誰も助けてくれない -Can you hear me?-   作:麒麟犬

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文字数的にはいつもより少々短め


39.深淵の手前にて -Pay attention to your feet-

フレアを撒いてから押し込められているようになっていた四人分の遺体を運び出し、ハルカの様子を窺っているが内心でどう感情が燻っているかはローガンにはわからない。部下を失ったことによって鉄血に対し怒りの炎を燃やしているのか、それとも無力感に囚われているのか。いずれにしてもそれだけを理由に歩みを止めることはできない。

ローガンは改めて民兵の死体を確認してみたが、疑うまでもなく死因は銃殺によるもの。急所を含めて身体の至るところに風穴が空けられてありそこから失血死に至ったのがありありとわかった。

眉間に皺を寄せながら見ていると、近くにG11がしゃがんで同じく死体を見ている。撃たれた箇所を一つ一つ確認し、彼女なりに得た考えを言ってくれた。

 

「死亡推定時刻とかは正確にはわからない。でも血痕からしてそんなに時間は経ってないのは確か。連絡がつかなくなった一時間の間にやられたのは間違いないよ」

「だろうな。ハルカ達の様子からして人違いってこともないようだし気の毒だな。そんでG11、傷痕からどう取れる?」

「無駄がない、その一言に尽きるよ。脳を除いて負傷すれば致命傷になる内蔵のある箇所を全て撃ち抜いているし。それにこっちも見てみて」

 

G11の言うままにローガンも二人の遺体の方に足を運んでみると、銃創だけでなく切創も見て取れる。ただし、一般の兵士が持ち歩いていたりするローガンのよりも刃渡りの大きい大型ナイフによるものではないことがはっきりわかるぐらい大きい。肩から脇腹にまでかけて身体を分断するようになっているそれをG11は指差した。

 

「この傷痕は銃をメインとしている雑魚の鉄血兵ではつけられない。奴らの多くは戦闘の効率化を測って腕と銃が一体化しているのだもの」

「新型の鉄血兵、それかブルートによる可能性は?」

「ブルートの戦闘方法は俊敏性を活かしての両手にナイフを持っての特攻で手数で攻める。それなのにこんな一太刀で命を刈り取ることはあいつらには考えにくい」

 

ローガンもブルートと戦ったことはあるので、あの手合いの敵に対しての見解に違いはない。ブルートは銃の扱いにばかりに気を取られて接近戦がやや疎かになっている兵士には有効な戦法として採用されているので、CQCといった格闘術を心得ていてもあまり出くわしたくない鉄血兵の一種だ。そう思うようになった経験からして、一撃に込められている力は重いものではないとローガンも記憶している。

なのでG11の説明には納得できるし異論も頭に浮かんでこない。根拠を踏まえた理路整然としたそれであっても決めつけずに、万が一にもあり得ることとしているのも悪くないことである。

 

「新型、というのも確かに考えられるね。でもそれを見た、という目撃情報は今日までない。それに単純に考えてみると、新型を投入するのに砂漠みたいなこんな辺鄙なところにいきなり実戦投入、というのは厳しい気がする」

「そういった過酷な地に適応した鉄血兵の開発、といった噂を情報通の45から聞いたことは俺にはないが、俺よりも近しいお前が言うんじゃそうなのか?」

「こんな慣れていない推察するのは他の皆に任せているし、情報が出揃っていてもあたしからは断言できないよ。う~、疲れる……」

「能書きは良い。単刀直入に聞かせてもらうが、こいつらを殺したのは一体どんな奴だ?」

 

自身の銃を持ちながらダラリと両腕を引力のままに垂れ下げたG11にハルカが聞いてくる。彼女の表情は変わらずとも言葉には初対面を合わせた数時間前、リーダーとなった自分の意にそぐわないことをした部下たちに雷を落とした時に内包している熱が静かに内包されていた。

それを敏感に感じ取ったG11は体を震わせたが、ローガンは近くにいたので安心させるべく、そして逃げなくて済むよう背中に手を置いてやる。怯えが見える両目が自身を仰ぎ見たが、大丈夫だとローガンは言わずに頷いて続きを促した。意を決するのに時間を要したがG11は次第に口を開いて彼女自身の考えを言った。

 

