神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

30 / 70
この話を読んだあと、てめーは「これが言いたかっただけだろ!」と言う!


ツッコミ炸裂の第29話

「なぁ鋼夜、シャルル。一緒に昼を食わないか?」

 

「いいの?」

 

「ああ、いいんだよ。シャルルの歓迎会も兼ねてな。鋼夜もいいだろ?」

 

「……ああ」

 

午前の授業が終わり、昼休みになった時に一夏に昼を誘われた。

考えごとをしている俺は一夏に生返事で返す。

 

 

 

シャルル・デュノア。

中性的な容姿にこれまた中性的な声。高貴な雰囲気のある仕草などが特徴の三人目の男性IS操縦者。

 

だが女だ。

 

むしろ女よりも女らしい。

 

だが女だ。

 

男の制服が似合っている。

 

だが女だ。

 

その立ち振る舞いはまるでいい育ちの御曹司のよう。

 

だが女だ。

 

シャルル目当ての女子が騒がしいな……。

 

だが女だ。

 

「僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから」

 

だが女だ。

 

今の台詞を聞いた女子の一部が失神した。

 

だが……女だ。

 

 

 

 

いや、もうね、我慢の限界。

午前中だけで何回シャルルにツッコミを入れそうになったか。

 

俺の前世の知識の有る無しに関わらずツッコミ所が多すぎる。

 

 

まずこいつは自分がスパイだという自覚が無い。

しかも自分が男として潜入してるのをいちいち忘れるなど論外だ。

 

あと外見。

ISスーツを改造してサラシにしてたようだが胸が無いだけで誤魔化せると思うなよ。

もう高校一年だぞ。色々成長する時期だぞ。

この時期で喉仏が無いのはあり得ない。あと声も高い。

声変わり前ってレベルじゃねえぞ。

 

 

まぁ、これらも重要なファクターではあるのだが一番のツッコミ所は経歴である。

 

シャルル・デュノアは三人目のIS操縦者にしてラファールを生み出したフランスのデュノア社の社長の息子にしてフランス代表候補生である。

 

三人目のIS操縦者。

これは二人目がいたんだから三人目がいてもおかしくないと思えるから今は置いておく。

 

次にデュノア社の御曹司。

ラファール・リヴァイヴという名機を生み出したデュノア社だがラファールは第二世代。

第三世代へ移行する各国にフランスは付いていけず、デュノア社もこれにより数年前から経営不振に陥っている。

これは企業間の活動に触れる機会の多い人なら誰でも知っている。

 

……男性操縦者は貴重である。

俺を迎え入れたラビアンローズは売り上げが格段に伸びたと輝さんは言っていた。

印税で俺の口座もバグったゲームの所持金みたいになった。

 

それを考えると「シャルルは偽物なんじゃない?」という考えも出てくる。

それに経営不振のデュノア社がいまさら「三人目」を発表するのもおかしい。

デュノア社はなりふり構っていられないのだ。俺と同時期に発表されるならまだしもいまさら三人目を発表するなど、むしろ胡散臭い。

 

トドメは「代表候補生」という肩書きだ。

代表候補生なんて数ヶ月でなれるものじゃない。天才肌の鈴でさえ一年はかかっている。

 

プレミアを付けるため?一夏より先に発見されたシャルルはデュノア社が温めてきた秘密兵器?

 

それこそおかしい。

デュノア社はわざわざシャルルを温める必要がない。シャルルの存在をさっさと発表すればいい。

「世界初の男性操縦者」という肩書きだけでお釣りが帰ってくる。

 

俺と同時期に発見されたシャルルは超天才で瞬く間に代表候補生レベルに成長した?

それこそ馬鹿らしい。

 

 

……これら全部を合わせるとシャルルを「超天才の三人目」と考えるより「男装したデュノア社の工作員」と考える方が自然である。

 

 

うん、完全に代表候補生って肩書きいらないよな。

これが俗に言う死にスキルか、まさか現実で見る事になろうとは。

 

 

ていうかデュノア社もよくこんなバレバレの工作員を送ってきたな。

シャルルがバレたら一巻の終わりだぞ?

