誰も助けてくれない -Can you hear me?- 作:麒麟犬
-<To Griffin from Shadow 1>-
『ローガン、ローガンなのか!?』
『ああ、俺だよハリー。何とか生きてる。404小隊の連中も一緒にいるよ』
『それで……君は?』
『連中から熱烈なスカウトを受けたけど、今のところは保留中。それよりも奴らを追う必要があるしな』
『うん……』
『時間がない、手短に言うぞ。俺は404と一緒にワシントンD.Cの奴らの根城を襲撃する。潜入じゃなく、派手にな』
『……そうか、わかった。こちらからは何か必要なものはある?』
『依頼がもうなかったものになった以上、航空支援もなにも頼めない状態だ。俺達でやるよ、なんとかする』
『了解、こっちからはそこから南に回収班を向かわせとく。生きて帰ってきてくれよ』
『そうしてくれ。それと、お前も一緒に来いよ。……あいつらとお前の昔のことを聞いた』
『……っ!そう、か』
『ハリー、今更起こっていしまったことだし俺はそれについては攻めはしない。だけど、いつまでも子供のように放ったからしにするな』
『わかってる、わかってるんだよ……。あの頃の僕も色々と自分の殻に閉じこもってしまってて……』
『気持ちはわかるよ。でも404、45はお前に謝りたいって言ったんだ。なら、お前も来い。顔を合わせてお互いに頭を下げろよ』
『……そうするよ。今更でどんな顔をすればいいのか分からないけどね』
『だろうな。とりあえず俺も行動を起こすよ』
『……早めに頼むよ。それと君も謝ることを覚悟しておいた方がいいよ?』
『なんでだよ?』
『AR15がね、眠れなかったから僕のとこに来たんだけど色々とあたふたしてるタイミングで……』
『……なんでさ』
『誤魔化そうにも誤魔化せなかったよ。彼女も君と一切できないということでそれで察しちゃって大急ぎで準備、ダミーを置いて出撃しちゃった』
『勘弁してくれよ……』
『たぶん回線が復旧したわけだから45が直してくれたんだろうけど、AR15からも通信が入るだろうね。彼女がまたいじらなければ、だけど』
『……それなら大丈夫だ。あいつはもうこっちの機器については手出ししないとよ』
『ならこっちから伝達はいつでもできそうだね』
『ああ。そんじゃ、あとでな』
『うん。生きて帰ってきてくれよ』
-<Shut down>-
――――――
416が渡してくれたM32グレネードランチャーだが、本体については前に作られた型と同じでとくに変わったところはない。ただし、込める弾薬の方は違う。今回使用する榴弾は通常のグレネード弾としての機能はもちろん果たすが、弾着したところに張り付きこちらが操作するまでは爆発しないというものである。ベースプラグを覆うようにあるジェルのような感触のボタンを押すとランプが点滅し起爆待機モードになる。
その赤い弾による爆弾を作成したローガンは端末を操作しトラックの運転を自動運転に。
「さて、と……」
そう呟き、廃校の方に視線を向ける。これからの行く先は校門、見回りなどを行っている鉄血の群れだ。そして自動操縦にしたトラック。これらがあることからこれからやることなど明確だろう。
その前に、とローガンは上着の胸ポケットに手を入れて携帯端末を引っ張り出す。無線機の方に有線接続を行い番号を選択、コールする。してからほんの数秒で相手は応答した。
『ローガン!?』
「よう、AR15。そっちは今どこにいるんだ?」
『今は西から向かっているけど……あなたは……ていうか無事なの!?』
「ピンピンシテルヨ~」
『なんかその返し方には腹が立つけどいいわ……よかった、あなたが無事で』
安堵の息を漏らしたことが無線越しにでもわかる。電話をかけた相手、AR15の声を聞いたローガンも『やれやれ』と肩を竦めた。
ここまで自分を心配してくれたのだ、嬉しくないはずがない。だがおそらく彼女はハリーの制止を振り切ってきているだろう。PMCのグリフィンではわからないが、軍隊なら無断出撃で懲罰ものだ。
