答を促す。

 

「えへへ♪雁淵くんから貰ったんだ♪」

 

と、ニパは声音を弾ませて答える。“雁淵くん”とはもちろん、扶桑皇国陸軍所属の陸軍ウィザード――雁淵輝准尉のことだ。

少女を想わせる華奢で可愛いらしい容姿のこの少年は、約1ヶ月前に502直属の補助部隊――ストライカーユニット回収中隊へ派遣された新人である。

元々カールスラント派遣部隊の一員として、大戦初期に欧州へ派遣された航空ウィザード。それでの戦果は中々のものだったが、どういうわけか北欧へ撤退を機に陸戦ウィザードへ転科した異色の経歴の持ち主だ。

ニパ達には知る由もないことだが、ラル少佐の元へ送られてきた書類には、空陸の双方における輝かしい戦歴が綴られていた。反面、問題行動のリストには、その3倍のボリュームがあった。

独断専行・命令無視・度重なる同僚との衝突等々。ブレイクウィッチーズの問題点が可愛く思えるほどの無法ぶりだ。

しかし、ラルや502戦闘隊長――“サーシャ”ことアレクサンドラ・I・ポクルイーシキン大尉。そして、ストライカーユニット回収中隊中隊長――アウロラ・E・ユーティライネン大尉の3名は、“優秀なウィッチ・ウィザードとは個性。或いは問題児が多い”と認識している。

与えられた任務をしっかりとやり遂げていることもあって、当基地に輝を色眼鏡で見る人間は殆んどいない。少なくとも、今のところは……。

 

「おやぁ?ニパくんと雁淵くんはと~っても仲が良いんだねぇ♪」

 

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、クルピンスキーはからかいような口調で言う。

 

「えっ!?」

 

同い歳の異性と仲が良い。偽伯爵からそう指摘されたニパの頬に紅が灯る。スオムスウィッチのウブな反応を楽しみつつ、クルピンスキーは言葉を続けた。

 

「僕とは口も聞いてくれないのに。まったく羨ましいなぁ♪」

 

自分を上層部受けの悪い問題児と認識している輝は、ウィッチを含め基地の将兵等とは距離を置いていた。任務外も軍用タバコを嗜みつつ、街の景色を眺めてばかりで、誰かと雑談に華を咲かせることもない。

無意識に壁を作ってしまう性分なのか、アウロラを含めた回収中隊も必要以上に彼と関わろうとはしない。嫌われてこそいないものの、輝は回収中隊内で孤立気味であった。

そして、好色な偽伯爵の言う通り。ここペテルブルグで輝と最も親しくしているのはニパだった。

彼に窮地を救われて以降、ニパは何かと彼を気に掛けていた。頻繁に声を掛けたり、共に過ごしだり、チョコレートを差し入れたりと、積極的にアプローチを掛けている。

その様は、宛らクラスメイトの男子生徒に恋い焦がれる女子生徒のようだ。

当の輝も、無愛想の上にぶっきらぼうではあるが、何かと構ってくるニパを無視することなく、親しげに話をしている。

ちなみにニパが言った通り。キャラメルは以前彼女から貰ったチョコレートの礼として、輝が譲ったものだ。

 

「ち、違うよ!雁淵くんとはそんなんじゃ!」

 

両手を顔の前で振りながら、ニパは必死に弁明する。白雪のような彼女の頬に朱が広かっていく。

 

「ネヴァ川で一緒にお菓子を食べたり、基地の案内を口実にデートしたり、どさくさに紛れて抱き着いたり♪ニパくんは意外と手が早くて大胆なんだなぁ♪」

 

クルピンスキーは、これでもかというくらいニパを囃し立てている。

それにしても、扶桑ウィザードとスオムスウィッチの動向についていやに詳しい。 2人をストーキングでもしていたのだろうか。

 

「わわわっ!?違うってばぁ~!」

 

冷やかしという名の波状攻撃を受け、ニパは顔を真っ赤に染め上げるだけではなく、目尻に涙まで浮かべ始めた。

一方、管野は彼女等の会話に混ざろうともせず、「ケッ!」と短く吐き捨て、目を逸らしている。

管野は2人の話題――正確には、話題に出ている輝のことを気に入っていない。彼女と輝は性格の相性が壊滅的に悪く、顔を合わせればすぐ口論になってしまうほどだ。

尤も、管野が輝を嫌う理由には相性云々の他。親友の雁淵孝美がやっとペテルブルグに着任したと思ったら、弟の輝で落胆したという理不尽なものもある。

 

「そんなことより!カンノ宛の郵便物が届いてたよ」

 

「何っ!?」

 

自分に宛てられた郵便物と聞いた管野は、郵便物を持ってきたに向かってズイッと顔を寄せる。互いの吐息がかかり、鼻先同士が触れるかどうかの近距離まで迫っている。

 

「わっ!ち、ちょっとカンノ!落ち着いてよ!」

 

一瞬で間合い詰められたニパは驚き、狼狽える。偽伯爵から逃れるため強引に話題を変えたが、藪蛇だったようだ。

ニパは堪らず、配送係から預けられていた管野の宛ての手紙の束を差し出す。逸る心は抑えられない管野は、それらを素早い動作で引っ手繰る。

ウィッチ・ウィザードへ宛てられた手紙の大半は軍司令部から転送されており、差出人の名に覚えがないものが殆んど。

これらの手紙は縁も所縁もない人々が、ウィッチないしウィザードの誰かに届くようにしたためたもの。

所謂、「人類のために戦うウィッチやウィザードの皆さんに励ましのお便りを出そう」というもので、地域によっては学校で生徒に書かせることもある。

事実、士気向上に一定の効果を発揮し、心待ちにする者も少なくない。

だが、中には得体の知れない物も混じっている。具体的な例としては戦時国債や怪しげな宗教の勧誘等だ。

ネウロイと戦うウィッチに宗教的な価値を見い出し、聖人として称える。或いは、入信を勧める新興宗教は数知れない。

また少数派ではあるが、ネウロイは神の使徒であり、抵抗するのは罰当たりだと主張する教団も存在する。

後者については、“魔女狩り”と称してウィッチを襲撃するテロ紛いの事件にまで発展するケースも珍しくない。

これら新興宗教は戦争が長引くに連れて数を増しており、先の見えない不安と疲弊から発生したものであろうと推測できる。

 

「また、こんなのばっかかよ……あっ!」

 

管野は差出人のみを確認し、怪しげなものは迷わずゴミ箱へ投げ捨てていく。

期待していた手紙が見当たらないまま、いよいよ最後の1通となった時だった。

待ちわびていた手紙――“佐世保の三毛猫”からの手紙が漸く見つかる。

 

「やったぜ!“佐世保の三毛猫”さんからだ!こんなに早く返事がくるなんて!」

 

待ちに待った文通相手からの手紙。扶桑海軍ウィッチは、封筒を胸に抱きながら歓喜の声を上げる。

そんな管野の姿を目にしたブレイクウィッチーズの仲間達は、キョトンとしている。

 

「サセボの……ミケネコ?」

 

「直ちゃんのお友達?変わった名前だね?」

 

「あっ!」

 

2人の声を聞き、現実に帰った管野は気まずそうに咳払いし、短く「じゃあな」とだけ言って娯楽室を足早に退室していった。

その日。手紙の封筒に口付けをするという乙女チックな管野の姿を複数の兵が目撃したそうな。




502基地の状況を知ると、501がどれだけ恵まれているかがよく分かる。


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