神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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前回の話ではUCのネタバレをしてしまい、申し訳ございませんでした
問題の部分は消しましたので多分大丈夫です

では続きをどぞ


金銀転校生の第27話

「……はぁ」

 

「どうした」

 

ある日の寮の食堂で一人で居た箒と一緒に夕飯を食べているとため息が聞こえた。無論、箒のものだ。

一夏?鈴と食べてるよ。

 

「いや……なんでもない」

 

「一夏関連だろ」

 

「うぐっ」

 

はぐらかそうとした箒だが俺が『一夏』という言葉を出すと反応した。

 

「大丈夫だ箒。前にも言ったが幼馴染というアドバンテージがあるお前の方が他の奴らより一歩リードしているんだ」

 

「……それはアイツも同じだろう」

 

そう言って箒は一夏と一緒に夕食の席についている鈴を見やる。

 

「正直、あれを幼馴染にカウントしていいのかどうか」

 

一夏が鈴と出会ったのって小学五年からだろ?幼馴染ではないよな。

 

「しかし、一夏と昔からの付き合いというところは同じだ」

 

そう言って箒は再びため息をつく。

 

「焦らずにゆっくり距離を詰めればいいさ。一夏の鈍感さを考えればそれが確実だ」

 

変な作戦でも考えれば鈍感一夏節が炸裂してたちまち暴力エンド。

鈴の毎朝酢豚がいい例だ。

 

 

「しかしだな……」

 

「手っ取り早く一夏を手に入れたいなら既成事実でも作れ」

 

「すみません無理です」

 

箒の言わんとすることを先読みして答えれば箒は顔を赤く染め、顔を伏せた。

 

「幼馴染でポニーテールでおっぱいでかい大和撫子。お前、かなりスペック高いぞ?自信持てよ」

 

「……さらりとセクハラされた気がするのだが」

 

ジトっとした目で俺を見る箒。

ツッコミを入れられるくらいには調子を戻したようだ。

 

「俺が一夏なら好意を持つ持たないは別として、好意を向けられているんなら嬉しいし付き合うレベル」

 

まぁ本物の一夏はその好意にすら気づかないけどな。

ホモなんじゃないのかと最近真剣に考えている俺がいる。

 

「ほ、本当か?」

 

頬をさらに染めた箒が嬉しそうに聞いてくる。

 

「マジ」

 

実際、箒ってスペック高い。

料理出来るし家事も出来そう。

 

「あー……でも、すぐカッとなって手を上げてくるのはマイナス」

 

「うっ……」

 

まさに上げて落とす。

俺が唯一にして最大のマイナス点を指摘すると箒は黙りこくる。

 

「ていうか好み云々以前に、人に暴力を振るうのはどうかと」

 

「…………そうだな」

 

箒の声のトーンが下がった。

あ、ヤバい。地雷踏んだ。

 

「ま、まぁ、これからも俺がサポートするからしっかりやれよ」

 

俺は食べていた夕食のきつねうどんを平らげ急いで席を立つ。

 

「待ってくれ」

 

しかしにげられなかった!

席を立った瞬間に箒に声をかけられた。

俺は黙って箒の方へ振り向く。

 

「前々から気になっていたんだ。……なぜ鋼夜は私の、お、応援をしてくれるんだ?」

 

なんだ、そんな事か。

 

「ずっと相手を想っていた奴が、想っていた相手をパッと出の人間に取られるなんて間違ってると思わないか?」

 

俺はそう答え、箒の元から離れた。

ちなみに箒は俺の失恋話を知っている。

 

……ま、そういう事だ。

『モッピー脱却作戦』の事もあるが今言ったことも一応理由になる。

 

別にセシリア達をアンチしている訳ではない。

恋をするのも、恋に落ちるのも人の自由だ。そこは否定しない。

そもそも相手を選ぶのは全部一夏の自由なのだ。他人が口出しすることではない。

 

でもさ、なんか報われないじゃん?スッキリしないじゃん?