「とにかく今からドンパチ始めるよ。お前も急げば間に合うかもな」
『ま、待って!あなた一人で始めるつもりなの!?』
「んなわけないだろ。バックアップ要員、生きる都市伝説様と一緒だ」
近くにいる45にサインを送る。頷いた彼女は無線を使って404全員に準備完了の旨を伝達した。
「デカい一戦になると思う。ここからは必要な情報伝達以外は受け付けれないから、先にお前に伝えておこうと思ってな」
『話は指揮官から聞いたわ。ハイエンドモデルの、鉄血の『侵入者』と接触したって』
「ああ、ここまでやってくれた奴だ。いるんだとしたら逃がすわけにはいかない。それにきっと『オアシス』についても何か知ってるかもしれないしな」
『……そうね。あれから一ヵ月経つし、何かの情報がそろそろ欲しいわよね』
『アッシュ』、『パンドラ』、そして『オアシス』。これらについての存在はまだAR15としか共有していない。いずれはハリー達にもするつもりだが、まだきっとその時ではない。今回のことでわかったが、イントゥルーダーはグリフィンからも情報を盗むだけのパスを用意していた。そうなると、鉄血の誰でもこちらから先手を取るだけの手段を残していると捉えられる。そうなれば完全に安全が確認されるまでは下手に喋ることはできない。
「だからよ、早く来い。その時は全て終わっているだろうけど、お前さんの援護が一番安心できる」
『話を逸らさないでよ……でもそういうこと言われると嬉しいわね』
「事実だしな。とにかくこっちは先に始める。合流出来次第来てくれ」
了解、と残し彼女との通話は切れる。再び収納していた箇所に携帯端末をしまい銃を持って走ろうと構えようとしたところで、ふくれっ面の45がそこにいた。
「なんだよ?」
「……今の、誰と話してたの」
「……グリフィンの友人といえばそれでいいか?」
「それでも今の言ったことに納得がいかないわよ。私達の力が足りないっていうの?」
「援護が安心できるっていうのに不満なのか?それでもお前さん方の力不足には繋がらないだろ」
「そうじゃないのに……もう!」
ぷいっと頬を膨らませたまま45は背中を見ただけでも腹を立てているのがわかるが、ローガンにはどういう意味なのかは分からない。首を傾げる彼に9は苦笑いである。
「や~い、鈍感男~」
「なんなんだよ、お前ら……」
そう思いつつも416とG11と打ち合わせている時間が迫ってきているので、端末を操作して目標としている校門の方へと走り出させる。エンジンがかかったトラックは大量の爆薬を積んで走り出す。
「416、パッケージを動かした。手筈通り起爆のタイミングはそっちに任せるぞ!」
『了解よ、地上の雑魚はこっちで引き受ける。あなたたちは存分に暴れなさい!』
すぐにバイクの方に向かう。45が後部の方で待機している方に跨り始動させるとブォオオオオンッ!!と低いエンジン音が響く。彼女がこちらの方に両手を回したことを確認したローガンはもう一台を運転する9に目配せし、彼女の方も準備ができたことを知るとアクセル全開で前進させる。
すぐに速度が上昇するため、先行させているトラックの後方十メートルほど距離を置きついていく形をとると同時に車両の方に気付いた鉄血兵たちが発砲し始める。
『G11、撃って!!』
『了解、撃つよ……!』
奴らが気付くのが予想より早かったことから、G11が数体に遠距離狙撃で発砲し頭部を抉ったことでトラックへの損害は軽微で済む。校門にトラックが突っ込んだら、そこはもう416の起爆範囲である。
『起爆!』
ドォオオオオオオンッ!!とトラックに積んでいた予備燃料などがグレネード弾によって爆破され、巨大な花火が上がる。爆風は鉄血兵を巻き込み、燃やし、吹き飛ばし、ある物は付近にあった鉄パイプの金型に突き刺さるなど二次被害が発生する。
『いいわよ、ローガン!』
「了解。行くぞ45、9!」
「ええ!」