「この人達を殺したのは鉄血のハイエンドモデルの一体、『処刑人』のエクスキューショナーだとあたしは考えてる。こんな大きな切傷なんてブルートにはきっと無理だろうから……」

「……そうか」

 

そう言葉を漏らすとハルカは目を伏せて件の太刀傷を負わせられて絶命した部下二人の近くでしゃがむ。仰向けになっている二人の額に静かに手を当ててからローガンからは聞き取れない何かを呟いてから再び立ち上がった。

 

「もう行こう。これ以上奴らの好き勝手にやらせてたまるものか……!」

 

隠しているつもりなのかはわからないが、部下を纏め上げている言葉の端々にも怒りを滲ませているのがローガンにもわかった。同じく感じ取っているらしい彼女の指揮下にいる民兵達もやや慄いている様子ではあるが、彼ら自身も仲間がやられたことに対する思いは同感らしく自分達のリーダーの言うことに耳を静かに傾けている。

次第に話が纏まってから隊列が組み直されると、二十数名いるうちの二人がこちらにやってくる。彼らは彼らで背負って持ち出している大型バックから黒い大きな袋を取り出した。それはローガンにも見覚えがある物、死体袋だった。

 

「彼らの遺体は我々が持ち出します。あなた達はリーダーと先へ進んでください」

「了解。だけどあんた達だけでここから運び出せるのか?」

「隠れてラクダを繋げて待機している仲間にも知らせて応援に来させますよ。あなた達と通った道は比較的に安全な道として長い間キープされてきてますし、我々でもある程度までは奴らと戦えますから。これからの我々の仕事に比べればあなた達精鋭に掛けてしまう負担の方が重いと言えますよ」

 

嘘偽りがなく人当たりの良いこと笑顔を浮かべる民兵の一人の言う通りだと、バルソクがローガンの肩に手を置く。

普通の鉄血兵とは一線を介するハイエンドモデルとの交戦を今回は避けられない。確実に勝てる保証のない戦いなど常日頃の事ではあるが、ローガンからすれば現場指揮官の位にある鉄血の人形と戦う場合は退くことを念頭に置く必要がある。約二ヵ月の間に戦ったハンターやイントゥルーダーに勝てたのは時の巡り合わせやツキが良かったからであり、後者は特に追いつめられていた状態からの起死回生であった。

それにエクスキューショナーは鉄血のハイエンドモデルの中で戦闘面に特化している。機動作戦で誘い込む『狩人(ハンター)』よりも、電子戦で敵を攪乱する『侵入者(イントゥルーダー)』とも違って正面からの戦いに秀でているのだから油断は欠片もできない。

手一杯でこちらに割ける人員の余裕もないことから、ローガンも任せることにしてその場を後にすることにした。

 

「わかった、お前達のリーダーがこいつらの仇をとる手伝いをさせてもらうさ」

「ええ、お願いします。血が通っていない冷酷なブリキの人形達の息の根を止めてください」

 

その民兵の肩をローガンは叩いてから、グリフィン所属の皆を連れてローガンもハルカの後を追いかける。こちらを待っていた状態から進行をまた再開し、ローガンも加わっている派遣部隊はハルカ達とは少々離れていても互いを見失わない範囲で展開。死角をお互いに注意しながらカバーすべく、角があるような箇所にはもれなくライトを当ててクリアリングを行った。

 

『客人のリーダー……たしかローガンだったな。ここから先はいくつか枝分かれしていてちょっと面倒なつくりになっている。奥まで行くのにここまでは大体一本道だったがあたしからはすると追跡できない。どうにかできるか?』

「そうか、ちょっと待ってろ……」

 

ローガンは左腕の端末を操作し、掛けているサングラスのHUD上に自分達が確保すべき最重要目標の『オアシス』に辿り着く為のルートを表示させる。

現状から推測するに、高確率で当てはまる今回の鉄血の目論見は『オアシス』に関係していると見た方が良い。エクスキューショナーのようなハイエンドモデルの鉄血兵がいる可能性が浮上してきたことから、鉄血側からも些事として捨て置けることではないのだろうからだ。情報が乏しく探索的な考えだが、過激だのなんだの言われてもそう想定しておいた方が吉だろう。

