誰も助けてくれない -Can you hear me?- 作:麒麟犬
車道の流れが悪くなっているどころか止まっているのが目に見えて来ているその合間をローガンはバイクを走らせていた。アクセル全開で運転にばかり気を取られるようなことはせずに、不測のことに対応できないことがない程度に出しつつも背後の方から追従してきている味方車両が遅れることないようにしている。
ブォオオオオンッ!!と低いエンジン音を右手のアクセルを捻って鳴らし、両側二車線の分離帯をローガンが走ってすれ違う運転手たちに道を空けさせ、その後ろからAR15も乗っている協力者たちが続く。直線状に続く橙色の線の上を走っているローガンに何も知らない民間人達はぎょっとした表情を浮かべたり、迷惑そうにしていたりするが、付いて来ている車両を見えた途端に仕方なさそうにしていたりしていた。ショートカットをするために小道を使うことができないため、十字路を左折しなければならない状況になった際には、民間で治安組織として認知されている彼らが交代して前に出て注意を呼び掛けてくれたので面倒なことにならずに済みながら、再び前方を走る為に追い越すとヘルメットしていることでより鮮明に聞こえてくる無線機からの声が耳に届く。
『ローガン、スオミ達の位置データをロスト。消えたのはN15-2から伸びているハイウェイだそうよ』
「ハイウェイ、高速道路か。だけどあそこはまだ工事中じゃなかったのか?」
『それはこの間終わったそうよ。だけどわざわざハイウェイの方で消えたということは……』
「最悪の場合、奴らの逃走先は別の保護区じゃないかもしれないな。N15からだと近い西の方に行ったんじゃ先回りされて詰むのは間違いないってのに」
N15から伸びている高速道路を利用して行けるのは西区だけではない。大回りになるが東の保護区にも行けるし、南へだってそうだ。それぞれの方角へのグリフィン管理区画にスムーズに移動できるように開発された高速道路の新設工事がAR15の言う通り終わっているのだとしたら一つだけ疑問がある。わざわざ交通量が多くても特に停車することなく走行できるそこを逃走ルートとして選んだ理由だ。戦闘のプロフェッショナルとして鉄血と戦うローガンから見ても、カイルをはじめとした治安組織の彼らは力不足ではあるが頭が回らないわけではない。合流した際に簡易的に自己紹介をしてきた彼らのリーダーのように頭がキレる者もいる。追いつめる相手が逃走するルートを予測し、予めそちらの方に応援を展開させて包囲する手筈を整えるなどもしたことがあることが、治安組織に関する詳細な報告書に目を通したので知っている。
もし自分達が追っている彼らがそのことに行き着いていないのならいい。自分達が追い付くにしても追い付かなかったとしても、応援部隊を行先に先回りさせて捕えることで事件解決に結びつく。だがもし、別の狙いがあるのだとしたらどうなのだろうか。
ローガンは目標を発見し追跡しているスオミ達への先回りとしてAR15からのナビを聞きつつ移動し、ハイウェイへの入り口を目指す。
「グローザは一旦置いといてだ、運転しているスオミからの応答はないのか?」
『ダメね。あの子自体が手一杯なのかどうなのかはわからないけど、こちらからは繋がらないわ。まさか彼女が……』
「さすがにそれはないとは思うが、こんな非常時に同士討ちをすることはないとは思う……思いたい……」
『そこははっきりとないって断言してよ。気持ちはわかるけど』
「……『男ならしっかりしなさい』とかお決まりの文句を言われなかったことに安堵を感じずにいられないよ」
『言って欲しい?』
「勘弁してくれ」
失笑に近い苦笑ではあったが、自分だけでなくAR15も同じように笑ったのが無線越しにわかった。合流した時、小道でやり合った時にできたローガンの傷跡を見た彼女の怒り方にはさすがにそこから逃げ出したいと思い足が動きそうになったが、ひとまず話はスオミ達への応援へ向かって事件を解決した後でということになった。どのみち、あとから大人になったローガンでもここまで怒られるのかと考えさせられるほどの説教が待っているのだが、それからうまく避ける方法が後の自分に思い浮かぶことを祈ることとしよう。
進んでいる道の先に上りの坂道があり、標識に記されている情報からハイウェイに続くことがわかる。エンジンを吹かしてさらに加速し勢いを出して一気に駆け上った。
坂を上りきった先に見えるのは、緑色だけでなく黒と黄色の警告色を基調としたゲートと検問を兼ねた料金所だ。ローガンはスピードを落とし、徐行のそれになるとゲートの屋根に取り付けられている電光掲示板に『一般』と書かれている方へと向かった。
