誰も助けてくれない -Can you hear me?- 作:麒麟犬
この短期間の間に何回も来ることになった部屋のドアを三回叩き、中から『どうぞ』という反応が聞こえたところで書類が束になったのを抱えている右腕の代わりに左腕を動かしてドアノブを動かして開ける。中に体を滑り込ませると、そこは先日自分も掃除を手伝ったこの基地の指令室である。正面に本人不在の指揮官への机があり、その右側には副官であるスオミが座っている。
「ほいよっと。とりあえず管理地区の搬入資材のリストと地域の管理報告書はまとめてきた。これだったらあとはハリーのサイン待ちじゃないのか?」
「……ええ、たしかにそうです。ローガンさん、すいません。ここまで手伝ってくださって」
「気にすんなよ。ハリーに頼まれたってのもあるが、困った時はお互い様さ」
以前に比べればスオミの顔色もだいぶ良くなっているように思える。人形に顔色なんてあるのかと思うところでもあるが、力なく笑ってたりもするのだからあってもおかしくはない。
三日前にローガンがハリーから頼まれた通り様子を見に行ったところ、中は酷い有様となっていた。まだ夕方にしては明るい方だと言うのにカーテンは閉め、書類は床に散らばり、副官本人はその海に溺れていると来たらローガンだって慌てるものだ。その日はとりあえずスオミを安静にさせて話を聞き、翌日は指令室の掃除と散らばった書類整理をAR15とROの手も借りて行った。そうしてからはローガンもできる範囲でスオミの方の仕事も掛け持つことし、彼女の負担を軽減することにしたのである。しかしそれでローガンの方は大丈夫なのかとAR小隊からは心配されたが、残業としてちびちびとやっていくだけでも徐々に片付いてきている。とはいっても、商業区の報告書も同時並行でまとめているのだが、今そちらの方はほとんどAR15と45にやってもらってしまっている。彼女らに進捗状況を聞いたところは今のところ順調であり、あともう少しでまとまっているため最終的には目を通しておいて欲しいと言われている。
それだからこちらの手助けにも集中できるのだが、これほどの事務処理はスオミ自身もあまりないのだ。加えて指揮官は不在であるため副官に回ってくる仕事は増える。これでは身体だけでなく精神的にも参ってしまうのは仕方ない事だった。
スオミのチェックが終わった書類をハリーの机に持って行き溜まっている書類の山に積み上げる。ここにある書類の束の先はローガンも手を出すことはできない為完全に自分のできることはない。そう思いながら振り返ると、スオミの横にあったともう過去のものになった山が無くなっているのを確認できた。今はもうすぐ昼食の時間である。
「スオミ、そろそろ昼休みだ。キリのいいところで一旦やめて飯食いに行こう」
「そう大雑把にはできないですよローガンさん。頑張ればあともう少しで、今日いっぱいで終われるんですから」
「その中でさ、今日中に仕上げないとならないのはあるのか?」
座った状態で空元気という単語が似合うぐらいの作り笑いを浮かべるスオミに聞いてみると、彼女は机の端の方に重ねている束の方を見、考えた数秒後にもう一度こちらを見上げてくるが先程とは違い驚いたような表情になっていた。
「……ないですね」
「だろ?〆切がギリギリだったり近いのを優先的に俺がやっつけちまったからなんだが、気付かなかったのか?」
「全然気付きませんでした。手に取ったものの隅から隅まで目を通していたつもりだったのですが無駄だったのでしょうか……」
「そうじゃねえさ。ただ単にお前がそこまで気付けないぐらいに疲れてるだけだよ」
「そう、なのでしょうか……」
そうだよ、と一言と共にスオミの額にデコピンを一発くれてやる。あうっという声を上げて少し赤くなった箇所を両手で覆った彼女に畳みかけるようにローガンは言い放った。
「午後は久しぶりに外で体を動かしてリフレッシュして来たらいいさ。演習訓練でちょっと走って来いよ」
「……そうですね。ではローガンさん、午後もちょっと私に付き合ってくれませんか?」
「はいよ」
ドクターストップも昨日になってようやく取り消され、ローガン自身も久しぶりに体を動かせると思って少々ウキウキしていたのである。午前中は副官殿の手伝いを終えて午後は射撃のリハビリから始めて自分が組み上げた仮想訓練を最終的にこなすつもりだったので何も問題ない。
指令室からスオミと共に出て、昼食場のスプリングフィールドのカフェへと歩き出して数分して、昼休みを知らせるチャイムが鳴り響いた。
昔から学校などの教育施設で流されており今でも使われているものらしいが、ちゃんとした施設で学んだわけではないローガンには懐かしい気分になるというのは今でもわからない。
そう思いながらも体の節々を鳴らしながら歩くと、並んでいるスオミが可笑しいものを見たかのようにクスクスと笑っていた。
「……なんだよ?」
「いえ、別に。あなたとは指揮官も交えての初めての挨拶しましたけど、実際に三日前までわからなかったんですよ」
