神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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新年あけましておめでとうございます
この作品共々、今年もよろしくお願いします


サプライズ告白な第4話

夏休みも終わり、新学期を迎えた。

田んぼの稲も緑から黄金色になり、赤とんぼがそこいらに飛ぶようになってきた秋頃の季節。

数字にするなら9月18日。

特別、今日の学校は何時もと変わらない一日だった。

 

 

「鋼夜ー!学校終わったら遊ぼうぜ!」

 

「泰河の家に集合な!」

 

「分かった」

 

 

部活の剣道は全国大会優勝という有終の美を飾り、部長の引き継ぎも終わったため放課後は基本的に遊んでいる。

 

この時期ならそろそろ進路を決める頃だが、俺も玲児も泰河も近くの公立高校へ行く事にしている。何気に玲児も泰河も勉強はできる方なので、このままでも合格できるラインではある。

 

 

「如月、ちょっといいか?」

 

先に教室から出て行った二人を追いかけようと荷物を纏めていると箒さんから声を掛けられた。

 

「ん?なに?」

 

「少し、時間あるか?」

 

なんだろう、と思い顔を上げて箒さんを見やれば何時もとは違う真剣な雰囲気を感じた。

 

「ああ、構わない」

 

二人を追いかけたいところだが、多少遅れても問題は無い。

それに、彼女は恐らく真面目な話をするつもりなのだろう。

 

「ここでは話しにくい。屋上に行こう」

 

 

俺は箒さんと一緒に屋上へ向かった。

 

 

「なんだ?」

「つ、ついに!?」

「夕焼け、放課後、屋上。後は分かるな?」

「いいか?二人の邪魔をするなよ?絶対だぞ?」

 

 

……教室を出る際に大量の野次馬が好き勝手言っていた。親友二人には説明したが、こいつらは依然として勘違いしたままだ。

いや、ねーから。告白とか一番無いから。

 

 

 

 

「もう秋か、時間が経つのは早いな」

 

放課後の屋上。転落防止のフェンスに手をかけて夕焼け空を眺めながら箒さんは呟いた。

その姿はなかなか様になっている。

 

「で、何の用だ?」

 

そんな中で俺はさっさと要件を述べるよう箒さんを促す。

健全な青少年であれば、こんなギャルゲーのワンシーンみたいな光景に胸をときめかせるのだろうが生憎と俺は色々ワケありの人間。トキメキのトの字も無い。

 

「うむ。……私は近い日に転校する。お前には色々世話になったからな、先に伝えて起きたかった」

 

その言葉で全てを察する。

わざわざ先に伝える事か?と思うが彼女は重要人保護プログラムで守られている人間。転校するにしてもいきなり転校した方が都合がいいのだろう。

 

「そっか」

 

「ここでの生活は楽しかった。ここの生徒は皆いい人ばかりだ。……私は人と接するのを忘れていた。お前がいなければずっとあのままだっただろうな」

 

ああ、ずっとぼっちだっただろうな。

と言うほど俺は恥知らずではない。

その言葉を飲み込む。

 

「いいや、それはお前自身の頑張りのお陰だ。俺はきっかけを作っただけさ。転校先でも上手くやれよ」

 

俺の言葉に箒さんは微かに微笑む。

自然と出た笑みなのだろう。

 

「ああ。ありがとう」

 

そして俺に向けて頭を下げた。

 

 

「おう。織斑一夏との結婚式には呼んでくれよ?」

 

「な、な、なななななな!?」

 

いい話で終わらせるのも面白く無いので箒が頭を上げた瞬間に爆弾投下。

みるみるうちに彼女の顔が真っ赤になっていく。

 

「気付いて無いと思った?正直バレバレだったぞ」

 

あぅあぅ、と言葉にならない呻きを上げる箒さん。かわいい。それなら一夏もイチコロだと思う。

 

「そ、そんな関係ではない!そんな事思っていない!」

 

大声で否定する箒さん。その反応自体が既に肯定の意を成しているんですがそれは。

 

