神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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今回で福音編完結と言ったな、あれは嘘だ
次回で纏められそうに無いから分けます、申し訳ありません


報復出撃の第60話

 

 

ボロボロの状態で迎撃隊が帰還し、鋼夜くんの消息が絶えてからどれくらい経っただろうか。

 

始めは何も考えられず、ただ呆然と反応の無いブリーフィングルームのモニターを見つめていた。

 

我に返った私は織斑先生に、なんとか捜索を続けてもらうようお願いした。

でもアメリカからの介入があり、それは無理だと言われた。

 

 

……私は、動かない先生達を、鋼夜くんを置いてきた専用機持ちの子達を恨んだ。

でも、その憎しみは一瞬で直ぐに自責の念へと変わっていく。

 

何もできなかった私がこんなことを思うのはおかしい。

役立たずだった私が、彼女達を責める理由は無い。

 

自分がひどく惨めになっていった。

 

気付けば私は作戦室を飛び出し、整備ルームに来ていた。

 

「…………」

 

目の前の台座には、無人で展開したままのISがある。

打鉄弐式。私の、専用機。

 

私はディスプレイを展開して弐式のプログラムを編集する。

 

自分で助けに向かうためか、鋼夜くんと約束したからか、もしかしたら両方かもしれない。

 

何かに取り憑かれたかのように私は、打鉄弐式を完成させようと動いた。

 

必死に機体の各部のプログラムを調整し、パーツの調整も手にかける。

 

福音の件で一般生徒が部屋で待機しており誰も居なくなっているのが私にはちょうど良かった。

 

 

そして何時間も作業に没頭していた私に、教員からの呼び出しに気付いたのが数分前のことだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よし、全員集まったか」

 

 

ブリーフィングルームに集まるメンバーを見回した織斑先生がそう言った。

この場には織斑先生や山田先生を始めとする教員に、1年の専用機持ちの子達が集まっていた。

 

 

「たった今、アメリカより再び福音撃退の命令が下った。これより作戦の説明に入る」

 

織斑先生の言葉に、私は目を見開いた。

そして、自分がなぜこの場所に呼ばれたのかも理解した。

 

「福音の撃退には篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒの五人で当たってもらう」

 

呼ばれた五人が威勢のいい返事をする。

……えっ?私は?

 

「更識、お前にも後で別の任務を与える」

 

顔に出ていたのか、織斑先生は私の方を向いてそう言った。

分かっている。私が戦闘に参加できないことなんて、私自身が分かりきっている。

でも、複雑な気持ちだ。

 

 

「織斑先生、わたくしたちは既に受領したパーツを換装済みです」

 

「フッ、準備がいいな」

 

モニターに換装パーツを装備した四人のISのデータが表示される。

織斑先生はそれを見ながら、福音戦での作戦を伝えた。

 

「ボーデヴィッヒの長距離砲で遠距離から福音を狙撃。そして凰と篠ノ之が前衛として福音に向かい、オルコットとデュノアが前衛をサポート。ボーデヴィッヒは遠距離から砲撃を続けていけ。指揮はボーデヴィッヒに任せる」

 

それぞれの換装後のデータを見て下された作戦はシンプルな物だった。

 

 

両肩に砲門を搭載し、物理シールドを装備することで火力を得た《パンツァー・カノニーア》装備の『シュヴァルツェア・レーゲン』

 

ビットをスラスターにすることで多大な機動力を得た《ストライク・ガンナー》装備の『ブルー・ティアーズ』

 

実体シールドとエネルギーシールドをそれぞれ二枚ずつ装備し、防御力に特化した《ガーデン・カーテン》装備の『ラファール・リヴァイヴⅡ』

 

衝撃砲の砲口を増設し、炎を纏わせることにより威力、範囲を増幅させる《崩山》装備の『甲龍』

 

そして圧倒的なスペックと近接戦において無数の強さを誇る第四世代機の『紅椿』

 

確かにそれが一番適切だと私も思う。

 

 

「福音は現在ステルスモードに入っており、見つけるのが非常に困難だ。だが、どこぞの天災の協力によりその居場所が掴めた」

 

モニターが海図に切り替わり、中心に福音の居場所を表す赤い点とその地点の緯度経度が表示される。

 

「情報によると福音は第二移行し、能力が格段に上がっている。総員、心してかかれ」

 

「はい!」

 

五人のやる気に満ちた返事が部屋に響いた。

それを確認した織斑先生は、次に私も方を向いた。

 

「更識、お前の機体の『打鉄弐式』は動くか?」

 

「は、はい。打鉄のデータを使用すれば、一応は戦闘と操作は問題ありません」

 

その場合、スペックや性能は打鉄並みに落ちてしまう。

 

それに打鉄は防御型だが私の弐式は機動型。

動かせない、という訳では無いがどうしても操縦する上で違和感が発生してしまう。

 

 

「確か、弐式は打鉄の換装パーツも装備出来たな?」

 

「はい。弐式は打鉄の発展機で互換性があるので換装パーツは問題無く使用できます」

 

若干緊張しながら織斑先生の質問に答えていく。

織斑先生はなんでいきなり私の弐式の事を……?

 

「ふむ、充分だ」

 

織斑先生は私の答えを聞くと満足気な表情になると、機器を操作してモニターの表示を変更した。

 

海図が縮小され、福音の赤丸から少し離れた別の場所に青丸が表示され、その地点の緯度経度が表示される。

他の五人も何事かとモニターを見つめた。

 

「またどこぞの天災の協力によって、如月の居場所を突き止めることに成功した」

 

「!?」

 

織斑先生の言葉に、私だけでなく部屋の全員が反応した。

 

「如月の機体『陽炎』の反応が消えたのは恐らく搭乗者を守る絶対防御により保護機能以外の全てをカットした状態だからだと推測される。早く助けないと非常に危険だ。更識、お前には如月の救助を任せたい」

 

「は、はい!」

 

考えるより先に口が動いた。

 

 

「実習のために学園は『打鉄』の高機動パッケージ『風切(かざきり)』と緊急用の予備エネルギータンクを持ってきている。それを使え」

 

「分かりました」

 

「よし、では更識の準備が終わり次第に作戦を開始する!」

 

私を含めた六人の、やる気に満ちた返事が部屋の中に響いた。

 

 

 

 

私は急いで作戦室を出て、整備ルームへと向かう。

 

作戦室を出る際に「鋼夜を頼む」「鋼夜さんをよろしくお願いしますわ」「頼んだわよ!」「鋼夜のこと、お願いするよ」「嫁のことを頼む」と五人に言われ、恥ずかしい気持ちで顔を真っ赤にしながら「任せて」と宣言したのだ。

絶対に鋼夜くんを助けないと……!

 

 

待ってて、鋼夜くん。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「鋼夜くんをみつけてくれて感謝するよ、束」

 

「あっくんのお願いだしお安い御用だよ。それにこうくんが居なくなると束さんも悲しいしね。あ、お礼はくーちゃんによろしくね」

 

「クロエ・クロニクル……そうか、彼女が」

 

「いつか会わせようと思ってたからね、ちょうど良かったよ」

 

「……本当にそれだけかい?」

 

「相変わらず鋭いねー、あっくんは。……全部は無理だけど、こうくんが帰ってきたら教えてあげてもいいよ。束さんの目的」

 

「約束だよ」

 

「うん、約束するよ」

 





かんちゃんはハブられてないよ!
ちゃんと出番があるよ!

前回のイラスト、みんな感想で遺影って言い過ぎィ!
いや確かにまぁ沈んだままだから仕方ないんだけどさ

次回はちゃんと出ますよ、主人公

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