「うん!」
二人の返答を聞くと同時にバイクのエンジンが唸りをあげ発進する。時速七十キロにまで一気に加速させ爆風によって流れてきた煙の中に突っ込んだ。抜ければそこは校舎前の広場であるがそこを一気に突き抜ける。階段横のスロープを一気に駆け上がりそこで倒れている鉄血兵をジャンプ台にして廃校の二階へと車輪から突入した。着地させたローガンはバイクをすぐに安定させ横滑りするようにして停止。
「45!」
「9、前に出るわよ!ローガンは援護と後方警戒を!」
「ラジャー!」
バイクから降りた二人が先行し呆気にとられ動きが鈍くなっているリーパーを自分の銃で倒していく。ローガンもバジャーをストラップで下げ二人の反対方向にいる敵の群れにグレネードランチャーを発砲する。ボンッボンッボンッ!と絶え間なく三発発射し数体を吹き飛ばす。突入した箇所は連絡通路のような狭い廊下なので一気に来れる鉄血の量も大体は限られるため見える範囲での鉄血兵はほとんどいない。あとはちまちまとくるヴェスピドをバジャーで排除していった。
「ローガン、前進するわ!」
「了解だ。後ろはクリア、そのまま行け!」
「フラッシュバン、いくよ!」
曲がり角で待っているであろう敵を警戒し9が閃光手榴弾を投擲、効果があったようで45と共に左右のどちらの方にも銃撃を行う。
『全体で動き有り。奴ら校舎の方に向かうだけでなく裏手の運動場にも行ってるわね。そっちの方を確認するからG11、ここは任せるわよ』
『うん。ローガン、校舎内にドラグーンが向かってる。何体かは倒したけど全ては駄目だったから気を付けて』
「了解だ。45、9!」
二人も了解したとサムズアップをし、前方の敵を倒していく。
そこからは交戦しつつの探索だった。西と東の方角も関係なく教室や倉庫、体育館なども徹底的にしらみつぶしで探していく。だが目標のイントゥルーダーは見つかっていない。ドラグーンやストライカーなどの雑魚の鉄血兵の中では厄介な敵はいても対処はできなくはない為、スモークグレネードでゲリラ戦、フラッシュバンで視界を潰して襲撃するなどして対処していった。
そして運動場に向かった416から連絡が入る。
『くっそ……全員聞いて!グラウンドで目標発見!奴らも撤退準備してたようだけどまだ必要なものを運びきれてないわ!こっちは足止め食らって動けない!』
「了解よ!ローガン、悪いけど行ってくれる?数が多いのであればあなたのグレネードランチャーが必要よ。G11、こっちはいいから416の援護に行って!」
「任せろ!」
『わかった!』
二人と別れたローガンは416がいるといいう廃校の外周に繋がっており、運動場にあと一歩で到達できるような中庭に向かう。二階廊下を伝って見下ろすと、G11が先に合流したらしく416とともに鉄血兵と交戦している。さらに数が多い上に厄介なことが起こっていた。
そこにいるのは装甲持ちで通常の弾薬を中々通さない鉄血兵の部隊であったのである。イージス、ニーマム、さらにはマンティコアがそこでじりじりと二人の方へと距離を詰めていた。
「やべぇ……!」
考える暇もなくローガンは背負っているM32を持つと迷わず発射。二人に最短で距離を詰めていたイージスを排除する。
「二人とも、少し待て!こっちでできる限り敵の数を減らす!」
言いつつローガンはもう使えない榴弾を捨て新たに込める。屋内での戦闘では序盤以外に使わなかったが、グレネード弾の数はあまりない。今新たに六発を装填したが残っているグレネード弾はもうないのである。
マンティコアを一旦無視し、装甲兵のイージスと移動砲台のニーマムに向かって全弾発射。ダンッダンッ!!と最後に発射したグレネード弾で複数のニーマムを吹き飛ばしたローガンは、そこでマンティコアの注意を引いてしまってたことにようやく気付いた。
『ローガン!!』
