それから俺は共同通信杯にて勝利を納めたものの、不安材料があるとのことで別の厩舎*1の馬と併せ馬をすることになった。
最強世代の二冠馬セイウンスカイ。セイウンスカイはマグナデルミネこと俺が産まれた年に皐月賞、菊花賞を制覇している。そんな二冠馬だが一昨年屈腱炎により長期休養。通常であれば引退の可能性もある屈腱炎だが復帰して成功する見込みがあった為に引き続き現役を続行した訳だ。
セイウンスカイの得意レーススタイルは逃げだが最後に勝利した札幌記念では差している。逃げ馬で知られるミホノブルボン*2も新馬戦で追い込んで勝ったんだからレアケースだがない訳ではない。
強度は一杯*3との指示だったからそのセイウンスカイに徹底的についていき最後は突き放すという質の悪い併せ馬だ。
全盛期のセイウンスカイならともかくここにいるセイウンスカイは全盛期からかけ離れており、【青き稲妻の物語】ではどうかは知らないが史実では天皇賞春でテイエムオペラオーに16秒弱遅れてゴールしていてついていくのは楽勝だ。
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「どうもありがとうございました」
「いえいえ、セイウンスカイの方も調整が出来ましたのでお互い様です。まあ結果はセイウンスカイの惨敗でしたが」
「いやいや負けてなお強し、流石最強世代の二冠馬でした」
「マグナデルミネは皐月賞、セイウンスカイは天皇賞春を勝ちましょう」
「ええ」
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そしてトライアルレースに参加することなく俺は皐月賞に直行した。そこには無敗で朝日杯3歳Sを勝ったシンキングアルザオ、そしてラジオたんぱ杯で俺に勝ち弥生賞でシンキングアルザオに勝利したアグネスタキオンがそこにいた。
無敗で弥生賞を制したアグネスタキオンが不動の本命で二番人気は僅差で弥生賞二着のシンキングアルザオ、そして俺は三番人気となっていた。史実ではジャングルポケットが二番人気だったが史実で朝日杯を勝ったメジロベイリーとは違いこのシンキングアルザオは無敗で朝日杯を制している。しかも距離が伸びれば伸びるほど強くなる血統背景も関わってくるから二番人気に指示されたんだろう。
しかしそんなことはどうでもいい。このレースで勝つのは史実でも【青き稲妻の物語】でもアグネスタキオンが勝つということだ。
前回戦った時はアグネスタキオンが勝ったがそれはアグネスタキオンの方が瞬発力に優れていたからだ。となればアグネスタキオンよりも先行しリードを取って逃げ切るしかない。アグネスタキオンから逃げ切ればシンキングアルザオも怖くない。
とにかくアグネスタキオンよりも先に行く。そのことばかり考えながらゲートに入りゴールに意識を向けるといつの間にかゲートが開いていた。
「ああっと、マグナデルミネ出遅れたぁっ!」
やらかした! 俺はジャングルポケットとは違いマグナデルミネという馬だから出遅れないなんて考えていた。だが俺はジャングルポケットの成り代わりでここにいる。実際フジキセキの厩舎だったし。
そんなことはどうでもいい! とにかくアグネスタキオンより先行しないと……ってジョッキー手綱を抑えるな! 俺の瞬発力を生かしたい気持ちはわからなくないがそれだとアグネスタキオンに勝てねえ!
