誰も助けてくれない -Can you hear me?-   作:麒麟犬

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活動報告コメントで報告させていただきましたが、物語の舞台にブレが生じていました。各部訂正させていただきましたが、訂正漏れがある可能性もあります。こちらからでも見られた場合は適宜修正させていただきます。また、主人公のローガンが使う『ハニーバジャー』に対しても若干の齟齬がありましたのでそちらも直させてもらいました。改めてすみませんでした。


25.廻る現実 -Pain in the chest-

十月半ばになればもう青々とした葉はなく、雑草の色も生き生きとしたそれでなくなり、枯れ草が目に見えて多くなってくる。以前にAR小隊の救助に立ち入った森林に負けず劣らずで木々が生えているが、数の話であって大きさは負けているだろう。その中でローガンは匍匐姿勢で『P226』とナイフに手を掛けていた。視線の先には、口笛を吹いて上機嫌そうに用を足しているバラクラバの兵士が一人。

すぐ近くにはグローザが、その兵士を挟んだ逆側にはトンプソンが待機している。

 

「アルファ、尋問に時間がかかりすぎよ。あと少しで十分になる」

「落ち着けよ、グローザ。口が固い奴を捕らえて手間がかかってるのかもしれないだろ」

 

グローザが無線機に急くようにしてそう呼び掛ける。

ローガン達がダムの近辺で到着しようとした時、チャーリーからの報告がプロフェットを通じて伝えられた。ブリーフィングで説明されていた未確認部隊がダムに到達し、全部隊を展開させて何かしらかの作業を始めたということである。

作戦開始前はダムの近辺でヘリから降下することだったが、相手方の戦闘ヘリの存在も相まって距離や方角も大きくズレたポイントにて作戦を開始した。その影響によるタイムロスも大きい。

なので、グローザはここまでピリピリしているのだ。

アルファに当たることは場違いではあることは彼女もわかっているだろう。本人に自覚はないのかもしれないが、口調がキツイものだったので一応注意しておく。

余計なことをしてこちらの存在が悟られないようにするために、今の時点では慎重に動かなければならない。

 

『こちらチャーリーのSV98。ブラボーリーダー、そちらのPTRDとの混合のスナイパーチームは配置に着きました。指示があればいつでもいけます』

「よし、しばしそのまま待機。なにか大きな動きがあれば教えてくれ」

『了解』

 

こちらに未確認部隊の進軍状況を報告した後で、スナイパーの人形達は狙撃ポイントを割り出し、サブマシンガンの彼女達はローガン達に合流を測ってくれていた。

降下して79式をはじめとしたアルファと別れ、合流したチャーリーとは無線で具体的な作戦内容を伝えてはいたが、そこからはなにもこちらからは口出ししていない。戦術の組み立ての一環として地形把握を実際に自分の目でしておきたかったというのもあり、対応すべき部隊がどのような様相かを全体的に見ておきたかったからだ。決して、先んじて偵察部隊として現地にいたチャーリーチームの彼女達を信じていないわけではない。

しかしダムに到達されてから目的がはっきりしていない以上はゆったりとしていられなくなった。迅速に行動すべきということでローガンはブラボーも一旦分断し、動きが素早く機動性のある人形を引き連れ、歩兵が集まっているエリアを双眼鏡で見定めてそこに向かった。マシンガンのMG5とペチェネグはスナイパーチームの援護が届く、ダムの側方の木々に身を隠しながら待機。そして件のスナイパーチームはそれよりも高所でありつつも対角線を結べる位置取りである。

忘れそうになるがダムというのは利水できるようにするだけでなく、水力発電や治水などの役目も果たしている。肉眼で見てもわかるほど歪曲しているそのダムも大きく、北アメリカ支部のグリフィンの保護区域の水を供給できているのにも納得できるほどのものだ。

もしここが、機能停止どころじゃない話になったら……。

ぽつぽつと湧いてくる嫌な想像が線を結んでいき、自然と眉間に皺が寄っていく。物音を立てることも極力抑えなければならないこの状況で、ローガンは無性に自身の額に浮かぶ汗を拭きたくなりながらもじっと耐えた。

標的として定めている歩兵が用を足した後で煙草か何かを取り出し、一服し始めた時だった。

 

『こちらアルファ1。プロフェット、並びに各員へ。捕虜への尋問の結果、未確認部隊の目的はダムの機能不全と判明しました。詳しい手順までは知ることはできませんでしたが、何かしらかの工作を行うことが予想できます』

 

アルファチームのリーダーである、79式からの報告。それを聞いたローガンはナイフを静かに抜き、グローザの方を見る。彼女はこちらと目を合わせ、僅かに頷いた。

 

『了解した、アルファ1。全部隊へ、これより我々は未確認部隊を敵勢力とし対処する。何よりも優先すべき第一の目的として、彼らの企みを阻止。第二に、こちらに攻撃を仕掛ける者の制圧。それぞれの部隊のタスクはブリーフィングで取り決めた通りだ。現在時刻は08:41、作戦を開始。各自、発砲をはじめとした攻撃を許可する』

『了解』

 

