国選び要素はありません、ネタしかありません
如月鋼夜の楽しい国選び
皆さまいかがお過ごしでしょうか、如月鋼夜です。
福音事件からその搭乗者のキス事件を乗り越え、期末テストを乗り越えてIS学園は夏休みに入りました。
実家に帰る人、寮に残る人、国に帰る人、色々居ますが私は重要なイベントのために学園に残っています。
学園の会議室、現在の俺はそこに制服姿で机にうつ伏せてダウンしている。
「さぁて鋼夜くん、好きな国を選びたまえ」
目の前の机に座る輝さん。その前には大、中、小の厚さに分けられた三つの書類の山。
この会議室で何があったのか、それは少し時間を遡ることになる。
福音事件のあと、俺や一夏に関する案件で世界のIS関係者が揉めに揉めているらしい。
福音と渡り合った俺の実力とラビアンローズの技術力、セカンドシフトし機体が進化した一夏の情報が明るみに出たからだと判断する。箝口令とはなんだったのかとツッコミたくなる。
曰く「織斑一夏は日本出身なので日本の代表候補生にするべき」だと日本は主張したらしい。その主張に各国は不満ながらも了承、そして残る俺へと白羽の矢がガトリング掃射された訳だ。
「それなら二人目の如月鋼夜ならいいだろ」と各国は切り替え、今ではラビアンローズに対する問い合わせや圧力が増えている始末だ。最近ではラビアンローズどころか俺の家やSNSのアカウントにも勧誘が飛んで来ている。
福音の件も終わり様々な問題に向き合うことに決めた俺は国家のスカウト達の話を聞く場を設けることにした。
中立の立場の学園を会場にし、学園代表の織斑先生と楯無会長にも同席してもらいスカウト会議が始まった。
始まったのだが……
「あばぁ」
「ほらほら、疲れたのは分かるけど起きて起きて」
目の前の書類の山を見れば分かる通り、凄く長かった、凄く疲れた。
一国につきアピールタイムは20分と設定してあるのに時間を守らない国がほとんど。そしてそういう国ほど態度や内容が酷い。
通訳を介しながらの会話のためテンポが悪いのは仕方ないが言語分からないからって好き勝手言うなよ、こっちには輝さん居るんだぞ、筒抜けなんだよ。
俺が難色示した途端に母国語で悪態吐く奴に対して輝さんが同じ言語で言い返したのはスカっとした。というか悪態吐くやつをこんな場に呼ぶなと思う。
朝に始めたが気付けば時間は夕刻。
同席していた織斑先生と楯無会長は疲れた表情を浮かべて既に退出しており会議室には俺と輝さんの二人だけ。
「とりあえず大雑把に分けましょうか。俺を客寄せパンダ、もしくはラビアンローズのオマケと思っている国は却下で」
俺がそう言うと輝さんが机の上の書類の山の大をゴミ袋に入れる。
だいたいの国が消えた。
「国家代表が存在する国やラビアンローズにとって旨味のない国も」
今度は中の書類の山がゴミ袋へ消えた。
「残ったのはこれだけか」
最終的に残ったのは小さい書類の山。数ヶ国の情報が書かれたものだ。というか既に仕分けていた輝さんに多大な感謝を。
「僕は鋼夜くんの判断に任せるよ、でも大切なことだからしっかりと考えてね」
「わかってますよ。それに八割方は決まったようなものですし」
「ほう?何処に狙いを付けたのか教えてくれるかい?」
俺は立ち上がって輝さんから書類を受け取り、ある国家の情報が書かれたものを取り出す。
その国家はISこそ所有しているもののその数は3つ、更に全てが研究用で競技に回す余裕が無い。当然、国家代表も代表候補生も存在しない。
「フィンランドですね。国家代表も候補も居ないから俺を純粋な戦力として求めている。ラビアンローズの展開にも問題なさそうですし、何より宇宙センターがある。これはもう決まりでしょう?」
「ああ、僕も同じ意見だ。ISを本来の目的で研究している所は少ないからね」
俺の答えに輝さんは好意的だ。外交担当の人の態度も悪くはなかったしニュータイプの直感でも邪な感覚は感じられなかった。
後は代表を呼んで改めて話をすることで落ち着くだろう。
「はい!真面目な話は終わり!」
フィンランドの資料を輝さんに渡し、椅子へ座ると各国の勧誘書類とは別に取っておいた書類を手に取る。
「輝さん、一緒にコレ見ましょうよ、各国の代表候補生の資料」
書類の正体は各国に所属する代表候補生。主に若い子だけを纏めたものだ。
「お見合いか!ってくらい自分のとこの代表候補生をプッシュしてきたよね」
「ほんとお見合いかよ、って何度ツッコもうか迷いましたよ」
あからさまにハニトラ狙いのそれを手に取りページをめくる。IS学園に在籍する知り合いから知らない人、名前だけ聞いたことある人など様々な人の顔写真と簡単なプロフィールを眺める。
眺めているとふと、気になる名前が目に入り手を止める。
「輝さん輝さん、これ見てください」
「
そのページは台湾の代表候補生が書かれておりその中には凰乱音という名前と共にサイドテールと八重歯が目立つ笑顔の女の子の写真があった。活発そうなところとか凄く鈴っぽい。
「専用ISは中国の第三世代『甲龍』の量産型の『
鈴に聞きたいところだが確か家庭の事情が複雑だったと思うから聞きにくいな……。
年齢は俺たちの一個下か、じゃあまだ中学生だな。
「彼女も原作に出てくる子なのかな?」
「どうなんでしょうね、年齢違いますししばらくは学園には来ないと思いますが」
俺と一夏のせいで同学年すら転入するのが難しいのに歳下が転入出来る可能性は限りなく低いだろう。会うとしても一年後だが……原作ってそこまで続いていただろうか。
「もしかして他にも居るんじゃないか?」
明らかに髪色や名前がおかしい奴は原作キャラじゃないのか?
