誰も助けてくれない -Can you hear me?-   作:麒麟犬

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サブタイトルで色々と悩む問題


2.遠征という名の尻拭い -A wolf is coming-

ピピピッと警告音が耳の無線機に流れた。すぐに端末を確認し、ドローンによって確認されている鉄血の数、位置を確認する。続いて端末を操作し、ドローンの飛行で移動ができない代わりに光学迷彩を起動させて見えなくした。

 

「ケイド。そちらから二時の方向、鉄血のスカウト二体とヴェスピド一体」

『了解。こっちがヴェスピドを倒すからスカウトを頼むぞ』

 

サイレンサーをバレルに装着したカスタムM4を構え、匍匐姿勢で雑草の隙間からスカウト一体に狙いを定めた。距離はおよそ10m弱。一間置いて、鉄血の戦術人形のすぐ横の背の高い雑草から相棒が飛び出し、ナイフを使ってアサルトライフルをもった戦術人形の喉元に突き立て切り落とすように引いた。先制を取られたことに気付いた斥候のドローンがケイドに照準を定めるが、撃たせまいとトリガーを引いた。パシュンパシュンと二発発射し一体ダウン。もう一体は二人で同時に攻撃。一発の弾丸で動きを鈍らせ、投げられたナイフが刺さった。およそ五秒の戦闘であった。

 

『クリア』

「よし。こっからは身を隠せるものがあまりない。ケイド、先行してくれ」

『おう。遅れるなよ』

 

浮遊していたドローンを回収し、ローガンは立ち上がった。ケイドは義足のカードリッジを消費して先行していく。そこで常時回線を繋げているUAVオペレーターに報告した。

 

「マジック。ポイントデルタからエコーに向かう。こちらの位置が確認できるか?」

『ああできてる。だが送られてくるUAVの画像が酷い』

「研究部門め、自慢してた割には大したことないじゃねえか」

『だがその先の様子は確認できる。ケイド、進行方向に古い豪邸がある。サーマルで確認したところ、周囲は大丈夫だが中には敵がわんさかいるぞ』

『どうする?ここを無視してポイントエコーに向かうのは厳しすぎるだろ?』

「少し待て」

 

ローガンは道を外れて斜面を下り、ケイドとは別の位置から風化している豪邸に辿り着いた。再びドローンで建物の構造を確認し支えている支柱を探す。そして―――

 

「……見つけたぞ。ケイド、今ドローンでマーキングしている位置に爆薬を仕掛けろ。そうすればうまくいく」

 

ドローンのレーザーポインターでケイドに指示。彼は周囲に気を配りながら近づき、C4を取り付けた。

 

『……設置完了』

「よし、合流するぞケイド。建物の北側に向かえ」

 

そしてローガンも身を屈め、痕跡を可能な限り残さないように意識しながら移動した。斜面の終わりは豪邸の裏庭になっているため音も立てないように意識しながら歩く。

北側に回り込めば普段よりも気を引き締めているのがわかるケイドが待機していた。

 

「爆破すれば爆音が遠くまで響いて他の連中にも聞こえるはずだ。ここからはさらにステルス重視、マジックはレーダーによる支援を引き続き続行してくれ。ケイドはこれまでとは違ってあまり離れるなよ」

『了解した』

「了解。爆破する」

 

カチリとリモコンをケイドが操作する。背後から爆音の後に爆風も追いかけてきた。建物が完全に倒壊したのを確認したローガンとケイドは前進し、再び木々が生い茂る道へと入った。

 

『さっそくお出ましだ。進行方向に四つの熱源反応。動きからしてそちらに気付いていないようだが、さきほどの爆音を聞きつけて確認にきたようだな』

「まだ距離があるが肉眼で確認。ここはやり過ごすぞ」

 

もし気付かれたとしても反撃に出れるよう、ローガンはカスタムM4のトリガーに指を掛ける。そして数時間前までのブリーフィングをもう一度脳内で再確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在より数時間前の午前九時ごろ。緊急招集されたローガンとケイドは司令室にて上司であるノートンから呼び出されていた。

 

「まったく貴様ら、許可していないというのに余計な仕事を持ち込みやがって!」

 

神経質であることを伺わせる金切声を出す司令官に二人はどこ吹く風だ。とはいっても、今回は状況が自分達にもよろしくないので心底からざまあといったような愉悦に浸る気分ではない。

 

「そんで、俺達はなにすればいい?」

 

