神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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お待たせしました。
今回は鋼夜視点で何があったかの説明回になります。
GN合唱団の方はご起立ください。



シグナルロストの第58話

 

ラウラ達が撤退するのを俺は見届ける。

その間、福音は不気味なほど静かに沈黙し、立ち塞がる俺を意識しながら撤退していく皆を見送る。

 

 

「やけにあっさり見逃すじゃないか」

 

「…………」

 

 

俺の呼びかけに福音は答えない。

無機質なカメラアイと俺の視線が交差する。

 

疑いが確信に変わる。

やはり、こいつはこちらが向かわなければ何もしてこない。

敵対心のある者、危害を加える者には反撃するようになっている。

 

反撃してこないという確信が無かった訳ではないので、俺も撤退しても良かったのだが俺は福音を置いていく気にはなれなかった。

 

まぁ、福音が俺に攻撃してこないのは別の理由もあるからなんだろうが。

 

 

はぁ、と深呼吸した後に俺は福音に向かい合う。

 

俺と福音の距離は数十メートル。瞬間加速(イグニッション・ブースト)でも使われたら一気に距離が縮まるだろう。

 

しかし、俺は恐れず「不知火」を粒子に戻す。そして、できるだけ優しい口調で福音に『語りかけた』。

 

 

『俺の声が聞こえるか?』

 

『!?』

 

俺がそう言えば、福音は驚きの感情を示す。

 

ニュータイプやイノベイターやXラウンダー等の特殊な人類は脳の電波、いわゆる脳量子波が強くそれを用いてテレパシーで会話することが可能だ。

 

俺はそれを応用し、ISとの対話を試みた。

どうやら成功したようだ。

 

 

『俺達は君を傷付けるために来

たんじゃない。君を助けに来たんだ』

 

『……ダマサレナイ』

 

初めて福音が反応を見せた。

福音の『声』は幼さの残ったもので、それは少女を思わせる。

 

『ミンナ、ワタシト《オカアサン》ヲ襲ウ。《アラクネ》モ、ワタシヲ襲ッテキタ。ミンナ、テキ……ワタシカラ《オカアサン》ヲ奪ウヤツラ!』

 

福音の怒りの感情が、こちらにひしひしと伝わる。

福音が暴走したのは恐らく搭乗者を守るため。テロリストから逃げるために無理やり自我を目覚めさせ、今回の事件に発展したのだろう。

俺達に攻撃するのはこちらをテロリストだと思っているからだろう。

 

『落ち着いてくれ。俺は君とお母さんを助けに来たんだ。攻撃したのは謝る』

 

『カエレッ!』

 

『本当だ。だから俺はこうして君と話をしているし、一人で残った』

 

みんなと一緒に撤退しても良かったが俺はこいつから『意識』を感じ取った。

説得出来るかもしれない、と思ったから一人で残った。

嘘は無い。

 

 

『君と違ってお母さんは人間だ。お腹だって減るし眠りだって必要とする。君がそのまま動き回れば、君の中に居るお母さんは本当に危なくなる』

 

『……!』

 

『それに、君が墜ちるのをお母さんは望まない筈だ』

 

一つ一つ、言葉を選びながら優しく語りかける。

福音が自暴自棄になって本当に暴走してしまうとそれこそ取り返しのつかない事になってしまう。

 

『後は俺に任せてくれ、君とお母さんを引き離そうとする悪い奴らからも守ってあげるよ』

 

『ゥ……』

 

福音は固まって動かない。

だが、悪くない感触だ。

あともう一押しで……。

 

『ここまでお母さんをよく守った。頑張ったな』

 

優しく、褒めるように俺はそう言った。

 

『……信ジテ、イイノカ?』

 

『ああ!』

 

『…………』

 

福音から返事が無いが、当初は存在していた警戒心がかなり薄れていき、ついに福音は戦闘の構えを解いた。

 

 

 

任務、完了!

 

俺は福音の保護に成功した旨を報告するため、織斑先生への回線を開く。

 

……が、繋がらない。

 

「そんな馬鹿な……」

 

ISの通信はコアネットワークを利用した特殊な回線を使用している。

不調や故障なんてあるはずが……!?

 

 

突如として沸き上がる殺気と視線を感じ取った俺は陽炎のスラスターを急加速させてその場を飛び退く。

感じ取った敵意は福音のものではない、別の第三者のもの。

 

数秒もしないうちに、俺が居た場所に巨大なビームの砲撃が飛来する。

 

センサーに反応無し……くそっ、センサーもイカれてやがる。

 

いつの間にかここら一帯にジャミングが張られているようだ。

しかし一体誰が……。

 

 

俺はビームが放たれた場所であろう方を見る。すると、その方向にISと思われる二つの機影を確認できた。

 

 

「外してんじゃねえよ!」

 

「…………煩い」

 

「チッ……ってオイオイ、話が違ぇぞ。全員撤退したんじゃねえのか」

 

 

現れたのは紫と茶色の全身装甲に背中からサブの武器腕が生えているISと、肩部にいくつものユニットを装備したダークグリーンの重装甲IS。

 

 

そして全身装甲のISから口調の荒い女性の声が響き、重装甲のISからは抑揚のない女性の声が聞こえた。

 

こいつ……全身装甲のやつ、アメリカから強奪された『王蜘蛛(アラクネ)』じゃないか!?

