誰も助けてくれない -Can you hear me?- 作:麒麟犬
ローガンの子供の頃にあったカーナビというのは目的地までの道のりを示した単純なモニターだった。衛星から送られてきた地図の道の上に赤や黄色などで混雑状況を知らせたり、急がば回れとばかりに時間短縮できる無茶苦茶な通路を表示させたりと彼にとってもこれといった良い思いではない。
しかしグリフィンというPMCの一員になってからは最新のナビシステムに度肝を抜かれたものである。なにせ、入力さえすれば自分が通るべき道筋がわかる上に片道ではないルートがわかるのだから。つまり、パターン化されているルートのうちの一つを選択すれば、単純に行って帰るの往復するルートが表示されるのではなく、見回りをするのにあたって走行する道筋が表示されて辿っていけば次第に帰れるというものだった。
その日の仕事は警察という治安組織が行っていた仕事の一つであるパトロールをするものだった。いや、現代においても治安組織となる民間人を守る仕事に就いている人もいるのだが、今では昔ほどの力はないとされている。
「なんでだと思う?」
謎かけとばかりに今回のペアはこちらに聞いてくる。
グリフィンのパトロールの仕事では、かつての警察のように車に二人で乗って行う。今回は初めてということで、AR15がローガンに教えるということでついて来てくれることになった。
ローガンは運転することになる車両のエンジンのメンテナンスが済んでいるのかの確認ということで開けていたボンネットを閉め、助手席側で全開にしている窓に頬杖をついてこちらの返答を待っている少女に言った。
「拳銃の携帯は許可されているんだろ?となると扱う人間の方が寄せ集めの人材であるってヒントもあるし、緊急時の時の為の訓練があまりされていないから……じゃねえのか?」
「うん、それも間違ってないわね。でも結局は犯罪を起こす側の力が増強されているというのもあるのよ。今じゃ外部の民生組織の方に小銃が多く出回ってて町を見回っている人たちに十分な装備が回ってきてないの。それに乗じて、よからぬことを考える悪者たちは悪知恵を働かせて銃を奪ったりしながら力を上げているのよ」
ボンネットから助手席側の方に歩いていってAR15の前に行ってみると、その顔は機嫌が良さそうに笑っていた。二日前の夕方にリハビリの訓練を終えたローガンに急に来て後日からの数日間の仕事が何かを言いに来た際もこんな笑顔だったっけかと思い返す。
「そうだったのか……。にしても随分と機嫌がいいみたいだな。何か良いことでもあったのか?」
「そんなことはないわ。ほら、今日行くのは前線じゃないんだからそのニット帽を取ったら?武装も拳銃だけでいつもより動きやすいわけだし、少し気を緩めた方が良いわよ。それにそのままじゃ私達側じゃなくて犯罪者側みたいに思われちゃうし」
「別にいいじゃねえかこれぐらい。それに拳銃しかないからこそ、気を引き締めようとしていてだな……」
「何かあった時は私だって自分の銃を使うから大丈夫よ。ローガンは私のカバーをしてくれればいいんだから」
そう言っているAR15の背後―――運転席と助手席のシートは一つに繋がっているのだが―――には、彼女の分身である『ST AR-15』が収納されているギターケースを模したアタッシュケースがある。緊急時には即座に取り出して対応するために持ち出しているのだった。拳銃も扱えるというのにそうでない理由としては、本格的な犯罪者集団に対応せざるを得なくなった場合でも二人で確保できるようにする為である。
実際のところ、過去にその事例に遭遇したM16とROは拳銃のみで苦労したという。
それはさておき、ヅラをつけてるわけじゃないのに頭を押さえる男と、単に良かれと思っている少女の戦いは思ったよりも呆気なく終わる。
「いやじゃい、年寄白髪だと思われたくないんじゃい。ただでさえ三十代だと思われてる人相なのに白髪でさらに歳寄りだと思われたくないんじゃい」
「誰もそんなこと思わないわよ。それに前に染めたらいいと提案されたてたのに蹴ってたじゃないの。そんな我が儘言ってるんだったら……!」
窓から身を乗り出したAR15の動きは素早かった。ローガンは反応できず、基地内では渋々被っていない黒のニット帽があっという間にとられてまた刈り上げられている白髪が陽の光の下にさらされる。
彼の頭が光ってるように見えたとしたらそれは錯覚であり、白髪が光を反射しているだけだろう。……たぶん。
「よいしょっと!ほら今日ぐらいはこの間の商業区のようにつけないで外に出た方が良いわよ!」
「あっ!?おいちょっと待てって!」
帽子を取ったその勢いで反対側の運転席から下りたAR15をローガンは取り返すべく追いかけた。カーキ色の軍用車両を軸に二人でぐるぐると周りながら追い、時にはローガンが立ち止まって相手の出方を見たりするが当然AR15もこちらの方に車越しに体を向けて半身の状態になる。逆回りしようものなら当然もう一人も逆回転で逃げてしまい追い付けない。