無視されたことに青筋を浮かせてノートンはローガンを睨むがそんなことを気にする暇はない。真剣な表情を浮かべる彼に基地の副司令であるものから説明を受けた。

昨晩未明、グランドのヘリポートにて着陸したヘリがAR小隊の戦術人形達を回収し、基地に帰還しようとしていた。しかし何者かがそのヘリを攻撃、撃墜したとのことだった。そこでローガンとケイドの二名で現地入りし、現場で行方不明になっているAR小隊を救出するという任務であった。現地状況を考えれば鉄血による攻撃と見るのが妥当だが、ただの戦術人形には落とせる個体はそうそう存在しない。となれば……。

 

「グリフィンの輸送ヘリが撃墜されたのはここより北、約四百キロ先です。我々の中でもここまでの距離での遠征を経験している隊員は少ないです。そこで墜落現場とされている地点より五十キロ以上離れている安全地点までお二人を送ります」

「それはいいが、オレ達二人だけか?土地勘があっちの方にはないわけではないが、二人にやるには難易度が高すぎるぞ」

「研究部門が新開発したUAVで支援を行います。お二人が作戦を遂行するのに飛ばし続けることが可能にできるように、ソーラー電池を応用した新電池で日が沈むまでは支援できますよ」

「とはいってもだな……」

 

相変わらず表情や感情の変化が乏しい副司令官から感じていた。それにしても今回の件は自軍ではないとはいえ、緊急事態であるというのにあまりにも焦燥感などが見られない。これでは隣で顔を茹蛸のように真っ赤にしているノートンがまともに見えてしまう。

だが今は置いておくとした。

AR小隊の救助を行うという作戦を立案したということは、そうせざる状況に陥ったということだろう。彼女達にも軍人というよりも仕事をする人間であれば身に着けることになる報告の義務が備わっているはず。となれば、彼女たちはグリフィンの方にグランドの基地にて補給を行うということを報告していただろう。そのグリフィンが送ったヘリが帰路の途中で撃墜、ましてやAR小隊という部隊が失われたのでは彼らにも手痛いのだろう。ローガンから見ても戦場でケイドと共に横断してみせたM16と、正確な射撃と冷静な判断を行っていたAR15の戦闘力は高い。残りの二体の戦術人形はわからないが、グリフィンにとっては失いたくないに違いない。そんな状況でグランドが動くことになったということは、グリフィンに『要請』という名の自身の尻拭いをさせるように交渉したのかもしれない。それでも向こうからすれば怪しまれるのは当然で、誤解が生まれたとしても仕方がないのだが。

 

「……とりあえずわかったよ。出発まであとどれぐらいだ?遠征にもなる距離だし念入りに準備しておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目的地まであと数キロだ。この調子で慎重に行け』

 

道中にて遭遇した鉄血の戦術人形達をやり過ごし、道を少し迂回、どうしても避けられなければサイレンサーつけた状態で交戦するという状況が続いた。だが墜落現場である目的地への距離が縮まるほど、鉄血の数が増えていった。

 

「マジック、あまりにも警備が厳重すぎる。UAVで墜落現場はどうなっているんだ」

『確認できる限りでは、鉄血がうようよしているとしかいえないが……待て、無線の観測員からの報告が来た』

「どうした、マジック?」

『……オープンチャンネルでAR小隊の戦術人形から要請があった』

「誰からだ?」

『AR小隊の部隊長を務めるM4A1からだ』

 

彼にとってのAR小隊の中で付き合いのある彼女でなかったことに少々落胆した。それに先日のやり取り。彼女が見せたあの態度にローガンは過去の自分と重ね合わせてしまうほど、現代において人間らしい、下手すれば自分達よりも人間らしくあると考えていた。

 

「彼女は、今どこに?」

『オープンチャンネルで話している以上、場所までは話せないと。だが現在置かれている状況を教えてくれたそうだ』

 

マジックからの報告によると、現在AR小隊は部隊の無線が壊れた状態で散り散りなのだという。なんとか旧世代の一般家庭で置かれていた無線を使えるようにしたが、グリフィンをはじめとした軍用チャンネルには接続できなかったそうだ。そのため賭けではあったが、ケイドが起こした爆音を聞きつけた鉄血達が動揺したことからオープンチャンネルに呼びかけを行ったという。彼女自身には怪我はなくまだ発見されていないが、グランドにて補給した弾薬もまた尽きそうになっているそうだった。