結局こんな状態で勝てるはずもなく皐月賞は三着。アグネスタキオンはおろかシンキングアルザオにまで先着されてしまった。
むしろ史実のジャングルポケットよりもアクシデントが多かった俺にしてはこれでも頑張った方で通常であれば掲示板*4に載ることすら出来なかったかもしれない。
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「今回のマグナはやたらかかっていたな?」
「はい。何故か前に行きたがりまして……ギリギリのところまで抑えましたが却ってそれがよくありませんでした。前にアグネスタキオンやシンキングアルザオといった有力馬がいたことを考えるともう少し先行させるべきでした」
「次のダービーは勝てそうか?」
「アグネスタキオンは底が見えてきたので怖くありませんが、問題はシンキングアルザオの方です。弥生賞の頃よりも強くなっています。距離が延長されたらアグネスタキオンよりも強いかもしれません」
「ならそれ以上の相手と併せ馬をしないとダメか」
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皐月賞から数週間、いよいよ仕上げにかかるといったところで別の厩舎の馬と併せ馬をすることになった。その馬の名前はテイエムオペラオー。
前回の別の厩舎の併せ馬はセイウンスカイだったが今回のテイエムオペラオーは一味も二味も違う。
史実・原作通りテイエムオペラオーは産経大阪杯で負けたものの天皇賞春を勝ち、GⅠ競走7勝目を挙げて昨年同様現役最強馬そのものだ。
そんな化け物と併せ馬をしても大丈夫なのか? と思いがちだが厩舎の目標はアグネスタキオンを超えることであり、アグネスタキオンを超えるにはそれ以上の馬と併せ馬をする必要があるってことだ。現役で素質・実績ともにアグネスタキオン以上の馬といえばテイエムオペラオーしかいない。
向こうも日本ダービー有力馬と併せ馬が出来ると言うことで快く引き受けてくれた。
今回もセイウンスカイと併せ馬をやったように一杯で模擬レースのようになっている。
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「流石日本ダービーの有力馬なだけありますね。オペラオーが真面目に走るのはいつものことですが、あそこまで他の馬を意識して走るのは初めて見ましたよ」
「メイショウドトウと言った馬よりもですか?」
「ええ。マグナはなんというか見た目こそ父親に似ていますが威圧感が祖父のシンボリルドルフと似ているせいでしょうかね。オペラオーはそれに気づいているんでしょう」
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約一ヶ月後。ついにこの日がやって来た。東京優駿、通称日本ダービー。史実のジャングルポケットはここを制したが【青き稲妻の物語】ではジャングルポケットを破りシンキングアルザオが制覇。こちらの世界では……と、こんなことを考えているから出遅れる。この日本ダービー時点でシンキングアルザオは瞬発力を備え付け、史実では東京競馬場無敗のジャングルポケットを差し返している。皐月賞時点のアグネスタキオンを上回る実力があると言っていい。
やはりというべきかシンキングアルザオは逃げの一択で俺は中団で差しにいくスタイルだ。追い込みや先行も出来なくないがそれをやると折り合いがつかない。
「先頭はシンキングアルザオ! やはり強い! マグナデルミネも凄い脚だ! 皐月賞二着馬と皐月賞三着馬の対決だ! クロフネはきついか!? 未だにシンキングアルザオが先頭!」
流石【青き稲妻の物語】で驚異の連対率100%、GⅠ競走7勝を飾った競走馬なだけある。逃げ馬とは思えない程の瞬発力だ。
「しかしこれは差せるか!? マグナが差した! しかしアルザオ差し返した!」
だが俺だって何もしていない訳じゃない。そんなシンキングアルザオに勝つにはそれを上回る瞬発力が必要だ。
具体的にはミホノブルボンが坂路で鍛え上げたように俺も坂路を1日4本*5に増やしてもらえるようにやせ我慢して涼しい顔をしたり坂路が2本で終わるようなら突っ立って動こうとせず抗議した。
「マグナデルミネ、更に差し返した!」
シンキングアルザオは瞬発力を身につけることで勝負根性をより発揮するようになった。なら俺も同じだ。向こうがギアを変えて加速して勝負根性を発揮するならこっちは三段階に変えて加速してやる。
「マグナが伸びる伸びるゴールイン! 21世紀最初の日本ダービーを勝ったのはマグナデルミネ!」
ようやく俺の存在そのもの以外で【青き稲妻の物語】の原作改変が出来た。
後書きらしい後書き
さっさとウマ娘プリティーダービーに繋げたい……
それでは恒例の。
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