そんな疑問が浮かんだ俺はさらにページをめくる。
「この子とか?」
そう呟きながら一人の少女のプロフィールが書かれたページを輝さんに見せる。
「クーリェ・ルククシェフカ……ロシアの子だね。確か生徒会長が少し言っていたね」
「ええ。名前と外見は普通ですけど会長がわざわざ言うし経歴も少しおかしいので」
そのページには少し怯えた様子で熊のぬいぐるみを抱える金髪ロングの少女の画像が載っている。
予想より幼いんだが……もしかして小学生くらいじゃないか?経歴欄には高い適性が云々、精神面が不安定云々、将来性が云々と記入されている。
いやこの子めちゃくちゃ怯えてるのがこの画像だけで丸わかりなんだが?そっとしておいてやれよ。
「輝さん、これ例の案件に関係あります?」
「うーん、調べてみるよ」
例の案件とは亡国機業が擁する研究機関『ガーデン』の事だ。強化人間や少女の拉致など様々な事件を起こしている危険な組織で以前俺はその組織の強化人間と対峙したことがある。
杞憂ならば良いが関わっているとなると面倒だ。
「まぁ、間違いなく学園には来ないだろ」
見る限りこの子は色々と問題が多い。そもそも代表候補じゃなくて予備候補らしい。よっぽどの事態にでもならないと来ないだろう。それにこういうイベントは全て一夏にブン投げてやるわフハハハハ。
「大丈夫?イベントするたびに何か起こる場所だよ?」
「やめて」
このペースだとそのうちテロリストが学園に来たり宇宙人が攻めて来るとか、マジでシャレにならなくなるかもしれないから。
「はぁー、次は……」
クーリェのページをめくり他の候補生を見ていると思わず目を見張るページがあった。
その子はどうやらタイの代表候補生らしく、褐色の肌に緑のボブカットが映える美人だった。
「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーってお前……お前……」
「ん?それがその子のISの名前かい?」
「いえ、この子の本名らしいです」
「あー……」
そう、この緑髪の子。名前がツッコミどころ満載なのである。メタ視点を持ってる俺と輝さんだからこそ分かる。これ完全に創作されたキャラネームだ、と。
「なんで男性神の名前を女の子に付けてんの……」
女性なのに名前が男性神だとどこかのムーチョムーチョを思い出すがそれはそれ。
日本で云うと女の子に信長とかスサノオとか名付ける暴挙なんじゃないのか?ここは型月世界じゃないんですよ。
せめてヴィシュヌの妻のラクシュミにするべきだったと思うのだが。それならイメージに合う。この外見でラクシュミならいける、気がする。
「名前もアレだが家名もアレだ。なんだよギャラクシーって、いきなり英語で銀河なんだよ」
「インド神話って宇宙創造とかに触れてるからじゃないかな……?」
「もっと別の形で捻れよハルトォォォォォォォォォォォォ!!!!」
「
ネタとネタの殴り合いをしばらく輝さんと繰り広げた後に気を取り戻し代表候補生を探す。
しばらくページをめくっていると再びそれらしい人を発見した。
「ロランツィーネ・ローランディフィルネィ、オランダ代表候補生か」
そのページには白髪で王子様風の衣装を身にまとった女性の画像がある。
その風貌でIS操縦者として、さらには舞台役者としても活躍し99人の恋人がいるらしい。
「なかなかパンチ効いてるな」
髪色だけかと思ったらキャラも中々に強烈だった。
しかし恋人99人は凄いな、よくやると素直に感心する。こっちは4人で手いっぱいだ。
てかこれあれじゃん、100人目を探しに学園に来るパターンだろ、読めた。
「この二人は歳が一緒みたいだね、いつか学園に来るんじゃないのかな?」
「ちょっと待って、俺タイの人とどう接すればいいの、名前呼べないよ」
「頑張れ」
そう言って輝さんはサムズアップする。ちくしょう、他人事だと思いやがって。
でもちょっとオランダの奴とは会ってみたい。恋人関係の話はもちろん、あいつも結局一夏に惚れるのか眺めたい。
「さぁて次はこの人かな」
そう呟いて開いたページには赤髪で眼鏡をかけた女性。名前はベルベット・ヘルでギリシャの代表候補生らしい。
ギリシャにはすでにフォルテ先輩という代表候補生が居るが、彼女の明るい赤髪が決め手である。
「二歳上の先輩かぁ……明らかにクール要員じゃん」
年齢や簡単なプロフィールを眺める限り非常にクールな人だということが分かった。その冷たい様子が人気でもあるらしい……ん?