「あの時はあーなってて塞ぎこんじまってたからな……。がっかりしたか?」
もはやローガンとしてもうんざりする過去の自分の行いであり、グリフィンに来てからも塞ぎこんでいた二ヵ月ほど前のことに頭を掻きむしりたく欲求に駆られる。
顎に手を当てて少々思い出しに耽ったと思ったが、金糸のような髪と共に顔を左右に振るった。
「暗い表情であったのだから何かあったのではないかと思いましたよ。そうではなく単に他人を拒絶する人もいますが、粗方のことはAR小隊の皆さんから聞いていたんです。親しい友を何度も失うことを経験して何も思わないような人ではないだろうと私は考えましたよ。そう思っていたローガンさんが私の仕事を手伝ってくれているのですから、がっかりしたというのはありません」
「……ったくあいつらめ。どこまで言いふらしてるんだよ」
気恥ずかしくなって白髪頭を掻くローガンをスオミは微笑ましいものを見るようにしている。しかしその純粋な視線はやや捻くれ者の彼にはキツイものがあった。
「あ、やめて。そんな温かい目をこっちに向けないでくれ、うわあめっちゃ恥ずかしくなるから勘弁してくれ」
「どうしてですか?私はこの数日間でAR15がどうしてあなたにこだわっているのか少しわかった気がしただけですよ?」
「なにこの子怖い。悪意ってのが一切ないままこっちを天使みたく見てくるんだけどこれ罰ゲーム?体がムズムズしてくるからやめてくれメッチャ走り去りたくなるから」
「廊下で走っちゃダメですよ。急いでいる時は早歩きまで許されてますけど小走りからは基本アウトです」
「わかってますことよ!ああこれ本当に悪意がないのが質わりぃよなにこれ誰か隠しカメラで見てる!?なんか誰かが弱みを握ろうとしているわけじゃないよな!?」
スオミ自身は裏表ない本心を言っているのはわかっているがこれを計算してカメラを通じてみている気がしてならない。実際の話、こういう風にしてこの基地の廊下などの数十ヶ所に監視カメラが設置されているが、それを利用できる人形などはここに何体もいる。例えば正体不明の都市伝説の部隊の隊長とか、最近は健康管理と称して体全体を確かめるオッドアイの少女とか、常にテレビゲームをプレイする欲求を忘れないことで一部では有名で暇潰しにハッキングをしたことがあることが最近発覚したゲーマーとかとか。
……ハリーよ、イントゥルーダーからの情報奪取をこの間されたことがあったということで何層ものファイアウォールを張り直したのはいいが、敵どころか味方に電子的な防衛網が突破されているがそれでいいのか。
むずかゆさに身を捩りながらカフェに到着し、同じテーブルの椅子に座ってこの後食べる料理をそれぞれ注文。それを受け取ってもらってから段々と込み始めたカフェ内を一望できる二階席から一回の方を見下ろした。
「小耳には挟んでいたけど、給仕できる人を雇っていたんだな。スプリングフィールドだけでも十分カフェを運営できるけど、昼飯とか夕飯以外でも利用できるようにする為だって」
「そうですね。前線には出せませんが、指揮官も仕事を求める人達の要望にできるだけ応えるにしています。最初は兵舎の清掃員からでしたけど、今日からはこうしてカフェとかバーの運営に携わることになる人が来ることになりました」
グリフィンの管理地区、というよりハリーが基本指揮官として常駐する南アメリカ支部の基地の地区では要職者に宛てての仕事などの求人票が張り出されている。農畜などの食料関係の量産から溶接や機械類の修理など様々で幅が広い。そんなちらほらと張り出されている中にはグリフィンのスタッフを募集するものもあるのだった。スオミの言う通り、最初はローガンも利用する人形達の私室などが割り当てられている兵舎の清掃員から始まり、今ではUAVや輸送機などの整備員なども雇われている。たまにローガンが仲良くしているブラックバードの元に向かうと少々危なっかしい手つきで整備の仕方を教わっている、ローガンとあまり歳が変わらない若者がいたりしている。その者に教育者の男から自分が紹介されたとき、彼はローガンが前線で戦っている人間の兵士ということに心底驚いていた。
それもその筈である。
「保護区の方たちも今では鉄血と本格的に戦っているのは私達戦術人形だということを知っていますからね。本来は戦う必要があなたにはないというのに敵地で銃を撃っているのは驚くのも無理はありませんよ」
「まあ気持ちはわからなくはない。民政組織を立ち上げて自衛目的で戦っているんじゃなくてわざわざ奴らに奇襲を掛けているんだからな」
スオミは先に来たミートソーススパゲッティを口に運び、一口目を租借し終えたところでナプキンで口元についたソースをとる。ローガンはまだこない自分の料理を待ちながら水を飲んだ。
「でもグリフィンに来てからもまだ戦うのですね。指揮官から頼まれたからかもしれませんが、私達の教官としてここにいるだけでも良かったのでは?」
「教官と言われるほど俺はまだ歳食ってないし経験もない。技術がある程度備わっているだけで見たものの数は大したことないだろうからな。それに俺の見てくれも教官と言われてもおかしくないような外見をしているわけではないだろ?」