各員からの応答が発せられ、ローガンもそう返しながら行動を開始。匍匐姿勢からしゃがんだ状態になって気を抜いている歩兵の背後へと足音を殺しながらゆっくりと歩く。あと二メートルになったところで飛びつき、口を覆いつつ歩兵の首を締め上げて酸素を取り入れられなくした。

 

「……っ!……!?」

「朝っぱらからだが、良い夢を」

 

そう囁き、段々と抵抗力が弱まっていた歩兵が動かなくなるまで締め続けた。やがて動かなくなると一旦寝かせ、万が一を考えて抜いていたナイフを収納。それから周囲にいるグローザとトンプソンにハンドサインで集合の意を伝えた。

そしてその歩兵の軍服や防弾チョッキだけでなくブーツまでも剥ぎ取る作業に入る。

 

「私が手伝うわ。あなたは早く装備を身に着けて。私はこいつのバッグにC4とスモークを詰め替える」

「わかった。トンプソン、周囲の警戒は頼んだぞ」

「任せとけ」

 

一通り剥ぎ取ったら自分の装備を変える。グリフィンに来てから一新された、軍用として使われる黒のショルダーバッグにサイドバックやポーチ、各種マガジンが入ったままの防弾ベストまで脱いだところで手が止まった。一人の戦術人形が、こちらの方に体を向けながら作業をしているからである。

 

「……お~い、手伝ってもらってはいるけど、さすがに見られてちゃ着替えにくいから別方向を見ていてくれません?」

「え……あっ、ごめんなさい……」

 

顔を上げた自分の先にいるローガンの事に気付いたグローザはこちらに背を向けて、引き続き迷彩色の軍用バッグに爆薬などを詰め込み始める。

素直に別方向を向いてくれたことに安堵しつつ、ローガンはホルスターや肘や膝に着けているパッドなども外し、紺色の戦闘服も脱いでインナー姿になった。

 

「うぉ……地味に風が冷てぇ……」

 

秋に移行してきて体感で感じる風の温度も夏に比べればやはり格段に冷えてくる。それから逃げるようにして、ローガンは敵歩兵の迷彩服に袖を通した。ブーツも履き替えて、さっきとは逆の手順で装備を身に着けていく。

 

『追加で報告します。敵部隊の名は特にありませんが、複数の組織による混合部隊だそうです。『オーナー』と呼ばれる人物からの依頼で寄せ集められたらしく、数としては歩兵数は約250ぐらいでチャーリーからの偵察報告と大体一致しております。また『合流し先んじて出立せよ』との指令があったようで、一週間ほど前から進軍していた、とも言っています』

『なるほど、妙に行動が早いと思ったらそういうことだったのか。情報分析の結果を待たずに進軍させて先手を取りやすくする、不安要素はあるが効率よく事を運ぶ手段としてはいい。それに混合部隊ということは……ブラボーリーダー、これらからするとやはり……』

「ああ、強奪事件の例の連中が関わっているんだろうな。尋問記録で証言されていた通りなら、やっぱりダムのデータが奴らの手に渡っていると考えた方が良い」

 

自身を組織の下っ端として自嘲していたあの捕虜が言ってたことが正しいのであれば、ここにいる敵勢力は今回対立する敵とする中の総力ということになる。

先んじて夜間から偵察していたチャーリーは確認できなかったが、それぞれの戦闘服の柄や系統も違っていることからもしやと思っていたが、複数の組織で構成されているのであれば納得がいく。今しがた気絶させたメジャーともいえる、全身を迷彩色で統一している歩兵の他にも、迷彩も何もないオリーブグリーン、あまつさえ私服の上に防弾チョッキを身に着けている者もいるのだから。

それに79式からの報告から想像するに、あくまで共同で仕事をする、いわゆるビジネスとして肩を並べていることが考えうる。先の事件で捕虜の男が言った通り、傭兵を雇うように報酬をちらつかせて集っているのであれば、複数の組織の間に『信用』や『信頼』といった二文字はない。一触即発とは言わずとも、何かしらかのきっかけがあれば容易に崩れ去るのではないだろうか。

となれば幾らでもやりようがあるというものだ。

 

「スナイパーチーム。サイレンサーを取り着けれている奴だけで良いが、こちらから出した合図と一緒に指定した兵士の狙撃を要請したい。できそうか?」

『ターゲットに対しての射線に問題がなければできますが……何をするつもりです?』

「傭兵といった雇われ身の兵士であれば、報酬の取り合いに過敏な奴もいるし、そこまでじゃなくても執着は少なからずも人一倍はある。そんな奴らにとって得することは何だと思う?」

『え~と……依頼の支払額が上々にさらに上乗せの仕事……』

「簡単な話だよ。依頼主から全体に支払われる額が既に決まっていて、自分に渡される金の量を追加の仕事をせずに増やす方法だ。皆、なにかわかるか」

 