「輝さん大変です!」
「どうした鋼夜くん!?」
「こいつのISの待機形態、俺と同じ眼鏡です!」
「よし、次行こうか」
俺の叫びを輝さんは笑顔で華麗に流す。俺のアイデンティティの危機なんですが。眼鏡が無くなったら俺はどうすればいいの。
「あ、この子とかそれっぽくない?」
俺を無視して輝さんはとあるページを開いて俺に見せる。
「双子のカナダ代表候補生、ファニール・コメットとオニール・コメットですか」
「アイドル活動しながら操縦者をしてるみたいだね、髪色もオレンジと青だし」
画像には左右対象となるようにサイドテールを揃えたそっくりな少女がアイドル衣装で写っている。
オレンジ髪が姉のファニールで青髪が妹のオニールらしい。どちらも中学生くらいだろうか。
「なんだこのIS」
続いて彼女たちのIS『グローバル・メテオダウン』の画像に目を移した俺は驚愕する。
なんと一つのISに二人が乗っているのだ。しかも隣り合った状態で。
「窮屈じゃないんですかこれ」
第一印象がそれ。腕と脚で分担してるとかじゃなくて本当に二人で乗ってる。強いて言うなら半身ずつを操作しているのだろうか。
「窮屈かどうかは本人たちに聞いてみたいとこだね……どうやらこのISは二人のシンクロ率により性能が上がるらしい。それに歌で能力を使用するらしい」
「世界観間違えてませんかね」
実はそれ聖遺物だったりしない?戦姫絶唱しない?その場合箒もいきなり歌いだしそうなんだけど。
「シンクロして性能上がるならフロスト兄弟が乗ったら面白いことになりそうですね」
「まず絵面からして面白いことになるね」
ハハハハハ!と二人で笑いあい次のページへ移動する。
「えー、最後かな?グリフィン・レッドラム」
輝さんが見せたページには水色のポニーテールを黄色いリボンで結んだ褐色肌の女性がサッカーユニフォームを着てサッカーをしている画像が貼っている。ブラジル代表候補生らしい。
「赤色の四脚機体で高速水平移動しながらスラッグ弾をぶち込んでくるやつですね、間違いない」
「そっちじゃないんだよねぇ。というかそれ機体名の方だし」
「
「彼女は孤児院出身で施設のために代表候補生をしているらしいよ」
なんだ、ただのいい人じゃん。
この人の専用機は『テンカラット・ダイヤモンド』という名前で接近戦を主体に置いたISだと書かれている。
誰だよシャミアとか言ったやつ、俺だよ。
年齢も二個上らしく、もしかしたら学園で会うかもしれない。
「こんなところかな?これから先に関わってきそうな子たちは」
代表候補生の情報が書かれた書類を机に置いた輝さんが伸びをしながらそう締めくくる。それにつられるように俺も伸びをしながら大きく欠伸をする。
「ああ、すっかり遅くなっちゃった。二人でいると時間の経過が早いよ」
腕時計を確認する輝さんはそう呟く。俺も会議室に立てかけられた時計に目を向けると会議が終了してからかなりの時間が経過していた。候補生との話をしながらネタを挟んでいたのが原因だろう。
「じゃ、今回の話は先ほど話した通りに進めるよ。また呼ぶからよろしくね?織斑先生と生徒会長さんによろしくお願いするよ」
そう言うと輝さんは大量の書類が入ったゴミ袋を担ぎ立ち上がる。俺もそれに続き会議室の机と椅子を整え、最後に電気を消して一緒に会議室を後にする。
このまま学園門の所まで輝さんを送り、そのあとは解散になるだろう。
「忙しい夏休みになりそうだなこれは」
輝さんと一緒に歩きながら一人呟く。
まだ夏休みと未知の原作との戦いは始まったばかりだ。
ヴィシュヌ関連は割とマジで思っていた事を書きました。
鋼夜とISABキャラで相性が良いのはロラン姉貴兄貴とクーリェです。
ロランは主に恋愛関係で、クーリェはISと意志疎通ができるっぽいのでNTの鋼夜とも通じ合えそうだからです。
私もISABの新キャラだとロランが好きです。
最初の決闘以外はマトモでそこそこ有能で一夏に真正面から好意を伝えたところが気に入ってます。
ほんと初登場の決闘が意味不で即落ちじゃなければなぁ……。