「……まあ、たしかにそうですね」
「笑ってくれていいぞ。俺だって今教官と言われたりするのはさすがに寒気がするどころかそこに居辛くなる。それよりも正解らしい正解がない戦術を模索するのを手助けして欲しいぐらいだ」
「笑いませんよ。鉄血だけでなく有効的な対人戦闘も教えてくださっているのですしね」
笑いあっていたところでローガンが注文していた料理が到着する。
実は彼の趣味としては、極東の国である日本関係の物品の収集である。アメリカなどにある機械類などよりも日本の物の方が丁寧で精巧に作られているという理由だけでなく、今から六百年以上前に建造されていて最近まで残っていた城など欧米では石造りのものよりも惹かれ写真なども集めている。つまり、食や文化に関わらず日本大好きマンだった。
そんな彼が注文したのは、カフェの昼食メニューとして追加された『鯖の味噌漬け定食』である。給仕する料理人の中に日本人がおり、その者が作った料理が美味いとスプリングフィールドからのお墨付きの情報を事前に入手していたため今日の昼食はこれを食べようと決めていたのである。
運ばれてきたトレーの上には橙色の味噌につけられた鯖とお椀に盛られた真っ白の白飯と胡瓜の漬物。さらにはキノコのお吸い物といった以前にネットの画像で見たことのあるものと違いがほとんどない。
目の前の料理の光景にローガンの頬も緩む。
「ローガンさん、なんかとっても嬉しそうですね。具体的に言えば、念願の銃器などのオプションパーツが届いたみたいな感じです」
「残念だが俺の喜びはそれよりもクライマックス。子供からすれば数多くある掘り出し物の中から欲しかった玩具が見つかったような気分だよ!うぉおおお、いただきます!」
日本の作法よろしく、両手を合わせて食事前の挨拶を言うと箸を使ってみる。自室で暇があれば箸を模した木の棒を片手で持って扱う練習をしていたので食べるのに問題はなかった。
「もぐ……鯖のこの風味とライスの相性は抜群だとあったけどなんかわかる気がする!むぐ……口内のリフレッシュで漬物は癖があるけどこれがまたいい!ずず……この汁物の味はコンソメとかにはない繊細さがあって飲んでて飽きねえ!むぉおおおおお、鯖どころか日本料理ってこんなに美味かったのかマジで最高!!」
「……ローガンさん、その魚を一口もらえます?」
「むおっ!?大人げないと言われても構うもんかい!誰かに取られるぐらいなら全部流し込んでやるぜいくぞずぞぞぞぞぉおおおおおおお!!」
そんなことを言いつつも良心が働いて鯖の一切れだけをスオミに残して皿の端の方に残しておくローガンである。イタリアンにもない味わいにスオミは頬を綻ばせ、次回は自分も注文してみようと思った。
鬼気迫る勢いでバクバクムシャシャシャー!と口の中に詰め込んでいく姿に周りの人形達もやや慄いているが、同じものを注文して一口目を口にした彼女達も夢中になって食していった。
和食を食す日本人にはあるまじき流し込みではあるが、全てを綺麗にたらい上げたローガンは食後の為の緑茶をちびちびと飲む。独特の苦みとお茶自体の熱で食べていた時の興奮が落ち着いていき溜まっていた疲労が解き解されていったような気がした。
「はぁ~……こんなに満足度の高い飯は今までなかったな……ご馳走様でした」
「最後は味わうことなかった気がしますが、でも確かに美味しかったですね。量が少ない気がしたのですがそれも日本の料理の特色ですか?」
「腹八分って言葉があるんだよ。もう腹に入らないほど食うんじゃなくて、ある程度セーブして食事を終えるってやつだ。健康的にもいいし美容にもいいとかなんとか」
その台詞にピクリッとスオミだけでなく中年の男性や女性スタッフも反応したのだが感慨に浸っているローガンは気付かなかった。
それどころか、息せき切って彼らの元に現れた人形がいたからである。
青のリボンでツインテールにしている赤髪の上にのっている黒のキャップ、海賊を思わせる服装と男性であれば一瞬は目を引かれる胸元が特徴であるハンドガンの戦術人形、アストラであった。
「ああ、ちょうどよかったです!スオミ、本部の方から客人です!指揮官はまだ本部から動けないので副官のあなたが来て欲しいと!」
「えっ!?わ、わかりました、ありがとうございます!」
スオミは急を要することであることをアストラの様子から察し、椅子から立ち上がると小走りで廊下を走って行った。
『あるるるぇ~?言ってることとやってることが全然違くね~?でもまあ基本はってだけだしいいのかな~?』とA☆H☆O面になっている釘刺され男だったが、会話の内容で気付き突然の来訪者に聞き返した。
「『ちょうどよかった』って言ってたよな?俺にもなんかあるのか?」
「そうでしたすいません。ローガンさん、あなたもスオミと同じく客人のところへ向かってください」
『なんでだ?俺なんかいけないことでもしたか?』と最近の行いを振り返りながら首を傾げるローガンにアストラは続けてこう言ったのである。
