俺は強欲   作:駄文書き

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 俺の主人、名前はロドリゲスとかそんな感じの名前である。そんな感じ、とはどういうことかといえば普段は名前など使わずにご主人様とかそういったことでしか呼ぶことは許されないし心の内で叫ぶのはクソ野郎とかトカゲ野郎とかそういった罵倒でしかないためだ。

 

「77番、よえぇなてめぇ」

 

「いやぁ、本当に先輩にはかないませんて‥‥‥‥」

 

今日もまた特訓という名でのいじめが始まっていた。普段あまり仕事がない護衛たちはストレスが溜まっておりそのはけ口は新入りである俺に向けられる。

12歳にしてはやや大きい体と鍛えた頑丈さが護衛たちの気を大きく、また感覚を鈍らせていた。やろうと思えば俺だって一矢報いるとか出来そうなんだがそんな事をしたらもっと面倒くさいことになってしまう。

痛みになれる特訓だと思って俺は甘んじて受け入れる。

 

そもそも、護衛たちの平均年齢は俺を抜いたら20~22程度、身体能力で勝てるはずがないのだ、そんな奴らの模擬刀の一撃を防いでいたらいつの間にか溝に一撃が叩き込まれる。

 

――弱い、俺はそんな感情を自分に抱いていた。

そんな時であった、急に訓練室に使用人の一人が入ってきて俺たちを直ぐに外へ出るよう命じた。それを聞き少し痛みが走る体を抑えながら俺も歩き出した。

 

 

 

 俺たちがいるところは、東の海(イートスブルー)と呼ばれているところらしく世界の中ではかなり平和な地域のようだ。どうでもいいがな。

そんな平和な海の中、ここは主人が隠居しのんびり過ごすために買った島らしく住んでいるのは島のど真ん中に位置する館の住人のみだけらしい。

で、そんな島に訪れるような輩といえば‥‥‥‥

 

「久々に暴れられるぜ!」

 

そんな一番強い護衛の言葉に周りも合わせてオゥッ!と声を上げる。

話が途切れたが今回の相手は

 

「海賊どもを叩き殺せ!!」

 

だそうだ。

どうやら見張り役がこの島に近づいてくるドクロマークの旗を掲げた船を見つけたため護衛集団に声がかかったわけである。数は大凡15程度、一人1.5人を相手にしなくてはならない。だが周りは数で不利だというのに全く不利に感じていないようで剣を振る者や醜悪な笑みを浮かべるものばかり。

 

これはチャンスではないか、俺はそう思った。この時を利用して両者相打ちを狙えばこいつらを恐れる必要はなくなるのではないか。そう思った。

だがしかし、運命といものはそうやすやすと俺には傾いてくれないようである。

 

「77番、まずお前があいつらに何か慌てるようなことをしろ」

 

護衛の中ではNo.2の指揮官役が俺にそう命令した。

周りの護衛は真正面からぶつからないことに少し不満を漏らす者も格上には逆らうまいと口を閉ざす。そんな状況において俺は

 

「―――分かりました、先輩」

 

ただ頷くことしかできない自分を呪った。

 

 

 海賊も、少しは頭が回るのか島にこそ付けたが夜を待つこととしたらしい。だが既に見つかっているというifは頭の中にないようで見張りを一人つけ全員船の中へと入っていった。

俺はそれをずっと近くの林の中から見ていた、これでも眼はいい方であると自負している。だから真昼間に百数十メートル離れたところからでも容易にその間抜けどもの姿を鮮明に捉えることができた。先程まで甲板に出ていた人数が全員であるのならしっかりとした数は17、腕の立ちそうなのは4,5人程度だった。

 

「(さて、どうしたものか‥‥‥‥)」

 

そう呟いて俺は先程支給され現在腰に装備している小刀二本を見やる。これでは心臓を突き刺すことも難しい、そしてすぐに殺せる自信もない。あの偵察に声を挙げられたらthe・end、といった所だ。偵察はまったく疲れる素振りも見せずこちら側を見張って‥‥‥‥待てよ?