難しく考え始めたSV98だけに限らず皆にローガンはヒントを出してやる。回線は全体に開かれているので部隊や立場を問わずに全員に聞こえている筈だ。

カーキ色の防弾チョッキを身に着けたところで、付近にいる二人を見てみると、どちらも答えが分かったようにして自分を見ていた。そして、他から回答が出てこないというタイミングを見計らったのか、アルファ2の95式が答えた。

 

『人数……報酬を受け取る側の自分の味方の人数が少なくなること、ですか……?』

「その通り。今回の連中は本当にそうなのかどうかはわからないけど、これだけの人数に巨額である一定の額を用意するなんざ考えづらい。できるとすれば、国に従事しているお偉いさんぐらいじゃないのか」

『『依頼主(オーナー)』の素性が分からない以上断定はできないけど、もし分配方式で報酬をもらうことになっているのであれば考えられるね。金の事で気を揉みながら銃を持っている兵士からすれば、別組織の人間が関わっていれば気が気でいられなくもなる』

「その思考にも発破をかける。最近の鉄血の企みに似せているようで癪でしかないが仕方ない。今は目を瞑るとして煽ってやるんだ」

 

『ハニーバジャー』や『P226』といった、ローガンが基地から持ち出している自分の銃ではなく、倒した兵士が脇に下げていた『MP5』を手に取って弾倉を確認。固定ストックのそのSMGについているアタッチメントはレッドドットサイトだけだが、自分の銃でないのだからそこまで気にする必要はない。アタッチメントであまり拡張されていないその銃のメンテナンスはそこそこされているのですぐに使えなくなることはないだろう。拳銃は米軍でも愛用されていた『ベレッタM92F』。ただ、こちらの方は使われた形跡が少ない上に手入れも疎かだ。弾倉を抜いた後にスライドを引いてみたが、内部に砂塵が混ざってたりしていた。これでは発砲した際に動作不良を起こし、銃そのものが部品をそこらじゅうにばら撒きかねない。

 

「お膳立てはこっちでする。そっちは引き金を引いて狙撃してくれればいいだけだが、それでいいか?」

『わかりました。それと一つ、こちらからも提案があります。好都合かどうかはわかりませんが、目的地に着いたことにより敵部隊は散開しています。それに合わせて戦車も周囲に展開しているのですが、手分けして順々に破壊できませんか?もちろん手順に従って、一輌の爆破はそちらにおまかせしますが、現場検証などが始まってしまえば長くはもちません。適宜こちらも援護します、ですから―――』

「その前に速攻で片を付けようってことか。オーケー、元々は隊列を組んでいる状況を想定して考案していたんだ。それならこっちにも人員を回してもらえてやりやすくなる」

『ありがとうございます。プロフェット、周辺に展開している戦車部隊と歩兵の位置情報をこちらの端末にもお願いします。私達も一旦分かれてアサルトチームの援護をするのに最適な場所を割り出す必要があります』

『了解した。ただちに送信する』

 

情報によれば、ここにいる戦車の正確な数は四。奇襲をかけてこちらが有利なまま事を進めるには相手に分析を行わせないよう、速攻で制圧しなければならない。となれば、こちらから先手を打つことは必須。

本来ならローガンがトロイの木馬として潜入し隙を生み出させるつもりだったが、変化した状況が状況だ。一輌ずつ相手にするようじゃ効率悪いし、頭が回る者がいた場合は短時間で対策を練られ待ち伏せされることだってあり得る。

 

「さて……アサルトチーム。プラン変更だ、各自集まってくれ」

 

グローザとトンプソンだけではない。チャーリーチームでSV98達の狙撃支援などをしていたSMGの人形も近くにいる。彼女達は今しがたローガンが倒した兵士がいた戦車部隊の出方を見張ってもらっている。

C4爆弾やスモークといった、それに通じる武器の配給。それがまだ行われていない以上、本格的に戦わせるわけにもいかない。

さて、肝心の最初の一手はどうするか。

そう考えながらローガンはバラクラバを被り、ゴーグルを目元に取りつけた。

……拝借したバラクラバが煙草臭く、グローザによってしまわれた元の装備一式に戻りたいと心から思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ったく、さっさと隊列に戻れ。仕事しなきゃてめえの分け前もないと思いやがれ」

 

加わった部隊の隊員達に軽い叱責を食らった後で漬け込める隙が無いか観察した。

装備は対して拝借したローガンのと大きな違いはないが、背中にロケットランチャーである『Mk153』がある兵士が二人。

そしてUAVからの熱画像を端末でも確認した通り、戦車を中心に円を描くように大体均等に距離を置いて辺りを見回っている。数はローガンも含めて八。現在ローガンは戦車の左後方で、ダムがある開けた方向とは真逆の位置に。

(見た感じ、なかなか難しいように見えるがそうでもないか……?)