「伝言ですが、『シャドー隊のチームメイトになり得る人形を連れてきた』とだけ言われましたよ」
それを聞いたローガンはスオミが残した食器類もまとめて片付け、廊下ではなく外を走ってハリーのところへと向かった。
久方ぶりに全力で走ったが、脚に重石をつけたかのような感覚だった。
――――――
「OTs-14こと、グローザ14。あなたがローガン・ブラック?」
「ああ、そうだ。『シャドー1』のローガン」
「見た限りじゃ、そんなに経験を積んでいるようには見えない。精々、民兵の相手をしているのが関の山じゃないかしら?いつ死んでもおかしくないわね」
顔を合わせるなり初対面の人形になかなか辛辣なことを言われたローガンだがまだ状況が全体的に呑み込めていない。言われたことによる腹立たしさよりもよろしくする気配がないことにやや不思議に思いつつ、グローザの隣にいる女性に目を向けてみる。右目にモノクルをつけている黒髪のその者は、グリフィンの女性用の制服の上に明らかに上級地位の者にだけ着用を許されているようなコートを肩にかけていた。
何者だ、と問う必要はなかった。横にいるスオミがその答えを出してくれたからである。
「お久しぶりです、ヘリアンさん。……いえ、ヘリアントス総司令。大分遅れましたが出世おめでとうございます」
「よしてくれスオミ。総司令になっても結局はやることが増えただけで本質は変わらない。何よりも君のところの指揮官にも負担が大きいのだから私はむしろ謝らないとだ」
ヘリアンという女性とスオミは親しげであることから、どうやらお互いに既知の仲であることが窺える。
それにスオミは今、彼女の事を『総司令』と言い直した。過去に民政組織に身を寄せていたローガンからすれば最高責任者の人間というのは、何もせずに部下に負担を押し付けるか、無能で人の事をボードゲームの駒のように扱うか、偽善者であり自分のエゴを押し付けてくる人間が多かった。
しかし本部からの客人ということでローガンとしては苦手な人間が来るかと考えたのだが、二人の様子を見る限りではヘリアンがどれにもあてはまらないのではないかと思える。
一旦区切りがついたのか、総司令官はこちらのほうに歩み寄り手を差し出してきた。特に断る理由もないのでローガンは素直にその手を取った。
「はじめましてだな。私はグリフィン本部で最高責任者として指揮しているヘリアントスだ。一応君に関してのことは紙面上ではあるが知っている。グリフィンとしては久方ぶりの人間がリーダーの部隊ということで注目している」
「……まあ一応名乗っておきますよ。ローガン・ブラックです、総司令官殿」
「やめてくれ、総司令と呼ぶのは。私としては普通にヘリアンと呼んで欲しいし、あいつの友人である君の事のことは大切にしたい」
「その口ぶりからすると、ハリーの先代指揮官と言うより親父の事を知っているようですね、そう……ヘリアンさん」
『ああ、そうさ』と頷くヘリアンと一緒に来たグローザを基地内にローガンとスオミは案内する。客間に通した彼女達にスオミはお茶を出し、対面のソファに座るローガンの隣に腰を下ろした。
出された紅茶を一口飲んで唇を湿らせたヘリアンは一息は吐きつつ客間内を見まわす。
「ここも私が以前来た時のままかスオミ?ソファとテーブルの配置といい、置かれてる棚や資料もそうだが記憶の中の者と全然変わらない気がするぞ」
「そうですね、指揮官もあまり変えたくないようでここの家具はあまり動かさないように言ってます。もし掃除などで動かすのだとしてもちゃんと元に戻すようにも厳命してますよ」
以前ローガンがここの基地に来たばかりの時に一通り案内されたが、ここの物品の配置が全く変わらないと言うのは初耳である。単に興味がなかっただけというのもあるが、ハリーからの説明にもまったくそのようなことがなかったのが起因だった。
見える範囲で注意深く見てみれば目の前のテーブルや座っているソファの真下の床板だけの経年劣化が進んでおりそれ以外のところは古くなっていることをあまり窺わせないだけの差が生まれていた。
「さて、ここに私が来たのはいくつか理由があるのだが……まずはここの指揮官のハリーではなくなぜ私がここに来たのかを説明しようか」
「なぜ、でしょうか……?」
「心配するなスオミ。別にお前の指揮官が酷い目に遭っているとかではない」
不安と心配の色が濃いスオミが一番案じている人物の安否を告げたヘリアンはもう一度紅茶を一口飲んで口元からカップを離した。
「先日のワシントンD.Cの件でグリフィンに対し、作戦指揮をとった人員の引き渡しが改めて要求されたんだ。ホワイトハウスでの取り調べでは奴らにとってからすれば満足がいかなかったのだろう。それにあいつは応対しているんだ」
「まだ食いついてくるのか政府の連中は。鉄血からすればあのVIPは格好の餌だったのが今ではわかってるのに、自分達が蒔いた種の摘み取りをあいつにさせているのかよ」
「全く何もしていないわけではないが、つまりはそういうことだな。鉄血の侵入経路の洗い出しやそれに関する情報分析を今でもあいつの指揮で進めているだろう。今回私が来たのはこの後説明することの代役だよ。それとだが……」