 

あの偵察、いくら何でも(こっち)を見過ぎではないだろうか。というか全く海側を覗いていないぞ?まるで敵襲は陸からしかこないと思い込んでいるような、

 

それだ!!

すぐに準備しなくては、と俺は気づかれないように林を後にした。

 

 

 そして俺は現在泳いでいる、別に逃亡しているわけではない、俺は考えたのだ。

海賊たちが優雅に陸からだけの敵を眺めているというのであれば、海から攻めればいいのだと。そう気がついた俺は夏に入りかけの時期でまだ冷たい海の中へと飛び込んだ。泳ぎ方はなんとなくに近い、だが波の音が泳ぐ音を消してくれているので下手でも大丈夫である。

冷たいなどと感じながらも船の近くによることができた。後はこの船底に穴を開けてやればこんな海賊船なんて直ぐに沈むだろう。そう思い一息吸って水中へと潜る。普段見る水とは違い綺麗ではあるが少々目が痛いと感じる。これが"海"といものなのだろうか。

しかし、そんな事を感じてなどいられない、俺は腰から小刀を一本抜き出して硬い木で出来た船底に突き刺した。

 

一撃ではその硬さを破ることが出来ず、水という動きを縛る中で何度も何度も突き刺す。次第にそこから泡が出るようになったことを確認すると息が苦しくなり一旦浮上した。

そうして息を荒げていても船は全く騒いでいない。それに少し腹を立てた俺は再び水中へと潜る。

船底には確かに小さい穴ができていたがあまり泡は出ていない、どういうことなのだろうかと少し離れた場所にまた穴を開けた。すると

 

「――モガ?!」

 

急に出てくる泡の量が増えその泡の攻撃をモロにくらってしまった。どうやら二つ穴を開けないといけなかったようである。船が沈みかけたら海賊たちは大慌てで陸に上がるだろう、だがそこに待ち構えているのは護衛達だ。人数の差を考えればそれぐらいのハンデで戦えばだいぶいい勝負になるはず。

俺はその様子を見ていようと海から上がりかけて、欲が出た。

 

「(そういやこの船‥‥‥‥海賊船だったよな?ならどっかに宝とか食い物とか入ってねぇのかな)」

 

そう考えてしまえば俺は自信の強欲にとらわれてしまい別の行動をしたくなってしまった。もう一度水中へと潜り穴と穴をつなぐように剣で印を付けると俺はその真ん中に渾身の一撃を叩き込んだ。

するとどうだろうか、ギリギリながらも子供一人入れる程度の大きさの穴が出来上がり俺は笑いながらその中へとはいる。

久々の何かを踏む感覚を楽しみながら入るとそこはもう膝ぐらいまで浸水していた。そこにあるのは木箱や宝箱、俺はそれを見て歓喜し宝箱を開ける。

 

―――だが、中身は空であった。

 

「は?」

 

俺は慌てて他の宝箱も開けるが全く何か入っていた痕跡すら見つからない。ならこの木箱か?俺はそう思って乱暴に木箱を開ける、そこには柑橘類などが入った所謂果物箱であった

 

財宝は?うまそうな食い物は?強そうな剣や盾は?

俺は混乱していた。そもそもここ族というものは余り宵越しの金は持たないもので財宝があったら売っぱらいうまそうな食い物があったら食べるし強そうな剣や盾なんてまずしまわず使っているのだが俺にはそれがわからなかった。

 

「誰かいるのか!!」

 

扉が乱暴に叩かれた。

幸いにして水圧などの関係で扉があかなくなっているようだ。だが時期に入られる、俺は舌打ちをしながらせめてもの収穫だと果物が入った木箱で穴を拡大して脱出した。

 

この選択が俺の人生の分岐路であったことに俺はこの時点ではまだ気がついていない。

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