 

フォーメーションだけでなく兵士一人一人を観察してみると、真面目そうに周囲に視線を向けていても、落ちた私物などを拾い上げようとする動作が緩慢だったりして気怠そうに見える。一週間の行軍がどのような具合だったのかは知らない。それがよっぽど厳しいものだったのか、それとも今こうして近くを歩いている兵士達が大したことないのか。その判断も下せないが、気付けたことが一つだけある。

戦車部隊を囲っているのはローガンも含めた迷彩色の隊員だけでなく、オリーブグリーンの兵士もいる。配置としては、戦車を縦に分断し片側の中心にいる二人をもう片側の二人と交換している。要するに、左後方にいるローガンの目の前にはオリーブグリーンの兵士の二人がおり、左前方の先頭には同じ服装の兵士が一人いるということだ。そうなれば右側はこちらとは逆の配色となっている。

なぜこのような手間がかかる、面倒な配置にしているかの心当たりの要因は先程ローガン達で話し合った信用問題だろう。互いに互いを見張り合っており、不審な動きがあれば即座に問いただす。どちらにも有利不利などなく、人質としてお互いに銃口を突きつけ合っているようなものだ。

 

(なら、活路はここか……?)

 

狙うべき箇所を脳内で想定し起こり得る可能性を考えてみる。

スーパーコンピューターではないローガンの脳内で実行した場合のシュミレーションをしてみると、やはり戦車の破壊が悩ましい所だ。ガラガラと駆動音を立てているこの要塞としては小さい戦闘車両を攻略するには、『誰にも気づかれない』というタスクを実行するには歩兵たちの内部分裂を誘発しなければならない。

今こうしてローガンの目の前を歩く二人にも、傭兵としてではなくとも人間として執着しているものは金じゃなくても一つはある。命綱が取り付けられていると頭では理解できても、無意識に身体を動かなくする原動力だ。命への執着である。報酬の為に足掻くのだとしても、命が惜しいわけではない。綱渡りを繰り返したことにより一般人や正規部隊の兵士より薄れていても、生物として自身の存亡に関わるほどの恐怖に駆られればさすがにパニックに陥る。

最も耐性をつけられてしまっていたらお終いだが、それに対応するのが今の自分の役目だろう。

ローガンは付近にいる者達に聞こえない程の声量で、バラクラバで隠れている耳元の無線機に話しかける。

 

「スナイパーチーム。こっちは誰が見ている?」

『チャーリー3のT5000です。狙撃要請ですか?』

「その通りだ。グローザの合図に合わせて、俺の逆側の中央二人を撃ってくれ……ていうか、俺が今どこにいるのか分かっているか?」

『……すいません、わかっていません』

 

それもそうだ。こちらを遠くから見ているだろう彼女にはわからなくても仕方ない。時には草木に隠れてしまって見えなくなっていることだってあるだろう。

 

『チャーリー3、敵戦車の近くでハンドライトでパッシングしているけどわかるかしら?』

『……はい、一際大きい木の枝の上ですね。こちらから推定で五メートルの高さはあると思いますが』

 

おや?、と思いローガンは汗を拭くように見せかけてやや見上げてみる。そこには枝の上にしゃがんでバランスを保っているグローザが見えた。ここからでは見るところに少々困るが、長い間見つめるわけではなく、存在だけを確認したローガンはヘルメットを被り直し、無線に耳を傾ける。

 

『戦車部隊の進行方向、そっちからであれば見える中央二人の片付けをブラボー1は頼んでいるの。できるかしら?』

『ターゲットがはっきりとしているのであれば問題ありません。射程距離内でありますし、いつでもいけます』

「グローザ、お前達に合わせて俺も攪乱させる。他に円滑に進めれるようであればそっちの行動判断に任せるぞ。トンプソン、いざという時は頼む」

『了解』

『ああ、任せろ』

 

銃の安全装置が解除されているのを手の感触で確認する。サイレンサーがついていないのでローガンは極力発砲を控えなければならないが、この後の事を考えれば不審に思われることは無くさなければならない。例えば、本気で警戒して撃つ気がある、と見られるようにする、などだ。

声を発するのに、どのようなのが良いのかも確認済み。先程の叱責で言い訳をする前に知ったが、どうやらローガンによって戦闘服を頂戴された男は声を発することが難しかったらしい。持ち物の中にあった、筆談用の紙とペンがあって、既に文字が走り書きで記されている紙面には簡単な挨拶などが書かれていた。

声を発っせないというのにタバコ吸っててよかったのか……?、と首を傾げたが、要はかすれ声を出せばいいのだ。それに都合が良い。多少違っていても彼らにとっての緊急事態になれば、そこまで気にする必要性もすぐには出てこなくなる。

 

『三……二……一……!』

 

グローザのカウントが聞こえ、ゼロのタイミングで撃たれただろう二人がバタリと倒れる音はキャタピラの音で掻き消された。ただ、戦車を挟んだ反対側のオリーブグリーンの兵士が屈んだため、それが合図となる。

 

「伏せろ、伏せろ!」

 

近辺の兵士に聞こえる程度には声を発したその兵士に従い、全員がしゃがみ込んで警戒態勢に。歩く速度に合わせていた戦車も止まったことを確認しつつローガンも膝を折って少々頭を竦めた。

 

「状況報告!なにがあった!?」

「右翼側の二名がダウン……!」

 