総司令官がこの場にいる全員に目をやり、なにを確認したのか表情が一層引き締まる。彼女の眼光は元から鋭いものだったがより一層のものになり正面にいるローガンを見据えた。
「あいつから、無視することは到底できないことを聞かされたぞ。全世界による戦争、世界大戦。私はそれを聞いて第三次世界大戦の延長戦どころか第四次のものになりかねないと考えているのだが、君はどうかな?」
単に前線で戦う兵士であるローガンに語り掛けているのでなく、同じ問題に直面している同志に尋ねているかのようだった。逸らすことなく真っ直ぐに目線を定めるヘリアンに、最近はローガンも緩めていた戦線に立つ者としてだけでなく人間としての考えを話すことにした。
「それで間違いありません。現にイントゥルーダーは生活などにおいて問題に直面した民政組織に援助と同時に見返りを求めての停戦協定を締結させて人類から情報を搾取していました。奴は自分の口から彼らに別国の武器を流し、アメリカからすればライバル関係にあるロシアに兵器などの情報を流したと証言しましたし間違いないでしょう」
あれから幾分状況が変わった。悪い方に、だ。
まずは世界情勢だが、アメリカ並びにロシアやイギリスにイタリアどころか中国などの極東の国までの緊張状態が高まった。情報をハッキングして入手した45によれば、彼らの軍事基地にも嘗ての特殊部隊が展開しそれぞれで目的としていた情報などの奪取が行われた。兵器の設計図に留まらず、それぞれの政府が隠していた機密情報が遠回しにも盗まれている国もあるのだとか。
そこで阻止に動いた自国側の政府側の部隊が交戦し、それぞれで損害を被ったのだというのだから目も当てられなくなってくる。アメリカ側は政府よりも戦力を蓄えているPMCであるグリフィンが動いたため他に比べれば軽いが決して無視できるわけではないだろう。ここからも血で血を洗う戦いが起こるのは避けられない。
次に入手した情報処理。元アメリカ陸軍基地にてロシアの精鋭の特殊部隊であるスペツナズと交戦し目的を達成したM4達。彼らが遠隔送信していた黒のデータファイルが示す数字とアルファベットの解読を彼女達が帰還してから解読しているが、何かしらかの『座標』であることが確認されたらしい。何に対しての座標なのかは現在調査中であるが、進展することはあまり期待できなさそうだった。そしてAR15が発見した強化プラスチックの容器だが、中に微量に残っていた原子の解析からしていった結果、生産国は不明だが高濃度の酸素であることが判明した。しかもただの高濃度酸素ではなく金属類を腐食させるのに特化したものである。実際の話、地球上からとれる鉄鉱石というのは酸化鉄と呼ばれても間違いない。そこから加工などを行う前に精錬して金属に交じっている不純物を取り除くが、鉄鉱石などの原石で無くなった金属類は原子的に不安定な状況なのである。錆と呼ばれる腐食は精錬とは逆で酸化鉄に戻るものであり、解析で判明した高濃度酸素はそれを急速に行わせるものだった。
今グリフィンの情報処理班からは多忙のハリーではなく、自分に直接通達されたのはここまでである。現在も暗号パターンが同じであるブラックボックスと『鍵』の解析は続けられている。
ヘリアンはハリーから陸軍基地の事を掻い摘んで伝えられていたらしいが詳細の事は知らなかったらしい。緘口令を解かれたため陸軍基地で得た情報も話したローガンの話に静かに耳を傾けながら適宜質問し、隣にいるスオミと斜め前にいるグローザも口を挟むことなく聞いていた。
「……なるほど、やはり状況は芳しくないな。鉄血の連中が日々動き回っているのはこちらでも掴んでいたが、そこまでのことをしていたことは把握していなかった」
「無理もありません。それに厄介なことですが、俺達の動きを監視しようと呼びかけている連中もいます。近いうちどころか明日にでも拘束するようなことを言われてもおかしくありません」
「それで、君は次に鉄血がどのように動くと思う?我々とは違い、『群』でなく単独でも奴らと戦ってきた君の経験からすればわかることはないか?」
「そう、ですね……」
ハンターを撃破してから音声ログを送信してきたアッシュの出方も気になる。どうやらイントゥルーダーの行動にも一枚咬んでいたらしいが明確な情報もない。
過去に一度接敵したことがあるがローガンは撃破の為の罠を作っていただけで彼女の姿を一度も見たことがない。見たことがあるのは、亡き相棒一人だけだ。
まだ鉄血の動きに関して必要な情報が揃っていない。45も時折探っているらしいが政府側のデータベースには大したものはなく無駄の一言で終わってしまうことが多いらしい。政府側の出方もわからないのでは対策の仕様がない。
「……すいません。何も思いつかないです」
「そうか。いやすまない、無茶ぶりだった。常に最善の結果が出せるとは限らないのがこの世の中だし気にしないでくれ」