 

「逆探知はできなかったのか?」

『する前に切られてしまったそうだ。なにせ旧世代の無線だ、探知にも多少時間かかっても仕方ないし、鉄血側にも気付かれないようにするための策だろう』

「とにかく了解だ。それでどうする?墜落現場の状況も一応確かめた方がいいか?」

『なんともいえないな。彼女を放置するわけには当然いかないし―――ローガン!』

 

突然の銃撃だった。銃弾が頬を掠め、木々の隙間を抜けていった。長らく喋りすぎていたらしい。鉄血のドローンが警告音を周囲に発しつつ、ローガンとケイドに照準を定めていた。

 

「くそっ、敵のスカウトに見つかったぞ!」

「走れ!敵の増援がすぐに来るぞ!」

 

すぐさまスカウトを倒したものの、今の警告音を聞き取られただろう。ケイドに促され、墜落現場に直行するのではなく側面に回るようにして走り出した。

走り出してから数分後、人間の自分達にはわからない音声を流しながらヴェスピド、リッパ―が現れローガン達を銃撃しだした。

 

「おいでなすったぞ!どこに逃げればいい!?」

『その先は駄目だ、他の部隊の待ち伏せがある!そのままでは滝口に出て橋の上で撃たれるぞ!』

「だったらやることは一つだ!」

「……おいマジか!オレは高所恐怖症だっていうのお前には話したよな!?」

「何回も聞かされてることだから覚えてるよ!」

「なら無理だってわかってるよなぁ!?オレが人生で嫌いなのは掃除と蜘蛛と高所なんだって!!」

「じゃあ引き返してひき肉にしてもらうか!?戻ったら地獄、行ってもワンチャン助かるかもしれない地獄だ!!」

「戻ったら地獄、行ったら煉獄の間違いダルォ!?」 

 

本人たちも後々になれば冷静に思い返したら呆れ返る会話だが、今は非常時であり命の危機である。スモークグレネードを一つ行く手に投げ、発生した煙の中に飛び込む。そして煙から抜ければ林から開けた地形に出、目の前には陣形を整えて待ち構えていた鉄血の戦術人形が銃のバレルを光らせていた。ローガンの右手の方にはマジックの言っていた滝がある。

 

「ほら迷ってる暇があったら飛び込めぇえええええええええええええええええええええええ!!」

「この大馬鹿野郎がぁああああああああああああああああああああああああ!!」

 

撃たれる前に走っていた勢いを殺さずに飛び込む。ザパンッ!!と先に飛び込んだローガンを襲ったのは着水の衝撃と激しい水流だった。だが話に聞く、コンクリートに叩きつけられたような衝撃で死ななかったため高さとしては許容範囲だったのだろう。それでも水流はローガンとケイドを流すには強すぎだった。上下のどちらが水面なのかと方向感覚も狂い、空中であれば錐揉みの体勢で流されていく。それでも腕を伸ばし、川の岸になっている岩の取っ手を掴んで一息で体を引き上げた。途端に肺の中に酸素が自然と流れ込み、息切れと共に体全体に気怠さがのしかかる。

 

「ハァ……ハァ……」

 

しかしずっと休んでいられない。ある程度整ったところでローガンは無線機に呼びかけた。

 

「ケイド……マジック……こちらアルファ1、ローガン……応答を……」

『―――事な―――ロー―――――』

 

ノイズ混じりにマジックの声が聞こえてくる。このままでは聞こえるまで時間がかかるので、ローガンは端末を操作し無線の出力を調整した。

 

「繰り返す。ケイド、マジック。応答してくれ」

『―――し、ようやく聞こえるようになったな。ローガン、無事なのか』

「なんとかな。だがケイドからの応答がない」

『こちらからも呼び掛けているが反応がない。それにしてもよく無事だったな』

「日頃のフィジカルトレーニングの成果かね。だけどケイドの応答が遅い」

 

川に半身が浸かっている状態から完全に陸に上がったローガンは装備を確認する。メインのカスタムM4、サブのP226、予備の弾倉にスモークグレネード、ドローンなどの電子機器の類もある。背中に背負ったリュックの中の予備物資も無事であるため、どうやら川に相棒以外は流されたりはしていないらしい。

 

