「戻ってきたね。レイシフトしてすぐ戻してしまい申し訳ない」
特異点から一時戻ってきたリツカとマシュにドクターは頭を下げる。
「バカな⁈太陽系と同スケールだと!そんなもの重力崩壊を起こさず存在できるわけがない」
「魔力を一切感じません!確実にそこに存在しています!」
「さっきまで何の反応もなかったはずだ!一体どうなっている⁈」
「英霊召喚第四号、特異点をロストしてから反応がありません」
「もっとよく探せ!どこかに手がかりがあるはずだ!あれと同じタイミングでのロストだ、無関係なはずがない」
現在カルデアの中は大混乱となっており、全員が突如として現れた謎の存在の解析を行っていた。
「・・・さっきまで存在していた光輪が何もなかったかのように消えていた。そのものが消えたのか、それとも世界そのものがあれから移動したのか、それはわからない。霊基反応の急上昇とともにあれは出現した。一体・・・・」
ドクターは今を掻きながら早くようにそう呟いた。マシュはそんなドクターを見て気を遣いながら登場したあの存在についての疑問を挙げた。
「何なのでしょうあれ、何というか・・・巨大な顔のように見えます。」
「ああ、まさしくその通りあれは顔だ。しかしただの顔じゃあない、太陽以上の質量と大きさを誇る巨大な顔さ。その下には胸部らしきものが観測されたし、バランスから考えるとおそらく太陽系くらいの大きさはある、と思う」
呆然としていた。
当然だ。これからやっと反撃を始めようと一歩踏み入れたばかりなのだ。なのにもかかわらず急にあのようなものが現れた。
もしかしたらあの存在が我々の敵の親玉なのか?もしそうだとして、我々は勝てるのか?いや、絶対むりだ。そもそも質量差が圧倒的すぎる。
慌ただしく解析が行われていくミーティングルーム。しかしそんな空気を消し去ったのは
「あれ、多分ゲッターロボだよ!すげー!新しいししかも本物⁈」
何と藤丸リツカだった。
「え?」
「藤丸くん?!君はあの存在について何か知っているのかな!」
「ああ、もちろんしってるよ。色々変わってしまってるけど、あれは間違いなくゲッターロボ だよ。つい最近知ったばかりではあるけどさ」
そういうとリツカは瞳をキラキラさせながらモニターを眺める。ほかのスタッフ達にも聞こえたのか全員がリツカに顔を向けていた。そんな様子を見てカルデアのサポートとして召喚されていた英霊、レオナルドダヴィンチが疑問符を浮かべる。
「ゲッター、ロボ?あれはロボットなのかい?」
「ああ、色々デザインとか変わってしまってるけど間違い無いよ。ちょっと待ってて?」
そういうとリツカはマイルームへと向かい自分の携帯を持ってきた。
「えー、と。ネットは繋がらないから・・・、画像フォルダに・・・あった!ほらこれ。」
「これは・・・・・」
リツカの見せた画像。そこには細部こそ違えど確かに共通するデザインをしたロボットのデザインが描かれていた。科学者である以前に芸術家でもあるダヴィンチちゃんは、確かにそれが同じ作者の感性によってデザインされているのがわかった。
「今年の春くらいだったかな、インターネットで連載していた漫画のロボットだよ。わずか一週間で10話くらいの漫画を仕上げては投稿してるって話題になってたよ」
「漫画のキャラクター・・・」
「あ、いや、ごめん。不謹慎だった。俺この漫画のファンだったからさ・・・」
そういうとリツカは目をそらした。状況を考えて申し訳ないと思ったのだろう。そんな様子を見たマシュはリツカをフォローする。
「で、ですが素敵なお話ですね先輩。物語から出てきたキャラクターに会えるなんて」
「突拍子もない話だったからさ。今のは忘れてーーー」
「いや、案外バカに出来ないよ」
そしてそんな中ドクターはリツカ達の言葉に待ったをかけた。
「ドクター?」
「リツカくん、忘れてるよ。ほら、冬木で出くわしたサーヴァントについて考えてみなよ」
「サーヴァントって・・・確かあの人は・・・」
最初の特異点、冬木で彼らが遭遇したサーヴァント。それは何らかの外的要因で黒く染まったアーサー王だった。そう、アーサー王伝説に登場する主人公。アーサーペンドラゴンである。
「リツカくん、君は特異点に行った時制服の他に何か持って行ってたかい?」
「え、えーと。暇な時間に描いた落書き中身くらいしか・・・でも本当にただの落書きだよ?」
「そうでもない。英霊召喚というのはそもそも聖遺物を触媒として指定した存在を呼び出すものなんだ。そしてあの存在は召喚陣の魔力上昇と同時に現れた。ここから考えるに、あの魔力上昇によって現れたあのロボットは、サーヴァントの宝具である可能性がある」
「・・・・・え?じゃあこのゲッターロボの作者は将来英雄になるってこと」
「もちろん普通はありえない。だけど人理焼却という今の状態はあらゆる事象があやふやなまま成り立っている。ここから考えて・・・」
「ごく僅かですが、特異点の反応が現れました!」
その時慌てた様子のスタッフの叫び声が響き渡った。隣にいたスタッフはモニターに目を向けて補足しようとする。
「年代は・・・2015年?なんだごく僅かな時空の歪みじゃないか!そんなことより今は第1特異点の観測をーーー」
