皇帝、帝王、そして大帝   作:ディア

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第4話 凱旋門賞連覇~有馬記念

 そして治療が終わり凱旋門賞を連覇して二度目となるJCに挑む。ただ今年のJCは例年とは違って俺の得意とする東京競馬場ではない上に距離も2400mではない。

 

 この年の秋、東京競馬場はコース改修工事の影響で使えなくなり代わりに東京競馬場で行われるレースは中山競馬場で行われることになる。

 

 史実ではこれでナリタトップロードやジャングルポケットが勝てずに悲惨な成績になってしまった。

 

 

 

 だが俺は中山競馬場が苦手な訳ではない。実際中山競馬場と同じく右回りの凱旋門賞を二度も勝っているし成績や血統背景から考えてもスタミナもある。

 

 シンキングアルザオやアグネスタキオンが当時強すぎたってだけの話だ。

 

 だがあいつらに勝てるだけの瞬発力と位置取りの確立は済んでいて勝ち目はあの時よりもある。

 

 史実ではファルブラブが勝つがあいつの動きは参考にならん。

 

 何せ原作で勝ったシンキングアルザオの方があまりにも格上な上に今回は史実・原作共に引退しているはずのアグネスタキオンがいてそちらにも注意しなければならない。

 

 史実の天皇賞秋を勝ったシンボリクリスエスがレースどころかこの世界にはいない為、何が起こるか不明だ。

 

 

 

「さあいよいよ昨年のクラシックを盛り上げた三強が再びこの中山競馬場で相見えます」

 

「未だ無敗の皐月賞馬アグネスタキオン。そして凱旋門賞を二度も制した日本ダービー馬、マグナデルミネ。そして連対率100%の最強ステイヤー、シンキングアルザオ。どれも捨てがたいですね」

 

「その他にもKGⅥ&QESを制したゴーランやオペラ賞を制したブライトスカイも侮れません」

 

「各馬ゲートインしました。さあ第22回JCスタート!」

 

 

 

 ゲートが開き、最初に行ったのはやはりシンキングアルザオ、中団に控える形でアグネスタキオンだ。

 

 アグネスタキオンは怪我があって弱体化しているとはいえ【青き稲妻の物語】では古馬になってから無敗のシンキングアルザオを破っていて油断出来る相手ではない。

 

 むしろ最大の驚異であり俺からしてみればアグネスタキオンの方がシンキングアルザオよりも上だと思っている。

 

 それは観客も同じでアグネスタキオンが2番人気に対してシンキングアルザオは3番人気であるのが何よりの証拠だ。

 

 ちなみに1番人気は何故か俺で、観客は俺を過大評価しすぎている。

 

 

 

「さあここでアグネスタキオンが動いてそれに続くマグナデルミネ。そしてシンキングアルザオも仕掛けてきた!」

 

 昨年の凱旋門賞と同じく、一番の有力馬だと思った相手──今回であればアグネスタキオンをマークし動くタイミングで動く。

 

「直線に入ってまだシンキングアルザオ先頭、粘るシンキングアルザオ、追い詰めるマグナデルミネ、アグネスタキオン」

 

 よし、アグネスタキオンの伸びは悪い。

 

 残るは先頭にいるシンキングアルザオだけであいつに勝つには心臓破りの坂までに並ばないと勝つ可能性が低くなってしまう。

 

 それと言うのも俺自体があの二頭に比べてパワーが不足しており一馬身以内でないと差せなくなってしまうからだ。

 

 四馬身、三馬身、二馬身、一馬……届かないっ! 

 

「マグナデルミネが追い詰める! 逃げるシンキングアルザオ!」

 

 あと半馬身、半馬身欲しい。そう願わずにはいられない。だが予想外の事が起きた。

 

「マグナデルミネ、シンキングアルザオに並んだ!」

 

 それはシンキングアルザオの伸びがいつも以上に悪いことだ。いやアグネスタキオンや他の奴らも伸びが悪い。もしかして本当に克服したのか? 

 

「さあマグナデルミネ先頭だ!」

 

 残り100mを切った時点でシンキングアルザオ、アグネスタキオンの二頭の顔が俺よりも後ろにある。

 

 この勝負貰った! 

 

 

 

「シンキングアルザオ一着! 二着にアグネスタキオン、三着にマグナデルミネ」

 

 ……くそ恥ずい。何がこの勝負貰っただよ。

 

 あの後二頭が失速した俺を置き去りにし、結果は三着。手も足も出なかった。

 

 それはそうと原作通りシンキングアルザオが勝ちイレギュラーのアグネスタキオンや俺が敗北したことを考えると普通なのかもしれない。

 

 

 

 ────────────

 

 

 

「やっぱりあの二頭は強いですね」

 

「マグナは一度アルザオに勝っているんだがやはり東京競馬場じゃないと駄目なのか?」

 

「いえ、マグナの顔を見てください」

 

「……っ! 涙を流している、のか?」

 

「ええ。もしこのまま有馬記念に出走せずに引退もしくは別のレースに使うようであればマグナは馬房の中から出ないでしょう。そしてこの悔しい気持ちは私も一緒です。今度の有馬記念、絶対にマグナの無念を晴らしましょう」

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 そして有馬記念。俺、シンキングアルザオ、アグネスタキオンは共に今年GⅠ競走2勝。この有馬記念の結果次第で年度代表馬が決まる。

 

「さあいよいよ今年最後のGⅠ、有馬記念が始まろうとしています」

 

「今年の本命はシンキングアルザオ、対抗にアグネスタキオンと言ったところでしょうか?」

 

「そうですね、マグナデルミネも例年なら本命視されてもおかしくはないんですがあの二頭が相手ですからね。有馬記念開催場所が東京競馬場ならまだしも中山競馬場で行われるとなると厳しいものがあります」