脚力も最初はただただ軽く追いかける程度しか最初は出さなかったが、その程度じゃ追い付けないとわかれば今できる限りの全力を発揮させた。が、こちらは人間、相手は戦術人形。悪行を犯す人間も余力を残して制圧できるようにも設計されている彼女に追い付けるはずもなく、走り回ることしかできない。
それにどうしたことか、AR15は敵から真剣に逃げているような面持ではない。まるで子供達の鬼ごっこのように笑いながら楽しんで逃げているのだ。
「んなろ……ああくそっ!お前さんなんで今日はテンション高いのよ!こういう真似をするの大体はSOPIIだとか9なのにナンデAR15アイエェエエエエエエエ!?」
「ほらほらー。さっさと私から奪い返さないと愛しの帽子は埃っぽい車庫の空気で目に見えない汚れで黒くなるわよー?」
「もう黒いですからね!?いや別に毎日洗っているからとかそんなじゃなくて綺麗にしているからクリーンな筈……!」
「……ちょっと汗臭いわね」
「ホォリィイイイイシットゥ!あああああもうわかったから今日はもう被らないから返して!もうこれ以上俺のメンタルゲージを削らないでくださいまし!」
即興の鬼ごっこが終わり、ローガンの手元に私物のニット帽が返ってくる。ひったくりに近い勢いでAR15の手から取り戻したローガンは走っている間に付いた汚れを叩き落とす。
パトロールが終わって帰ったらここの掃除当番に文句言ってやる……!と胸中で考えていると、彼の目の前にAR15が後ろ手に組んだ状態でクスクスと笑いながら出てきた。
「たまにはこういうのもいいでしょ?私だっていつも眺めてる側だったけど、少しはやってみたいとも思うことはあるのよ?」
「……お気に召したようで何よりだよお嬢さん。でもその為に俺のニット帽を釣り餌にするのはやめてくれない?」
「いいじゃない。気持ちはわかるけど、こういう風にしないとあなたは動こうとしないでしょ?それに―――」
トトッとステップを踏むようにしてローガンの額に触れる。今はそこに傷跡なども何もないが、半月ほど前まではそこに火傷や切り傷を負って出血したため包帯を巻いてたりしていた。そこをまだグローブを填めていない手で優しく撫で、打撲を負っていた左腕の方にまで視線と共に下りていき、背中を見るように首を傾げた後でもう一度こちらを見上げてくる。
いつもは宝石や青空を思わせるその目には、安堵の色があった。
「―――もう大丈夫みたいね。よかったわ」
「……まあな。でもお前、俺の母親かなんかか?そこまで心配してくれるのはいいけどもなんだかな」
「無茶するあなたのことだから目を離せないわ。私達人形とは違ってあなたは四肢の一つでも失ったら致命的よ。高機能の義手をとりつけるんだとしてもリスクは伴うんだからもう無茶はできる限り……ううん、絶対にしないで」
「……善処する」
「……そこは絶対にしないって言いなさいよ」
頬を膨らませるAR15の様子がおかしくなりカラカラと笑ったローガンは『わかったよ』と言って片手に持ったニット帽を自分達の車両の後部座席に放り込んだ。
イントゥルーダーを倒し、気を失ってた自分の元に駆けつける以前にも通信が途絶したあの頃からAR15は自分のことを心配してくれていた。そして45によって通信が復旧し繋げてから、世界に向けた陰謀を企てた片棒を担いだハイエンドモデルを撃破してからもだ。ローガンが弱りながらも意識を取り戻したあの時、彼女の表情は安心したようでありながらも帰ってきた家族を出迎えるようなそれだった。だが彼女の心境はどうだっただろうか。それはどうだったのかは今しがたの彼女の行動が証明した。
ここまで自分の身を案じてくれているのだ。絶対とはさすがに約束できないが、博打に出るような策はもうすべきではないだろう。やるんだとしたら、AR小隊の全員が、この少女が危機に瀕した時であり自分の命を投げ出さなければならなくなった時だ。
そう思いながら後部座席の扉を閉めたと同時に、こちらの車両の隣の方から声を掛けられる。
「ローガンさん、こっちももう大丈夫です」
振り返ってみればハリーの副官であるスオミだった。
元から二人一組で班を組んで管理地区内に向かうのだが、当たり前の話だがローガンとAR15の一組だけでは全域を回っていくのは時間的にも厳しい。警察がしていたようにパトロールではグリフィンからは二組が動員し、治安組織に属する民間人達と無線を繋げてから見回りに向かうことになるのである。
パトロールは依頼として定期的に来るのではなく、常に彼らとの定型的な仕事としており協力体制を敷いているのだった。
この基地では誰か特定の決まった人形に固定するのでなく、ローテーションを組んで大体一定期間で任されることになっている。例外はなく、AR小隊にもこのような仕事は来るのだった。
今回はAR小隊に回されているのだったが、最近は机に向かってばかりだったスオミの気分転換も兼ねてもう一班に推薦したのだが、手を振り返したローガンは彼女とバディを組む人形を目線で探すが見当たらない。
「……スオミ、お前の相方は?」
「あっ、それは……」