表示されたルートに自分達の現在位置を暫定的に置いて進むべき方向までも機械が定めた。HUDに表示されたままにローガンは鉄血兵達が通ったであろう道筋を睨む。

 

「今俺達が立っているレールの先、ここから二百メートルの所に緊急事態の非常階段がある連絡通路に行ける。そこを使えば奴らに先回りできるか、追いつくまでの差を一気に縮めれるだろうな」

『すまないがそこまでの先導を頼む。そのかわり背後からの奇襲はこちらで対処する。懸念しているあたし達が背後からあんた達を襲う真似も一切しないさ』

「俺達が口出しする前に言ってくれてありがたいことこの上ないよ。それじゃあこっちは先行して状況を確かめる。一応配慮はするが見失わないように心得てくれ」

『了解だ』

 

ローガンは他三人の人形達に指示してクロスフォーメーションから隊列が特にこれといってない、パッと見てバラバラに見える形に展開し広い範囲で索敵できるよう、尚且つ早期のクリアリングに備える。武器による機動性が良いローガンは皆の先頭を走り、運行されていない地下鉄列車と壁の隙間からレールに出てきたハルカにサインを送る。

反応が返ってきてから再びローガンはすぐ後ろについて来ている416と共に向かう先に歩を進めたが、見えている暗闇がこの世の深淵を表しているようでこれまで以上に気分がよろしくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――<Channel:Unknown. Line:Agent to Executiner.>―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エクスキューショナー、聞こえていますわね?』

『……ああ、聞こえているぞ代理人(エージェント)。通信状況に異常なしだ』

『報告義務と言って強要するつもりはありませんが、今回の件の失敗はご主人様も懸念しています。ある程度まで作戦遂行状況を報告してください』

『チッ……今のところこれといって進行に影響する問題はない。ただ二つだけ、とくに足らない事とは思うが言っておこうか』

『続けてください』

『まず一つだが、『オアシス』に向かう為の初っ端、地下の改札口付近で民兵共と交戦。終いに奴らを締め上げて狙いを聞き出そうとはしたが最後まで口を割らなかった』

『この辺りでそこの地下に用がある人間はいるとは考えにくいですね。そこはもう手元すらまともに見えないので不自由に極まりない』

『オレ達が横流しした物かどうかは知らないが、ここらをうろつく人間としては装備はまだ立派な方だ。銃だけでなくメーカーと構造がバラバラの防弾ベストにフレアまであったぞ』

『戦闘になってからの後始末は終わらせましたか?』

『さすがにそこまでオレも馬鹿じゃないさ。そこらにばら撒かれたフレアの残骸を一応回収して万が一の追手から逃れる為の時間稼ぎもしておいてある』

『それは結構。ですがただの民兵が偶然そこで屯していた、という風には考えにくいです。フレアを持っていた、ということはそこが電気が通っていないところだと知っていたのでしょう』

『確かにそう考えられもするな。ここの地下に大々的に通じている通路はなくはないが今も生き延びているE.L.I.D変異体も居て連中にとっては危険だろう。それに地上はブリキ達がいるんだしそう易々と来れる筈はない』

『関係あるのかは定かではありませんが、こちらから入手できた情報をお伝えします。フロリダ一帯にグリフィンの部隊、『狼王ロボ』が数時間前に現地入りしたという知らせがきました』

『ほ~……ハンターを殺したウジ虫共の一人か……』

『彼を人間だからといって甘く見てはなりません。知っての通り、『狼王』はイントゥルーダーまでも退いた兵士で有している実力はまだ正確に測れていません』

『そのつもりはないがそこまで警戒するだけの理由を言ってみろ。たしかにハンターのような手練れを二回屠っているのは目を見張るが、奴に働いた追い風のせいだと断定しないのは何故だ?』