スオミにもう一杯の紅茶を頼んだヘリアンは最大の問題は済んだとばかりに表情を緩め、柔らかい笑みを浮かべた。それを合図と受け取ったローガンも幾分気持ちを緩める。
ここまで真剣に上の者と話すことなど久方ぶりであったこともあり、精神的にどっと疲れが押し寄せてきた。
そんな様子を見ていたのか外から来た人形はこちらにキツイ視線を向けてくる。
「さっきの話だけで根を上げてどうするの。鉄血との戦いは銃だけでのものではないともう知っているのだから覚悟を決めなさい」
「……うーっす」
「そう言ってやるなグローザ。ハイエンドモデルの鉄血を短期間で二体相手にして生き残ったんだ。これぐらい大目に見てやれ」
やや口から自分の精神体が出かかったがすぐさま引っ込める。注ぎ直された紅茶を一口飲んだヘリアンは視線を横にスライドさせ、隣のグローザに固定する。
「それで次にここに来た理由だが、このグローザが隠密特殊部隊『シャドー隊』の一員としてなり得るかどうかをたしかめに来たんだ」
「なり得るってことは、まだ確定じゃないんですね」
スオミは刺々しいグローザの雰囲気に少々おどおどしながらも彼女のカップにも紅茶のおかわりを注ぐ。彼女はそれに対し礼を言うこともなく静かに見つめている。
「ああ、そうさ。シャドー隊の扱いはこっちとしてもいい意味で困っているんだよ。隊長であるローガン君の戦闘力は申し分なしだし電子関係にもそれなりに明るいと来た。何より潜入にもうってつけだから作戦に起用でできる幅も広い。ただ、人形でないのが少し残念だったが」
「……脳だけでも人形の体に移せと言われてんのか俺」
「そうじゃないさ。メンタルモデルのバックアップが取れないAR小隊の彼女達以上に君の扱いは慎重にしなければならないんだよ。色々とあの指揮官と話し合っているのは私も知っているし、内容的にも可能であるから許可しようと思っている。ただ、君の動きについてこれる人形がいるかどうかなんだよ」
自分の動きについてこれるかどうか、にローガンは疑問を持った。五体が生まれた時のままで成長したローガンからすれば運動性能が良いのは人形である彼女達だと考えているからだ。実際その通りであり、嘗ての相棒のように両脚をカードリッジを消費しての高機動ダッシュができないし物事の対応もそんなに変わらない。
それなのになぜなのかわからないローガンにグローザは答えを出した。
「知っているとは思うけど、私達人形にも得手不得手というのがあるわ。命中率が高くない代わりに動きが早ければ鉄血を攪乱しての遊撃ができるし、銃弾がばら撒けない代わりに一発一発の射撃が正確なのもいる。でも潜入任務に駆り出せる子はほんの一握りなのよ。加えてあなたと作戦を共にするのであれば状況に柔軟に素早く対応できる人形である必要もあるしね」
「実質その通りだ。今回私と一緒に来たグローザは戦闘経験もあるし、これまでの潜入作戦の全ても成功している。ただ、本人のパーソナルに少々問題があるぐらいで、な」
「問題はありませんよ、ヘリアンさん。私は私で……!」
段々と置いてけぼりになっていったが、結局はグローザが『シャドー1』の、自分の相棒になるかどうかだろう。たしかに自分に対しても遠慮なく言ってきたあたりに少し思うことはあるが、言ってしまえば『それだけ』だ。これまでも作戦に同行する隊員の中に厄介なのはいたが、それでもなんとかなったのだ。考えてみれば、誰とでも初対面から仲良くするというのは無理な話だ。
やることは変わらないと判断したローガンは頷いた。
「とりあえず了解です。俺も今日からまた復帰でリハビリとして色々とやっていくんで、それを見て行ってもらうってことでいいですよね、ヘリアンさん?」
「かまわないさ。なんなら共に射撃訓練からやっていくのもいいだろう。それと私も気になっているんだが、ここの演習訓練の難易度はそれなりに高いと聞く。実戦に基づいた応用だけだというのになぜそうなのか気になるから君さえよければこの後やってみてくれないかな?」
「……まあ、体が持てばいいですけど」
他人の目があると集中力が削がれてしまうローガンはジロリとグローザに睨まれたが、結局は何も言ってこなかった。
お前は俺の母親かよとツッコみたくなったが、よく見てみれば彼女の左手薬指に銀色のリングが嵌っている。人間であればそれがなにかを問う必要はないが、まだ戦術人形のことに関してはまだよく知らないローガンには少々気になった。
しかしそれを聞く間もなく立ち上がったヘリアンがスオミに尋ねたことの内容でそれが頭の片隅の方へと飛んでいった。
「さて……スオミ、先代指揮官の墓参りの調節を行いたいんだがいいか?」
「……あ、もうその時期なんですね。わかりました、この後必要なものを用意します」
「先代指揮官の墓参り……?それってまさか……」
「ああ、そうさ。私がここに直接来た最大の理由はそれさ」
ソファの方から客間から外に面した窓の方へと歩いていった。心なしか、反射して見えるヘリアンの表情が憂いを帯びていながらも懐かしむようなものに見えた。
「一週間後にハリーの父親、『トーマス・クロスハート』の命日だ。亡き友のためにも、ここにいる連中全員であいつの死を悼んでやりたいんだよ」