しかもシャルルはフランス代表候補生だからフランス政府も連帯責任だしIS学園に入学しちゃったからIS委員会にも責任行くんじゃない?

 

素晴らしい芋づる式だ、この世界の大人はアホしかいないのか。

 

 

 

大人といえば織斑先生あたりなら余裕でシャルルに気付きそうなんだがなぁ……。

まさか見逃してる?

 

……そうか、シャルルがIS学園にすんなり入れたのは政府や委員会の中に協力した奴が居るからだろう。

不用意にシャルルを摘発すればそいつらを刺激して面倒ごとになるから、か。

 

なるほど。

藪蛇ならぬ藪バジリスクか。

……シャルルは放置してもいつかボロを出して勝手に自滅するだろう。

放置して問題無いならわざわざバジリスクを呼ぶことはしないか。

織斑先生ならバジリスクくらい余裕で倒せそうだけども。

 

 

 

「……鋼夜?鋼夜!」

 

「ん!?」

 

「どうしたんだよボーッとして。昼にしようぜ」

 

誰かに呼びかけられ、意識を現実へ戻せば目の前に一夏が。

考え事をしている間に昼食の準備が出来たらしい。

 

「すまん、考え事してた」

 

素直に謝り辺りを見回す。

 

俺たちは屋上に来ていた。

円テーブルにイス完備で季節の花が咲く花壇と庭園を思わせる石畳が敷き詰められている。

ていうかまんま庭園。

 

次にメンバー。

弁当が入っているであろう包みを持った箒。

酢豚の入ったタッパーを持った鈴。

笑顔でサンドイッチ入りのバスケットを持ったセシリア。

困惑顔のシャルル。

修羅場に気づかない一夏。

 

よし、いつも通りだな。

 

 

「ほら、鋼夜にもあげる」

 

と、鈴が酢豚入りのタッパーを渡す。

鈴は俺の右隣に居たので手渡しだ。

白米は無いのか白米は。

 

「鋼夜さんも、おひとつどうぞ」

 

今度はセシリアがサンドイッチを勧めてくる。

俺は笑顔でそれを受け取り、最後の最後まで食べないと決める。

一夏は恐らくセシリアの料理を知らないので犠牲になってもらう。

 

 

「うぐっーーーー!?」

 

「い、一夏!?」

 

噂をすればなんとやら。

セシリアから受け取ったサンドイッチを一口食べた一夏。

目は白黒し口元を押さえ顔は青ざめ脂汗をかいている。

……本格的に食べないで良かった。

 

「ど、どうですか一夏さん?」

 

「あ、あぁ。……美味しいよ」

 

なんとか笑顔を作ってそうセシリアに答える一夏。

それを聞いたセシリアは顔を綻ばせる。

 

「うわぁ……」

 

「うむ……」

 

「あはは……一夏も大変だね」

 

鈴、箒、シャルルである。

三者三様の反応を示しつつ、彼女らは内心で一夏に手を合わせているだろう。

 

 

「……一夏」

 

「お、箒の弁当か?ありがたいな!」

 

おずおずと差し出した箒の弁当を嬉しそうに受け取る一夏。

まぁさすがにアレの後だからな……。

 

弁当の中身は鮭の塩焼きに鶏肉の唐揚げにこんにゃくとごぼうの唐辛子炒めなどなど、バランスのいい美味しそうな献立である。

 

「ありがとな箒」

 

「あ、あぁ…………どういたしまして」

 

一夏の笑顔を受けた箒は赤くなり、小声で返事をした。

普段のギャップと相まって可愛く見える。が、肝心の一夏は弁当に夢中で気付いていない。

一夏死すべし。

 

「お前にもあるぞ」

 

と、箒が一夏のよりは少し小さいが弁当の入った包みを渡してきた。

 

「残り物になってしまったが……」

 

「いや今ちょうど白米食べたかったんだよ、ありがとう」

 