『我々が過去に壊滅させたタスクフォースの生き残りだった、と『彼女』が入手した情報にあります。『タスクフォース116』、この名に聞き覚えはありますよね?』

『しぶとく生き残っている様からゴキブリだと思ったら、その実は的確に何度も弱点を突いて喉元に食いつく黒のライオン部隊。オレが全滅させた、あの生き残りだと言うのか』

『その通り。まだ詳しいことは知れていませんが、兵としては超一流とまで言われた御仁の教えを直接受けていたそうです』

『……とりあえず、一旦そのことを置かせてもらおう。その情報を寄越したのは今回オレが組まされている『あいつ』、だろ』

『よくお気づきで。現在は討たれたイントゥルーダーの代わりに諜報活動を指揮してもらっています。ですがわたくしとしても長期間その席に置いておくつもりはございません』

『だったらなんであんな半端物を……よりにもよってオレと組ませやがったんだ……!』

『わたくしも同感ですので勘違いなさらぬよう。業腹ではありますが、彼女らの新たなボディが製造完了するまでの臨時役としては適任なのです。急を要するマルチタスクを現在進行形で行っております。それにこちらの損害を可能な限り減らすのに『彼女』を動員せざるを得ませんでした』

『こんな仕事、オレだけがブリキを率いるだけでよかっただろうが……。数だけが頼みのそんじょそこらのE.L.I.Dもそこまで問題じゃない……!』

『たしかにそうです。あなたの戦闘力を疑っているわけでもないのですが、戦略を模倣できてもやはり限度はあります。『彼女』はあなたの至らぬ点による穴を埋める為の石膏であり、あなたは『彼女』に対しての監視役で、もしもの時のストッパーですよ』

『だからといってもだな……』

『不平不満を言うのは勝手ではありますが、それは結果を出してからにしてください。いずれにしても、『狼王』が近隣に来ているということは『オアシス』を追ってきたに違いありません』

『ふん……それでその『狼王』だが、他に何を知れている?過去のプロフィールでそれだけを抜き出した、てなわけじゃないだろ』

『仰る通り。こちらはその報告を拝見しましたが、どれも興味深かったです。ですが最も目を引いたのが彼の幼少期ですね』

『奴の幼少期なんざ何にも面白いことなんてないだろ。精々裕福に過ごせずに過酷な環境下を生き延びた、なんてのがツキだ』

『それ以上ですよ。この情報の扱い方を誤らなければ、彼も平常ではいられないでしょう。それどころか世界中からのグリフィンへの信頼は失墜することは間違いありません』

『能書きは良い。それでどんなのだ』

『いいですか、記録によると今から――――――』

 

 

 

<不正アクセスを検知。暗号パターンを修正>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

416からの合図と同時にローガンは扉を蹴破り、トラップの有無が確認済みとなっている部屋へと押し入る。枝分かれになっている連絡通路の一つに入って目に入ったのはせめてもの光源となっている非常灯に照らされた手摺と螺旋階段。空気の流れが一切感じられないのはかわりはないが、左右にではなく特に上下に開けた場へと出たのは大きな変化だ。

得られた視野から敵の有無を確かめ、ローガンは背後で待機している他の面子にハンドサインを送った。ここから進むべき方向は下方、向かうにはローガンの左手の方にある階段を下っていく必要がある。

それを正しく理解した416が先に階段を途中まで下ってこちらからでは死角になっている部分のクリアリングを行う。そして続いてはバルソクが同じように味方からでは視覚外になっている足元の確認を行い、G11がさらに同様に行動した。

そしてG11による報告が無線機を通じてローガン達のみならずハルカにまで届く。

 

『クリア』

「バルソクはG11と先行して三層に下って安全を確保、416と俺も後から続く。ハルカ達も遅れるなよ」

 

それぞれの了承を得られてからローガンも階段を降りてこちらが追い付くまで待っていた416と駆け下りる。カンカンッと複数人による階段の金属音が無駄口のないこの空間で響き渡るのが印象的だが、それに気を引っ張られることは少なくともローガンにはない。無論意識は現実の方にあるがこれから起こりうるだろうことに対してのことへの懸念が第一だった。

やがてこの階段で降りれる階層、『地図』による電子マップでは三階層に到達する。段差を降り切ってからローガンはグリフィンの四人が所定の位置に付いてから扉を僅かに開けて危険が無いかを確かめた。

軋む扉との間から身体を滑り込ませてローガンはフラッシュライトを左右に振って確認するが襲ってくる存在はないが……。

 

「行先の向こうから足音が僅かに聞こえるな」

「追い付いた、てことかしら?」

「だろうな。アルファチーム、もう言うまでもないが暗視装置越しに敵が見えたら撃てよ。どんな連中でもこっちに危害を加えてくるのなら躊躇った時点で負けだからな」

「了解だマスター、心配するな。ナイトビジョンを起動する」

 