「マジック、こっちは単独でドローンを使ってAR小隊を追う。UAVはケイドの捜索に回してくれ」

『いいのか?そうすればたしかに並行していけるが、お前さんに降りかかる危険が大きくなるぞ』

「俺のことはいい。それよかあいつの命を優先してくれ。……もうこれ以上、相棒になった奴をなくすのはこっちも御免だしな」

『……了解した。ただし、必要になればいつでも言ってくれ』

「ああ。あいつの行方が分かったら教えてくれ。助ける必要があれば向かう」

 

頭上のUAVが自分の頭上を通り過ぎていったのを端末で確認し、ローガンはドローンを起動し方角を確認しとりあえず墜落現場の方へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が立ち上る墜落現場に辿り着いたローガンは見晴らしの良い丘から見て絶句した。そこには三十は超える戦術人形が蠢いていたのである。

 

「まさか、こんなにいるとは思わなかったな……」

 

道中に出くわしたリッパ―、ヴェスピド、イェーガーなど鉄血の戦術人形色とりどりである。その中で注意を引くものがあった。双眼鏡でよく見てみると、一体の戦術人形ではある。だが周りにいる戦術人形よりも装備が充実しており双眼鏡越しでもわかる雰囲気が異質だった。

 

「やっぱりいやがったか。マジック、報告だ。今回の鉄血の連中のなかにハイエンドモデルの個体を確認した」

『そうか。基地の近場でよくいる連中よりも連携が取れていて錬度も高いと思っていたが、やはり……』

「グリフィンのヘリを撃墜したのも奴と見て間違いないだろう」

 

遠征として現場に来る前からローガンは今回襲撃した鉄血の中にハイエンドモデルがいる可能性が高いと見ていた。そもそも、鉄血にヘリを墜とすことが可能なのかと問われたらローガンは人間と同じくできなくはないと答える。例えばわかりやすい武器で言えば対空ミサイルランチャーである。現在それをもった鉄血の個体を確認してはいないが、先日ローガンが狙撃して倒したロケットランチャーを持った個体であればいる。あの状況、狙っていたのはM16とケイド。それらからすれば無誘導のRPGであることが考えられ、それであれば難易度は上がるが可能ではある。他にもヘリのローターを狙って狙撃するなど高等技術を持った者ならできる方法があるが、それができる人間も鉄血もそうそういないだろう。加えて、撃墜されたのは夜間となればノーマルモデルの鉄血の戦術人形には不可能に近い。となると、ハイエンドモデルの戦術人形が関与している可能性があるとローガンは考えていたのである。

 

「墜落現場にはAR小隊は―――いや、あれか?」

『どうした?』

「さっき言ったハイエンドモデルの目の前に拘束されている奴がいる。鉄血の奴らよりも身なりが俺達寄りだ」

 

見た目としては、金髪の赤目。どこか幼さが残っているような印象を抱かせる顔立ちではあるが、ローガンは顔を合わせたことがない戦術人形であった。

 

『少し待て……。グリフィンから提供された資料によればM4 SOPMODII、AR小隊の一員だ』

「やっぱりそうだったか……」

 

双眼鏡で見てみると、SOPIIは先程ローガンが見つけたハイエンドモデルとなにか言い争っている。ハイエンドモデルの方の表情はわからないが、SOPIIの方は怒っているのかのように見えた。その内、SOPIIの背後に立っていた戦術人形が彼女の後頭部を殴り気絶させた。

 

「どうやら移動させるようだ、追跡する」

『了解だ。だが深追いするなよローガン』

 

双眼鏡をしまい、丘から下りたローガンはSOPIIを担いだ鉄血の進行方向に向かった。坂を滑り降りると平地を走る。ただし、物陰に隠れて次の移動先の安全を確認してからである。マジックからのレーダー支援が無い上にケイドもいないのでいつもよりも気を張り詰めての作戦行動であった。そして途中でとあることに思い当たり、C4爆弾をところどころに設置した。そして掌サイズの円盤を取り出し、それを大体等間隔に平地に投げた。

 

「……見つけたぞ」

 

途中から追いかけつつ爆薬などの設置を行ったため多少遅れそうになったが、肩にSOPIIを担いだ戦術人形たちに追いついた。数は八。だが交戦して救出したとしても開けたところでは退路の確保が難しいかと思い、鉄血人形の進行方向にトンネルがあることを確認しドローンを起動した。まずは手動でトンネルの向こう側の状況を確認。見たところ、敵影はなしで遮蔽物にすることが出来る瓦礫などがあった。次にドローンをトンネルの逆側の入り口に戻し光学迷彩を起動し待機させた。そしてローガン自身はカスタムM4につけられているサイレンサーを外す。そしてC4の起爆と円盤の起動を連結させたリモコンを取り出し、鉄血が入口まであと数メートルといったところでスイッチを起こした。