「グリフィン南アメリカ支部所属のローガン・ブラックだ。緊急事態なので、俺達が事件を解決するまでしばらくここを利用しようとする一般車両の通行を止めてくれ」
「わかりました、ただちに―――!」
『シャドー隊』としての通達を受けた際にハリーから支給された物品の中にあった警察手帳のような、所属組織のマークが刻まれている身分証明書を提示し状況を説明し通過しようとした時だった。
多くのエンジン音が決まった一方向へと流れていく道路が料金所にいるローガン達から見えている。そこからは車高が高い車であればフロントガラスなどの上部の部分が高速で走っていくのがわかるのだが、そこを見覚えのある二台の車が他よりも速く過ぎ去って行った。それも民間で乗られているようなデザインでなく、角張っていてデザイン性よりも機能面に特化したようなやつだ。だがそれだけならまだ見間違いの可能性もあっただろうが、ローガンは見逃さなかった。
助手席の方から上半身を乗り出し、小銃を両手に持って前方の車両を狙っている女性らしき影を見たからである。
それまで頭に浮かんでいた、これからやるべきことのプロセスは短縮され最終行程の文面が目の前に現れたかのようだった。まるで戦闘機のように様々な情報が表示されているHUDがあり、その横中央に大きく今からやるべきことを幻視したローガンは、バイクのギアを入れて走る前にそこで働く職員に声を掛けた。
「すまない、詳しいことはグリフィンの方に問い合わせてくれ!AR15、グローザを発見。高速道路を猛スピードで走り抜けていったぞ!」
『なら急ぐわよ。時間をかけていたら被害が大きくなりかねない!』
目を白黒させる男性の職員を尻目に、ローガンとAR15を乗せた車両が上方へと開いたゲートを抜けて走り始める。
ハイウェイに乗る為にある渦巻の形状となっているインターをそれぞれの乗り物で駆け上がり、与り知らぬところで始まっていた出来事に速度を緩めて始めていた一般車両の間に割り込んだ。ここまでくればもう速度制限も過密になっている一般車に気に割かなければならない必要性はなくなる。
ブオォオオオオオオオオンッ!!とアクセルを思いっきり捻ってエンジン音をけたたましく鳴らし、スピードをグンッと上げる。上がっていくと加速度のように全身に感じる向かい風の強さも比例して強くなっていき、限られた箇所にしか外と繋がらない車とは違った快感を得るが、集中力を高めている脳の片隅へと追いやった。
まずは時速を表すメーターの針が百二十キロまでになるところまで加速し、三車線で走っている民間人達を追い越していく。右、左、また右への車線変更を繰り返し、ハイウェイを走行し数十秒前に見かけた二台を追いかけた。
『ローガン、さっきはあー言ったけど先行し過ぎよ、一旦スピードを少し落としてこっちに合わせて!先に到達してもそのままの状態じゃ何もできないわよ!』
「わりぃけどそいつは無理な申し出だぞ!今見えてきたが、奴らは増援も出して抵抗しているしこのままじゃあいつらといえど長くはもたねえ!」
そう、ローガンも気が付かなかったが、民間人に混じって民間車両に乗っている連中の味方と思わしき男たちが上半身を出しているグローザの方に発砲していたのである。いずれも取り回しの良いサブマシンガンやハンドガンで射角がうまく取れなかったり同時攻撃を仕掛けられて反撃できない彼女に一方的な攻撃を行っているのが見えた。ローガンは、出しているスピードを緩めることなく接近し距離を徐々に詰めていった。
治安部隊の車両を運転するカイルも民間人がほとんどいなくなってきたことで速度を出しやすくなってきたのか、ローガンと並走してきた。
『あれじゃ本部所属の人形も手こずる筈だわ。でも警戒すべき敵が一目で分かるのは何よりね……!』
「だけど、お前のライフルじゃ射撃できる敵だって普通の位置取りじゃ撃てる奴は一握りで全方位は見切れない。そこはどうするつもりだ?」
『忘れてしまったの?私達は二人であいつらを止めるんじゃないわよ?』
横に並んでいるので顔をそちらの方に向ければ、窓を開けて不敵な笑みを浮かべるAR15と、助手席でサムズアップをしている男が見えた。友の隣にいる座っている胡散臭い印象を受けた男の方は逆光ではっきりとはわからないが、仕方なさそうにしているのだけは見えたので最低限の仕事はしそうである。
「ここまできて少なくともなにもしないつもりはないぞ若造!グリフィンのお前らほどじゃないにしても、胸張って帰れるぐらいの成果を上げてやるよ!」
「まあ足を引っ張ることはないと思ってくれよな!精一杯背中についてやるから覚悟しておけ!」