……まぁ、つまりはそういうこと。

 

 

あっれー、でもこれって鈴にも言えることじゃん。

……あぁ、めんどくせえ。

 

 

箒、はやく一夏をなんとかしてくれ。

俺の精神が正常であるうちに。

 

 

 

食堂を出た俺はそんな事を思いながら部屋へ帰った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「デュノア社に動きが?」

 

『うん。具体的にはデュノア社の人間を学園に生徒として入れるみたいだよ』

 

俺は寮の外にある適当なベンチに腰掛けて輝さんと通話していた。

部屋に帰る途中にコールがきたのである。

 

「当てましょうか?三人目でしょ」

 

『ふふっ。正解だよ』

 

そんな時期かと思いつつ輝さんにそう答えると輝さんは小さな笑いと共に肯定した。

 

『フェニックスからの情報でね。今も彼に調べてもらっているよ』

 

「あー、鳳凰院さん?」

 

『それ、彼の前では禁句だからね』

 

鳳凰院さんとは、輝さんお抱えのエージェントの一人で「俺にかかればどんな場所でもフリーパス」と豪語するくらいの凄腕ハッカーだ。

フェニックスはコードネームで、本名の鳳凰院さんって呼ぶと怒る。

 

「アメリアスさんは?」

 

『彼女は最近見つけた怪しい組織に潜入中さ。連絡は取れないけど生きてる……と、思うよ』

 

アメリアスさんはフェニックスさんと同じ輝さんお抱えの凄腕エージェントだ。アメリアスはコードネーム。

この人は秘密が多い。本名すら俺は知らない。

女には秘密の一つや二つがあるものだとは聞いたがアメリアスさんは秘密だらけだ。

まぁ、一回しか会ったことないからそう思うのかもしれないが。

 

「あの人なら大丈夫でしょうね。で、要件はそのデュノア社の奴に気を付けろって事ですか?」

 

『ああ。あと一緒にドイツからも軍人が生徒として入るらしい。知ってると思っていたけど一応ね』

 

「了解しました」

 

『うん。それじゃ、おやすみ』

 

「失礼します」

 

そして通話を終了。

 

そっか、もうそんな時期か。

 

ドイツとフランスからの刺客に俺はため息をつく。

ラビアンローズは巨大とはいえ一企業にしては8個という破格のコア所有数を誇る。

輝さんが束さんを匿っていた事が関係しているのだがそれを気に入らない存在は多く、フランスのデュノア社もその一つだ。

 

「面倒だなぁ……」と呟きながら輝さんが覆面の襲撃者を一人で残滅していたところを見たことがある。

味方で良かった、輝さん。

 

ただでさえ面倒なイベントが更に面倒になると思えるだけで鬱になってくる。

 

俺は自室に戻るとシャワーを浴びて即寝た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あぁー……」

 

「今度はお前か」

 

「……あー?なんだ、鋼夜かぁ」

 

翌朝の寮の食堂で机の上で生気の抜けた鈴を見つけたので隣に座る。

一夏と何かあったのだろうか。

 

「どうした」

 

「……なんでもないわよ」

 

そう言って鈴はそっぽを向く。

 

「そうか」

 

なんでもないなら仕方ない。

俺はそう返し、朝食として頼んだサンドイッチを食べ始める。

たまごときゅうりがいい味出している。

 

 

「いやいや、そこはもっと詮索いれるところでしょーが……」

 

むくりと起き上がると鈴はずびしとツッコミを入れるがいつものキレが無い。

 

 

「リンー、持ってきたよー……って、如月くん!?」

 

声のした方を向けばそこには金髪ショートで碧眼に白い肌。

外人の生徒が両手に朝食が入ったトレイを持って立っていた。

 

「ありがとティナ。鋼夜、あたしのルームメイトのティナよ」

 

ティナと呼ばれた子からトレイを奪う鈴。

 

「えっ!?あっ、ティナ・ハミルトンです!カナダから来ました!」

 