スオミが言いかけたと同時に、本基地へと続く階段に繋がっている通路の扉が開いて見知った顔が出てくる。その人形は、ローガンも知ってる顔だった。
カツカツッとブーツを鳴らしながら彼女の銃が入っていると思われる赤いラインのガンケースを肩に担いでいる人形は目もこちらにくれずスオミのいる車両の方へと歩いていった。
「……あなたも今回のパトロールに出ることなっているの?」
「まあな。とはいっても俺も初めてだから友人に教えてもらいながらになっているよ、グローザ」
「それは結構。でもあなたは前線に行かずにこういう仕事をやっているべきじゃないかしら。こっちなら死ぬ確率はうーんと減るし無駄死にすることはない筈よ?」
「ご忠告どうも。ありがたい意見ではあるけど、俺だって一人で何も考えることもできないわけじゃないんだ。自分で選んだ生き方なんだし自分がミスしてしまったんなら自分で取り返すさ」
ひらひらと手を振って客人であるグローザを送り出したローガンは剣呑で穏やかでない雰囲気を感じ取ったAR15に乗ってもらうよう、助手席の扉を開けて彼女の背に左手で軽く押すように当てた。それに渋々ながらも従ったAR15がシートに座ってから扉を閉め、自分も乗り込むべく運転席側の方に向かう。
そうしてると、並ぶようにしているもう一台の車両の運転席にいるスオミの方も見えるのだが、彼女も彼女で同じ車両に乗り込んでくるグローザとこちらを交互に見て何事かとあたふたしていた。
さすがにローガンもこれから彼女と組むことになっている少女に悪いと思い、グローザはこちらに背を向けていたため、彼女にローガンは右手でジェスチャーを送って謝罪を表現した。
「ローガン・ブラック」
スオミに謝った後で乗り込もうとしたローガンの耳にはっきりとグローザが自分の名を呼ぶ声が届く。体の向きは変えずに右肩越しに彼女の方に振り返ると、髪と同色で感情を宿しているのはわかってもその正体までも悟らせないその瞳を向けてきていた。
「この間言ったこと覚えてるわよね?私は間違っていないと、そうすべきだと思っている。時代の流れは変わって鉄血に限らずテロリストとの戦闘でも最前線には人類が割って入るだけの枠はなくなった。それなのに奴らの軍勢の前じゃ武装していても人間はほぼ無力なのに関わらず、銃を持って前線に出ているあなたのことが私は気に入らない。だから何をしてでもあなたを私達のいる場所から排除するわ。覚えておきなさい」
そう言い残し、グローザはスオミに車を発進させてシャッターから外の世界へと飛び出した。こちらのと同色でバリバリ現役の乗り物はエンジン音を鳴らしながら走っていき、小さくなっていくと次第に聞こえなくなった。
彼女達の行った先を、音の行く先が見えているわけでもないのに視線で追って行ったローガンはシートに腰掛けてから安全ベルトを締め、すでに相方も同じことを済ませているのを確認してからキーを回して始動させる。ドルルルルルルッ!と回転数が上がって完全に動かせるようになっているのをメーターなどのパネルで確認し、ドアを閉めてハンドブレーキから操作しようとして気付いた。
「……ちゃんと話すよ」
何も言わずとも目で思うことを主張するAR15にそう言って、ローガンは車を走らせる。
だが走らせていながら隣の方から感じる彼女の気配が、先程の帽子を巡った時とは打って変わって真反対の感情を抱えているのがはっきりとわかる。彼女に対して抽象的な表現も何もいらない、静かに怒っている人物は声を荒げて怒鳴る人よりも恐ろしいことが少ないがあるのだ。ローガンが過去に知り合った人にもそのように何も喋らずとも垣間見るオーラのようなのが心情を明らかにしている人物というのはいた。
しかしこれまで出会ったどの人たちよりも今隣にいる少女は恐ろしい。ビリビリと自分の肌が振動しているかのような錯覚を覚えた。
何度も使いまわされているせいでボロボロになっている手順表のように渡されている指示書によれば、パトロールの最初は管理地区の方で周囲を見回りながら車を走らせていくだけで予期せぬ事態が起こったりしなければ特別なことをする必要がないようだ。精神医学的にも早めに話してしまうべきだろう。長い間黙り続けていてはローガンにもAR15の双方に良くないことは明白だ。
それに、仕事の内容で注意点があるのであればスッキリした状態で聞いておきたいものだ。
「……そうだな。この間の俺が久しぶりに演習の方に行ってた時だったんだけど―――」
――――――
肉食動物のようにトリッキーな軌道で動きながらもスナイパーのような正確な射撃を披露しピットから出たグローザの方に高台から下りて向かう。真横にいたバルソクと416がダッシュに近い勢いで数段飛ばしながら下っていくが、彼女達ほど自分は運動神経は良くない。若干小走りな程度でコンクリートによる階段を木製の手摺に右手を添えながら降りていき、最下段に到達したら突き当りの右の方に向かうとそこで三人の少女達はピット出入り口横のボードを見上げている。三人ともそれぞれ違う反応を示しており、腰に両手を当てて『ほえ~』と言ってるかのように口を開けていたり、自分の最速レコードを塗り替えられたことで悔しそうに歯ぎしりしていたりする中で、もう一人だけは無表情で自分の成績を見ていた。