途端、さきほど通った墜落現場付近の方から爆音が響く。それに気づいた戦術人形は反射的に振り返った。

ローガンは咄嗟にカスタムM4のシングルショットでSOPIIを担いでいた鉄血を排除し物陰にもう一度身を隠した。そこでドローンの操作メニューで自動操作・攻撃を選択。承認ボタンを押した途端、待機していたドローンは9mmパラベラム弾のマシンガンを発射し始めた。ズダダダダダダダダッ!!と発射された弾丸は鉄血を排除していく。自身も発砲しドローンの銃声が途絶え、敵が全滅したのを確認したローガンはカスタムM4を背中に回す。護衛として別の鉄血が持っていたSOPIIのだと思われる銃もストラップを肩にくぐらせ、未だに意識を失った状態のSOPIIを抱え上げた。要は、お姫様抱っこである。

そしてドローンをカバーさせるために自動でこちらに寄せたのだが―――。

 

「くそっ、来るのが早すぎるだろ!」

 

こちらの騒ぎに気付いた鉄血達が集まってきたのである。

先程ローガンがC4と一緒に仕掛けたのはホログラムのデコイである。まだ研究開発段階で実用にはまだ足りないが、テストとして使用した際のデータが欲しいとのことだったので持ってきてたのだがこうして役に立てれたのだろう。だがやはりまだ信頼に足るほどの性能はなかったのだろう。

敵の接近を感知したドローンが迎撃行動を開始する。それでも火力が足りない。スモークグレネードを使って射線を塞ごうにもSOPIIを抱えているため両手が塞がっている。一旦彼女を下ろして迎撃に加わろうとしても、道の真ん中に出てきた以上遮蔽物がないため銃撃戦にもほとんどならない。

ここまでうまくいったが万事休す―――といった時だった。

 

「そのまま走って!」

 

トンネルの逆側に誰かがいる。逆光でわからないが、声で誰かわかったローガンは援護を任せて走った。単発で狙いは正確らしく、ローガンの方には一切銃弾が飛んでこなかった。

トンネルを抜けたローガンはSOPIIを一旦横にある廃車の陰に隠し、背中に回していたカスタムM4を構えて突撃してきていた鉄血のリーパーを二体倒した。

 

「リロード!」

「カバー!」

 

横の少女が再装填するために遮蔽物の後ろに入る。ローガンは咄嗟に口から連携の台詞を言って援護する。味方の被害にひるまずにまたリーパーとダイナゲートが突っ込んできた。ただ、ダイナゲートは数で攻めてくるため、ドローンとカスタムM4のフルオートでもローガン一人では抑えきれない。

 

「もういいわ!」

 

少女との連携はうまくいっているが、このまま迎撃していても埒が明かない。予想外のことが続いたが、これであればさっき考えていたことが出来ると思ったローガンが叫んだ。

 

「爆発させる!注意してくれ!」

 

残っている二つのC4爆弾を両方の壁に投げつける。そして二つが壁にくっついたところでリモコンの電源を起動し爆破した。

ただでさえ風化して劣化してきているトンネルの壁が崩れ、天井が落ちた。やがて崩れ落ちたコンクリートと土などが山になり、道を完全に塞いだのであった。

 

「なんとかなった……」

「油断しないで。銃声を聞きつけて他の鉄血が来る筈よ」

「それもそうだな。俺が運ぶから援護頼むぞ」

 

頷いた少女は先導し、ローガンは彼女の後をついていった。それからはロクに接敵せずに済んだ。

やがて完全に離れたところまで退避した二人は肩の力を抜き、逃げ込んだ先の旧陸上競技場の部屋の中で腰を下ろした。張りつめていた緊張の糸を緩め、時間を確認。現地入りしたのが午前十一時だったのでそれから四時間経過している。休憩なしでここまできたローガンの身体に疲労がどっと押し寄せてきた。

それでも今はどうでもよかった。壁際に寄りかかりすぐ横で仰向けになっているSOPIIの頭を撫でている少女を見た。同隊の仲間が無事だったのがやはり嬉しいのだろう。その目には安心したような喜色が見えた。

 