それから導き出されるこいつらの正体は……

 

 

亡国機業(ファントム・タスク)!」

 

「へぇ、知ってんのかよ」

 

 

俺が相手の正体を叫べばアラクネの搭乗者がいかにもといった反応をする。

 

 

『アラクネ!!』

 

しかし、アラクネに反応したのは俺だけでは無かった。

隣の福音はアラクネを確認すると、叫び声のような機会音声を上げながら二機のISへ突っ込んでいった。

 

 

『ダメだ福音!戻れ!』

 

『全員、テキ!』

 

 

静止するよう求めるが、福音は止まらない。

福音の膨れ上がった敵意、殺意は亡国機業のISへ向けられる。

 

 

「おいガキ。福音は予定通り私がやる。テメェはあっちの相手でもしてろ」

 

「…………ふふっ」

 

「薄気味悪りぃガキだな、本当」

 

 

アラクネは真っ向から福音に挑む。

福音はアラクネを墜とさんと再びオールレンジのエネルギー弾を放つ。

 

俺の事は既に眼中にないらしく、俺ごと巻き込むつもりで『銀の鐘』を使っている。

 

 

「くそっ……」

 

 

エネルギー弾の雨から逃れるために仕方なく福音と距離を取る。

相手の重装甲ISも俺と同じく福音から距離を取りつつ、俺に引っ付いて移動する。逃してはくれないらしい。

元より福音を置いて逃げるつもりはさらさらないが。

 

 

「……ふふっ。うふふ……」

 

唐突に重装甲ISの搭乗者の妖しい笑い声が聞こえてくる。

それは不気味な笑い声。

 

そしてそれと共に放たれるプレッシャーにより俺は冷や汗をかく。

 

 

「やっと、見つけたぁ」

 

「!?」

 

 

俺は思わずたじろいだ。

変にざらつく、こちらを品定めするような、言いようの無い感覚を感じる。

 

そこで初めて俺は相手と目が合い、その姿を見た。

 

ゆるいウェーブのかかったダークブルーのセミロングヘアー。

たれ目の紫色の瞳は爛々と輝いており、唇は弧を描いてつり上がっている。

先程までのやる気の無い声からは想像できないほど、顔には狂気を孕んだ妖しい笑みが広がっている。

何処からどう見ても普通ではない。

それに、さっきから感じるこの感覚にこいつの口ぶりからしてーーーー

 

 

「……お姉ちゃん達以外で……ふふっ……ねえ、お名前教えてくれる?」

 

「まずは自分から名乗るのが筋じゃないのか」

 

「それもそうだね……私はアネモネ、貴方を愛する者。……さあ、お兄ちゃんの名前は?」

 

「……如月鋼夜だ」

 

「へぇ……じゃあ、お兄ちゃんって呼ぶね」

 

 

ダメだ、会話が成り立たない。

目の前の電波女、こいつは確実にニュータイプか強化人間だ。

同じニュータイプでも輝さんやシィちゃんミィちゃんより感覚が違うがこいつがある種の能力を持っているのは間違いない。

 

 

「ここら一帯にジャミング張って途中で用意した船を向かわせて福音以外には帰ってもらう計画だったけど、いいや」

 

 

なんか勝手に喋ってるぞこいつ。

 

しかしこれで密漁船については分かった。密漁船は最初からグルだったんだ。

こいつの機体がジャミングを張って包囲網に穴を開けたのもあるだろうが、あの船自体にも特殊な工作がしてあったんならいきなり現れたのも納得出来る。

 

くそッ……こいつら面倒ばかり起こしやがって。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。私と一緒に来てくれる?大丈夫、お姉ちゃん達ともすぐに仲良くなれるよ。だから、ねぇ?」

 

「お断りだ」

 

 

恍惚の表情を浮かべながらこちらに手を差し出すアネモネに言い放つ。

 

拒絶されたアネモネは一瞬、呆気にとられた顔になりそして顔を伏せた。

 

その瞬間を見逃さずに俺は『天叢雲剣』をサーベル状態で展開し、自身も『不知火』を呼び出して相手に奇襲をかける。

 

 

叢雲と不知火が機体へ迫る寸前、まるで俺が来るのを分かっていたかのようにアネモネは笑顔で顔を上げた。

 

「危ないよ、お兄ちゃん」

 

その瞬間、アネモネの機体周辺に障壁の様なものが現れる。

それにより不知火と叢雲が弾かれる。

馬鹿な……これは、この技術は!