ローガンも見てみれば、ボードに出ているタイムレコードは『十八秒』。ついさっき『十九秒』を叩き出した416は踵を返して休憩スペースの方に走り出した。すれ違う瞬間、彼女の口から『私は完璧なんだから……絶対に負けない……!』という独り言も聞こえたため、自分の銃を持ってきて再びピットに入るつもりなのだろう。『たかが一秒』と思うだろうが、戦場で命の駆け引きをする身からすれば『されど一秒』だ。敵を倒すにも人質を救出するのにも危険物を解体するにしても迅速な行動を求められているのだから、その一秒すらも惜しいものである。
テレビゲームでは味わうことがない悔しさを感じはするが、認めなければ大人気ないどころか基地で寝床を共にすることになる仲間に失礼だ。
彼女の人格からしても馬鹿にしているようには感じられないように注意を払いつつ、軽い拍手で両手を鳴らしながら素直な感想を口にした。
「いい腕だ、やるじゃねえかっていうか見事だよ。俺はもちろんだが現時点でこの基地にいる誰よりも早いわけだ。さすが本部の方で特殊作戦についているだけのことはあるな」
ヘリアンの言う通り、戦闘経験から得た実力は本当だろう。彼女の名前でもあり分身でもある『OTs-14』による距離は関係なく全ターゲットに対してのヘッドショットを決め、反応して即座に対応するのは難しいターゲットには瞬時にナイフを抜いて薙ぎ払って見せた。416のようなI.O.P社のハイエンドモデルはもちろん、それなりに実戦経験を積んでいる人形であればできるだろうが、ローガンでは事前に知らされていたりしなければ到底できない。いや、それ以前に地面をバネが一気に伸びたかのような速度でありつつも長い脚でチーターのようにしなやかに蹴り上げて駆け抜けるような芸当はローガンにはできない。せめて自分の脚を早く動かそうと思うことしかできない。
「あんた本当はサブマシンガンの人形ってことはないよな?アサルトライフルなのにあそこまで動けるのはチートじゃんか……」
「別にそういうズルをしてはいない。身体のうまい使い方を覚えれば誰にだってできるものだから、あなたでも努力次第でできるようになるわ」
「そうなのか?だったら教えてくれよ、私もあんな風に動けるようになりたいんだ!」
「ふふっ、もちろん」
最近では戦いにおける勉学に対する意欲があるバルソクはすぐさまグローザから学べることは吸収しようと目を輝かせ、指南役となる人形の彼女はここでは初めて見る無表情とは別のそれにローガンは純粋に意外に思った。ヘリアンに対しては上司と部下のような接し方で、自分には塩対応であったというのに、今のグローザはバルソクの友人のようだったり姉のようにしてバルソクと意思疎通をし出している。
「足の裏全体を一度に地面につけたら着地の瞬間の衝撃が全部脚から体全体に来て負担になるの。人間だとそれが体力を大きく損耗させるように私達の増強モジュールにも負荷がかかる。でも足のつま先のみで走るようにして、着地の瞬間のみに増強させるように意識すれば効率的に走れるわ」
「……ああそういうイメージ……でもその方法で走れるようになるのは平地だけになるんじゃ?坂道だとか階段じゃ無理な気がするんだけど……」
「力の方向、ベクトルの矢印をイメージして。今話した方法でなくても平地を走っていくとして、私達が進もうとする方向とは真逆の方向に力の方向は向くの。ほら、よくコミックとかで土煙を背後に上げながら走ってたりするシーンがあったりするでしょ?あのようにして進んでいる方向に地面を無意識に蹴って前の方向に力を働かせているからなのよ。だから進む角度と蹴りあげる方向が変わっただけであって使えないことはないわ」
「あ~うん、なんとなくだけどイメージ出来てきた。でも頭だけで理解してちゃ意味ないしあとで教えてくれよ」
「悪いけど、今日は彼の実力の程をみるようにヘリアンさんに言われているの。明日でも時間があれば教えるからそれで手を打って」
「そっか……なら仕方ない。これからちょっと自主トレしておくから、明日にでも訂正点でも指摘してくれよ」
『頼んだぞ~!』とグローザに手を振りながら走って行ったバルソクがピットの待機場所からいなくなる。マシンガンの人形であれば悩みの種の一つである移動速度の低さ。他のカテゴリの人形達に比べると明確に出るその差に頭を痛ませたりするのはバルソクも同じであるため、共通の問題を解決することが出来る技術を身に着けれるのなら彼女ならやれることはなんでもやるだろう。
今しがた初顔合わせしたグローザにしていたように、初対面だった自分に向こうの方から技術を学びに来たのだから容易に想像できる。
よくやるよ、と考えているとグローザはこちらの方にさっきとは違い無表情であるような感情を映さない瞳でこちらを見ていた。