バルソクの返事と共に各員がそれぞれ暗視スコープを取り出して装着する。ローガンも一応持ち出しているが、実戦におけるハイテクサングラスの試運転の実証も兼ねてもらうように任せられていた。

地上にいた時のように視界の明度の調節が自動で行われ、太陽光が燦々と照らしてくる眩しい所であれば通常のサングラスのように明度は下がって黒みがかって暗くなり、逆に今いる明かりのない地下のような地に入れば白くなって見えやすくなるというわけである。

HUDに表示されるルートを頭に入れていると、暗視装置を起動した416が話し掛けてきた。

 

「今回の作戦で新たな装備のテストだなんて、頼んできた技術部にはちょっと言いたいことあったけどこういう場で有利に働くのはやっぱり便利よね。まともになれば荷物も少しは軽くなるし」

「使い勝手としてはあともう一歩、てな感じだがそれでも許容範囲、使えなくもない。慣れてくれば一々端末に視線を移さずに済むだろうし今後の改善に期待だな」

「ハイテク装備に傾倒した戦力に依存している正規軍にはならないようにしなさいよ、ローガン。私が見る限りでもこれまであなたはそういうのなしでも戦えて来ているんだから」

「ご心配なく、ちゃんと心得ているよ」

 

416の顔は隠れているが声に含まれる感情は呆れ半分、もう半分は羨望、という感じでローガンの目元にある物に向けられている。まだ完成形に至っていないHUDサングラスにも改善点があるので、帰還したらこれを発案した技術部の人間にして気をするつもりである。

416には心配ご無用と言ったが、ローガンとしては不具合を無くして完成したこのハイテク装備を支給された場合は使うか否かと聞かれたら迷うことは必然であった。なにせ作戦を開始した最初だけ簡単な操作をするだけで視覚の調節がされる。もしリアルタイムで情報の確認をしながら進行しなければならなくなったりしたら、リンクさせて繋げている端末の方からそれを表示させればいい。戦闘に関してでも視界のどこかに映れば補足するなどもしているので、上からの許可が下りれば一つは携帯しておきたいものである。

 

「ハルカ、こっちは気付かれないよう明かりを消して追跡する。お前達が俺達の後を追えるよう、G11が先導するから移動の指示があったら従ってくれ」

「了解、あたし達の必要になったら声を掛けてくれ。すぐに駆けつける」

 

三人で隠密に排除できるだけの手合いかどうかの確認をする為に、ローガンは一旦部隊を切り分けた。民兵達の光源となっているライトがある以上、自分達と固まったまま進軍しては背後から気付かれないままに制圧するのは無理である。手元にある物をやり繰りしている彼らが悪いわけではないが、ここでは敵との本格的な交戦状態になる以外の状況下で彼らの近くに居れば敵との銃を撃ち合うことになるのは避けられない。

とはいっても彼らからの協力も必要になるだろうことからはぐれることがないよう、自分達の後を追えるG11をハルカ達と行動するようにしたのである。

416とバルソクを連れて先行しようとローガンは歩き出そうとすると、ふと裾を引っ張られたのでそちらを見てみる。脳内のどこかでしていた予想通りと言うべきか、G11がこちらを見上げながら引っ張っていた。

溜息を僅かに吐いてから、ローガンは空けた片手で彼女の頭をターバン越しに撫でて言った。

 

「任せたぞ」

「……ん」

 

G11は放してからポーチから二つ目の中継デバイスを取り出して設置に取り掛かる。作業を始めた彼女の後姿を一時見てから、ローガンは待機していた二人に目配せして先へと進んだ。

トンネル状になっていて何の気も無しにいれば足音が響いてこちらの存在が知られてしまうので、三人で可能な限り抑えながら進軍する。時間としてはおそらく五分も経っていないが、次第に大きくなってきた音の主を新たなプラットフォーム内にて確認した。

 

『いたわね、リッパーが四体。こっちに背後を見せて悠々と歩いているけど……』

「ああ、リーダー格らしい鉄血兵はいないな。それに少数で動いているということはきっと別隊で小分けになっているのかもしれないな」

『ならあいつらはどのように?』

「全員がサイレンサーを着けていることだしシンプルに銃撃で片付けるぞ。俺のカウントに合わせてそれぞれ撃て」

 