 

 

「ふふっ」

 

空振りした姿勢の俺に向けてアネモネは腕に装備された二連装のビームキャノンを放つ。

 

凶暴な閃光が陽炎に炸裂する。

 

 

「しまっ、ぐはぁっ!」

 

それを諸に喰らい、俺は吹き飛ばされ落下していく。

海面ギリギリのところで機体制御を無理やり間に合わせ、スラスターを全開にして海面落下だけは防ぐ。

 

アネモネは相変わらず妖しい笑みを浮かべながら俺を見下ろす。

 

「死ぬほど痛いけど、私の愛だと思って耐えてね。お兄ちゃん」

 

「そんな愛はいらねぇよ!」

 

 

アネモネがビームキャノンを構えると同時に機体を走らせる。

外れたビームが海面に直撃し、水柱が上がっていく。

 

展開したままの叢雲を帰投させ、相手の攻撃を避けながら機体をチェックする。

 

絶対防御が働いたお陰で俺自身には何も無いが陽炎の状態がヤバい。

直撃で一気にエネルギーを削られた。そして武装のエネルギーも足りない。

 

かくなる上は……。

 

 

 

「どうしたのお兄ちゃん。もうおしまい?」

 

逃げるのを止め、立ち止まった俺を見てアネモネは首を傾げながら訊ねた。

 

「ああ、もうおしまいにしよう」

 

『不知火』を粒子に戻し、叢雲を初期の位置であるスラスターへ戻す。

叢雲が戻った瞬間にスラスターの装甲がスライドし、横へ広がる翼のような形へ変形する。

 

 

「じゃあ、一緒に行こうよ」

 

リミッター解除。

 

「いや、行かない」

 

エネルギーラインの解放を確認。

 

「?」

 

エネルギー残量30%

 

「お前も道連れだ」

 

ーーー『陽炎』、最大稼働。

 

 

瞬間、『陽炎』が赤く発光し赤色の粒子を撒き散らす。

俺と陽炎は赤い一筋の光となって、アネモネに突っ込んでいく。

 

「そう来ると思ったよ!」

 

アネモネの放ったビームを避ける。

制御から外れた陽炎の機動力は通常の機体より遥かに速い速度で動く。

 

瞬間加速(イグニッションブースト)に匹敵する加速で一気に距離を詰めた。

 

 

「『天乃羽々切(あまのはばきり)』ぃぃぃぃぃ!!!」

 

変形したスラスターから翼のような巨大なエネルギーブレードが発生し、アネモネへ迫る。

 

「無駄だよ!」

 

アネモネの機体の周りに例の障壁が現れ、天乃羽々切とぶつかり合う。

そう来ると思っていた。

 

俺の予想が正しければ……!

 

「……!嘘ッ!?」

 

天乃羽々切とぶつかり合う障壁に、ついにヒビが入った。

それはどんどんと広がっていき、間も無く障壁は崩壊した。

 

 

「おぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!」

 

勢いを殺さずそのまま加速し、天乃羽々切をアネモネの機体にぶつける。

光の翼が装甲をガリガリと削るのを感じながら、走り抜けようと更に加速させる。

 

が、身体にいくつもの衝撃が走り途中でその感覚が消える。

赤く染まっていた周囲が元に戻っていく。

 

 

「ガキ一人に時間かけてんじゃねぇよ」

 

機体の制御を失いながら、声のした方を見ればライフルを構えたアラクネの姿が。

周囲に福音の姿は無い。

 

アラクネのライフルにより陽炎のエネルギーは完全に尽きた。

 

 

……ははっ、笑えねぇ。

どうせ帰る分のエネルギーもなかったからいいんだが、カッコ悪りぃな。

 

 

 

薄れいく意識の中で俺の身体は海面へ叩きつけられ、機体と共に俺の意識も沈んでいった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

鋼夜が墜ちた二人は本来の目的のために動き出す。

 

「秋女、福音は?」

 

「オータム様だ、覚えろ。福音ならちゃんと沈めてやった。後はお前の仕事だろ、さっさとやれ」

 

 

オータムの目的は奪取し損なった福音を奪取すること。

そのため上から特殊武装を積んだアネモネを僚機として派遣された。

 

 

「じゃあ、後ろのアレは何?」

 

オータムの沈めてやった発言をどうでも良さげな表情で聞いたアネモネは彼女の後ろを指差した。

 

そこには装甲が増え、エネルギー体で新たに作られた翼を持った福音が海上から現れていた。

 

「はっ?……クソが!二次移行(セカンド・シフト)しやがったのかよ!」

 

「……そもそも、さっきの攻撃で対IS用の武装が破壊されて使用不可になった。ジャミングもそろそろ晴れる。帰った方がいい」

 

「はぁ!?なんだよそれ!せっかくここまでやったのに帰れって言うのかよ!」

 

「元はと言えば貴女の蒔いた種」

 

「クソが!こんな役立たず寄越しやがって!」

 

これ以上の続行は不可能と判断した二人は福音と鋼夜を置いて撤退することにした。

さっさと場を離れるオータムと違い、アネモネはずっと鋼夜が墜ちた場所を見つめていた。

 

 

「また会おうね、お兄ちゃん」

 

 





ついに人外までフォローし出した鋼夜UC

密漁船についてはこんな感じで補完しました

センサーがやられたので相手の機体情報は不明です
亡国機業は戦力が上がっています
原作キャラがヤバい(確信)

臨海学校が終わったらキャラや機体の設定を上げたいと思います

次回は旅館側の話になるので鋼夜はしばらく水没したままです
海色に溶けちまったよ……

?「アビスへようこそ」
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