リーダーと彼の部下であるカイルがそう力強い台詞をローガンに投げかける。風と車両のエンジン音で聞き取りにくかったが、全てを正しく聞き漏らさずに耳に入れたローガンは、彼らには見えない小さい笑みをヘルメットのバイザーで隠し、後部座席で戦闘準備が万端の少女を見た。彼女も強い意志澄んだ青い瞳に宿し、ローガンを見つめ返す。
こちらからは言わなくていいどころか、言うまでもない。まだ共にしている実戦の数は片手で数えれる程度しかないが、仮にも二ヵ月の時間をAR小隊の皆とも一緒に基地で過ごしているのだ。
彼女が口を開いて何かを言おうとした瞬間、彼らの車両とローガンのバイクの間のアスファルトが爆ぜた。
反射的に左右に開いて前方を見据えると、後方からのエンジン音で振り返ったであろう、グローザと交戦している連中の最後尾にいる輩数人がこちらを撃ってきていた。
バララララッ!と銃声と共にマズルフラッシュが前で瞬かれ、銃弾がヒュンヒュンッ!と脇を掠める。
反撃として右手をホルスターの方に伸ばしてP226を抜く前に、こちらを狙っていた覆面の男が突然脱力し路面の方へと落ちた。グチャリ……と撃たれた箇所から血肉をばら撒きながら転がっていく遺体を避けたローガンはハンドルを操作して避け、絶命した男を撃ったであろう味方の方に視線だけ向けてみると、予想通りの彼女が『ST AR-15』を構えた状態で体を少し乗り出していた。
「……さあ、始めるか。あいつらとここでケリをつけるぞAR15」
『わかってるわよローガン。あなたも油断してあっさり撃たれてやられるんじゃないわよ』
「その辺の悪運としぶとさは過去に知り合った奴らからのお墨付きだ、安心しろよ」
できるわけないじゃないでしょ……という声無き呟きはローガンの無線機からは聞こえなかった。
これは結果的に、レストランを襲撃した犯人を捕えるだけでなく戦っているグローザを助けることにもなる。
正直にローガンは自身の内側で渦巻いている内情としては、納得することが出来るか否かの話ではなく、一方的に事情を押しつけてくる彼女の事を聞かれたとしたら、誰にもバレなければ彼は迷いなく『気に入らない』だとか『ふざけるんじゃない』という考えをぶち撒ける。それだけの確信が彼の中にあった。
だがそのような私情を優先してしまえば、自身の死につながるどころか周囲にいる関係のない人にも影響をバタフライ・エフェクトのように及ぼしかねない。それでも沸々と沸騰させようと、鍋に溜めた水が水温を上昇させてきているように、自分はここ数日間で溜まってきていた不平不満の捌け口を求めていた。
それにローガンには別に重んじている信念や信条などはない。あるのはただ、一人の人間として生きていきたいという願望だけだ。金メッキのように貼られた装飾物を取り去ってもあるのはその本音だけ。だからローガンは、拘るプライドもなにもない、誰かに明確に認識されることがない真っ裸の状態で戦うのだ。
―――☆―――
並走するローガンが自覚しているのかどうかは私にはわからないが、バイクを乗りこなしながらの銃撃戦というのにはいくつもの危険性がある。無論、ハンドル操作を誤れば単なる怪我という範疇を超えて視覚として機能しているアイカメラを遮ってしまいたくもなってしまう。もし時速百キロ以上の速度を出している今、アクシデントを起こすなりすれば人間であれば骨や四肢を損傷させるどころか生命そのものも危うい。スペアの部品がある私達戦術人形がボディを損壊させてしまったとしても、現場にいる他の人形達の手を借りてでも基地に帰還さえできれば修復は可能だ。鉄や合金といったような金属類を素材にした部品と、物事の演算や思考といった行動を自動で行うAIなどの無機物で構成された
先代指揮官が亡くなってから深くまで考えることのなかった相違点を突き詰めれば突き詰めるほど、心にポッカリと穴が空けられたような痛みが走ってその場で蹲りたくなってしまう。
それに加え、敵の眼前に体全体をさらけ出しているような状態なのだから、敵から放たれた弾丸が当たってしまうことだってあり得るどころか、あっておかしくない。自分の脚で走って遮蔽物で身を隠しながら銃撃戦を繰り広げる、そんないつもの戦闘風景ではなく映画やコミックでしかないカーチェイスと変わりがない。
それをここのハイウェイに乗る直前までローガンのナビをしながら考えていたわけであり、いつもとは違って私の眼前で心だけでなく仮想の精神をヒヤリと凍らせるだけの戦闘が起こっているのだから気が気でないのもあって身を乗り出しての射撃をしながら横目で私の心配要素を常に無意識に確認してしまっていた。
『グローザ、今そっちの後方十メートルに俺達がいる。誤射はするんじゃないぞ!』