二人が自分の名を叫んだのが聞こえたが応える余裕なんてない。すぐさまM32を捨て、奥の方へと逃げようとしたが榴弾砲がローガンと外を隔てていた校舎の壁を破壊しそれで生んだ爆風と瓦礫で彼を蹂躙する。幸い直撃は受けずに済んだものの、至近弾で衝撃を受けたため背後の方へ吹き飛ばされる。扉を背中で破り、バウンドしながら反対側の壁へと激突する。数時間前に416から治療を受けたとはいえ完治したわけではない。それがローガンにただでは済まない痛みを齎す。
『――――――!』
『――――――、――――――!!』
「うっ、が……!」
背中からの痛みが最高潮になり、ローガンは声を漏らしながらもじっと耐えるしかなかった。痛みを緩和するための鎮痛剤が充填されている注射器を足に挿すことさえ思いつかない。視界が赤く、黒く点滅し意識を失いそうになるが堪えているとようやく脳から生み出されたアドレナリンが全身に回りある程度動けるようになってきた。
凹みが出来ている壁に背中を預け、太ももに注射器を挿す。背中の痛みが徐々に和らいでいくのを感じながら、自分はまだ戦えるかを確認。
「ローガン!」
息を切らしてG11が先に入ってくる。その手には416から持たされたであろう治療キットがあった。
「41……6、は?」
「大丈夫、マンティコアを二人で倒したら416がこれでローガンを治療しろって……!」
「先に45達の方に行った……てことか……」
すぐにG11が治療を開始する。あまりの苦痛に確認できていなかったが、ローガンは背中を強打しただけでなく頭や腕、足の方からも出血していた。刺さっている木片を取り除き、消毒してから包帯を巻くなどしてそれぞれでできるだけの処置を行った。
「……んな泣きそうな顔すんなよ、G11」
「でも……私がもっと……」
「どんな実力や技術を持ってしたって、身近であっても助けれる奴もそうじゃない奴もやっぱりいるもんさ」
理不尽なことというのは生きていくうえで必ず起こる。生きている歳月が増えていけばそれに比例して数は大きくなりもするし、感じる憤りも例外ではない。どんな努力をしたって、完全になくなるわけではない。
それに自分に降りかかる物でなく近くにいる他人にくるものだったら尚更である。
「それにお前が悪いわけじゃない。あんなヤバさビンビンの奴を一時とはいえ無視した俺が全部悪いさ」
「え、無視してたの?それはさすがに馬鹿じゃない?」
「お前、落ち込んでたんじゃないのかよ。俺の気遣いを返せ」
「馬鹿に付ける薬はないっていうけど、治療キットになにかないのかな。金槌で叩けば直るかもしれないけど」
「『なおる』って字が違う気がする!いや金槌とか言ってる時点でそうなんだろうけど俺は壊れたテレビじゃねえぞ!」
「あ、そうだった。ローガンは人間だった」
「そうだよ!?お前らとは違って俺は人間!金属部品で体は―――!」
そこでローガンは頭に浮かんでいた台詞が霧散していった。代わりに浮かんだのは、彼女とのあの時。酷いと自分でも思うほどあんなことを言った後日、目を腫らした彼女に自分は何を言ったのか。
「……ローガン?」
「……なんでもない、大丈夫だ。それよりもさっさと終わらせよう」
ごめんなさい、ありがとう。そんな何気ない台詞ではあるがいざ意識して言うときになると気恥ずかしくなって口から出てくるのが難しくなってしまう。だから、同じことにならないように今のうちに言っておこう。
「ありがとな、G11。もう大丈夫だ」
そこに込められている意味は複数ある。それをG11が全て受け取れたわけではないが変化の乏しい無表情で頷いた。
爆発音、銃声が派手にローガンの背中の方から聞こえてくる。痛みを堪えながら立ち上がり、窓を開けてベランダから外に出る。
ベランダが運動場に面していたためすぐに状況が見渡せた。45、9、416が既に戦闘を開始しており、鉄血が貨物輸送か何かで置いていたと思われるコンテナの裏に隠れ反撃の機会を窺っている。
「三人が見えてるぞ、そっちは今どうなってる!?」
『現在見ての通り鉄血の結集部隊と交戦中!だけどストライカーの連射がヤバいわ!』
