誰も助けてくれない -Can you hear me?-   作:麒麟犬

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作品中で困窮、リアルで低迷……


47.折り返し地点 -Secret proposition-

現地で行える装備の確認というのはやれることが少ない。自陣からの出撃前に装備する銃の弾倉に弾薬を込めてポーチに収納したりと足りないものがあればその場ですぐに補充できる。今回の任務の前日も物資があればタスクが多い分、すぐに必要な道具を移動の車輛に詰め込めたり不十分な装備を身に着けれるだけで気持ちに余裕が持てれた。

ただ目標物(オアシス)の回収が済んで任務の折り返し地点に立った現在になっては弾薬がどれほど残っているか、とか体感とどれほど差が出ているかの確認作業しかできない。

ここまで来るのに多くの弾薬を消費し、人員を犠牲にしてきた。ハルカが選び抜いた民兵の人数も半数以下の十人以下にまで落ち込んで、慣れない場での戦闘の繰り返しで疲労も溜め込んできている。結果としては飛び入り参加で来たハモンドの兵も少なからずも全員が負傷し、戦えるのも彼も含めて三人しかいない。

 

「最初と比べてみても大分減ったな……」

「あんたが気に病む必要はない。生むことはないようには最大限に努力するつもりだし、犠牲は最初から覚悟していたさ。それにうちの者がやられてしまったのはあんたがいなかったタイミングだったし、ハモンドの阿保の隊の奴が死んじまったのは自業自得というのもある。この状況下じゃ自分の隊の連中を守ることを優先してしまうのも仕方ないし道理だ。むしろあたしがリーダーとして失格だと罵られるのが普通だよ」

『鉄血だけでなくE.L.I.Dの来襲というのは本当に不幸だったね。でも今は己の力不足を嘆いてここまでの選択を悔いるよりも生還することを考えようよ。エクスキューショナーに隠し通路を通じてこっちよりも前に出られてしまったんだし待ち伏せされているのは間違いない。E.L.I.Dとあいつをどう凌ぐのかを念頭に行動しないと』

 

耳元のイヤホンを通じてくるオアシスの言葉にローガンとハルカも頷いた。

オアシスの回収にあたっては『それ』がどのような形態をしているかはわからなかったが、ローガンだけでなく416やG11にバルソクもそれぞれ違った『回収容器』を持っていた。独立したコンピューターであれば収納できる大型のカプセルを、紙媒体であれば穴が空くことがないようにする為の合成素材のファイルを。もし情報を内包した爆発する危険性がある物であれば耐衝撃ケースをそれぞれ一つを持ち歩いていたのである。

ローガンが所持していたのは小型の外付けハードディスクで許容できるデータの保存量を増やした端末であり、もし電子機器から複数の情報を抜き取るのであればすべてを不足なく保存できるようにしていた。ただそれはあくまで建前で、大欲怨霊事件の最中に聞いた言葉の端々からなんとなく自我を持った電子生命体かなにかかと予想していたのが事実である。

「問題なく声が聞こえてくるということは居所を移転できたようだな。どんな感じだ、別の乗り物に乗っていながら前のを見ているというのは」

『新車に乗っていながら中古屋に売った昨日まで自分の車だったそれを見ている気分だよ。でもこの端末内のデータがあまり整理されていないね。ローガンって掃除とかあまりしないタイプ?』

「自室の汚れが目立ってきたら一気に全部片づけはするが、それまではほとんどしないな。ていうか俺の性格をそこでバラすのやめてくれない?」

『じゃあこの先もここに居座らせてもらうつもりなんだし、ある程度はデータを整理させてもらうよ。保存しているものの中身は開かないけど、それぐらいなら許してよね~』

「勘弁してくれ……」

 

色々なニュアンスや意味を含めながらローガンはそう呻いた。端末内に収まったオアシスがこれまでローガンが端末内に収集して保存してきたデータを置き換えていたりしているのを画面で見て、もう既に何の価値もなくなったゲートの内部に視線を移した。

ゲートが開いて中にあったのはオアシスという自立したAIを保存していた大型の記録媒体装置。グリフィンの北米支部にもあるデータを一括で保管できるだけでなくネットワークを構築するサーバーに近い形状をしていた。それから伸びていたケーブルをローガンの端末に接続してオアシスのアクセスを許可した途端、複数のデータファイルも含めて移動し、各機能を調整し常時会話ができるようにしたということで今に至っている。

 

「プロフェット、オアシスの回収を完了。まだ危険要素が出回っているが帰投する方向性で作戦を遂行したいが、セカンドオブジェクトのデータ抜き取りはどうする?」

『あくまであれは現場を知らないお偉方の欲張りによる産物だから気にしなくていいんだけど、可能であれば達成して欲しくはあるね。オアシス、君が収集している鉄血に関しての情報はどの程度までならあるのかな?』