鈴からトレイを奪われて現実世界に戻ってきたであろう彼女が慌て自己紹介をする。

 

「如月鋼夜です、よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします。如月くん」

 

「鋼夜でいいよ」

 

「わ、私もティナって呼んで下さい」

 

流れで握手をする。

……ハミルトンさんの顔が赤い。

 

 

「…………はぁ」

 

おおぅ。鈴が死んだ魚みたいな目で俺たちのやり取りを見ている。

 

 

「本格的に何があった」

 

「気にしないで。リンが勝手に自爆しただけだから」

 

「調子に乗るんじゃないわよティナ!……ねえ鋼夜。変な噂聞いてない?」

 

噂は聞いていないが心当たりはある。今日の朝、ここに来るまでにいつも以上の視線を感じた。

確かにこの時期は原作でそんなイベントがあった気がするが……なんで鈴が?あれは箒が原因だった気がするのだが。

 

 

「昨日の夜のことよ……」

 

ため息と共に鈴は昨日の夜に何があったのかを語った。

 

簡単に言うと

 

無人機のせいで約束がうやむやに→近いうちに学年別トーナメント?よし!それだ!→一夏の部屋へ乱入→一夏と話すうちにヒートアップし「優勝したら付き合え」と言う→翌日(今日)、何故か約束が噂として広がっていた

 

である。

箒じゃなくて鈴が原因になっているがだいたい同じだ。

 

 

「なんというか、頑張れ」

 

「あんたも関係あるのよ。噂では「優勝者は織斑くんか如月くんのどちらかと付き合える」って事になってるらしいから」

 

そう言い終えて再びため息をつく鈴。

 

「なんだよそれ」

 

俺のオマケ感が半端じゃない。

というか当の本人達が了承してない時点で色々問題があると思うんですけど。

 

しかもこの学年別トーナメントってタッグになるから益々問題しか残らないんだが。

優勝者が二人になるから、誰が一夏に告白するかで揉めるよね。

俺?ノーカン。俺は最初からいないものとする。

 

ていうか原作だと仮に優勝者が出たら一体どういう感じで処理しようとしたんだ。

原作は一夏一人だぞ。

絶対また戦争が起きたと思う。

 

 

 

さらなる騒動が起きることに呆れながら俺はサンドイッチを食べ終えた。

 

ハミルトンさんが横で「優勝……かぁ……」とか呟いていたが無視する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「いやいや性能的に見てミューレイだよ」

 

朝の教室。

クラス中の女子が手にISスーツのカタログを持ってわいわいと賑やかに談笑している。

 

「織斑くんと如月くんのISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

 

「あー。特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。えーと、もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

「俺のはラビアンローズの完全オリジナル製」

 

クラスメイトから質問が飛んできたので一夏と共に答える。

 

「私の出番ですね!」

 

すると山田先生が現れ、胸を張りながらスーツの解説をしだした。

先生。前にも言いましたがそのポーズはやめて下さい、何人もの女子が自信喪失しますから。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

 

もうGガンのモビルトレースでいいんじゃないかな(適当)

 

風雲再起の搭乗シーンって痛々しいよね。

もうやめて!お馬さんがかわいそう!って感じで。

 

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

そんなことを思っていたら織斑先生がやって来た。

織斑先生が来ただけでさっきまで騒がしかった教室が一気に静まり、皆が席に着いた。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人、気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

たぶん皆「いや構うだろ!」と心の中でツッコミを入れただろう。

そういえばIS学園の水着ってスクール水着だったな。

体操服はブルマだし。

まぁ、俺には関係ないけど。

 

「それでは山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

連絡事項を言い終えた織斑先生は山田先生にバトンタッチ。

山田先生は慌てて教卓に立つ。

深呼吸をしたのちに山田先生は話し始めた。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

「「「ええええええっ!?」」」

 

いきなりの転校生紹介にクラス中がざわつくが、俺はハァとため息をつくだけだった。

 

ああ、教室の外から感じる二人分の気配なんてとっくに気付いてるさ。

 