「ちょっと、あたしの酢豚にケチつける気?」

 

「白米くらいつけろ」

 

鈴が「なによー!」とか言ってきたが無視して貰い物の昼食を食べることにした。

途中で一夏と箒が「はい、あーん」をしたりセシリアがそれに嫉妬してサンドイッチを全部一夏に食わせたり「僕、来て良かったのかな」と呟いた同じくアウェーなシャルルと少し話して昼は終わった。

俺が貰ったサンドイッチ?セシリアが一夏に迫った時にこっそりバスケットに戻した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………」

 

放課後。

俺は一人でアリーナへ向かっていた。部屋に四天に使う荷物を取りに行ったためだ。

一夏たちは先に行っており、俺も誘われたのでアリーナへ向かっている。

 

「なぜこんなところで教師など!」

 

「やれやれ……」

 

近道をしようと校舎裏を通るルートを通ろうとした時だった。

聞き覚えのある声が響いたのでそちらの方へ行ってみる。

 

そこにはボーデヴィッヒと織斑先生がいた。

あ、確かこんなイベントあったな。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

 

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

ボーデヴィッヒは声を荒げるが織斑先生は目を細めるだけだった。

 

「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」

 

あ、それ同意。

織斑先生って教師より隊長の方が似合う。性格とか色々考えても。

まぁ、本人が教師したいって言ってるから別にいいじゃん。

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒など教官が教えるにたる人間ではありません」

 

「なぜだ?」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなどーー」

 

「そこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ……!」

 

ボーデヴィッヒの言葉を遮る織斑先生。言葉の一つ一つに凄味と覇気が含まれている。

 

仕方ないね、だって日本は平和の国だし。

……いや、ボーデヴィッヒの言う事も一理あるけどね、だからこその織斑先生じゃないの?そういう未熟な人を導くのが。

ていうか思いっきりドイツに勧誘してるな。学園の特記事項仕事しろ、国の介入はアウトじゃないのか。

 

 

「少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は……」

 

ボーデヴィッヒは言葉を発しようとするが言葉にならない掠れた声だけが出ただけで、織斑先生に背を向け早足に去っていった。

 

織斑先生ー。もうちょっと優しい言葉をかけることは出来ないんですかね?

 

「そこの男子。盗み聞きか?異常性癖は感心しないぞ」

 

あらら、バレてる。

俺は隠れるのを止めて校舎の陰から出る。

 

「いえ、通りすがれるような雰囲気ではなかったので」

 

「私は別にそれで良かったんだがな」

 

いいのかよ。空気ぶち壊して良かったのか。

織斑先生ははぁ、とため息をつくとこちらをチラリと見る。

 

「まぁ、見て分かると思うがあいつはついこの間まで軍に居たんだ、この状況に慣れていないだけだ」

 

「いや、そんなレベルじゃないですよねアレ。それにあの人、織斑先生以外の言う事を聞かないと思うんですけど」

 

「仮に私がラウラに「お前らと仲良くしろ」と言う。確かにラウラは私の言葉に従うだろうが、それだけだ。あいつはいつまでも私に頼りっぱなしで自分で知ろうとしない、悪く言えば成長しない」

 

「……なるほど」

 

要約するとボーデヴィッヒは織斑先生離れしろ、と。

 

「まぁ……ラウラの事を頼んだ。あいつは悪い奴ではないんだ。……ではな。私は仕事が残っている」

 

それだけ言うと織斑先生は踵を返し、去っていった。

なるほど。厳しい口調の裏にはそんな思いがあったのか。

 

 

 

……………………ん?あれ?

ひょっとして俺いま厄介事押し付けられた?盗み聞きの罰なのか?

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺は誰に言うでもなく、口癖となったその言葉を呟くのだった。

 




鋼夜のツッコミ炸裂
このツッコミはずっと作者が思っていたことでもあります
……別にシャル嫌いじゃないですよ?


ISの9巻買いました
カラーページだけでお腹いっぱいになりました
で、他の脇役の挿絵はまだですか?(真顔)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。