小声で打ち合わせると、各々が慣れている射撃体勢になって撃つ相手をそれぞれで選んでサイトのレティクルで急所に狙いを定める。ローガンは肩膝をついてしゃがみ、扇形に展開している敵方の中央の一体の頭部を狙った。

 

「いくぞ、三……二……一……撃て」

 

合図と共に引き金を引いて一人、そしてすぐまた横にいるもう一体の急所を撃って制圧する。サイレンサーで消音されたことで辺りに銃声が響くことはなく、鉄血兵がその場で崩れ落ちる音しかなかった。自分達の存在が知られぬよう、ローガンは落ちた三発の薬莢を拾ってポーチに押し込むと鉄血兵の身体を担ぎ上げてレールの上からプラットフォームの乗降口に乗せる。バルソクが一体ずつ同じようにして痕跡を無くしていくのを見てから動かぬ敵兵の身体を近くに設置されている手洗い場に投げ入れた。

 

『あなたも痕跡を断つのにそこまでするのね』

『マスターからの教えだ。『頭数では当然こっちが不利だったら、些細なものでも捨て置くな』。無論、隠滅の余裕がある時だけでいいらしいがな』

 

二人がそう話しているのを無線越しに聞きながら、ローガンはバルソクが途中まで運んだ二人目も担ぎ上げて隠し場所に放り込む。416も手洗い場に運んでくれたおかげで遺体を隠すまで一分もかからなかったものの、すぐにまた新たな足音が聞こえてきた。すぐに三人それぞれで暗闇に紛れて音の主を探っていくと、ローガンは新たな敵影を確認。確認できた敵影の数と記憶している鉄血兵の種類を脳内で参照し、他の二人にも伝えた。

 

「敵は多数、プラウラーにダイナゲート。それぞれ一体の戦力は大したことないが……」

『私達とは逆側にいてこっちに気付いていない。ローガン、あなたのやり方に則るならここはやり過ごす?』

「ああ、今回もそうしよう。あの数の相手をするのに気付かれない、てのは無理だしな。バルソク、無線であいつらに警告してくれ」

『わかった。G11とハルカに通達、数の多い敵の巡回部隊を確認した。こちらでリッパーの部隊を一つ片付けたが、状況的に排除していないのもいる』

『了解、隊列を組み直してこちらでも十分に警戒する』

 

完全に姿が見えなくなったタイミングで行動を再開。G11がこちらを追跡できるよう、416は暗視装置で確認できる液状の指向性マーカーをその場で垂らした。布巾で包んだ手の動きからしてだが、垂らしたそれを矢印に描いてから416は立ち上がってこちらに頷く。バルソクもついていけるようになってからローガンはHUDに表示されているルートの方をハンドサインで示した。

 

「急がば回れ、とは言うがここの損壊の事も考えてみて回り道をすることも考えておかないとだな」

『たしかにな。それに左手のあれを見てみろよ。あの列車が瓦礫でボコボコになっているし、進行ルートのどこかが埋もれててもおかしくない』

『私達がいる間に倒壊して下敷きになるようなことにならないようできることがあるとすれば、祈ることぐらいね』

「416、お前どっかの誰かに祈ったりするぐらい信心深くないし、そんな根拠ないことをしないだろ」

『些細なジョークよ、お黙り』

 

416に心の中で野次を飛ばしてなんてことのないことを思い浮かべながらも前進し続け、さらに下層へと続く道へと向かった。暗がりの角や物陰を一切見逃さず、不意打ちを受ける可能性のある箇所を思いつくだけ潰す。

ここで補足するが、今回踏み入っている地下構造は単純に同じ構造物が積み重なっているわけではない。現在地となっている三階層のこの上のフロアはもちろん鉄道が敷かれて至るところに駅があったりしていて、アメリカの観光地であったフロリダ州を堪能するのに地下鉄を利用すれば車よりも短時間で目的地周辺に到着できる。言うまでもなくそれには定められているタイムテーブルに従う必要はあるが、フロリダ州に隣接している他の州にも繋がっていたりと交通手段としての利用価値はあったのだろう。