遺体を調べられればこちら側に不利となって働いてしまう。グローザ達が指示した標的を撃ったわけだが、グローザとT5000が使用している弾薬の口径は違っている。それにグローザの銃では一発で仕留めるには威力が足りないので複数回命中させなければならない。アサルトライフルとスナイパーライフルによる、二人の死体につけられた弾痕の数と形状が大雑把にでも違うことを気付かれた場合、失敗とはいかずとも少々やりにくくなる。

それに、この場にいる兵士達の銃口にはサイレンサーといった消音器は付いていないこともある。

なので、そうなる前にローガンは行動を起こした。

わなわなと震えているようにし、その震える指先で目の届く範囲でいた反対側の兵士を指す。

 

「こ、こいつがなにかやった……!」

 

こちらの様子に気づいた、迷彩柄の兵士がローガンが発したかすれ声を耳にした途端、目の色を変えた。怒りとは違い、爛々と目を輝かせている喜色に。

 

「おいてめえ、そこに膝をつけ!」

 

心境を悟られないようにする為に声を張り上げているが、その声色が目と同じ感情に染まっていることが窺えた。

その台詞を機にこの場に生まれた剣呑な雰囲気で遺体を中心に全員が集まり始める。戦車の左翼に展開していた、オリーブグリーンの兵士も眼光を光らせながら仲間を庇いに向かった。

こちらに対する注意がノーマークになったタイミングを見計らい、ローガンは戦車のみならず皆の死角に潜りこんだ。

カーキ色のサイドバックから取り出したC4爆弾をキャタピラの駆動部に間隔を空けて二つ押し込む。戦車を攻略するのに設置個所を選ぶことを考えて、まず銃弾からの保護が薄い、装甲が施されていないことでここがまず思い浮かばれた。

もちろんこれだけでは破壊にまで至らないので他の箇所に設置しなければならない。破壊対象である『M1エイブラムス』という戦車の弱点となり得る箇所は背面も含まれるので候補としてしていたのだが、引き付けられている兵士達の位置が悪い。

少し考えたローガンはやむを得ないとして、見える範囲で有効打にすることが出来る箇所がないか目視で探そうとしていた時だった。

 

「おい、一体何がどうなってるんだよ?」

 

戦車のハッチが開かれ、搭乗員の兵士が外に出てきた。

反射的にローガンは身を屈めて気配を消し、自分が隠れてコソコソしていることが悟られないように動いた。幸いなことに、その兵士は集まっている兵士達の方に視線を固定し一直線にそちらの方に向かって行った。ハッチは、開かれたままである。当たり前の話だが、戦車を運転しているのも人間で、正面を除いた外の事情の把握は遅れてしまう。警戒態勢になったとはいえ、まだ派手に銃撃戦が始まってないのであれば、搭乗員の一人が確認に出てきても不思議ではない。

 

「今だ……!」

 

音を立てないように戦車の出っ張りに掴んで一気に体を引き上げる。ばれない様に上半身を屈ませ、砲身が回転することがないことを願いながらローガンはもう一つのC4爆弾を取り出して起爆の安全装置を解除。

さて……、とローガンは左耳の無線機を耳に押し付けた。

 

「グローザ、トンプソン、T5000。派手に花火を上げさせる、援護を頼んだぞ」

 

もしここでハッチが開かなければ、少々無理をしてでも歩兵たちの制圧を考えていた。速やかに抑え、背面にC4爆弾を設置し起爆。

だが悪運が働いたかどうかは定かではないが、こうして内部への直接攻撃が可能となった今じゃ幸運だと思うしかない。

応答が返ってきたと同時にすぐに立ち上がって運転室に爆弾を投げ入れる。

 

「おいてめえ、なにしてやがる!」

「とにかく撃て、あいつなにかおかしいぞ!」

 

銃声が轟き、銃弾がヘルメットを掠めた。だがこれで動きが止まってしまうほど、ローガンは経験を積んでいないわけではない。投げ入れた後で戦車から飛び降り、受け身を取ると反対方向へと走り出す。

もう既に銃声が響いて辺りにいる兵士達にも聞こえている筈だ。注意は嫌でも多少は引いてしまっている。

歩兵だけでなく、戦車の射線を妨げるためにスモークのピンを抜くとそれを背後へと投げ捨てる。

大体の安全圏内に引けたことを確認したローガンは木にに隠れ、爆破の合図を叫びながら起爆スイッチを入れた。カチッとした感触が親指の神経を通じて伝わった瞬間、走ってきた方からとてつもない爆風が全身を叩いた。

ダァアアアアアアアアアンッ!!と鼓膜が破けたと錯覚させるほどの爆音で聴覚を刺激されたローガンは、身体を隠した状態で確認。黒煙の中には、もうすでに黒焦げとなった車輛が一輌あった。耳鳴りが大分収まってきたところで状況を確認する。

 

「グローザ、トンプソン。お前らは無事か?」

『こちらグローザ……ええ、まだちょっとふらつくけど問題はないわ。作戦続行可能』

『私も無事だ。ちーとダミーがイカれちまったようだが……大丈夫だ、次も行けるぞ』

「よし。プロフェット、戦車一輌の無力化が成功。全員無事だ、これから次に取り掛かる」

『了解した、UAVによる支援は続行する。各員へ、こちらの電子支援の準備も完全に整った。これよりリアルタイムで敵の位置情報を端末に送信する。大きな変化があればこちらからも通達する、だが細かい確認は各自で行うようにしてくれ』