『……っ、やっぱりあなたも来たのね……。あなたの手なんか借りなくてもこいつらの相手には問題ないから下がりなさい!』
『それなら余裕そうな様子を少しでも見せてみろよ本部のエリート!このままズルズルと長引いちゃ、お前だけじゃなくて無関係な人達にも迷惑がかかんだよ!』
無線で罵りながらローガンは乗車しているのは運転手だけになったらしい車両のタイヤをハンドガンで撃ち抜き、バスンッ!と穴を空けてパンクさせて走行不能に追いやる。万全による通常通りの直進ができなくなった敵車両はバラララララッ……と無残となったゴムからタイヤが回ると同時にお粗末な音を出しながら下がっていき、次第に見えなくなった。
まずは先手を取ってきたうちの二台のうちの一台を片付けたが、敵増援として前方を走行しているのはまだ四台いる。道路の車線に沿って緩いカーブしたりもして時々見えるが、側部に見慣れているグリフィンの隊章が刻まれているカーキ色の車両の一つ前に、私も乗っている治安部隊の車両と全く同じと思える四駆が走行していた。プレートに書かれているナンバーはさすがに見えていないが、発見したグローザの言っていたことが正しければ標的としていた犯人達のそれだろう。
一台がやられたことでこちらの存在にようやく気付いた二台がこちらに向かってフルオートでサブマシンガンで撃って弾をばら撒いてきたが、大体の射線を見切ったローガンは左右にハンドルを動かして回避し、リロードし始めたタイミングで反撃とばかりに撃ち返していた。カイルもそれぐらいで車を私が射撃しやすいように良い位置取りを探し当ててそこまで移動してくれるので、狙撃銃を撃つように息を大きく吸って止め、集中力を最高に高めた状態で正確に当てるようにし引き金を引く。
「指令部、こちらは0-1ユニット。捜索していた車両と交戦しているが、数が数だけに負傷で留めている犯人を取り押さえることまでも手が回らない。N15の高速道路にて応援を要請する。」
状況が状況だけに私達だけでは全て手が回らなくなってきたことを察したリーダーが車内の無線機のレシーバーを手にそう呼び掛けているのがわかった。リーダー本人が言っていることしかわからなかったが、返答内容からして受諾してもらえたようだった。本体の下部に設けられているホルダーに放り込んだ彼は右横の窓を開けて頭と拳銃を握った右手だけを外に出して発砲して応戦し始めた。
身を乗り出して腰を窓枠につけて安定した姿勢になっていたらしい三人のうちの一人がリーダーに撃たれたことで体勢を崩したところを見逃さず、私が追撃して排除する。バレルの先端に取り付けているサプレッサーによって消音された銃弾がパシュンッ!と三回、つまり三発がその男に命中。路面に即座に落ちることなく、腰が窓のフレームに引っかかって力を失った腕がだらりと路面を指先で掠めたのが最初、次第に上半身からアスファルトの地面へと不時着し転がって行った。
損害は与えられているのは知っていても、実際に目にすれば多少は揺れ動く。動揺が目に見えたことでさらなる好機が生まれたことを絶対に無駄にはしない。誰かの命がかかっているのであれば、素人が相手であってもだ。
射角の確保が一部しかできていない為、後部座席で乗り出しているうちの一人しか狙えなかったがそれで十分だった。
致命傷でなくてもバランスを崩して車から外に出てしまえばもう戦えないどころか、運良ければ大怪我で済むがそれ以上であれば自業自得で
あと片付けなければならないのは三台か、と確認した際に耳元の無線からまだ言い争っている二人の声が聞こえてくる。
『いい加減にプライドばかりを振りかざしてんじゃねえよ。本部からの大義名分とかを傘に好き勝手言ってんじゃねえぞこの冷徹女!』
『私自身が考え付いたことにかざしている物なんて何もない。他人の言う事にもちゃんと耳を傾けなさいよ身体年齢だけが大人さん?』
『おぉん!?だったらてめえは自分が得する結果だけを追い求めようとする自己中人形だ、自分ファーストでこの世は渡り歩けねえんだよお分かりですかなお嬢さん!?』
『……それならあなたは誰かからの配慮に気付かずに前に出ようとする大馬鹿者よ。それだって銃撃戦の中で長く生きていけるわけないことがわからないのかしら人間様?』
……ローガンは口汚く罵り、グローザも静かに暴言をぶつけている。そのせいか、ローガンはこちらからでは無線機などなくても必要ないぐらいの声量で怒鳴り散らしているのがわかるし手に持っている銃も犯人達に向けずに銃口が路面の方に向いている状態だ。
これをチャンスと捉えたのだろう、敵車両が一台がローガンの方に狙いやすいように寄っていき、別の一台がカーキ色のグリフィンの車両の方に走って行った。