「G11、お前はここから狙え!俺は前線に行く!」
『ローガン、あなたは怪我が……!』
「こんなんで動けなくなるようじゃ俺はとっくの昔に野垂れ死んでるさ!」
ベランダの手摺を乗り越えて地面に着地する前に受け身を取る。受け身を取る際に前転するため痛みが走るがそれを無視し鉄血の部隊の横側へと走っていく。
「こっちは回り込んで奴らを叩く!G11、援護を頼む!」
『うん!』
ダイナゲートが押し寄せてくるが撃って、蹴り飛ばし、飛びかかってくるのであればナイフで突き刺した。
そうしながらバジャーの射撃モードをフルオートに切り替えたローガンは鉄血の部隊の背後へと走る。そして裏に回ったところで出し惜しみせずに弾をばら撒いて隊列を組んでいるストライカーをスクラップにした。
「45、そっちはいいぞ!こっちはG11と一緒に……!」
遊撃に出るという台詞は出てこなかった。視界に映ったのは急に上からそれはやってきた。跳躍して来たそれは、ニィと笑みを浮かべるとこちらの側頭部を殴りにかかる。辛うじて反応できたローガンは身を屈めて避け、バジャーの銃床で殴り掛かったが、それを軽い身のこなしで躱される。そして至近距離であったため視界に入りきらなかったその鉄血の武装が目に入る。
「ガトリング……!?」
似てはいるが正解ではない。いや、正しく言うのであればアサルトライフルと合成した見ることのない銃器だ。ガトリングのマガジンが下部に、ライフルのマガジンが上部に来ており人間やI.O.Pの戦術人形が使うような武器であることは確かだ。
ガッ……!と音を立ててガトリングのバレルが回転を始める。すぐにローガンはバジャーでカウンターに出ようとするが間に合わない。自分が構えて発砲するよりも先に奴が自分をひき肉にする方が早いだろう。
しかし、今回は一人で戦っているのではない。
『ローガン!』
ベランダから放たれた銃弾がその鉄血の肩に命中、回転し始めていたガトリングの狙いが逸れて地面を抉る。その鉄血も予想外のことであったため一瞬何があったのか分からない顔をしていたが、また口角を上げてローガンに向けて発砲しようとする。
「させるかよ!」
すぐにローガンも反撃に出て再度発砲される前にバジャーでその鉄血に風穴を空ける。やがて力を失ったその鉄血は仰向けに倒れる。だがローガンにはそれが偽物、ダミーであることに気が付いた。
なぜなら―――。
「―――まだ、終わりじゃないわよ」
「っ!!」
すぐ背後から囁くようにそう言われたからである。聞き覚えのあるその声にナイフを抜き振り返りながら水平に薙いだ。しかし今回のみならず世界中の混乱の引き金を引く役目を担ったその原因はローガンのナイフを止め、背中をポンッと押した。電流のように走る痛みに一瞬悶えたが、すぐにP226も抜きそちらの方に構える。
『ローガン、一体そっちは何が……!』
『G11、一体あっちはどうなってるの!?』
『ローガンが鉄血のハイエンドモデルと交戦中!ここからじゃ射線が被って援護できない!』
『厄介ね、こっちはこっちで手一杯だっていうのに……!』
無線の方では404小隊全員が情報共有をしてはいるが、G11以外が鉄血兵の対処に追われていてこちらのハイエンドモデルの戦いにすぐには駆けつけれないことは明白だ。
そう、ローガンの背後に回った鉄血は『侵入者』のイントゥルーダーであった。大胆不敵という四文字が似合うような笑みを浮かべローガンをつま先から頭まで見て品定めしているかのようだった。
「傷もできてなかなかいい男になったじゃない。そのハーフマスクもいいわね、もらえないかしら?」
「悪いけどこいつは非売品だよ。似たようなのならその気になれば手に入るだろうが、ペイントが俺じゃない奴のお手製でね。簡単にくれてやるつもりはねえよ」
「あら残念。ならそれを戦利品としてもらうことにしましょう―――!」
先ほどのダミーよりも行動がはやい―――!