『こっちで集めれているのは第四次世界大戦を引き起こすまでの大まかな流れの情報と密かに加担している組織の名前。あとは現段階でのロシアの内部状況といったところかな』

「数は少なくても一つ一つが爆弾みたいに強力だな。私だったら開くのに躊躇どころか誰かに放り投げたくなってしまうぞ」

 

バルソクが言っていることにはローガンもわからなくもないが、横槍のようにオアシス回収以外の目的を課してきたグリフィン上層部からすればそれで及第点を付けることはないだろう。可能であれば、などと言われたということは達成するのは絶望的、不可能でなければやれということであるのだと、プロフェットことハリー談。

どちらにしてもエクスキューショナーは自分達に、特にローガンに対し復讐の念があることから攻撃を仕掛けてくるのは容易に考えられる。都合よくハイエンドモデルの一体から記録媒体を抜き取れればベストであっても、それを実現できるか否かは別問題だ。今回に至っては場所と人員や弾薬などを鑑みてかつてないほど難しいというのがローガンの見立てである。

 

『とにかく、オアシスが所持している情報だけでも鉄血の狙いを暴くことはできるだろう。それに『アネクドート』までも送り込んできたロシアの裏情報を知れるというのこちらとしても大きい。これらだけでも十分な収穫だよ。だから君たちが上層部に引っ張られて欲を掻く必要もないんだし、全員で生還してくれることだけを考えてくれればいい』

『ここから先はあたいも皆のバックアップに入るよ。ローガンの位置を中心に敵が接近してくるようものならすぐに通達するし起動していて入りこめる機器があればハッキングもする。時々ローガンの手を借りることにはなるだろうけど、それでも最大限に働くから頼ってね~!』

「それはありがたいね。ここまで来てあたしもヘトヘトになってきているし、ちょっとは楽できそうだよ……」

『おっとっと、さすがに怠けさせる為にあたいも動くわけじゃないからな~。G11には気を抜かないよう情報支援は控えておくことにしようかな~へっへっへ☆』

「ふぇ~、そんな~……」

「当たり前でしょ。今日が初対面で会ったばかりのプログラムに甘えるんじゃないわよオタンコナス」

「痛い痛いイダァイ!この状況下で体罰は駄目だって~!視覚機能が損なわれたらどうするつもりなんだよ~!」

 

416に頭をアンアンクローで鷲掴みされて涙目になるG11というその光景にバルソクやハルカ、この場にいる民兵たちも笑った。もちろんローガンも404小隊の二人のこのようなやり取りが見られたことにより少々心が晴れやかになれた。無線機越しであるハリーもどうなっているのか想像できていたようで静かに笑っており、端末で皆の状況が見れているオアシスに至っては盛大に笑っている。

こうして笑っていられているのだから。皆が理不尽に殺されなければならないことの道理なんてない。

 

「さて、と……」

 

そうローガンは気持ちを入れ替えて進むべき方向を見据えたところで、横からカラシニコフの突撃銃が差し出されてきた。差出人を見てみると意外にも反りが合わないと思っていたハモンドである。

 

「……どう心変わりして、それを差し出す気になったんだ。俺の事が気に入らないだろうし、それの持ち主であるお前のお仲間に悪いだろうから遠慮していたんだが」

「勘違いすんじゃねぇぞ。てめぇのことを認めたわけじゃねぇが、生きて帰るにはてめぇの豆粒みてぇな力だって必要なだけだ。だったらもう使えなくなっている奴のを貸してやるぐらい容認してやるさ」

「……そいつはどうも。相変わらずのマウント取りの姿勢で逆に安心した。そのまま鉄血とかE.L.I.Dに相手にも強気で居続けてくれよ」

 

下手にハモンドの精神を逆撫でするようなことを言えば互いに望まぬ結果になると思い、ローガンは自分の本音を隠して様式的な台詞を言うと差し出された『Ak-74』を受け取る。続けて差し出された予備の二つの弾倉を空になっているマガジンポーチに押し込むと『AK-74』のハンドルを引いて薬室に弾薬が装填されているのを確認、上部に取り付けられているダットサイトが機能しているのも覗いて確かめた。ハモンドはやることが終わったとばかりに鼻を鳴らすとハルカの方に歩いていく。

そんな彼を見送ってから譲渡された銃の両手で持った時に感じる重量と材質による感触にローガンが首を傾げていると、こちらの様子を見ていたバルソクが寄って来た。

 

「どうしたんだマスター。なにか武器に不具合があるのか?」

「いや、あるだけいいんだがカラシニコフとかのロシアの銃はなんかなぁ……俺の性にはあまり合わないんだよ。アメリカとかドイツのカービンライフルにはない良さがあるというのは理解してはいるんだがな」

「マスターは他所様のスオミようにロシア嫌いじゃないだろ?それかあれか、マガジンを装填する時に前から差し込んだりするのが苦手だったりするのか?そうだったりするとロシア生まれのAEK999(わたし)はちょっと傷つくんだが」

