各国のスカウトを学園に呼び所属する国家を決めた日から数日。
夏休みはまだまだ始まったばかりの頃、俺は日本を出てフランスへとやって来ていた。
飛行機や車を乗り継ぎホテルで一泊、そして今はフランスにある大きなIS専用の競技場へ来ている。
理由をざっくりと説明するならばフランスで開かれるISの新機体お披露目会兼トライアルのトーナメントに我々ラビアンローズが参加するので輝さんと一緒にやって来たという事だ。お披露目会にはもちろん同僚のシャルロットもデュノア社がラビアンローズと協力して開発した新機体を引っさげて参加する予定だ。かくいう俺もラビアンローズが開発した新機体に搭乗する予定で参加している。
俺の実力を世界に示すいいチャンスでもあるこの機会を逃す手は無いという訳だ。
既にトライアル用の新機体を受領した俺は待機状態の腕輪へと変化しているそれを見つめる。
ラビアンローズが開発した第三世代量産型IS『
ダークブルーを基調としたその機体はウサ耳のようなツインアンテナとX状に展開されるスラスターが特徴的で、腕部や脚部に様々なカスタムを施すことによりあらゆる状況に対応できる汎用性の高い仕上がりになっている。
ずっと前に輝さんと話していたゲシュペンストのIS版である。
三世代兵装は対象を自動追尾し攻撃する、手裏剣を彷彿とさせる武装のスラッシュリッパーならぬ『
更にオマケで武装を粒子化し再び呼び出すことで弾が装填される
もちろん腕部と脚部や膝にはプラズマステークの『
大型ブレードの『
まぁ、これの凄さと素晴らしさが理解できるのは俺と輝さんの二人だけというのは悲しいが仕方ない。
第三世代を量産まで漕ぎ着けたのはアメリカのファング・クエイクに次いでラビアンローズの幽鬼だけ、そして企業としては初めてらしい。
輝さん本当凄い。
「鋼夜くん、それじゃあまた後で。『幽鬼』を存分に使ってくれ」
「任せてください」
会場の関係者通路で選手専用の入り口前で輝さんと別れて俺は奥へ進む。しばらく進むとラウンジがありそこには多数の女性の姿が。その女性達は俺の登場に気付くと僅かにざわめき、中には視線を向けてくるのもある。その中で一人、こちらに近づいてくる金髪を発見する。
「フランスへようこそ、待ってたよ鋼夜」
「よぉ、シャルロット。なんか久しぶり」
「そうだね、なんだか久しぶりに感じるよ」
金髪の人、シャルロットへと片手を上げて挨拶を返す。
学校で毎日顔を合わせていた彼女と夏休みで数日会わなかっただけで懐かしく感じてしまう。
そのままの流れでシャルロットと一緒にラウンジへ入り適当な席へと座る。
トライアルの時間までは大分あるがその前にISの雑誌の取材が入っている。対象は今を輝く各国の若い代表候補生が主でありもちろん話題性でいえばトップに上がる男性操縦者の俺もお呼びがかかった訳だ。周りを見渡すといつぞやに輝さんと見たカタログで見た覚えのある顔ばかりである。
席へと座るとシャルロットが口を開く。
「そういえば聞いたよ、フィンランドの国家代表になるらしいね?」
「ああ、知ってたか」
「今の話題はそれで持ちきりだと思うよ」
シャルロットの言葉に俺は頷く。以前開いた説明会、俺は当初の予定通りフィンランドと契約を結ぶことにした。いくつかの条件を俺から提案し、向こうもいくつかの提案をして俺が了承し契約を結ぶ流れへとなった。このトライアルへの参加も条件の一つ。俺に国を背負えるだけの実力が無ければ意味がない。実力を示すためにこの大会への参加は絶対だった。
「一夏はどうするんだろうね、このままだと日本の代表候補になるとは言ってたけど」
「そうなるんじゃないのか?俺はそうなると思って他国と契約を結んだ訳だが」
一夏自体がそういう事柄を気にしないし興味を持たないのならばそのまま日本に収まるだろう。難しい話は織斑先生が対応していくとは思うが……あいつの卒業後の進路とか、どうするのかどうなるのか気になる。
フランスVS中国VSイギリスVS日本、ファイ!