「ま、待って!そのままその特異点を観測してくれ!」
様子を見たドクターが声を荒げながらそのスタッフ達のモニターを覗き見る。
(2015年7月・・・そしてこの反応パターン)
「すまない、先程オルレアンで観測した霊基パターンをもう一度見せてくれ。これは・・・」
ドクターが目を向ける先。そこにはほんの一瞬ではあったが、マシュの盾より上がった反応パターンが表記されていた。そしてたった今観測した特異点の反応パターンと見比べる。
「完全に一致している・・・。バカな。サーヴァントが不安定な霊基のまま時代を渡ったとでもいうのか!?」
完全に一致。そう、最初に召喚陣からあった英霊反応と全く同じ存在がたった今観測した時代にて確認されたのだ。
「あの・・・ドクター?」
「すまないリツカくん、マシュ。今すぐこの特異点にレイシフトして欲しい。おそらく・・・」
「君たちが召喚したサーヴァントは、そこにいる。」
「グッズ開発?」
部屋で今週の分の投稿を行なっていたら、運営から連絡が届いた。
連載を始めて3カ月。初の単行本発売からしばらくの事だった。あれからうなぎ登りで読者を増やした自分の元には、決して少なくはない収入が入っていた。
元々特異点の助けになるかもな、と思いつきで行った試みではあった。しかし自分の好きな作品を新たに知ってもらうというのはなんだかんだ言っていいものだ。
しかし同時に罪悪感も抱えていた。それはそうだ。何と言ってもこれは無断転写である。ファンの風上にも置けない事だろう。しかしこれが彼らの助けになる可能性が1パーセントでもある限り続けようと思う。今まで儲けたほとんどの収入はこの作品を広めるために使っている。
え?贅沢に興味はないのかって?しない。宣伝に使う。自分にも得があるのだ。
「これがうまくいけば新しいゲッターロボのフィギュアが出る可能性があるしな。向こうじゃもうあまり作らないし、何より納得のいくゲッターロボ発売の前に死んじまったしなぁ・・・」
私が死んだのは6月の梅雨の時期である。あと数十日経てば自分にとってベストなゲッターロボが発売したはずなのだ。
元の世界、画面の向こうの貴方達の世界にはもちろん沢山のゲッターロボフィギュアが発売している。しかしゲッターロボのデザインゆえというべきか、その人にとってのベストという立体物はなかなかない。大きくアレンジされたもの、アニメに寄せたもの。王道の超合金シリーズなど。これらは実際に買ってみないとわからない。ゆえにダイナミックロボットファンは同じロボットをたくさん買いがちである。
「30日発売予定のゲッターロボ 欲しかったなぁ・・・。関節がしっかり蛇腹になってマシンガン取り出せるやつ。」
しかし死んだのだから仕方ない。これからは自分がゲッターロボを監修する必要があるのだ。である以上全員を納得させるまで頑張ろう。
「それに原作漫画版ゲッターロボのアクションフィギュアも発売されるかもしれないしな。向こうじゃ非稼動というかソフビっぽいのしか売ってなかったんだよなぁ」
発売したら実に嬉しい。
ちなみに画面の皆さんはどのゲッターロボ 立体物が出たら嬉しいですか?ちなみに私はネオゲッターロボ登場の初代ゲッターが好きです。
「もちろん・・・お願いします・・・と。打ち合わせは・・・10日に・・・と。ふぅ、それにしても・・・」
「あと一カ月ちょい、か」
そう、人理焼却が始まるまであと一カ月と少しである。そしたら自分は気づかぬうちにこの世界の人たちと共に光輪の材料となってしまうのだ。
「・・・」
この日まで結構頑張った方だと思う。漫画連載から始まり海外での翻訳。特にイタリアで受けが多かったらしい。朝のニュースなどでも特集をするというのも聞いた。
「世界の壁を壊す、かぁ・・・。自分じゃどうにも成果が実感できないのがもどかしいなぁ。」
全ては何か力になれればと始めた事だった。しかしこれは肝心な藤丸リツカがこの漫画にハマってくれなければ意味がない。それに繋がったとして彼らは力を貸してくれるだろうか?同じ人類ではあるがこの世界の人たちはいろんな意味で繊細な人たちだ。
協力を求めたとしても、もしかしたら竜馬あたりから「甘ったれてんじゃねえ!」とか怒られたりするかもしれない。
「今は亡き先生、どうかこのいろんな意味で哀れなこの世界の人たちと俺に、どうか力を貸してください」
ピンポーン
「ん?」
すると突然、部屋の中にチャイムの音が鳴り響いた。何だろう?ネットでは何も注文してないし、編集からも何か送るとか聞いてない。地域住人もこの時間ほとんど働きに出ている。
「どっこいしょ、と。何だ?新聞か宗教の勧誘か?ハーイ!」
急ぎ足で玄関に向かう。雨で濡れてる可能性もあるためスリッパを履いてロックを外すと扉の向こうにいるであろう人物に話しかけた。
「はい、どちら様ーーー
「あの、すいません。私たちカルデアという企業のものなんですけど・・・」
え?」
その姿を見た〇〇は、あまりの衝撃に頭が真っ白になった。そこには何と、かつて画面越しに眺め続けてきたあの二人にそっくりな二人組がスーツ姿で立っていのだ。
「うそやん」