ローガンはそう思いながらも先んじてナイフを持ち替え、刃の方を親指と人差し指で挟むとそれを横薙ぎに放つ。水平に回転したナイフはイントゥルーダーの首元へ飛んでいく。
「っ!やるわね―――!」
命中。ただし刺さった位置は左肩で致命傷にはならない。闘志をさらに燃やしたイントゥルーダーが武器を持ち替えアサルトライフルのバレルをこちらに向ける。ガトリングではどうしても発生する発射するまでのラグを無くすための考えか。
『こっちで奴を狙う!ローガンは頑張って注意を引いて!』
「簡単に言うんじゃねえよ!」
そう言いつつもローガンは横方向へと走ってG11の射線を確保できるように動くが、それを察したイントゥルーダーが同じように動きローガンの動きを制限させる。
「ちぃ!」
埒が明かないと判断したローガンはP226で発砲、イントゥルーダーの動きに対する牽制を行うが思ったような効果が得られない。それどころか―――。
「そんな動きじゃすぐに疲れちゃうわよ?」
人形の脚力を発揮し一気に距離を詰められる。そして胸元を蹴られ、仰向けに転倒してしまう。
「ぐっ……!」
「終わりよ」
『ローガン!』
ストンプされそうになっているところをすぐさまG11が援護射撃を行うが、バックステップで躱されてしまう。ローガンも体制を整えてP226のマガジンを取り換えて予備のナイフを抜いた。その瞬間にはイントゥルーダーはG11の位置に気付き、ガトリングで掃射を始めていた。
「やらせるかぁあああああああああああああ!!」
叫び、スモークグレネードのピンを抜いて彼女の射線上に投げて妨げる。煙が発生し自身もろとも包み込ませたところでローガンはバジャーを持つとマガジン内の弾薬が無くなるまで撃ち続ける。
「厄介なことをしてくれるわね、あなたは……!」
そう言ったイントゥルーダーは横薙ぎに銃器をローガンにぶつけてくる。今傷ついた体で戦術人形としての腕力で振られたあれを受けたらひとたまりもないことを直感で感じたローガンは敢えてスライディングするようにして懐に飛び込む。イントゥルーダーの銃器が頭を掠め、ナイトビジョンゴーグルとニット帽を吹き飛ばす。
それに対し精神的に冷えた思いをしながらローガンは彼女の足を足で払い転倒させる。自身は立ち上がり左手に持ったままにしているナイフを突き立てるようにして振り下ろした。
「甘い!」
イントゥルーダーも黙ってみているわけではない。すぐさま横方向へ回転し体を体操選手のように起こす。外したナイフの切っ先は欠けてしまい刺突としてはもう使い物にならない。
「いい加減に……しなさいな!!」
その瞬間、イントゥルーダーの姿が消えたようにローガンの目には映った。しかし気付いた瞬間には彼女は自分の懐に高速で潜りこんでいたのである。そして、正拳がローガンの鳩尾に打ち込まれた。