「……よく無事だったな。あれだけの数の鉄血が辺りをうろついていたというのに」

「あなたこそ、ここまで人間でありながらもここまで大きな怪我もないで来れたわね」

「お互い様だな」

「ええ本当に」

 

任務である以外にも、個人的にも少し心配していた相手が無事だったのでローガンにとっては喜ばしいし、これ以外の表現の仕方を彼は知らない。

 

「……本当に無事でよかったよ、AR15」

 

そう言われた少女、AR15はSOPIIに向けていたのと同じようにローガンに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

休憩がてらAR15と情報のやり取りなどをしていると、意識を取り戻したSOPIIが声を上げた。

 

「起きたの?SOPII」

「AR15……?」

「ええ、私よ」

 

起き上がったSOPIIは同僚の元にヨロヨロと近寄り抱き付いた。その様はまるで血の繋がった姉妹のようであった。

 

「よかった……よかったよぉ……!」

「もう大丈夫よSOPII。まだ敵地から脱出できてないけど救援は来てくれたから」

「救援……?」

 

そしてAR15の向かい側で早めの簡単な軽食の支度を行っていたローガンに目を向ける。警戒されるものだと思っていたのだが、無邪気な子供の用に首をこてんと傾げた。

 

「……なんであの時の寝坊助さんがいるの?」

「ねぼっ!?」

「彼が私達を助けに来てくれたの。それに敵に担がれていたあなたを一人で助け出そうとしてくれたのよ」

「……それはともかく、寝坊助というのを否定して欲しいんだが」

 

おそらくローガンがAR15を庇って気を失った間にこちらの顔を見たのだろうが、心外な覚え方をされてたことにがっくりである。気を落としたローガンだったが、AR15とSOPIIが笑いあっているのを見て持ち直す。

 

(家族……家族か……)

 

悟まれないようにここまで背負っていたリュックから私物として持ってきた調味料を調理しているスープの中に入れる。材料には火が通ってきているのであともう少し煮込めば完成であるが、他人がいても物思いに耽ってしまう。

今ではもう、ほとんど暖かい記憶はない。あの地獄のような拭い去りたくてもできない記憶だけがいつまでもローガンの中でこびりついていた。

 

「……さて、できたぞ」

 

できたスープを金型の食器に装い、二人に振舞った。ローガンが作ったのはキャベツやニンジンなどといった野菜と貴重なベーコンを刻んだコンソメスープである。ほんわかした湯気を立てる器を受け取ったSOPIIは目を輝かせ、AR15はほうと息を吐いた。

 

「食べていいの?」

「もちろん。だけど熱いからこぼしたらもったいないし、がっついて食うなよ」

「はーい!」

 

料理人ではないので簡単な味付けしかできてないが、二人には好評みたいだった。美味しいと言いながらSOPIIはニコニコ顔で刻まれた野菜をスプーンで掬い取って頬張り、AR15は琥珀色のスープを飲んで感動しているかのように見えた。ローガンも食べてみると、我ながらも悪くないと思える出来であった。

 

「ごちそうさまー!」

「ご馳走様でした」

「お粗末さん。でも大したこともしてないからそんなでもなかっただろ?」

「ううん。戦闘の合間に食べるレーションとかよりも遥かに美味しいわ。むしろこの味のが出て欲しいと思うぐらいよ」

「それだと飽きが回るだろ」

 

やがて完食した三人は片付けを行う。使った食器は基地に帰還した際に洗うために袋に入れて調理に使ったコンロと共にリュックに収納。煙は見えなくなってから天井を伝うように部屋伝いで外に行ったため問題ない。

片付けが終わったローガンはリュック内にある予備の弾丸を空になったマガジンに入れ、スモークグレネードとC4爆弾を補充した。AR15もここまでで相当使っていたらしく、持ってきていた弾丸のパッケージはすべてなくなった。その間、他のAR小隊のことを心配していたSOPIIからも掴んだ情報を合わせて整理していた。

 

「なんだかよくわからないけど、奴らなにかの作戦を実行するみたい」

「作戦?」

「あのハイエンドモデルのハンターっていう奴はここにくる『狼』を狩るって言ってた。なんか鉄血達からすれば重要ターゲットみたい」

「ここにくる……?情報漏洩が起こってる?」

「……まだ何とも言えないな。とにかく、昼間に連絡を寄越してきたM4と可能なら合流しよう」

「M4無事なの!?」

「そうみたいだな。だがこっちが位置を知るために逆探知しようとしたが完了する前に切られてしまったようだ」

 