「このピット自体はあなたは手を加えているのかしら?実戦をあまり想定せずに作戦中においての集中力と反射神経を養うためにここは建設されているんだと思うけど」
「ご名答、とは言っても半分だ。ここのピットの建設目的はそうみたいだけど、俺が何かをしたわけじゃない。せいぜいコース内の遮蔽物となる壁とかの状態を見て、危ないのがあったらそれを教えてやるぐらいだ」
「本当に?実はターゲットが立ち上がる位置を前とは別の位置に動かしてるとかないわよね?」
「ここのはランダム。俺が本格的に手を加えたのは演習であってこれじゃない。やりたいパターンがあればそれを実際にできたりするけど、なにもしなければランダムだ。ホログラムの位置を戦術思考AIが決める為の基盤を組み立てたり演習場を立てるのに注文を出しただけだよ」
嘘をつくメリットもこれといって何もないので包み隠さずにグローザに教えてやるが、完全に信じ切っていない様子で訝しげにこちらをずっと見ている。
とはいってもこれ以上ここの訓練施設で真実十割で話せることなんてない。一番最初の射撃訓練でもそれぞれのレーンで見える景色が違うだけでなく出現するターゲットも違うと説明したが、その時もグローザは睨むようにこちらを見るだけで何も追加で行ってこなかった。格闘訓練や総合グレネード訓練の時も言わずもがな。唯一食いつくような反応を示さなかったのは障害物をいくつも乗り越えて時間内にゴールへと辿り着く走破訓練ぐらいだ。あれでは一目瞭然だと言えるほど、昔ながらの木材や鉄筋を使ってのコースであったため、改修や修理が何度もされているような跡があれば疑いようがない。
しかし最新の技術を使ったものでは当然のように憮然と食って掛かる為、ローガンも精神的に来るものがある。わかりやすくいえば、イラッとした感情だ。
「ならそっちの方に行こうかしら。あなたが本格的に手を入れたのなら思考面での能力が測れるわ。今はまだ本調子じゃないみたいだけど、あなただって今日中には自己記録をこれからでも塗り替えるつもりでしょ?」
「……まあな。演習自体は訓練のそうまとめみたいにしたわけだし、基礎が出来上がっていないんじゃお粗末な結果しか出ない。まだ思い通りに体が動かせないわけだし今日はやめて復調に努めるさ。ヘリアンさんには後で俺から言っとく」
「じゃあ最後になったらあなたの結果だけでも見に戻るということでいいわよね。タイミングさえよければ最後に走る時に来れそうだし」
そうしてくれとばかりに頷くと、一度楽な体勢になる為に立て掛けていた『OTs-14』のストラップを肩から脇の方へと通すと、ローガンに目もくれずすれ違ってピットから出て行こうとする。
彼女が視界の外に消えたことで一息つけるかと思ったら、ザッザッと立てていた足音が突然消えて立ち止まったことを知らせてきたことで、ややうんざりとした気分に逆戻りになった。
「そういえば聞き忘れていたわ。あなたはなんで犯罪者だけでなく鉄血とも戦っているの?」
グローザの興味なさげな声質から若干感情が籠ったようなそれになったとは思うが、それについては深く考えずに言われた内容に思いを巡らせる。
自分が戦う理由……それはなんだろうか。今になっては困らない程度にできてはいる。敵によって打ち取られた仲間達の仇、鉄血による世界混乱を画策する企みの阻止、そしてアッシュという存在によって告げられた『オアシス』と『パンドラ』を突き止めること。だけどそれだけじゃない。
「……理不尽に死んでいく人達を、減らす為だ。今じゃ戦場に立つ奴らは死ぬ覚悟ができているわけだから命を散らしても文句はないが、兵士として戦う為にいるのだからある程度は仕方ないと思う。だからといって一緒に生還するために何もしないわけじゃないけどな。でもそれ以上に、俺はなにも抵抗できずに対策できずに死んでしまうのが許せない」
「……それがエゴだってわかってる?誰にだって予期できないことがある。流れ弾みたいに自分じゃない誰かを標的に撃った銃弾が命中せずに自分にめがけて飛んでくることが常日頃からあるのよ。戦場じゃなくても日常でもそんなことがあって理不尽に怒られる人だっている。自分は良かれと思っていたことが『無駄』の一言で切り捨てられたり、自然が敵になって自分には厳しい出来事を押し付けてくる。それをわかっているのかしら?」
「わかってるさ。それでも思わずにはいられないんだよ。誰だって寿命で死ねるわけじゃなくて、戦死するだけじゃなく病死だったり事故死する人達だっている。そんな中でも俺ができることなら止めてやりたいと思うことが間違っているか?」
「子供ね。叶うはずもない願いを持ち続けるなんて」
『好きに言ってろよ』とばかりにローガンは自身を嘲笑する。
現実というのがどれだけ残酷に自分に牙を剥いてきたかなんて何回あった?それで何度も絶望したりしたというのに分からず屋の子供のように夢物語を抱き続ける。歪んでいることを自覚しながらもエゴを抱え続ける自分は醜い人間であることを毎朝自室のベッドから起床する度に思い出す。夢の中に逃げ続けられていたらどれだけ楽だろうか。