「あぁ、鬱だ」

 

ぼそりとそう呟くと、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「…………」

 

クラスに入ってきた転校生を見た瞬間、ざわめきが止んだ。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

転校生の一人のシャルル・デュノアはにこやかな顔でそう告げて一礼する。

礼儀正しい立ち振る舞いと中性的な顔立ち。鮮やかな金髪を首の後ろで丁寧に束ねている。

 

そして一番の特徴は『男子の制服を着ている』ということ。

 

 

玲児を金髪にして髪伸ばさせたらこんなになりそう。

あいつ元気かな。親が再婚したとか言ってたけど。

 

 

「お、男……?」

 

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入をーー」

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

あ、ヤバい、耳塞ごう。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁーーーーっ!」

 

俺が耳を塞いだ瞬間に歓喜の叫びという名のソニックウェーブが発生した。入学以来だ。

 

「男子!三人目!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「ICK×SYRR……いえ、KSRG×SYRRからの大団円も……」

 

 

もうやだこのクラス。色んな意味で。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

先生方が言ってようやくしずまる。

 

残ったのは、輝く銀髪を腰近くまで下ろしている赤目の少女。

左目に黒い眼帯をつけている。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

いきなり織斑先生へ敬礼するラウラなんとかさん。その行動にクラス全員がぽかんとしている。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

そして織斑先生へまた敬礼するとこちらへ向き直る。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「……え、以上、ですか?」

 

「以上だ」

 

ボーデヴィッヒはこれ以上話すことはないと言った感じで再び口を閉ざした。

 

はい、どこからどう見ても軍人ですありがとうございました。

山田先生もお疲れ様です。

それと、少しの間とはいえボーデヴィッヒと一緒に居たデュノアに同情する。

 

 

と、ボーデヴィッヒがこちらに気付いてツカツカとやってきた。

あー、このイベントね。

 

 

ボーデヴィッヒは俺と一夏の席の間に来ると俺と一夏を見比べ、口を開いた。

 

「どっちが織斑一夏だ」

 

なんでやねん!憎い相手なら顔くらい覚えとけよ!

 

「一夏はあっち」

 

というツッコミを飲み込み、俺は素直に答えた。

 

俺の言葉を聞いたボーデヴィッヒさんは一夏をロックオン。

特に理由のない平手打ちが一夏を襲う!

 

ボーデヴィッヒさんはそのまま右手を振り上げてーーーー

 

「ストップ」

 

一夏に振り下ろされる前に俺はその手を掴んだ。

右手を掴まれたボーデヴィッヒは俺を睨みつける。

 

「失礼。お前、いま何をしようとした?」

 

「離せ、不愉快な奴め」

 

「だから失礼だと言っている。で、俺の質問に答えろ」

 

「……私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

一夏を睨みがらそう宣言したボーデヴィッヒは掴まれた腕を無理やり振りほどき、勝手に後ろの席へ向かって着席した。

そして何事もなかったかのように俺も自分の席へ着席した。

 

後に残ったのは固まったままのクラスメイト達。

 

 

「あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

織斑先生が手を叩いて行動を促してやっとみんなが動き出した。

 

 

 

はぁ。予想してたとはいえ面倒な事になりそうだ。

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺は金銀の転校生を見ながら再びそう呟いた。

 




学年別トーナメントとか、実際優勝者いたらどうなってたんだろう
まぁ二人一緒に告白しようが片方蹴落として告白しようが一夏の「いいぞ、買い物か?」で撃沈するのは確定ですが


IS関係のスレ見てると一夏がホモとしか思えなくなる不思議
なんjの人気投票で一位とかICKさんなにやってんすか


TF6のシェリーが鬱ルート過ぎて泣ける
やっぱりヒロインは龍可だね
アキ?あっちでナオミと開花が待ってるよ

TFはバーンが強いってハッキリわかんだね
でもセットした罠カードを勝手に使うCPUは絶許

TFの二次書きたくなってくるヤバいヤバい……

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