この現状でカバーできるのはローガンだけ。
実戦だというのに目の前のことに集中せずに意識を別の方に向けすぎだという意図を込めたことを言いながら撃とうとした時だった。
『ああったく、自分の非から目を背けようとしてんじゃねえよ頑固者!身体構造とやってることは良いだけでメンタルモデルがポンコツかよてめえ!!』
『出来損ないという言葉があなたに適用されないのは残念ね。でも当てはまるボキャブラリーで一番効果がある一言とすれば、『ポンコツ』でしょうね』
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『『誰がポンコツ(だゴラァ!?)(ですって!?)』』
次の瞬間、タタタタタンッ!とほぼほぼ真横を並走していたローガンは拳銃による普段のほぼほぼ十割増しの速度で連射し、大型トラック一台が間にギリギリ入れるほどほどにまで距離を詰めてきていた敵車両のタイヤ二つに風穴を生ませた。
ギュルルルルルルルルル!?と廃棄物とされたタイヤ自身も『あれ、なんでこうなったの!?』と疑問の声を上げるようにして音を立て、コントロールができなくなった車体はコマのように回転しながらローガンの方に回転していった。突然のことに私のAIは視覚と聴覚から得た情報を処理することに回され、回避するようローガンに声を掛ける頃には既にハンドルを右へきって回避していた。回転していった車両は彼と私達の間を抜けて行き、ハイウェイのガードラインに衝突、大破していくのが最後に見えた。
「あっぶねぇ!?」
それに寸分違わず、運転していたカイルが急なハンドル操作を行った。このまま上半身を乗り出した状態では危ういと判断して車内に一旦戻って何事かと状況を確認するが、もう一台がグローザの方に迫っていったのだということを思い出す。乱れたバランス感覚を内蔵されている受容器で速やかに正常に戻し、状況を確認すべくまた再び元の体勢に戻るとカイルがなぜこちらに気にかけているような運転から急なそれになったのか理解した。
グローザの方に向かっていった車両と思わしき四駆が高く立っているガードポストで正面衝突し炎上していたからである。
右方向へと緩やかなカーブになっている道であるのにもかかわらず、曲がり切れなかったらしい。
なぜ?という疑問符はすぐに解消された。
視界内に収まっていた敵車両が減ったことで見通しが良くなり、前方で走っていた味方の方にまで視野が行き渡った。そして挟んでいた残り一台の車両のボンネットに目掛け、跳躍している人形が一体。
「マジかよ……!?」
私と同じく、それを見逃さなかったリーダーが信じられないものを見たかのような驚愕を漏らす。
冷静に考えれば人形の私達でもやろうとは滅多に思わないだろう。私が持つ銃は長身であるからというのもあるが、あまりにもリスクがありすぎるからだ。当たり前だが、跳んだとしても着地先の車両はその場で止まっているわけではなく走行し続けているのでそのことを念頭に着地点を計算しなければならない。言葉だけなら簡単に思えるだろうが、可能に至れるほどの身体能力、現状のように敵車両の前に走行している位置取りでもなければできる芸当ではない。
成功し着地したグローザは振り落される前にフロントガラスに拳を打ち込んだ。その拳から人工血液が滲むことにも気を払わずに彼女は防波堤を砕き、そこから私達全員が敵と見定めている男を引っ張り出してきた。
何かに気付いたローガンがすぐに側面に回り、車内に向けて全弾撃ちこんだ。直接肉弾戦を挑んだグローザを狙うのは向こうからすれば当たり前だ。
時間が出来たことにより、グローザは掴んだ運転手を遠くへと投げ捨てた。生きている運転手どころか乗組員が全員がいなくなった車両が荒ぶる前に彼女はすぐ近くで走行しているローガンのバイクの後部座席に跳び移った。
『貸し一だぞこの素っ頓狂!』
『あなたの銃はもう弾切れの筈でしょ?ここからは私が砲手として撃ってあげるから感謝しなさい、それでチャラよ!』
『ざけんな、こっちに乗り込んでおいて勝手なこと言ってんじゃねえ!』
『そうは言ってられないのよ……AR15!』
バイクの上にいる二人の会話から急にこちらにグローザから呼び掛けられた。
『スオミが敵によって負傷させられて何とか運転している状態よ!私とこの男で残りの逃走犯を押さえるからあなたは彼女をお願いするわ』
「……わかったわ。ローガン、いいわね?」
『……了解、振り落されるんじゃねえぞグローザ!』
加速と同時に前輪を若干浮かしたローガンは、着地と同時にスオミが運転している車両を追い越し深緑色の方に私達よりも高速で向かった。