「……まあいいわ。でも私が一番気になるのは『なんであなたが戦場に立っていることに誰も何も言わないのか』なのよ」
半身のようにして左半身を背後の方に振り返らせると、疑問をぶつけてきたグローザは体の正面をこちらの方に向けていた。
「あなたの戦う理由や目的は何であれ、復元が人形よりも手間がかかる私のような人形達よりも人間のあなたを戦場に投入するのは何故?シャドー隊は隠密で基本は任務を遂行するけど、最近じゃ強襲作戦の方にも検討されるようにしているらしいわね。でもそれはまだ本部からも許可されていない、それは何故か。簡単な話、本部にいる私も含めた人形達全員があなたに不信感しかないからよ。ヘリアンさんは悪いようには言わなかったけど、簡単に死ぬ人間のあなたがなんで一部隊の隊長となっているのか、それが実際にわからないんじゃ背中を預けることなんて無理な話。銃が扱える人間であるのなら機械の整備や基地の警備に務めているのが筋なのに。私だってあなたと組むのは御免こうむるわ」
――――――
「なによそれ……ただの一方的な考えの押し付けじゃない……!」
過去の方に戻っていた振り子を戻して現在、赤信号になったことでブレーキを踏んで信号の色が変わるのを待っていたが、話を聞いていたAR15の信号も案の定赤信号になった。ただし、公的に決められているように『止まれ』ではなく『怒り』だが。とはいっても、先日のことを思い出しながら話していたローガンも忘れかけていた感情の波をまた思い出していたためそれを諌めようとしても形だけのものだった。
「落ち着けよ、AR15。言い方はどうであれ、俺が本部にいる人形連中に不信感を抱かれている理由にも筋が通ってるし、あいつの言ってることには大体は納得できる。人類がわざわざ危険を冒す必要がないように戦術人形というのが生み出されたというのに、わざわざ時代についていこうとしない俺が銃を持ってわざわざ敵地に潜っているんだ。それに対して思うことがあっても仕方ない。それにこっちの基地にいる奴らにだって、口には出さずともそう考えてる奴だっていたっておかしくないさ」
「たしかにそうだけど、こっちの支部にいる私達がそんなことは……!」
「考えていないとは断言できない。俺だってお前達の立場になったら少なからずは思うよ。それに、だ。なんでここの基地にいる連中ではなく、本部の人形を引っ張ってきた理由がよくわからない。夜戦に特化していて隠密行動の心得もある人形はこっちにもいたというのに、なんでわざわざこっちからじゃ遠方から寄越してきたんだかな」
一分を過ぎたあたりで信号の色が青に変わり、二人が乗車していた一般車両がブレーキランプを消して前進し始める。ローガンもブレーキからアクセルペダルを踏んで車を動かした。
カーナビを見た限りでは十字路に入るように音声ガイドがそう言いながら指示してきており、ローガンと隣にいるAR15の間に取り付けられているディスプレイでも青の道路標示が黄色に染められている線が直角に曲がっている。ローガンはそれに従って十字路に差し掛かる少し前からウインカーを上げて発光表示させて曲がって行った。しばらくは道なりの為、周囲に目を配っておかしなことがない限りは大丈夫だろう。
助手席で苛立ちを隠しきれていないAR15は少し考えた後で、運転しているローガンの方に顔を少し向けながら考えつくなかで一番可能性が高い想像を話した。
「単純に部隊の割り当てが全くされていないから、本部から寄越された可能性は?」
「考えられる限りじゃそれが一番妥当だろうな。だけどわざわざあそこまでできる奴を俺に割り当てることを検討することの意味は何だ?聞いた限りじゃ、結成された部隊には製造されたばかりの人形を当てていくのがグリフィンのやり方だろ?昔はちょっと違ってたみたいだけど」
「ええ。銃の扱い方とか基本的なことは学んだ状態であるだけで、実戦経験は全くないわ。配属される部隊への期待だとか当てつけとかじゃなくて、第三次世界大戦前の軍隊と同じように新人を一から鍛えていくようにって。そうすれば経験だけじゃなくて、戦える人形の数を増やすこともできて一石二鳥で戦線で戦える頭数を増やすことにつながるわ」
少数精鋭という言葉がある。その言葉の通り、少人数であっても戦闘力が一兵士より遥かに高いことを意味している。過去に少数精鋭の部隊を組んで大人数の敵兵と戦ったという任務記録は多く残されている。結果としては成功したものの方が多いが、その多くの全てでは犠牲がやはりある。精鋭として一人で同時に何人も相手にできたとしても、やはり限界がある。極端な例ではあるが、たった一人の猛者が破壊不可能な建物に籠っていたとしても、包囲している敵兵の数が百人いたのであればそれこそ多勢に無勢で風前の灯火というものだ。弾薬や備蓄が十分にあったのだとしても、そこまでの圧倒的な差があったのであればどう足掻いても勝つことは不可能だろう。
そのためグリフィンは、経験を積んで上々の戦術人形にすることと並行し十分以上に戦える数を増やすために万遍なく隊の編成と育成を行っているのである。