誰かの死を悼む行為。それに言葉では言い表せない苦手意識にローガンは空を仰いだが、そこは全く変わっていないことを窺わせる天井しかなかった。
――――――
ビーッ!とブザーが鳴ったピットを走り抜けたローガンは持ってたP226のマガジンを抜いて装填されている弾丸を抜いて右脚のホルスターに戻し、今は弾倉が空になっているハニーバジャーのセーフティもかけ直す。それから正面の方に戻り電光掲示板に表示されたタイムレコードを見てみる。
「二十四秒……う~ん、ブランクがあるとこんなもんか。大体はわかっていたけどこれはこれで凹んじまうな~……」
「やっぱり久しぶりだと勘が鈍っちゃうわよね。反射神経とか状況判断もいつものようにいってるわけじゃなかったようだし」
溜息をついたローガンの成績を見て話しかけてきたのは416である。
ローガンが銃を持ってこちらに来た際にここで訓練に励んでいた人形達の中で一番早く反応したのは彼女だった。彼がバジャーのマガジンに弾丸を装填していく間に彼女はピットを走り、敵を模しているターゲットなどを撃っては走りナイフで薙ぎ払って戻ってきた時に表示されたのは最高速の『十九秒』。演習訓練のランダム配置のようにこれもそうなのであり、配置がローガンと416のものも違っているため入れ替わったらどうなるかはわからない。それでも溜息をこぼさずにはいられない。
ガシャリッと音を立てて銃器を休憩スペースのテーブルに置いてから椅子に座ってローガンは一息つくと、向かい側に416が飲料ボットから自分の飲料水と同席者への缶コーヒーを持って渡してくれた。
「サンキュー……っとここの缶コーヒーは苦いだけだな。持ってきてくれたわけだし贅沢は言ってられないけどカフェインが抽出できてれば問題なしじゃねえんだぞ……」
「カフェインレスのでさえもちゃんとコーヒーとしての苦みは出せているのに、それときたらただただ苦いだけ。本当にコーヒーを飲み続けてきたわけでなければ砂糖やミルクを入れないと飲めないわよね」
「たまにであればこういうのもいいけど、恒常的に飲み続けるのはごめんだ。メーカーに問い合わせてやろうかこんちくしょうめ……」
しかしまあ、グリフィンに来てから水以外の飲み物を飲めるようになったのはローガンにとっても一つの幸福だろう。紅茶よりもコーヒーを選ぶ彼からすれば、基地に帰還しても飲むものというのは殺菌されて飲料水として消毒した水しかなかったし、良ければ炭酸水、さらに運が良ければコーヒーといった具合だった。炭酸がはじける甘いのは保護区の子供たちに優先的に流していたので飲めるはずもなかったし、日本イエスマンであれば一度は口にしたいと思う緑茶などは到底手に入る筈もなかった。
苦いだけの缶コーヒーを一飲みで空にし、次にまたピットに入る為の準備をすべくマガジンに弾薬を詰め始めたローガンに、416は尋ねてきた。
「そういえばローガン、あのお高くとまってるお客様はどちらに?」
「……グローザの事か。あいつもピットにこの後入るけど弾薬類の補充とかで一旦戻って行ったっけかな。射撃訓練からずっといて俺が実演した後にあいつもやって良い成績たたき出してたよ」
「午後になってからずっと行動を共にしているようだけど、仲良くなろうとしている姿勢が見られないわね。あなたのことを値踏みしているような目だし、命を取られることがなくてもなにかしらかの怪我を負わされる覚悟した方が良いんじゃないかしら?あれは死ななければ何をしてもいいと考えている奴の目よ」
「ご忠告どうも。できればその予測が外れていることを願うよ」
バジャーの弾薬を込め終わったので今度はハンドガンP226の方に取り掛かる。
そうしていると、背後から肩を叩かれたためそちらの方に振り返った。
「よう、ローガン。久しぶりにこっちの方で見かけたから声掛けてみたけど、ようやく許可が下りたのか?」
「おおう、バルソクか。相変わらず音漏れのするヘッドホンを変えねえんだな」
「別にいいじゃないか。ビートに乗って撃って走ることの何が悪いってんだよ」
「悪いとは言わねえけど、戦場じゃ音にも気を配ってる俺からすればあまり考えれないんだよ。でもマシンガンじゃ、お前さんを俺の部隊に推薦しようとは考えていたんだ」
「おおっと、そいつは嬉しいことを聞けたな。そんじゃ時々教わっていたことは無駄にならずに済むってことだし、是非頼むよ」
マシンガンの人形の中では一番打ち解けている『AEK-999』こと別名『バルソク』と正面から軽く拳を合わせると、彼女はヘッドホンを首にかけてローガンから見れば右側の椅子にドカリッと腰を下ろした。
バルソクとはマシンガンの射撃訓練から知り合い、陽が照っている昼間の戦闘よりも夜戦に関しての理解があるためお互いに仲を深めるのも時間がかからなかった。性格面の方も友人としての相性が良く、今ではトンプソンも交えて夜での酒も一緒にすることもある。
「そんで、病み上がりからの最初のピットはどうだったよ?その様子からすれば、大体は予想できるがな」