「ごっ……ふ……!」
打ち込まれた箇所が鳩尾であったせいで胃の中身が逆流しローガンはその場で吐き出してしまう。それが収まるのを待たず、イントゥルーダーは彼の服の襟首を掴んで引き倒した。
痛みと吐き出したことによるショックで自分がどのような状況に置かれているのかが一瞬頭から飛んでしまったことにより対応が遅れてしまう。そのせいで自分のホルスターにあるP226が奪われたことに気付かなかった。
「ローガン!」
鉄血兵の掃除が終わったのだろう、45達がこちらに駆けつけてきた。しかし一歩遅く、既に詰んだ状況である。
「遅かったわね、404小隊。あなた達が同行した狼さんはもうお終いよ」
「ちぃ!」
416が銃を構えようとするが、強調するかのようにP226をさらにローガンへと突きつけられることで止められてしまう。
「わりぃ、45。ドジっちまったわ……」
「ダメよ、ローガン……私はあなたに何も……」
「そうね、45。あなたは今回リーダーとしてなにもできていない。いつものような獰猛で狡猾なあなたはどこに行っちゃったのかしら?」
「……っ」
悔しそうに45が歯噛む。いつもは猫撫で声で余裕綽々といった様子もない彼女は別人である。ただしそれは彼女のことを何も知らない奴だから言えることだ。
「獰猛……狡猾……?リーダーとして何もできていない……?」
気付けば、ローガンの口からは憤怒の色に濡れた台詞が漏れていた。
「戦場で私情を第一に持ち出せばそいつは必ずすぐに死ぬ。今回45は自分がそうなって404全員が全滅しないようにしてただけだ!それを何もしていないだと?ざけんなよてめえ、何様のつもりだ!!」
吠えるようなローガンの叫びにイントゥルーダーがややたじろぐ。彼から発せられた気迫が彼女を押していた。
「たしかに今回は今までに比べて乏しいのかもしれねえな。だけど毎回それ以上の結果を出せる保証なんて誰にもねえんだ!なのに獰猛で狡猾なお前はどこにいっただ?だったらてめえが証明して見せろよ!」
誰にだって報われないことというのはある。効率的に仕事を行い時間短縮、経験と閃きによる発想、そして最終的な成績を示す数値。どれだって結果を出すのには欠かさないものだ。それはローガンにだってわかる。しかし現実というのは残酷なもので、『次回はもっと頑張れ』と、『まだまだだから努力しろ』と無責任に言う輩がいる。もしまだ伸びしろが明確に出せるだけの要因があるのならまだいい。まだ本人にもできるだけのことがあるということをわかりやすく自覚させてくれるからだ。だが壁に当たった、誰も『その先』を知らない道に当たった場合はどうすればいい?