「だからわからないんだよ。バルソクに教えていた走り方のコツからして、明らかに経験を相当積んでいる。それこそ、俺とかお前以上であることは間違いないし、大ベテランのM16に匹敵するほどのな。もしくはあいつ以上だ」
「M16と……。つまり彼女達が一対一で戦ったとしたらM16が負ける可能性がある……!?」
「当人たちの相性とかその場の閃きとかにもよるが、ラウンド制で組み手したんだとしたら、おそらく単純な引き分けか、同スコアによるそれだ」
M16とグローザの二人は違った戦闘スタイルでありながらも戦場ではベテラン兵、それこそさきほど先述した精鋭というものだ。
訓練の状況をローガンが見た限りでは、グローザは自身の素早さを活かした速攻タイプ。一発一発の白人戦の威力はさほど高くないにしても、躱しながら的確に弱点となる部分を見つけ出してそこを集中的に叩くスタイルである。
対して格闘訓練を共にしたことのあるM16の方は、動きはそグローザまで早くないしても攻撃を受け流しながら隙を見つけてはカウンターで重い一撃を叩きこむのをメインとしたバランス型だ。カウンターのみを攻撃とするのではなく、適宜急所となる要所を突いては大ぶりな一撃を誘導してくる戦闘方法にはローガンも後になってから舌を巻いたものだった。
そんな二人が戦ったとしたら、ローガンが言った通り結局は引き分けという結果で終わるだろう。三本勝負で組み手をしたのだとしたら、一本は片方にとられたとしても、第二ラウンドでもう片方が取り返す。そして最終ラウンドではお互いに接戦を繰り広げ、同時にK.Oという結果で終わることが考えられる。
それらを総合してみても、やはりわからないことだらけだ。
そうなることが考えられるグローザがなぜ、シャドー隊の隊員候補としてあげられている?咬ませ犬だとしても、その犬は闘犬でありながらも血統書付きの上物のようなのであるためあまりにももったいない。彼女のこちらに対する態度は置いといたとしても、実力はそこらの人形よりもあるのだから最高の部隊に配属するのが筋だろう。
わからないことなのだから聞こうにしても、情報通で自分の指揮官であるハリーは不在だ。となればグローザと同じく本部で働いているヘリアンに聞くのが一番かもしれない。
あのような人形間での問題があるというのに、『いい意味で困っている』と言った彼女の真意はなんなのか知る必要もある。
「とにかく、このことはヘリアンさんに聞くとして置いておこう。悩むことがあり過ぎて頭がパンクしそうだ」
「そうね……でもローガンは悔しくないの?ローガンにだって戦う理由と経緯はあるというのにそれが一蹴されたのよ?態度だって聞いた限りじゃ良くは全然聞こえないし」
半ば食いつくようにしてAR15がシートベルトをしながらもできる範囲でローガンの方に身を乗り出す。あまりこちらの方に寄ってくることはできなかったが、向けられる瞳からの強さが尋常でなく、運転しているローガンもその迫力に少々ハンドルを持つ両手の動きが止まってしまうほどである。幸いカーブでハンドルを切っている最中ではなく直進しているだけだったので大事に至ることはなかったが。
「……思うことが何もないわけじゃないさ。でも現実がこうなっているんじゃ、ただ喚いてるだけじゃなにも意味がないしマイナスになるだけだ。下手にそんなことでもしちゃ、良くないことが連続して起こるだけだからな。でもな……」
「……え?……うぅっ?」
ローガンは前を向いた状態で、右手でAR15の額を小突く。あてがってから少々強めの力で押された彼女は少々よろめきながらも額を押さえながら乗り出した状態から上体はこちらに向けたままで、普通に座席に座った状態に戻った。痛みが少し残ったため半眼でローガンをAR15を睨んだが、彼の目が優しく口元も軽く緩んだものになっていたためすぐにきょとんとした表情になった。
「お前が代わりに怒ってくれてるんだ。本来なら聞いたとしても『ふ~ん、そうなんだ』ですませてもいいのにな。だから俺は我慢できるんだよ」
その台詞に目を丸くしたAR15だったが、おかしいものを見たかのように彼女はふふっと笑みを浮かべた。別に今も抱えている怖いもの知らずといった客人に対する怒りが収まったわけではない。だがそれ以上に、自身の感情を代弁してくれたAR15という自分がいることに少々嬉しそうにしているローガンが少しおかしかったからだ。自分じゃない誰かが怒ってくれているから嬉しく思うことがあるのはわかるが、それをローガンが素直に口にしているのがAR15にとっても嬉しかった。
AR15が座り直したのを横目で確認したローガンは赤信号だったので止まる。今度は先程とは違って、自分達は車列の先頭車両となっていた。
「ありがとな」
「どういたしまして」
ローガンが発した礼にAR15がありきたりな返事をする。それだけで二人は顔を見合わせて笑い合った。それだけで、お互いに感じている火のように燃えていた感情は大分収まっていた。
一しきり笑ったことでAR15は信号が変わるのを待ちながら、持ってきていたバックから二つのコーヒーのペットボトルを取り出し、自分は微糖でローガンには無糖のを差し出した。