それ故に、各階層はそれぞれどこからどこへに行ける、というように列車の進行方向が違っていたりしているように地下に為されている構造形状が違っている。ローガン達が立って前進しているプラットフォームの上は同じく乗降口のあるフロアになっていても、それに並行して設置されているレール諸共垂直になっていたりとやや異なっているのである。これはここのプラットフォームに限った話ではなく、例えばさきほど別れたレールの二階層は瓦解防止が為されたメンテナンス通路になっていたり、さらにその上はまた地下鉄が行き交っていたレールが敷かれていたりと、先に述べた通り単純な構造になっているわけではない。

HUDに表示されている『座標』と『地図』によって導き出されたルートを辿って行きながらローガンが第一に懸念しているのはそれに由来している。各所で老朽化が進んでいるここでの戦闘でもし激しい爆発などが起こったら崩れてしまうことが考えられるからだ。

 

『でもある程度までは予想していたけどここまでとはね。これでは私達がここにいる間に倒壊しても全くおかしくないわ』

「安全委員の連中がここに来れば即刻アウトの烙印を押されること間違いなしだ。俺としても目的がなきゃこんな所に好き好んで入りはしない」

 

そのローガンの台詞にまったくもって同感だ、と二人が同時に返してきたことに作戦中であることも一瞬忘れ、言い出しっぺの男は少し噴き出した。

それでもすぐに切り替えて晴れたように見える暗闇の中を突き進む。時折カラカラと乾いた音が響くが砕けたコンクリート片が剥がれて転がっただけであったりして心臓が跳ねた。が、物音の原因がわかると安堵しつつも天井に無意識に視線が動いたりしたがそればかりを気にしているばかりでは仕方ない。

 

「さて、と……あともう少しで最短ルートで四層に行ける。ここで待ち伏せされているかもしれないし気を引き締めろよ」

「言われなくてもわかっているさ。まずは私が出るから二人はバックアップを頼むぜ」

「了解」

 

一度物陰に結集してから片手に『PP-19 BATON』、もう片方には416から手渡されたフラッシュバンを持ったバルソクが先行する。彼女に続いてローガンと416も一列に隊列を組んで進み、開けた改札口周辺に敵影を見逃さないよう周辺を警戒した。

自分達の戦闘にいるバルソクに進行方向を指示してそれに続く、短い間でもその一連のルーチンを何度も一分足らず。そうして下層へと続く昇降口に辿り着くまでに想定していた交戦が無いことにローガンは首を傾げた。

 

「おかしいな、俺だったらここに数人配置して警戒態勢を敷かせるが……」

「私達が来ることまで想定していないかもしれないけど何かが妙ね」

「そう悩む必要はないみたいだ。見てみろよこれ」

 

バルソクの言う通りに四層へと進めるエスカレーターを見てみると、爆破で人為的に埋められたかのような惨状になっていた。周辺の数ヶ所にに黒の爆破跡があることから間違いないのだろうが、回り道を余儀なくさせられるような現状になっている。

 

「これじゃあ先に進めないな。日を跨ぐ時間はあったことだしこういうことをやれるだけの余裕も然り、てことか」

「厄介ね。これじゃ敵の巣の中に飛び込むことと大して変わらないじゃない」

「ブリーフィングをした時からそういうことだろうとお前も察しがついてただろ、もう泣き言は言ってられないぞ」

 

最短ルートが潰されたのでどこか別の経路を通じて最深部に到達しなければならない。もう起きたことに文句を言っても仕方ないと、ローガンは迂回路を探すべく端末を操作してHUDを凝視する。二次元的な見方だけでなく三次元でも見て通り抜けれる場所を走査し、さらに当初のルート程でなくとも作戦時間を短縮できることも念頭にした。

眉間に皺を寄せながらそうした作業をして数分ではあったが、ローガンからすれば長時間利用しての事のように感じた。それでもなんとか見つけ出し、そこまでに至るルートも確定させることもできた。

 

「よし、なんとか行けるぞ」

「だったらG11達にも……」

 

416の台詞の続きとしては恐らくG11達にもルート変更を旨を伝えようという物だっただろう。しかしそれを妨げるよう―――とはいっても彼女達にはそうした意図はなかっただろうが―――繋げられて報告が入った。

 