私は車内に戻り、運転しているカイルの方に指示を飛ばしてスオミの方に向かった。
――――――
こちらの接近に気付いた敵一人が銃を発砲しようとする前に、後部座席にいるグローザが左肩から下げているストラップで取り付けている『OTs-14』で先手を取り排除した。パススススッ!とロシア製でプルバップ式の小銃から放たれた弾丸は乗り出してきた一人の至るところに命中しさっきまで戦っていた連中のように転がり落ちていった。
「そんでどうやって止めるつもりだお前は?後学の為にお教え願いたいんだが?」
「車内には犯人達しかいないことはこちらで確認済みだから運転手を撃つのが手っ取り早い。だけど今回はなにかしらかの情報を狙って……!」
「っておい、まさかお前……!」
バイクの座席から立ち上がった彼女は高く跳躍し、目標車両の側面に取りついた。そこから運転手を助手席側から発砲。ローガンのいる位置からではどのようになったかはわからない。だが彼女はその後で扉を開けて中に飛び込んだことから制圧できたのだろうか。
問題なくここまでやれてきたが、ローガンが懸念していたことが一つだけあった。小道で自分に不意打ちを食らわせてくれた襲撃犯がまた、車内に潜りこんだグローザに死角から銃撃でもするんじゃないかと思い、隠れているなら後部座席か最後部のトランクだろうが、銃のリロードはバイクを運転しながらではできないため、ローガンのP226はスライドが後部へと止まったことから現状ではもう使えないのでホルスターに戻している。とはいえ、なにもできないのは少々癪だった。
だがそれは杞憂だった。
段々と減速していったのでローガンもそれに合わせてスピードを緩め、完全に徐行の時の速度になって行った。やがて停止したのでローガンは借り物のバイクから下りてスタンドを立たせておくと、さきほど思い浮かべていた自分のハンドガンをリロードすべく引き抜く。弾倉を抜いて腰のポーチに放り込むと、別のポーチから予備弾倉を取り出してグリップ内に込め、スライドを引いて発砲が可能にし、車両から下りたグローザの方にまで行って再度合流した。彼女は弾倉を取り換えてからこちらに目をくれてきた。
「この手段は役立てそうかしら?」
「勉強にはなるが無茶なことはするなって一応釘を刺されてるからな。やるとしたら本当に追い詰められた時だろう」
「あら、それは残念ね。でも少なくともあなたのような人種はそれでもやるんじゃないかしら?その証拠がほら、その傷でしょ?」
指された方向にあるのはローガンの右腕の上腕。街中で負った怪我を指摘されたローガンは頭の片隅に追いやっていたことを思い返し、『うへぇ』と声を漏らしそうになった。
だがしかし、事によっては生き延びるために命を懸けなければならないことがあり、今回のはそれに当てはまる。肉を切らせて骨を断つということわざがあるように、『生還』の二文字をもぎ取る為にやったことだ。……うん、俺は悪くない。
「なんか聞き苦しいことを頭に思い浮かべているようだけど、気のせいかしら?」
「……決してそんなつもりはねえぞ」
「……ならいいけど」
自分ではない疑惑の念を振り払い、後部座席のドアをナイフを握った左手で開けて銃口を向ける。視線の先には予想していたように座席の足元で身体をローラーのようにして隠していたわけでなく、ただただ誰もいなかった。
トランクの方から光が少しずつ入ってきたので横目で見てみれば、グローザがそちらの方を開けていた。ローガンも大股で歩いて外側から最後部に向かうと、少しずつ広がってきている隙間から覗くようにしゃがんで敵影の確認を行う。一定のペースで開けられていったトランクには、車に使う備品が主に入っているだけだった。
敵影なしということで少しだけ気を緩め、肺に酸素と一緒に溜めこんでいた負の意識を吐き出した。
「こういうの慣れてる?てっきり動きだけかと思ったけど見るべき個所は見ているし素人とは違うようだけど」
「支援なしで一丁前の装備とライフルを持って一日無人地帯で生き残れといわれたらな。大体わかってくるんだよ、潜む可能性があるとすればどこなのかっていうのが。不意打ちと有利な銃撃戦を狙ってくるなら高所だとか閉鎖空間の外とかな。その予測だけじゃなくて、クリアリングの方法も訓練とは違ったやり方が必要になることだってある。そう考えていくうちに自然と身体が覚えていくんだよ」
「……一応、あなたへの認識と評価は改めるっていうのだけは伝えておくわ」
「そりゃどうも」
グローザの一言で火が付き、始まった罵詈雑言での口の叩き合いでローガンはスッキリしたところもある。八つ当たりもなにも他の人形にできるわけでないので腹の奥で燻っていた不満を直接本人にぶつけれたので楽になれた。