それでも大体の位置を掴めていると、ローガンは近隣の地図を広げた。

 

「まず、こっちのオペレーターのマジックの話だと旧世代で一般家庭に置かれていた無線機だと言っていた。この辺りで村だとか住宅地とかと言われていたところはこことここだ」

 

事前に赤ペンで囲っていた墜落現場の位置から離れている二ヵ所に指差した。

 

「加えて、南の方から俺とケイドがここまでくる際に道中で敵を一網打尽にするために爆薬を使ったんだ。その爆音が聞こえていた鉄血が動きを乱したのを確認できたことから、きっと南側の方に逃げていたんだろう。となれば、ここしかない」

 

そこは墜落現場からさらに北にある住宅地ではなく南東に位置する村であったところだった。もちろんこれはただの推測だし、正解だったとしてももう彼女はそこにいない可能性が高い。それでも―――。

 

「……なるほど。たしかにそう考えられるわね」

「当てにしてくれるなよ。これが外れてた時が俺は怖い」

「別に攻めはしないわよ。私が一人でいた時だって手がかりも特になかったから墜落現場の周辺を散策してたんだから」

「そういや、お前よく俺を見つけれたな」

「私も墜落現場の方でSOPIIが捕まってるのを見たのよ。だけど勝算も何もないのにただ闇雲に突っ込むだけじゃ無駄死にだっただけ」

「はいはい、そういうことにしておくよ」

 

私一人でもやるつもりはあったのよと少し悔しそうに続けるAR15にローガンは苦笑した。AR15は初対面の時からそうだがどこか戦績を上げることにこだわってるような節があった。ブラボー救出のあの戦場で、ローガンが鉄血の戦術人形の軍勢の一部をたった三発の銃弾で吹き飛ばした際にはこっちを見た横目に驚きとわずかながら妬みがあったのを感じていた。しかし彼女は仲間を守ることに重点を置き、優秀な戦果を残すことに関してはそれからのようだったのである。現に、先程の戦闘ではSOPIIを助けるために全力を振るい、ローガンがそれまでしていたような博打のような行動はしなかった。連携をとり、SOPIIを確実に助け出して離脱することに全力を注いでくれたのだ。ただ単に付き合いのある小隊メンバーである彼女を助け出したかったからと言えばそれまでだが、AR15という戦術人形は戦果を上げることよりも味方を一切見捨てない奴だというのがローガンの認識である。

 

「……なんだかとても二人とも仲良しだね」

 

ぶーっといった感じに頬を膨らませたSOPIIがこちらを睨んでいる。

 

「別に仲良しというわけではないさ。単に付き合いが他よりもあるというだけだ」

「でもAR15、他の人形の前ではこんな風にはなかなか話さないよ」

「SOPII!?」

「おん?そうなのか?」

「うん。親し気な感じを出してもどこか遠慮しているというかなんというか……」

「SOPII!いい加減に―――!」

 

顔を真っ赤にしたAR15は遮って何かを言おうとした時だった。

ピピッとローガンの無線機に通信が来たのである。ケイドやマジックかと思い、端末で確認したところ『アンノウン』の表示だった。目の前にいる戦術人形の二人の台詞がフェードアウトし、興奮に似た体の熱が一気に冷めていくのを感じたローガンは感じたがそこで止まらず、応答する前に司令部の方にも会話が聞こえるように端末を操作した。やがて『接続完了』と表示され、ローガンは応答した。

 

「……誰だ?」

『はじめましてだな『狼』さん。アンタが救い出したお人形さんから聞いただろうが、私は鉄血工造の上流人形『ハンター』さ』

 

上級人形、すなわちハイエンドモデル。これを聞いている司令部は混乱しているだろうが、自分がそうならないように気をしっかり持つ。

 

「こっちの回線に割り込んで挨拶とは、最近の鉄血工造のボスは随分と礼儀正しいのか?」

『まさか。こっちの方にまでクソッタレのアンタらと話をするのはこっちとしても気は乗らないさ。でも今回は別の奴の協力があったからね』

「別の奴?」

『まあそれは一旦おいておこうか。ところで『狼』さんよ、相棒は見つかったかい?』

「……何を言っている?」

『いやあなに、こっちに来てる報告だと『近隣に潜入している二人の人間の兵士を確認。滝に飛び込まれて見失ったが―――』』

 

なぜだか、とてつもなく嫌な予感がした。

 