 

ローガンが左腕につけている端末を確認すると、たしかに細かく敵の動きが補足されている。青点で記されているのが自分達で、赤点で動いているのは敵兵だろう。指で画面を弾いてみれば、それぞれの青点が誰なのかも出てくる。

 

「アサルトチーム、行動開始だ。俺達チーム1はもう一輌を、チーム2は二輌にとりかかってくれ。俺達も余裕が出来たら支援でそっちに行く」

『了解。開戦がうまくいったのだから、ミスはするわけにはいかない』

「妙に気張りすぎるなよ、ベクター。スナイパーチームは手筈通りにこちらへの援護を重点に、マシンガン部隊は狙撃している彼女達の排除をしようとする奴等への掃射だ」

『了解です。さあ、ヒーローの登場ですよ!』

『任せろ。言われただけの仕事以上の事はやって見せるさ』

 

こちらも行動開始……その前に、ローガンはあるものを目当てに爆破跡の方に駆けだす。

望み薄ではあるが、もし無事であればこちらからの攻撃手段の数が増える。そう思いながら、転がっている兵士の遺体を一つ一つを迅速に確かめた。

 

「何をしているの?充実した装備があるというのに、ハイエナのように欲しいものがあるわけ?」

「立派な戦略的行動だよ。さっき吹っ飛ばした戦車の周りにいた連中の中に、ロケットランチャーを担いでた奴が居た。そいつからもらって、今後の役に立てようと思っているんだが……」

 

そうしていると、血の跡が雑草林の方に伸びているのを見つけた。死体の数を数えてみても六つしかなかったので、一人だけがまだ生きていたのだろう。

もしかしたらその者がローガンの目当ての物を所持しているのかもしれないが……。

別の目的が生まれたローガンは近くに寄ってきたグローザになにも言わず、その血痕を追って行った。後ろから呼び止める声が追いかけてくるが、それよりも衝動的に湧いてきた思いだけがローガンの身体を動かす。

掻き分けていったその先に、一時の探し人はいた。泥や砂がついてはいるが、オリーブグリーンの戦闘服を着用しているのははっきりとわかる。それよりも、両脚が失われてそこから跡を引いていたのが敵であったが痛々しかった。

両脚を失った兵士、そう認識した途端、ローガンの胸中で同情的な感情が沸き上がる。包丁やナイフといった、鋭利な刃物で刺されたような鋭い痛みで歪んだ表情が隠れていたことに、ローガンは拝借したバラクラバとゴーグルに感謝した。

精神的な痛みに耐えるローガンによって見下ろされている兵士は、血だけでなく涙や鼻水でぐしゃぐしゃになったその顔を向けてきた。

 

「助けて、いや……殺してくれ……」

 

訳が分からなかったが心臓が跳ね上がった。何故だ、とローガンは自分に問いただす。

こいつは俺達の敵なのに、なぜこうして同情している?なぜ今感じる必要のない感傷を受けている?そしてなぜ、俺は記憶の中の誰かと重ねている?

状況は違えど俺に懇願している人を何度も見てきたから、M16が言ってた通りで優しすぎ、甘いのか……じゃあ、なんであいつとダブって見えている?五体満足ではないまま、目の前で死に絶える人を見たことがあまりないから?彼の傍に立つ誰にも看取られないから?それとも――――――。

 

「……ああ」

 

『MP5』のモードセレクターがシングルにしたローガンは、苦しみことがないように照準を額に定める。

 

「すまない、俺もそっち側に行けたらとも思うよ」

 

引き金を引いて発砲する。タァンッ!と久しぶりに使うSMGの反動は記憶の中にある体感よりも大人しかった。そして被弾したその兵士はバタリッと仰向けに上半身を倒して絶命する。

今がもう全て終わった後で、ここから状況整理などの単調で退屈な作業に入るのであれば天を仰いでいたのかもしれない。

しかし残念ながらローガンが望むことになっていない。むしろここからが本番で、自分達は大量の敵兵を撃たなければならないのだ。

……生き残るために。

 

「ちょっと……」

 

背中に咎めてはいるが戸惑っているような声が掛けられる。彼女が、グローザが考えていることは間違っていない。今こうしている間にも、確認の為に敵兵がこちらに来ている筈なのだから、下手に銃撃戦を始めることになって補足されるよりも先に次の装甲車輛の破壊をしに行くべきだ。

ローガンも一人の兵士として努めなければならない。

一旦抑え込んだこの感傷の痛みを抑え込み、この世から旅立った兵士の遺体から『Mk153』を回収し、服の内側で輪っか状に鎖に繋がれているドッグタグを引っ張り出し、それをポーチの中に収めた。

 

「行こう……!」

 