そんな場合でも『お前ならできる』、『ここで終わりにするなよ』と自分は何も関わろうとしない輩がいたりする。進歩しないような者は貶される。確かに間違っていない、何も努力せずに自分の限界を位置付けてしまうのは愚かなことだ。
しかし勝手に他人によって決められるものでは決してない。
そんなものはクソくらえだ。
誰かが行き当った時、『一緒にどうしようか考えよう』、そう言って肩に手を置く、それだけでも違ってくる。我が身可愛さで避けてしまう者こそ、本当の愚か者でなにもしていない者である。
それが相容れない、『敵』という立場で対立する者であるなら尚更だ。
「勝手にてめえ一人でこいつを定めてんじゃねえ!んな見下すような真似を平然とやってるようじゃてめえもそれまでだ!」
「黙りなさい!!」
イントゥルーダーは握った武器でローガンを殴りつける。顔面を横っ面に殴られたことで口の中を切ったことによる血が地面に飛んだ。
「……もういいわ、『狼王ロボ』。たしかにあなたは正しい。他人の価値は自分が決めるものではないってことよね。でも力が及ばないんじゃ意味はない……そうでしょ?」
ゆっくりと、銃口が再びローガンへと向けられる。その重みは先程よりも増しているのがローガンでもわかった。
「ダメ……お願い。彼も私達もここから退くから……ローガンを殺さないで……」
そこで横にいる45が目に涙を浮かべ懇願するように手を伸ばす。その姿は大切な誰かを失ったことがある少女そのものだった。
「いいえ、お断りよ。アッシュの言う通り、ローガン・ブラックは私達にとってグリフィンと同列の脅威よ。ここで逃せばもうチャンスはないわ」
「そんな……お願い……お願いします……」
「……もういいよ、45」
もう堪え切れなくなった涙が頬を伝っていくのを見たローガンは顔を上げた彼女に微笑んだ。初対面では想像したことがない綺麗な顔だなと暢気に思う。本当に、戦術人形というのは人間よりも人間らしい―――。
「さようなら、『狼王』ローガン。あなたはたしかに、私にとっても強敵でした」
チャキッ……と銃が突きつけられる。そしてイントゥルーダーの引き金を引く指に力が籠った。
「ぐっ……!」
「ダメぇええええええええええええええええ!!」
45が叫び駆け寄ろうとするが間に合わない。9と416は奴の視界内にいる為動けない。G11もここまで手出しをしなかったということは物理的に動けない状態にあるのだろう。
(くそぉ……!)
瞼の裏に浮かぶのは桜色の髪の少女。いつも自分を気にかけてくれたあの少女に自分は何もしてない、何も恩を返せていない。
それが無念だ。
そう思い、銃声が聞こえては――――――来なかった。
「な……に……!」
目を開けてみれば、イントゥルーダーの額に一発撃ちこまれている。この場にいる誰かではない、第三者に。
銃声はしなかった、ということはよっぽどの遠距離射撃かそれなりの距離からのサイレンサーによる銃撃だろう。
そこでローガンは背後へと、イントゥルーダーをヘッドショットできるだけの弾道をある程度予測し目視で探してみる。
そして―――
「あいつめ……!」
―――☆―――
「なんとか、間に合ったみたいね……!」
なにも、終わらない。終わらせない――――――!
先日といっても、投降したのは昨日なのでそうインターバルはないのですが、ドルフロの配信を行っている方のライブ配信のアーカイブを眺めていてふと思いました。『そういえば、意識していなかったけど建造ピックアップっていうのがあったんだなぁ……』。思い返せば私がドルフロを始めて間もないころにもあったのですが、まずはゲームのやり方などを覚えることが精一杯で手を出せるものではありませんでした。物資が色々と種類分けされているゲームでなにを主に残すようにした方がいいのか、と知識がゼロの状態からのスタートだったのでそこまでの余裕はなかったんですよね。いつかまた、何か来てくれないかな。できればAEKとかのマシンガンのピックアップが欲しいです……。
さて今回はボス戦でございました。前回のボスはハンターでAR小隊全員でフルボッコという形で終わらせてしまってたので今回はわりと引き伸ばしてみたつもりです。『ボスってなんなんだろう(白目)』って考えた結果、明確に私の中で答えが出なかったんです(汗)。私が書く作品は大体戦闘描写を細かくし過ぎて後に繋がらないといったような短距離走のような形になってたので、描写はマイルド、戦闘時間は長すぎないように、といった感じを意識してみました。ホントに、戦闘描写のあるラノベ小説とかを売り出してる人ってすごいと思いますよ。私は趣味の範囲内で仕事終わりの時間に書いてるだけなので気が楽ですが、どうしても比べてしまって『むむむ……』となってしまいますね(苦笑)
とりあえず今回はこの辺で。次回で『404小隊』編は終わりになります。拙い作品ではありますが根気よくお付き合いしてくだされば幸いです。
ではでは―――
『マンティコアの武器ってなんなんじゃろ……』