しかしそれをやった場が銃弾が飛び交う職場でというのがなんとも……。とはいえ、自分への見直しを要求せずともしてもらえるようになったのでまだ良しとしよう。
そう思い直し、前席の方へと向かい、力を失って絶命している遺体の荷物を探った。
「そっちの方でなにかあったら言ってくれよ。俺も俺で引っかかるのがあったら教えるから」
「わかった。情報で抜け駆けはなしよ」
グリフィンや自分達だけでなく民間人達にもかかわりが少なからずもあるのだから当たり前だ、とローガンは銃器以外で目につく物がないかと探った。着ている服とズボンのポケット、それと防弾ジョッキとの隙間などを調べていくうちに紙片を発見。折りたたまれているそれを開いてみると、逃亡ルートを表した地図だった。ルートはN12からN15へ、そして今いるハイウェイを通過し管理保護区の外へと向かっている。
やはり逃亡先は無人地帯か……、とローガンは紙片を折って収納してさらに何か足掛かりになる物はないかと思い探るが何も見つからなかった。
『ローガン、グローザ。スオミの方もなんとかなったわ。だけど損傷がひどいからグリフィンに回収要請するけどいいわね?』
「おう、こっちも制圧できたしそうしてくれ……と言いたいけど、俺達の指揮系統はどうなってんだよ?報告を受けて指示を飛ばすだけならスオミがやってくれてたけど、詳しくは聞いてないぞ」
車内の捜索しているグローザの方を見てみると、彼女は彼女で見つけたものをボンネットの方に持っていき並べているが、こちらからの問いに彼女も答えを返せないようで横に首を振っていた。
だが現場指揮を担っていた彼女がひどくやられた以上、くよくよしているほどの時間も惜しい。そう考え、ローガンは代わりにオペレーターに繋いで回収要請をしようとした時だった。
『かまわないよAR15。そのまま指示を飛ばしてくれていい』
聞き覚えのあるどころかしばらく聞いていなかっただけのその声にローガンはやや驚いたが、彼女は本来の上司に繋がったことに安堵したのかはわからない。一度AR15は喜色の息を吐いたかのようにして間をあけたが、咳払いをすると、気を取り直したかのようにして報告を行った。
『銃撃戦でスオミが負傷しました。彼女自身の生命維持には問題ありませんが、悪化する前に速やかに基地の帰還を願います』
『了解、ただちにヘリを送るよ。よく頑張ってくれた』
やれやれと思いながらローガンは調べ終わった遺体から立ち上がり、グローザの方へと寄ってボンネットの上に乗っている品々を確認。
一緒に見てみると、目についた物といったら一冊のメモ帳サイズの手記ぐらいだった。古ぼけたような革でできている焦げ茶色の表紙のそれを捲ってみると、日時と作戦内容が詳細にメモされているページから始まっている。作戦手順や自分の役目、また簡易的に図を描いては自分がつく位置までも記し、注意点もそうだ。
ぱらぱらと全体的に見てみると、犯罪者にしてはマメに書いているなと思える。実際に現場を偵察をしたように付近の人通りの多さなども注目していたり、目標ポイントとしている箇所の情報もある。書いてある内容と質といい、ここまで見てみると特殊部隊の偵察任務のメモ帳だなと思い至った時だった。
車両のクリアリングでも見かけなかったあの男。あの者はどこに向かったのだろうか。
ここにどのような状態だったとしてもいなかったということは、恐らく自分達が見ていない間に街中で下りたということになるが。
「まさか……」
その手記の書かれている中で最後のページまで捲っていったローガンは、目当ての箇所を見つけてボールペンで走り書きになっている文字を目で辿っていく。
箇条書きになっている文全体をまとめてみると、正午からのコールレストランで襲撃し目的の物資を回収した後、自分は予定されているN13の小道で逃走。抜けた先にて別班と合流後は……と見ていったところで黒く塗りつぶされていた。文字の上から無造作に同じペンでザッと全体的に読めないように、という感じだ。
舌打ちしたローガンだったがこれではっきりしたことがある。
仲間達から『バーンズ』と呼ばれたあの男は、わざとこの手記を車内に残していたのだ。でなければ、自分達に回収された際に読まれて情報を盗まれたりしないように黒塗りにすることはない。
『ローガン、報告はできそうかい?』
友人からの催促ではないその質問に、ローガンはありのまま報告した。
「状況はクリア。現在グローザと情報源になる物はないか捜索している。現在地は――――――」
―――<Unknown>―――
「あぁ、指示通りの物は回収した。今は指定されているポイントに移動中だ」