「だったら聞かないでくれよ。そこの416の成績と比べてゲンナリしてたんだからよ」
「ちょっとローガン、私が悪いわけじゃないのにかませ犬にされるのはごめんよ。それにAEKをシャドー隊に推薦することって……」
「単純な話だ。こいつはたしかにアサルトライフルのお前達やサブマシンガンの45達よりも動きが幾分遅いがその分の火力がある。タイミングを合わせて同時制圧の射撃は別銃でやるにしても問題はないぐらいに練習すればいい。たしか最近の演習では潜入系のをやってるんだっけか」
「現在進行形で訓練中だぜローガン。言われた通り、携行重量も考えてのサブマシンガンを選んでいるさ」
ハリーからの特にこれといった指示はなかったが、自分で選抜して鍛えてはならないということは言われていない。屁理屈のようなことではあるが、ローガンとしても一から教えてみたいと思うことはあるのだし仕事の幅を増やすことも決して悪いことではないだろう。もちろん、バルソクはマシンガンであるため敵を掃射するために撃つのが本分だが、彼女がどうすればいいのかという意欲を見せたため指揮官様には後々報告するということで密かに訓練を共にしていたのだった。無論、いつしかROとグリズリーに言ってた通りに元々の役割を忘れないでという前提を置いてだが。
何よりもCQCの合同基礎訓練にも後々になってから追い付き自分から教えを乞いに来たのだからローガンとしても手塩を掛けて育ててみたいのである。
そんな教え子がいくつかの資料を持ってた端末に表示させ、いくつかの質問にローガンも可能な限りに答えて見せた。
「……たしかにその方が早く対応できるし効率的だな。でもそれだと?」
「うん、こうした場合だとナイフで対抗される。私の銃じゃそれを防ぐのが関の山だよ。ここだったらローガンはどうする?」
「俺だったらハンドガンとナイフに持ち替えてエントリーするよ。お前さんじゃこういう閉鎖空間じゃ分が悪いし、装備が軽量なチームメイトに先頭を任せるのが無難だな」
「そっか。前に言ってた仲間に任せるってのはこういうことだな?それぞれで装備とかに違いを持たせているのは役割分担を兼ねているってのは……!」
「そういうことさ。そんでもってお前さんにはサブマシンガンがあるのだから―――」
見た目に寄らず熱心にメモを取ったりするところもローガンは気に入っている。ちゃんと自分で考えて回答を出してから自分に質問してきてくれているし、頭の回転も良いため教え甲斐があるのだ。分からないところがあれば質問し、その場で閃いたことがあれば経緯を追って説明してくる。その中にはローガンにも思いつかないものもあるのでこちらも勉強になるのだった。
二人でテーブルに資料を広げ、話し合ってる様子を見ていた416はまるで兄妹みたいだと思った。
そうしていると、ビットの方からビーッ!とブザーが鳴り誰かの演習が始まることを示した。
「誰かまたピットの訓練を始めるのね。あっち見に行くけど二人はどうする?」
「んじゃ、一回中断しておくか。バルソクも頭がパンクしかかってるしな」
「んがぁ~……またあとでよろしく頼むローガン~……」
一旦区切ったローガンはバルソクを連れて416の後に続く。休憩場所へと先程歩いて来た道から途中から逸れてピット全体を見渡せる高台へと続く階段を上っている最中にブーッ!と鳴り響き訓練が開始される。高台に到達して位置に着いたローガン達は誰がピットに入ったのかをまず確認したがそれに目を見張る。
「グローザか……」
長いクリーム色の髪をたなびかせている戦術人形の少女がピット内を走り抜ける。
その光景を見たローガンは、彼女が本部からこちらの方に遠方からはるばる来ることになったのか後々になって知ることとなる。
あぁん、あんなに溜めてた資材が溶けちまったよなんてこったい。というわけで、部隊の戦力増強の為に先日MGとかSGのレシピをぶん回したのですが、目的の人形は出ず血反吐を吐いて終わりました。しばらくは後方支援に全力を注ぐことになるかな……ああもう、なんでこうなったい。コンテンダーが出たのが悪かったのかな……?それともあの友人の呪いか……?
さてさて、今回は情報整理を前提にしての話となっております。私も物語の要点をメモしており、それがどこまで進んでいるのかを時折確認しているのですがやはり心配になったりします。昔から見落としが多かったりと雑な人間なのでこういうのに少々弱いんですよね~。物語中では腐食を急速で促進させる高濃度酸素というのは現在ではありませんし、第一そんなのが戦場で投入されるのかと聞かれたらたぶんないと思います。ですがまあ、近未来というのは何が生み出されているのか分かりませんし、銃器とは別のもので戦うことになったとしてもおかしくないのではないでしょうか。実際、こういうのを考えるのは楽しいものです。
……う~ん、話すことがなくなっちまったい。でもまあ、これだけは~っていうのはないので今回はこの辺で。
ではでは―――
『AEKのあのバレルについているのが初見はサイレンサーに見えたのはここだけの秘密』