――――――そうだ、これも彼女達だけに押し付けてはいけない事なんだ――――――

押し込んだ気持ちに踏ん切りをつけ、ローガンは次の目標へと走りだす。

――――――チリリ……と脳裏に黒くこびり付く記憶と感情を抱えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――<グリフィン北アメリカ支部 10:14>―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャドー1……今回はブラボーリーダーとして作戦に参加しているローガンの報告から数十分後に、チャーリーのSMGの人形達で構成された、アサルトチーム2の破壊成功の報告が届いた。損害も特に出ていない。チーム1からも二輌目の破壊が完了したということで

正直な話、ローガンを今回の前線に投入して正解だったと、ハリーは溜息を吐きながらそう思う。戦車や軽装甲機動車(LAV)との戦闘になった時は、歩兵としてはほぼほぼお手上げだそうだ。それもその筈、相手は生半可な銃器では痛手にならないだけの装甲を持っているのだから勝てないと言った方が良い。こちらが装甲を貫通させられる対物ライフルや、ロケットランチャーといった推進力のある爆弾を打ち出す兵器があったとしても、正面からの戦いは避けるべきだ。

もし、ただ設置型の爆弾で攻撃を仕掛けるのであればローガンが考案したようにするのも一つの手だ。ただ、スモークを展開して攪乱している間に敵歩兵に攻撃し、ある程度制圧できたところで戦車に接近してC4爆弾を仕掛けるというこの案は、人員や適切な装備があったのだとしても簡単にできることではない。やはり、どこかに不安要素は生まれてくる。

だが、無い物強請りでしか叶わない現状ではこれがベストだと自分も判断し、作戦続行の許可を出した。

 

「なんとか、なりそうですね。私達とは少し違った経験をしてきたローガンさんがいてくれるおかげで」

「うん……でも、油断は禁物だよスオミ。絶対に勝てる、と約束される戦場なんて決してないんだから」

「わかってますよ、指揮官。でも、少し休んだらどうです?昨晩の偵察任務の間も一睡もせずに……」

 

柔らかく笑いかけてくれるスオミが淹れてくれたミルクティーを啜りながら、ハリーはこうして作戦指揮をしていてトータルでどれぐらいになるかと脳内で計算してみる。

休憩を途中でしつつも部隊を指揮する為に詳細な情報が映っている画面を睨み、UAVの操作を任されるようになってくれたオペレーターに時折指示を出していてかれこれ半日。そして、昨日は二日酔いに苦しんでいたこちらを思いやってくれた二人と話し合いも含めれば、もうほぼほぼ一日はベッドで休んでいない。

 

「大丈夫。というか、僕も緊張や不安で寝たくても寝られないんだ。仮眠室に行っても悶々とするだけで無意味だよ」

「そんなことはありませんよ。目を閉じるだけでも多少は楽になりますし、そこでお休みください」

 

スオミが勧めてくれる先には客への応接などで使うだけでなく、少人数での作戦の説明でも利用するソファだった。今年の春に新調したばかりのそれは、副官による丁寧な手入れのおかげで新品と言われても違和感を覚えない程綺麗な状態に保たれている。頼んでもいないというのに、マメに掃除してくれている彼女に感謝しかない。

 

「もう重要作戦に踏み込んでいるんだし、終わるまで休めれないよ。それに、なんだか恥ずかしいし」

「そんなことはないですよ。短時間であれば私も作戦指揮を行えます。現地にいる皆も、経験豊富でよっぽどのことがなければ大丈夫ですし」

「だけどなぁ……」

「……こら、ハリー君。大きくなっても偶には私の言うことを聞きなさい。倒れるまで後悔しないというのは、昔からの君の悪い癖だよ」

 

昔からの付き合いということでこちらが呻くしかないことを言われ、ピッと指されたハリーは押し黙るしかなくなった。

 

「まだ体調が回復していないというその日から体に負担をかけているんだから、ここぞという時に体力が無くなっちゃうよ。そんなことになったらハリー君じゃなきゃ打開できない状況にぶつかったらもう目も当てられなくなるけどいいの?」

「……それはまあ良くないけどさ……でもスオミ、なんだかそう叱りつけてくるの随分と久しぶりだね。最近じゃ仕事の上司と部下、って感じだったのになにかあったのかい?」

「……話を逸らそうとしている悪い大人に話すことなんてありませんっ」

 

頬を膨らませたスオミがふんっと怒ったように腕を組みながらそっぽを向く。

口答えされた時の昔の反応と同じだな、と苦笑しながらハリーは指揮官用の椅子から立ち上がり、机を挟んで向かい合っていたスオミの頭を撫でた。さらさらとした金糸のような髪の感触、自身が幼く体躯がまだ小さかった頃と変わらないどころか、全く変化がないと思うのはいいことなのか、それとも……。

十代後半から芽生えた、人生と時間が関わる疑問がまた腫れ物として膨れ上がったがそれから目を逸らした。

少々悩ましかったが、ハリーは自分にとって姉のようでありながらも、今は亡き父と母とは違った存在である少女からの言葉に甘えることにした。

 