「ほう、そうかそうか。……なあ、箒さんや。今、俺たち二人って周りの奴等からは出来てるって思われてるらしいよ?」

 

俺の言葉に反応したのか、屋上の入り口からガタッと音が鳴る。いや、気付いてたよ?クラスの奴等が付けてる事くらい。

 

「そうなのか?勘違いも甚だしいな」

 

「……もしここで俺がお前に告白したらどうする?」

 

意地悪な笑みを浮かべて箒さんに問いかける。

箒さんは最初、訳が分からないという顔をしていたが理解が及んだのか、また顔をみるみる赤くして……

 

「ば、馬鹿者が!」

 

殴り掛かってきた。

うん、色々あって頭が処理落ちしかけてるんだね。

 

「あらー、フラれた。じゃあ最後に俺からのお節介。自分の気持ちには素直になろうね。でないと愛しの一夏くんは落ちないと思うよ」

 

箒さんの右ストレートを一歩後退する事でかわし、箒さんに一言告げて回れ右。そして屋上を後にする。

 

 

「……すまない」

 

 

屋上から出る前に、箒さんのそんな呟きを聞いた気がした。

 

 

 

 

「で、なに盗み聞きしてんだお前ら?」

 

「え?…………アッー!」

 

勿論、ストーカー共への制裁も忘れずに。

 

 

 

 

 

 

数日後、箒さんは転校した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

箒さんが転校して何日もの時が過ぎた。

季節は秋から冬に変わり、新年も明けた。

数字にするなら2月20日。

 

 

「面倒だな、勉強」

 

「全くだ」

 

「これ終わったらゲームしようぜ」

 

俺、泰河、玲児の三人は受験が近いということもあり、放課後に玲児の家で勉強会をしていた。

しかし三人で受ける地元の高校は俺たちの素の実力でもB判定以上は取れるため、あまり勉強するムードにはならなかった。

 

(それに、俺は二人と一緒には行けないだろうしな)

 

そう。受験シーズンの今、そろそろ織斑さん家の一夏くんがやらかしてくれる時期なのである。

どうやって原作に関わるかは分からないが、向こうもそろそろ仕掛けてくる筈だ。

 

「よし、ゲームしようぜ」

 

「じゃあ今日はパーティーするか」

 

「お前にスターは渡さねぇからな」

 

勉強を止めて三大友情破壊ゲームの最後の一角である某パーティーゲームをセットしようと玲児がテレビに電源を入れた時だった。

 

 

『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』

 

何処かのチャンネルに繋がっていたテレビだが、玲児が表示を入れ替える前に画面は今までやっていたドラマから緊急のニュース放送に切り替わった。

 

「なんだまた地震か?」

 

「アメリカでテロか?」

 

「…………」

 

上から玲児、泰河、俺。

三者三様の反応を示しながらテレビを見つめる。

 

『たった今入った情報によりますと、世界で初めての男性IS操縦者が日本で見つかったそうです!詳しい情報が入り次第、またお伝えします!』

 

やはりというか、なんというか、緊急ニュースの内容は俺の予想通りだった。

 

「は?」

 

「これ、マジ?」

 

「ところがぎっちょん、現実だそうです」

 

 

上から玲児、泰河、俺である。

 

この日は結局ゲームをせずに、三人でもしISを動かせたらどうするか?という話題で盛り上がった。

 

 

……正直胸が痛かった。

 

 

 

 

玲児の家から帰り、再びニュースを眺めると三日後に全国の男子学生を対象とした一斉適性検査を実施するという発表があった。

 

「なるほど、これが神様の言っていた……マジで強制イベントかよ」

 

しかも政府直々に行うとの事。

 

断る理由が無いし、政府が関わっている以上ズル休みという手は使えないだろう。まさか「動かせるから、行きません」と言う訳にもいかないし……。

 

 

あれ……俺、詰んだ?

原作の魔の手からは逃れられぬのか?

 

 

そして俺は考えるのを止めた。

 




原作入り待ったなし
そして主人公の苦痛が始まる

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