「それで、指揮官からはなにか聞けたの?本部で仕事に追われているってことは聞いてるけど、もう少しでこっちに戻ってこれるって言うのは小耳に挟んだわ」
「残念だけどまだだ。送信したメールの返しも何もない。ハリーからも事の詳細を聞きたいからあんなことを言われた後で送ったんだけど、何の音沙汰もない。これじゃ、聞きたいことが聞き出せないし時間を見てヘリアンさんから聞くよ。あの人も先代指揮官の墓参りに参加するとかでこっちに来ても時間があまりとれないからタイミングを測るさ」
「そう。なら今度私にも教えて」
「はいよ」
ペットボトルコーヒーを受け取ったローガンは封を切って一口飲んだ。基地のカフェで淹れてくれるスプリングフィールドほどのではないが、この間ピットの休憩場で飲んだ苦いだけの缶のよりも旨味があった気がした。
一口飲んだ後で蓋をして脇にある飲み物のポケットに入れる。その頃には横断歩道の方の青信号が点滅し、渡ってた人達は間に合わせるようにあたふたと小走りになったりしている。せめて、と思う。このような日常がをできるだけ長く享受していたいと思う。先日からは問題に思うことができたが、それを除けば自分のいる支部の方に不満はない。ただ単に、私室だとか仕事部屋など場所的なものではない。
自分から戦闘技術を学ぼうとする人形達の中で特に意欲を見せているバルソク、それぞれマイペースに任務をこなしたり基地内で時間を過ごす404小隊の彼女達をまとめる隊長のUMP45、自分の事を本当の家族のように出迎えて仕事に限らず日常を共有してくれるAR小隊で参謀を務めるAR15。彼女達ともっと居たいと思う。可能であれば、もっと長く。
「……それと、ローガン」
一時は雲で隠れていた太陽からの日光がまた道路を照らし始める。横断歩道の信号も完全に赤になったこともあって、目の前の交差点で走っていた車の流れが遅くなってきたことからそろそろ自分達も進めるようになる。そんなタイミングだったため、ローガンはハンドルに両手を置いた状態で少しだけAR15の方に向いた。彼女は窓の方に顔を向けて頬杖をついているが、反射してかすかに見えるその表情は微かに笑っている。その視線の先では、小さな男の子が母親らしき女性に笑顔で手を引かれながら歩いていた。
「私はローガンには死んで欲しくない。だけどだからといって戦場に立たせないというのは間違っていると思う。そんなのは思いやりじゃなくて所有欲からくる保護みたいだから。だから私はローガンを守る為にも戦う」
「……ああ、わかった」
ちぐはぐであるのはAR15もわかっているだろうが、ローガンは指摘するつもりなど毛頭なかった。『仕事をしたくないけど、金がないと生きていけないから仕事をする』といったように、嫌なことはあってもそれと同じぐらいに避けたい現実があるから臨む。人間が抱えるその矛盾じみた思考を悪く言うつもりなどローガンにはない。それに自分に思いやりを持って近づいてくれている少女からこんなことを言われて嬉しく思わないはずがない。その台詞に甘えることはなくても、せめてこのAR15という存在がいなくならないように自分が出来る限りのことをし、彼女の思いを踏み躙らないようにしたいと思えた。
信号が青に変わる。ローガンはゆったりと車を進ませてから徐々に速度を上げて保護区の街中に車を走らせる。
進む先は雲によって日光が遮られることのない、明るい道だった。
コーヒーをぉおおおおおおお!春田さんのコーヒーをプリィイイイイイイイズ!喉が渇いたから酒プリーズとかを友人の前でも言ってたりする私でもそういう美味いのが飲みたい時があるんじゃぁあああああああああ!!
……てな感じで、スプリングフィールドこと春田さんのコーヒーを飲んでみたいと思いながらも書き上げた今回でございました。敵地に潜入する某ゲームで登場する大佐が『泥水』とか言ってたのはいい思い出で、今でもネタとして上がれば笑えます。しかし本格的に馬鹿にされた場合は、私の場合は怒るのでなくしょんぼりします。『えぇ~……うん、紅茶も美味しいのは美味しいよ?でもそれはコーヒーも同じで、ちゃんとした手順と方法であれば美味しいんだけどな~……』といった感じで。こういう『~派』とかいう話にはめっきり弱いんですよね私は。
てなわけで、今回は前回に引き続きグローザとヘリアンが関係する話でございます。前回の後書きでは話していなかったのですが、ヘリアンが登場することは当初は予定していませんでした。しかし作品の関連性をある程度持たせるという目的で作品を続けるのであれば、彼女のように原作で登場するキャラクターは居た方が良いと結論付けて。カリーナも台詞内で名前だけしか今のところ出てきてませんがね、ハハハ……。
てなわけで今回はこの辺で。作品のクオリティを上げるために投降が不定期になりますが、それに見合うように頑張りたいと思います。
ではでは―――
『本部から来たエリートが刺々しくて萎えそうになるぜわんわん』