「わかったよ。とりあえず、全体的に状況が落ち着いたら休ませてもらうことにする。そこからの処理は任せていいかな?」

「……妥協案ということですね。わかりました、そこからはお任せください。ただし、こちらから見ても本当に危なげになったら無理にでも仮眠室に拘束しますので覚悟してください」

 

それじゃ僕の体調が悪化するんじゃないかな、と思いながらも自分の戦場に立ち戻る。

数々の報告からして状況は優勢だ。ブラボーとチャーリーから現場で一時的に再編されたアサルトチームによる、装甲車輛の制圧は終わってきている。UAVによる電子支援しかこちらからはできていないが、スナイパーチームも含めた現場指揮を担ってくれている親友のおかげで、そちらに割く意識は最低限で済んでいる。まだ戦闘ヘリの対処もしなければならないが、今のところレーダーには捕捉されていない。状況が変わり次第、こちらからアナウンスし有効打になり得る手段を提案すればいいだろう。

さて、アルファの方だ。

 

「アルファリーダー、UAVによる熱源観測でそちらに接近している敵部隊がいる。増援だ、数は少なくない」

『了解しました。通ってきたダムの通路に足止め程度でブービートラップを設置しつつ前進、ダム内部の制圧を急ぎます!』

「内部にまで踏み込まれてシステムを掌握されただけでも、保護区にとっては少々痛いことになる。こちらからでは電子戦を仕掛けるにしても付け焼刃の防衛しかできない」

『わかってます。幸いなことに――――――』

「アルファ?アルファリーダー!?」

 

アルファリーダーである79式からの応答が乱れ、途中から聞き取れなくなる。UAVによるレーダーは生きているが、無線が機能しなくなった。

ハリーは無線チャンネルを何度か操作し、ブラボーとチャーリーにも接続しようと試みるが全然つながらない。

 

「スオミ、基地の支援センターに連絡して確認取ってくれ。こちらから操作しても改善されない!」

「もうしてます。ですが向こうでも原因が分からず困窮しているそうです!無線機器のステータスを診断プログラムで照合してみても問題は見つかっていないと!」

 

何がどうなってる、と未曾有の事態にハリーは電子支援が続行できているUAVによって映し出されている画面に視線を落とした。すると、一つ異常なものが熱源で映し出されていた。

すぐに画面操作を行い、それをサーマルによる稚拙な表示ではなくはっきりとした色彩で映し出す。カタカタとパネルを叩き、ズームしてから照合して一致するのがデーターベースにないかと思ったのだが無駄な努力で終わった。

 

「こいつは一体……いや、形だけなら知ってはいるけどこんなのが開発されただなんて聞いたことがない……」

 

呆然としてしまったが、『それ』が何によるものなのかの解析を速めなければならない。

すぐに内線でデータを送り、解析班に回そうと受話器を取ろうとしたところで、外線であることを知らせるランプが点って鳴り出す。一瞬体が強張ったが、ハリーはすぐに手に取って耳元にまで引っ張った。

 

「もしもし、どなたです?」

『治安組織『ルックオーバー』のカイル・ローズです、いくつかの非礼は許してください。でもすぐにそちらにも伝えなければならないということで、無理矢理回線を繋げさせてもらいました!』

 

ルックオーバーは、先日までこちらかの人員も派遣し定期的なパトロールの要請に応えた組織だ。

カイルという青年の声を聞くのが初めてであるハリーは、すぐに切り替えて伝えられたことを詰め込めるように脳内をクリアにした。

 

「なにか追加で捕虜から聞き出せたことでもあったのですか?」

『すいません、そうではないんです。状況は悪い方向に……!』

「……なにがあったんですか?」

 

後々になってハリーはこう語ったという。

グリフィンにいる誰も知る由が無い、その事実によってこのまま平たく収まらないことは決められた、と。

 

『情報源となっていた捕虜は収容していた牢にて殺害されていたと、本日明朝に尋問官をはじめとした人員から報告がありました……!』

 

後にこの一連の騒動は『大欲怨霊事件』として関係者のみならず、彼らが所属していた組織にまで知られることとなる。




先日、弟の様子見ということで暑いなかではありましたが都会の方に行ってきました。東京といった日本の主要都市とか、都会ならではの観光スポットを見回っていまして、感性が大人になってきているんだなとしみじみ思いました。でもまあ、自分が住むのであればやっぱりあちらではないです、うん。
ドルフロ自体も好調で、これを投稿する同日にAUGの獲得も無事できて、溜め込んでいたフロッピーディスクをつぎ込みました。後は拡大編成とかしたいんですけど、コアが枯渇していたりしてなかなか厳しかったり。お~ん、こんなにも育てたいキャラがいると手が回らないのじゃ、とか嘆きながらも今日も稼ぎに周回しています。
今回からヒートアップ、急展開です。構想としてはもうちょっと後かな~とか考えていたのですが、二輌目の破壊までの描写となると相当なことになると考えたので、割愛させていただきました。……バギーとかに取り付けてぶつけ、起爆するなんて一切考えてませんよ、ええ。
とまあとりあえず、今回はこの辺で。
次回からの執筆が楽しみだぜ、うへへへへへ。

『……いや、それでも結構無茶だろ』
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