『なら作戦は完了といったところだろうな。貴様の仲間もさぞかし嬉しかろうな、目的を完遂できて』
「……完遂だと思ってんのかてめえ。楽な仕事だと思ったらグリフィンの介入にあったぞ」
『奴らPMCに?人形達の相手など、貴様からすればどうってことはないのではないか?』
「オレ様だったらな。だがあいつらはちげぇよ、まだ銃を握ってようやくまともに戦えるようになってきた頃だったんだ。それをてめえは……!」
『ふん……』
「それにだ、オレ様達は何の見返りもなしで戦っているわけじゃねえことは忘れていねえだろうな……?」
『わかっているさ、貴様らは我々が金で雇ったゴロツキだ。私はその代表としてビジネスの話をしている、そうだろう?』
「ビジネスライクがどうとか、オレ様にはそんなインテリ野郎の言ってることには興味はねえ。だが作戦に関係のある情報はすべてこっちに隠さずに寄越せ。一時的な飼い主としてでも、それぐらいはできるはずだろうが」
『こちらで把握できていることは全て伝えたぞ。偵察までしておいてそこまで見切れなかった貴様に落ち度があるのではないか?』
「それを差し引いてもだっつう話だクソ野郎」
『……貴様の相手をしていると、あの忌々しいクズを思い出すな。貴様らはなんの関係もない筈だよな』
「何の話をしているかはさっぱりだ。目標完遂とあいつらの犠牲を差し引いてマイナスだっつう話だ。だがこれで最終目的にいけるほどのステップを踏めるんだろうな?」
『無論だ。これが成功すれば、貴様は自由の身。鎖の着いた首輪が外されるうえに報酬もあるのだから何よりだろう?』
「改めてどう聞いても胡散臭えな。てめえは雇った奴が使える人材であれば意地でも離さないって噂があるぐらいだ。報酬をちらつかせてはそれを餌にして檻に閉じ込める、猿でもわかるようなその仕掛けで今だと何人いるんだよ?」
『なら貴様はそれに食いついた魚だ。……いや、切羽詰っていたとはいえ、考えもせずに目の前の
「この野郎……!!」
『まあいい。こちらから回収の者を寄越してやる。所定のポイントに向かって待機していろ。ノーブル、アウト』
「……切れやがったな。あのクソ野郎の最後は引導をくれてやりたいが、どうにもならねえな」
(さて、あの野郎はどう動くか。グリフィンで食っていけてる野郎だしそう簡単にくだばりはしねえだろう。鬼さんこちら、手の鳴る方へってな……)
口角を上げて獰猛な笑みを浮かべた男は麻袋を担いでいない左手で煙草を取り出して咥えると、ライターで火をつける。大きく息を吸い込んでニコチンを取り込むと、息を吐いて煙草の先端に付いた灰を下水道に落とした。
鉄骨などによる道に落ちたその灰はしばらく、熱を失わずにその場で燻っていた。
週末という定義から話しましょう。その言葉の通り、一週間の終わり際を指しています。人によっては、一週間の始まりは日曜日からではなく月曜日からっていう人もいませんか?その人からすれば日曜日も週末に入る。なので今回の投稿はセーフ!!
……んなわけありませんよね?はい、すみませんでした。
というわけでとりあえず一幕というか、第三章の初戦は大体終了といった感じです。いやはや、長くなりそうだなこれ……。わりとじっくりとやろうとは考えてはいましたけど、ここまでとは考えていないぞ一ヵ月前の私ぃ!まぁ、結局はスカスカな中身になるほどのよりかはいいんですけどね。原作が凝ったストーリー性になっているので、それに倣いたいんで頑張りたいものです。
それでは雑談としまして、最近の近況報告。これを書き上げる少し前に、建造レシピを回し続けて実装されたばかりのMDRとかM21が来てくれました。私の基地のAR15のレベルが100になったのに続いて他の子達も上限に達し始めた頃にIWS2000も来てくれたので育成に手が回りそうなんですが、育てたい子がそれよりも多すぎて回り切れないという現状に。ちくせう、意識だけが先行しすぎて仕方ないやんけこれ。
それはともかく、ここまで読んでいてまだドルフロをやっていない人はやってみてくださいな!私の作品で誤解している人もいるでしょうけども、結構心に来る暗い展開もあっておもしろいんですよ。個人的にですが、某艦隊ゲームよりも私はやりやすいと思います。
とはいえ、プレイしている私はまだドルフロ関係のグッズは持ってないので、ファンとしてサントラも今度買おうかなと思ったりなんだったり。
……おん?ジャケットがAR15だからだろって?だからなんだと言うのです?
ともかく今回はこの辺で。ああもう、M16と酒が飲みたくなったぞこんちくしょう!
『それだけ早く撃つとジャムりそうなんだが……』