という形になるのは絶対に避けられないだろうな、うん。そしてまだまだ国が追加される恐れがあるのも怖い。
「来ないな」
「ユーティライネンさんを待ってるんだよね?学園の3組代表の人」
シャルロットの言葉に頷く。
アリサ・ユーティライネン、IS学園1年3組クラス代表。フィンランド出身で父が宇宙飛行士で母が日本人。赤髪三つ編みが特徴の女の子。男性恐怖症。
そんな彼女と何故待ち合わせをしているかというと、俺がフィンランドの国家代表になるにあたり代表候補も決めることになったがほとんどのIS乗りは他国に所属しており宇宙センター所属の彼女しか該当者が居なかったのである。
それに俺は男性なので公式の大会にマトモに参加出来るか怪しい。その場合の代理ということでどちらにせよ代表候補を選ぶ必要があったのだ。
「少し探してくる」
「わかった、僕は待ってるよ」
シャルロットを席に待機させてユーティライネンさんを探しに出る。
とりあえず今来たルートから入り口に向かって歩く。……と、歩き始めて数分で彼女を発見。しかし彼女は一人ではなく誰かと一緒だった、しかも見る限り絡まれているようだ。
面倒な気配がビンビンだが助けない訳にもいかず、ため息を一つ吐いてそこへ向かった。
「ああ素晴らしい!私はこの出会いを神に感謝する!」
そんなセリフと共に舞台役者がする演技のように跪き手を伸ばす白髪が特徴的な女性。そして伸ばされた手を前にオロオロするユーティライネンさん。
「私はオランダ代表候補生のロランツィーネ・ローランディフェルネィ、ロランと呼んでくれて構わない。君のような麗しき蕾に出会えた事に感謝を、そして君こそ100人目の蕾に相応しい!」
「えっと、ごめんなさい」
「ハハハ、これは手厳しい。だがそれでこそ燃えるというものだ」
訂正。コイツ本物の舞台役者だった。
いつぞや輝さんと一緒に見た代表候補生リストの中に居た1人、オランダ代表候補生で舞台役者で恋人99人のロランツィーネ。
まさかこんなに早く出会うとは思わなかったし100人目が目の前で決定されるとは思わなかった。
しばらく眺めていたい気もあるが助けると決めたし本人も困っているようなので乱入することにした。
「ユーティライネンさん、探したよ」
「あっ……如月くん」
声を掛ければビクっと震えるも俺と分かれば安堵の表情を見せる。
「君は、確か2人目の男性操縦者の如月鋼夜だったかな?今私は可憐な蕾を愛でているところだ、邪魔しないでもらえるかな?」
「本人が嫌がってるし先に約束してるのはこっちだ、諦めてくれ」
ニュータイプの感覚が流れてくる真っ赤な熱とピンクのイメージを知らせる。ロランツィーネはどうやら蕾とやらに出会えて浮かれまくっているのでマトモに会話出来そうもない。
俺は言いたい事だけ言い切るとユーティライネンさんにこっちへ来るよう呼び掛ける。
「は、はい」
戸惑いながらも呼びかけに応じてこちらへ赤髪を揺らしながら駆け寄る。男性恐怖症の彼女に配慮してあまり近付かないように距離を置きつつシャルロットの待つラウンジへ向かう。
「ふむ、それならついでに私も同行しようか。目的地は一緒だろうからね」
そう言うとロランツィーネが俺とユーティライネンさんの間へと割り込んできた。
常人ならば鬱陶しく、いや、事実少し鬱陶しいがコイツはユーティライネンさんが男性恐怖症であることを察して割り込んできたのだ。
ニュータイプの感覚でなんとなく伝わる。
「さて、君の名前を改めて聞いておきたいね」
「如月鋼夜だ。フィンランド国家代表、予定」
「フィンランド代表候補生予定のアリサ・ユーティライネンです」
「アリサ、君の名前はアリサというのか。素晴らしい名だ」
ラウンジへ向かう途中、ロランツィーネが何やら訊ねてきたので答えたが彼女は見事に俺だけスルーしてユーティライネンさんに全力で反応した。
「名前から察するにハーフなのかな?その赤い髪もとても素敵だ。例えるならそう、雪国の可憐な妖精だ」
「は、はぁ……」
ユーティライネンさんがドン引きしていても喋る喋る。恥ずかしげもなく繰り出される褒め言葉に殺し文句の数々。聞いているこちらが恥ずかしくなってくる。
「アリサはIS学園に所属しているようだね?なるほど、やはりあの時無理矢理にでも入学を決めておくべきだったか……すまないこちらの話だ、今は君との出会いとこのひと時を楽しむべきだね」
「えっと、頑張ってください?」
隣に俺も居るんだぞオランダガール。しかもさりげなく学園に入学するフラグを立てるんじゃあない、嫌な予感が当たりまくりだ。
しばらくの間、一方的にロランツィーネが捲し立てて盛り上がりそれにユーティライネンさんがドン引きする状況が続き俺達はシャルロットの待つラウンジへと到着した。
さすがにロランツィーネも待ち人が居たようで席までは着いて来なかった。
「良かった、見つかったんだね……何かあったの?」
「いえ……」
「特に何も」
疲弊した様子のユーティライネンさんを見てシャルロットは何事か問い掛けたが説明が面倒だったので二人で誤魔化した。
ユーティライネンさんと合流し、しばらくすると雑誌の取材陣が到着しインタビューが始まった。
「フィンランドの国家代表に立候補したとありますが本当ですか?なぜフィンランドを選んだのでしょうか?」
「ISは本来は宇宙探査用のパワードスーツです。私の所属している企業のラビアンローズは開発者である篠ノ之束博士と本来の用途として研究を進めるという約束の元、コアを提供していただきました。フィンランドの宇宙センターならば宇宙探査の研究を行えます。そして自分が国家代表として、純粋な実力を求められていると共に自分の力を発揮し試すことの出来る国がフィンランドだったんです」
「なるほどありがとうございます!今回のトライアルでは専用機ではなくラビアンローズの新型を使用するとのことですが」
「はい、ラビアンローズが開発した第三世代型の量産機『幽鬼』です。今回のトライアルの結果次第ですが正式に配備されることは決定しています。記念すべき1回目のお披露目に選ばれて光栄です、存分に幽鬼の全力を発揮したいと思います」
「ありがとうございます、次は……」
そんなこんなでインタビューは続いた。
しばらくインタビューは続いたが時間が迫ると取材陣は引き上げていった。矢継ぎ早に質問される状況から解放されてホッと一息つくも次はトライアルが待っている。
「仕方ない、やるか」
面倒を感じつつもゲシュペンストに乗れるという期待に胸を馳せながら準備へと取り掛かるのだった。
いつのまにかフィンランド代表に名乗り出た主人公
そしてゲシュペンスト
ロラン兄貴姉貴初登場
ISABによるとロラン兄貴姉貴は孤独な女性が好みなようです
本編の箒ならまだしもうちの箒にこいつ惚れるか?と考えたら該当者がアリサちゃんしか居なかった
アリサって誰だよ、という方は3組代表の日記の方をどうぞ!