『『一名が川の畔で死亡している状態なのを発見した』ってな』

「てめえ……!」

『勘違いするんじゃないぞ。直接手を下したのは私達じゃない。むしろ、滝に飛び込む判断をしたのが間違いだった、だろ?』

 

無線越しでも、ハンターと名乗る敵がニヤリと笑ったのがわかった。それが尚更、ローガンという炎に油を注いだ。

 

『こっちの協力者なんざ爆笑してたぞ。『以前死ぬ寸前までこちらが追い込まれたというのに、呆気なく死んだもんだから拍子抜けどころか笑いが止まらない』。銃撃とかで死んだんならともかく、溺死するとか……ブハハハハハ!!』

 

ケイドが死んだ。彼が死んだことによるショックと同時に、『また』相棒を死なせてしまったことによる怒りが沸き上がってくるのをローガンは止められなかった。なによりも、彼女は暗にこう言っているのだ。『お前の誤った判断で相棒は死んだ』と。

無論、虚偽の情報である可能性もある。だがそれを潰すかのように次のハンターの台詞が送られてくる。

 

 『ああそれと、この無線機を逆探知して追跡しようとしても無駄さ。お前のお仲間『だった』ものだからな。ったくがっかりさせるんじゃないよ『狼』さんよ』

「……ここの区域からてめえらがとんずらする前に、スクラップにしてやるよクズ野郎」

『そうかい。楽しみにしてるよ、AR小隊の新しい人質と一緒にな』

 

ハハハという笑い声が遠くなったため最後になるのかと思ったが、ハンターは何かを思い出したかのように戻ってきた。

 

『忘れそうになってたよ、あまりにも愉快なものでな。私たちの協力者の名前だが、『アッシュ』。アンタならわかるだろ?』

 

それじゃあなと最後に残し、通信は終了した。

話しているローガンの様子を窺っていたAR15とSOPIIから声を掛けられる前に部屋から出た。背中を追いかけるように名前を呼ばれるが関係ない。

外に出たローガンは―――

 

「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

―――叫び、コンクリートの壁を殴った。自身の拳の皮膚が裂けて血が噴き出しても止めずに何度も殴った。

感情の奔流が止まらない彼を戦術人形の二体が止めるのにあたって、本来人間には振るわないほどの腕力を二体で駆使してようやく止まったのだという―――。

 




深層映写、ドルフロを実際にプレイしてる皆様の進み具合はいかがでしょうか。私はこれを仕上げる二時間ほど前にE2-4を突破したばかりでございます。「なんやねん、ケルベロスとか。あれの連戦とか詰むに決まってるだろうが」とイベント攻略を一旦諦め、戦力強化と物資確保で一週間ほど日和っていました。しかし投稿日の昼飯の後でふと思い当り、主力部隊の装備を夜戦仕様に切り替えて作戦を敢行。すると一週間前の当時の運が悪かったせいか、最後のゲージを削る出撃以外で特にこれといって苦労することなく終わってしまいました。一体何だったんだ……。ただ難易度的に次の作戦からはできそうにないんですよね。いや、ストーリーは気になるんですけど、気持ちだけで現実は許してくれないのです……。それと416、今まではAR15と同じくダウンさせたことなかったのに今回でやってしまった。ホントにすまぬ。
今回は戦闘などはとあるFPSのキャンペーンをモデルにやってみました。たぶんきちんとマルチだけでなくキャンペーンをやってる人ならわかると思います。だって、色んなFPSとかのキャンペーンやってきたけどあの作品かっこいいんだもん。それと原作で登場するキャラクター、今回はSOPIIとハンターを初登場させましたけど、ハンターここまで煽るようなこと言って無いよね。完全にオリジナルテイストにやっちまった。
ヒロインとしましては、お気づきでしょうがAR15としています。性格の描写としてこれでいいのかなと悩んでたりします。ヒロインいう枠組みに当てはめたのは、私が好きなキャラというのがありますが、某イラストサイト(わかるひと多いはず)でキャラ原案見た時は、マジかってなりました。あそこまで細かく考えてネットに載せてる人は私としましては見たことありませんし、銃+少女であのデザイン……という風に見て印象に残りました。早く国内版でAR15の改造を実装してくれないかな。そうすれば一気にMOD化させるつもりなのに。まだ当分先になるだろうな。……ROも育てよう。
とまあ色々と語ってしまいましたが今回はこの辺で。
ではでは―――

『煽りは基本』
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