 

「グランプリ連覇か、父仔三代有馬記念制覇かそれとも父の無念を晴らすか、それとも大波乱が起きるのか……いずれにせよ21世紀が始まったばかりとは思えないドラマチックなレースになりそうですね」

 

 

 

 

 

「各馬ゲートイン完了しました。第47回有馬記念スタート!」

 

 そしてゲートが開き、テンプレあるいはマニュアル通りシンキングアルザオがハナに立つ*1と俺は中団で控えるアグネスタキオンの後ろについた。

 

 アグネスタキオン、シンキングアルザオ共に連対率100%の名馬だ。

 

 有馬記念で史実・原作ともにどちらも走っていないからどちらが強いかは不明だし、種牡馬としての成績から見ても予測がつかない。

 

 何故ならアグネスタキオンは有馬記念を制するダイワスカーレットを輩出するし、同じくシンキングアルザオも有馬記念を制するマジソンティーケイを輩出。

 

 競走馬としても種牡馬としても予測がつかない故に俺はシンプルに自分のレーススタイルに戻すことにした。

 

 

 

「さあここでアグネスタキオンが動いたがマグナは動かない、まだ動かないぞ」

 

 1600mを通過し、残り900mを切った段階でアグネスタキオンが動くが俺はまだ我慢していた。騎手が俺を必死に押しているがまだその時じゃない。

 

 残り800mを切った段階で動き、アグネスタキオンとシンキングアルザオを捕らえに行く。それこそが俺の本来のレーススタイルだ。

 

「さあ最終コーナーを通過し、シンキングアルザオが未だに先頭。アグネスタキオンがシンキングアルザオを捕らえに行った! マグナデルミネはまだ来ないっ!」

 

 よし、今だ。しっかり捕まっていろよ相棒。一歩を強く踏み出し加速するとそれまで見ていた景色が止まって見える程の景色が映る。

 

 それまでの一歩の歩幅はトウカイテイオーと同じようなものだったが、今はそれを遥かに超えるものでありながら脚の回転数は変わらない。

 

 それどころかもっと速くなっていてディープインパクトのような状態になっている。

 

 かつて強敵だと思っていたシンキングアルザオやアグネスタキオンすらも軽々と抜いてしまった。

 

「大外から来た、大外からマグナデルミネが飛んで来た! 帝王の仔が今、光輝く大帝へと進化した!」

 

 有馬記念を3馬身差で勝利。スペシャルウィークが元のレーススタイルに直したことによって安定感がついて改善されたのと同じく俺もそうしてこの結果に繋がったんだろう。

 

 

 

 ────────────

 

 

 

「やりました先生! ついにあの二頭の土俵で勝ちました!」

 

「ありがとう、これでフジキセキにも胸を張って会える……」

 

「マグナには感謝の言葉しかありませんね……何せ当初の目標の日本ダービー、JC、凱旋門賞連覇、そして有馬記念という有終の美を飾れた名馬なんですから」

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 それから俺とアグネスタキオンはあの有馬記念の直後に引退し種牡馬として生活を送ることになった。俺はともかくアグネスタキオンは仕方ないよな。

 

 ただでさえ一頭のGⅠ馬を犠牲にしているのにこれ以上引退時期を伸ばしたら歴史的名牝馬(ダイワスカーレット)がいなくなる。

 

 

 

 俺の血統は母父にリアルシャダイ、母母父にマルゼンスキーが含まれておりノーザンダンサーやヘイルトゥリーズンの血が少し濃くなってしまうのが欠点だがそれでも凱旋門賞を連覇した歴史的名馬なだけあり結構な数の牝馬と肌合わせすることになる。

 

 その中にはリセット*2の母親も混じっていて俺がリセットの父親になったことが一番の原作改変が起きた。

 

 

 

 尚、シンキングアルザオは原作通り現役を続行したが何故か怪我が起こらず天皇賞春、宝塚記念、天皇賞秋、JC、そして有馬記念の古馬中長距離GⅠ競走を完全制覇。連対率100%、GⅠ競走9勝と原作を超える戦績を出して引退。

 

 種牡馬としても優秀で、種牡馬として活躍した俺達の中でも一番の成績を残した。もちろんその中には原作にて天皇賞父仔五代制覇を果たしたマジソンティーケイもいたが、何よりもシンボリクリスエスがいないことから変わりに種付けられることがあり、こちらの世界のエピファネイアはこいつの息子だったりして一番の史実改変と言うべき存在になっていた

*1
先頭に立つこと

*2
【青き稲妻の物語】に出てくる馬。詳しくは【青き稲妻の物語】参照




戦績等まとめ

マグナデルミネ
父トウカイテイオー、母父リアルシャダイ、母母父マルゼンスキー
所属 栗東
戦績 13戦10勝 13-1-2-0
勝ち鞍 札幌3歳S、共同通信杯、日本ダービー、札幌記念、凱旋門賞、JC、ドバイSC、凱旋門賞、有馬記念

アグネスタキオンとの勝敗 1勝3敗
シンキングアルザオとの勝敗 2勝2敗

シンキングアルザオVSアグネスタキオン 2勝3敗

アグネスタキオン
戦績 8戦6勝 6-1-1-0
勝ち鞍 ラジオたんぱ杯3歳S、弥生賞、皐月賞、宝塚記念、天皇賞秋

シンキングアルザオ
戦績 16戦11勝 11-5-0-0
勝ち鞍 朝日杯3歳S、菊花賞、天皇賞春、JC、古馬王道完全制覇


後書きらしい後書き
ようやくサラブレッド編終わった……これからウマ娘プリティーダービーに繋げたい……

それでは恒例の。

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