神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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逃れられぬ第5話

 

「あぁ、鬱だ」

 

やってきました、一斉検査。

 

俺、如月鋼夜は学校中の男子がひしめく体育館で一人ため息をついた。

 

政府が直々に行うと宣言した全国一斉検査。

俺は結局学校へ来た。休む理由が無かったからだ。

 

検査は一年からやるようで、俺たち三年の順番はまだである。

 

 

「元気ねーな、どうした?」

 

「授業潰れるんだし喜ぶところだろ?」

 

 

元気の無い俺の姿を確認したのか、玲児と泰河が近寄ってきた。

俺を心配する親友二人に「なんでもない」と返す。

 

しばらくすると、三年の順番になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

いよいよ俺のクラスの順番になった。

 

俺より先に受けた玲児は「残念だなー」とは口で言っていたがもともと本気にしていなかったようだ。

そして俺の名前が呼ばれた。

玲児が大丈夫なら俺も大丈夫だろ、という謎の自信を得た俺は腹をくくって向かった。

 

偉い人は言っていた。

なるようにしかならんさ、と。

 

 

場所は体育館横の武道場。

入って目に付いたのは、至るところにコードが繋がっているIS。

……?なんだこのIS?打鉄でもラファールでも無い?

しかしそのISに俺は見覚えが無かった。この世界に住んでいるためアニメに出た機体は勿論、第三世代前の機体だって見たことある。

しかし目の前の機体には全く見覚えが無かった。

 

(まぁ……関係無いか)

 

ISから意識を外して再び視線を動かす。

そしてコードの集まった先に手が置けそうな何かのタッチパネルを発見。置けそう、というよりここに置くのだろう。

そのタッチパネルの周りにはスーツを着込んだ女性に白衣を着た女性とうちの学校の教師が数人いる。

 

 

「如月鋼夜くんね?それじゃあ、そのタッチパネルに触れてちょうだい」

 

スーツの女性はこの作業の繰り返しに飽きたのか、面倒な感情を隠さず俺に言ってきた。

俺だって、出来れば貴女をそのまま退屈にさせときたいよ。

退屈にさせときたいよ。

 

言われるがまま、パネルに手を置く。

 

そして、キンッという金属音と共に頭に様々な情報が流れ込んでくる。

しばらくすると、それは収まったのでふと俺は辺りを見回す。

 

信じられないと言った顔で俺を見る者。手に持つ端末とISを見比べる者。まだフリーズしたまんまの者。

反応は様々だった。

 

それも長くは続かず、現状を理解すると皆バタバタと慌て行動し出した。

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

それを眺めながら、俺は口癖となった言葉を呟いた。

 

 

こうして俺は二人目の男性IS操縦者となった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あのあと、怪しまれるのを避けるためにさっさと教室へ返された俺は放課後に校長室へ呼ばれた。

親友二人には遊ぼうと誘われたが用事があると言って断った。

ちなみに泰河も玲児と同じくISは反応しなかったようだ。

 

 

担任に連れられ校長室へ入ると、校長室には俺の両親が居た。

 

「如月くん、そこに座りなさい」

 

両親の対面には校長先生と、検査場に居たスーツの女性が居た。

 

そして俺が来た事により話は始まったが、俺は半分は上の空だった。既に分かっていた事なのだから。

俺は「はい」とか「そうですね」など適当に相槌を打つだけ。

 

スーツの女性は政府の者であり、俺の身柄は政府で保護し、安全のため俺をIS学園へ入学させるらしい。

 

俺の両親も最初は「うちの息子が!」と喜んでいたが、重要人保護プログラムの話になると表情を強張らせた。

 

重要人保護プログラム。簡単に言うと、重要人の家族に被害が及ばぬように別の戸籍を作って全くの別人として生きてもらう事で保護するプログラム。

箒さんが受けていたプログラムだ。

 

両親と、離れ離れになる。

俺はふと、隣に座る父と母を見る。

この世界で、俺をここまで育ててくれた。俺の、この魂の本来の父と母とは違うが、同じくらい大切な家族。そう、家族だ。

改めて意識すると、目頭が熱くなってきた。人前だというのに、こんな年だというのに、涙が零れそうになる。

 

誰かが察したのかどうかは分からないが、話はここまでで終わった。

政府の人は名刺を渡して近いうちに連絡をするよう頼んできた。

 

 

校長先生や担任が何か言っていたが、聞こえなかった。

俺の頭の中は家族の事で一杯だった。

 

 

「ちょっとトイレ……」

 

「わかった、父さん達は車で待ってるからな」

 

一人になりたかった。泣きたかった。父さん達は察してくれたのか、何も言わなかった。

 

フラフラとした足取りで、近くのトイレへ向かう。

 

ドンッ!

 

「いてっ」

「あてっ」

 

トイレへ向かう途中の廊下の曲がり角で、誰かとぶつかったみたいだ。

お互いに尻餅をつく形で倒れた。

 

「だ、大丈夫です…か……?」

 

慌て立ち上がり、相手を起こそうと手を差し出すが俺の言葉は止まる。

 

「ん、だいじょぶだいじょぶ」

 

大丈夫と言いながら俺の手を握って立ち上がる目の前の彼女。

立ち上がったのに彼女は俺から手を離そうとしない。

 

「やっと目標(ターゲット)に会えたんだからねっ!ケガの功名ってやつかな?」

 

紫色のロングヘアーに不思議の国のアリスのような水色のエプロンドレス。そしてトドメは頭のメカメカしい兎耳。

 

「キミが……如月鋼夜くんだね?」

 

彼女は笑顔で語り掛けて来るがその目は決して笑っていない。

 

ISの生みの親にして天才にして天災。

篠ノ之束(ラスボス)が、そこに居た。

 




アニメだとただのアホのお姉ちゃんって感じだけど実際は色々ヤバいラスボス束さんの登場だよー

原作集めはじめました

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