『こちらアルファ3。アルファ1、ちょっとした……問題が起きた』

「こっちはルート変更をそっちに伝えようとしていたが、何があった?」

『ごめん、言葉ではちょっと説明できそうにない。面倒なことになった、としか言えないから解決する為に戻ってきて欲しい』

 

サボり癖があることから話し上手でもないG11ではあるが、ストレートな物言いをするので作戦中に置いての報告は当たり前の事でも一切の虚偽なく見落としもない、的確な情報を伝達してきた。そんな彼女が言い淀む、表現しづらいことがあったのかと三人揃って顔を見合わせる。

彼女との付き合いが最も長い416がダメ押しとばかりに耳元の無線機に手を当てて言った。

 

「ちょっと、今の私達は先行偵察中なのよ。ここからそうホイホイと戻れるわけないじゃない」

『うぅ、だってぇ……』

「気持ちはわかるがそうお前も怒るなよ。とりあえずわかった、アルファ3。そっちに戻るからその場の安全確保をしたまま待機していてくれ」

『わかった、ごめん……』

 

通信終了した直後に416の顔を見ると不満たらたらといった様子で、こちらを睨みつけている。ローガンとて新たな進行方向とは真逆の方にUターンしなければならないので嫌なのは同じだが、G11との話で二つ引っかかるところがあった。それに対してバルソクも同じだったようでカリカリと頭を掻きながら言った。

 

「ここに来てコールサインで呼んできたか。もう自己紹介も済ませているというのになんか妙じゃないか?」

「それだけじゃない。一緒に行動しているハルカだけには情報共有を焦点にイヤホンマイクも渡している。落ち着いた話がG11が出来ていて同じ現場に出くわしているのなら一言二言添えても良かったんじゃ」

「いずれにしても、報告するぐらいだから良くないことには違いない。さっさとあいつらと合流してなにがあったか確かめた方が吉だ」

 

時間に余裕があるとは言えない状況ではあるが、自分達ばかりが前進していても仕方がない。なによりこうして妨害工作をしていることからして、迎え撃とうとしている手筈も整えようとしているのが窺えた。最短ルートのここに鉄血兵を配置していないのが少々気がかりではあったが、自分のものさしばかりで決めつけてはならないとローガンは自分に言い聞かせた。

 

「416、そうカッカして立っているのがお前の仕事じゃないだろ」

「……わかってるわよ」

 

三人で足並みをそろえて来た道を戻るこの時、ローガンはある物を見落としていた。ここまでの道すがら度々目にしていた人間の遺体だが、服装からして兵士でもなんてことのない民間人だったのだろう。ただ、ここにいる敵は鉄血兵だと無意識に決めつけていたばかりに、腐敗が進んでいるそれが真っ当な人間のものであったということまで確認していなかった。




指揮官レベルがようやく100になりました、はい。これでこのゲームにおいての一つの頭角を出せたのではないかと思います。私はスマホのゲームにおいて数多くやるタイプではなく、ある程度まで絞ってやり込むタイプです。実際にドルフロ以外に本格的に手を付けているのは一つだけですし、ログインして周囲に稼働力を配っているのも一つだけ。なのでドルフロにも注力できているのですが、ハロウィンでカップ麺を要求してきた二人の友人が……

友1「ねえ麒麟犬さん、○○というゲームはやらないのですか?」
私「う~ん、下手に手を広げすぎると自分の首を絞めることになりそうだからあまりね~……」
友2「そう言わずに冒険して楽しみましょうよ。それに課金して楽しめる幅が広がりますよ(ニッコリ」
私「…………………………………………いや、やらないからね?知り合う前からやっていた同タイトルのゲームで沼を見ているからわかるでしょ?」

こんな感じでさりげなーく底なし沼に引きずり込まれそうになっていたりと、油断すればとんでもないことになりそうです。基本私は誰から勧められたとかなしで、自分で面白そうだと思ったものしかやらないのですよ。なんで本格的に着手するとしたら、ビジュアルで引き込まれたキャラが出てきたりとか、システムなどが面白かったりと、興味が惹かれないとやる気に慣れません。でもまあ、それが当たり前なんでしょうけども。
もうちょっと執筆速度が上がったらいいなとは思いますが、とりあえず今回はこの辺で―――
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