「そんなつまらない理由でじゃねえよ。単なる感性の問題であって機能とかデザインに文句はない。簡単に言えばイメージの問題だな。昔ヒットしていた映画とかでもそうだったりしたように、テロ活動とか民間人に圧制を敷いていた奴らの多くはハンドガードが木塗りのAKとか持ってただろ?ハルカ達は違うが、今でも時折山賊紛いの事をして難民から追剥している連中が持ってるのもそうだ」

「コピー品とかが出回ったことで価値が下落、そんで良くないことを考える奴の手にも行き渡りやすくなったことによる影響だな。まあたしかに、悪役だったり敵が持っている銃には良くないイメージができてしまうんだろうな。実際に犯罪とかに使われてしまった時にはその人形に同情もしてしまいそうだし」

 

悲しきことかな、とバルソクが溜息を吐くのにローガンは苦笑いを浮かべて乾いた笑い声を漏らした。すぐさまこうなったのはあんたのせいだろと腕を小突かれたが、彼女も本気でやったわけでもなくローガンと同じく笑っている。それから一しきり笑った後でふとバルソクから提案された。

 

「だったら私の祖国のに慣れる為に、マスターの銃(ハニーバジャー)の修理が終わるまでカラシニコフの銃を使ったらどうだよ。ハンドガードが木塗りなのが嫌だったら全部黒く染めてしまえばいいだけじゃないか」

「それってグリフィンで許されるの?単なる一時的な取り替えなんだし、あまりものの銃を貸し出してもらえればいいんじゃないかと思うんだが」

「じゃあマスターが帰ったら以前に交戦した『アネクドート』のクソ共から鹵獲した『As val』を宛がわられたらどうするよ?マスターは経験とかのイメージでそう左右されたりもするのなら、凄惨な現場を生み出したあの変態どもの銃をまたマスターは使えるのか?」

「よ~し帰ったら銃を真っ黒に染めてやるぞ~!!……………………………ていうか『As val』の戦術人形っていたよな。なんか喧嘩を売ってしまってそうで申し訳ないんだけど」

「あ~……まぁここだけの話にはしておこう。とにかく、帰ったらマスターにおすすめのロシア製の銃を教えてやるよ」

 

お手柔らかに、と言いながらヒラヒラと手を振ると出立の準備が済んだ民兵達の先頭にいたハルカの横に立つ。お馴染みとなってきた隊形を同じ組織の者たちと組んでいると、ふとローガンはあることを思い出してそれに関わる物を防弾ベストのポーチから取り出した。シャラシャラと擦れ合って重力に引かれるチェーンはやや不格好ながら長穴の形状になっている鉄板の穴に通されている。戦場にいる者なら誰もが知っていて戦地における個人証明書である物、ドックタグである。

それを左手に持ったローガンはハルカの方に差し出して言った。

 

「ある傭兵団に所属していたフロリダ(ここ)出身の奴だが、こいつの出身地の詳しい場所がわかるか?できれば基地に帰る前にそこにこれだけでも弔っておきたい」

「……わかるが一つ聞かせてくれ。こいつの持ち主はどうしたんだ?」

「死んだよ。爆破した戦車の爆風に巻き込まれて重症になって、最後には俺に自分を殺すように頼んできた」

「それであんたは引き金を引いたってことか。あんたのことだ、何の関係もなくその場に居合わせてしまった、なんて奴を撃ったわけじゃないだろ」

 

ハルカが何を考えているのかが何一つも悟れないが敵対関係にあったことは間違いない。複数の傭兵組織による密かな侵攻を許せばグリフィン北米支部の保護区の住民の生活を支える一つが損なわれる状況になっていたのは想像に難しくない。後に姿を現した『アネクドート』とは別に大量の物資を持ち込んでいたことは現場収拾に参加したスタッフからの報告で、見逃せば完全にローガン達が被害を被ることの裏付けとなっている。

したがってローガンが銃弾で介錯したあの傭兵も敵として対処すべき対象であった、ということになり理知的に責められる謂れはない筈だ。

 

「まあそうだが……知り合いだったのか?」

「知り合い、知り合いか……。まあたしかにそうではあったな……。客人、これの弔いはこっちでやっておくから心配しなくていい。こいつを帰したことに礼を言うよ」

「……おう」

 

バックパックにドックタグを収納したハルカが先陣を切っていくのを止めず、ローガンは堂々たる彼女の背を見る。フロリダという環境に適応できるよう薄着であることもあって、女性でありながらも筋肉質な体つきであることが窺える。そんなハルカの背には今回の最中に何度か見ていた時と違い言動も相まってどこか哀愁が漂っているように思えた。

 

「何なの一体。勝手に話をとんとんと隠しながら進めて。まあ帰還する前に寄り道せずに済んだのはいいことだけど」

「訳ありにしてはなんだか大人しい感じだね。早くベッドで寝れるようならあたしはなんでもいいよぉ……」

 

416とG11が後に続きながらそう言葉を漏らすがローガンの脳裏には数日前の事が過って二人の台詞を気にしていられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<六日前>

 

 

 

グリフィンの重鎮を交えての緊急方針会議を終え、手掛かりを得るべく根を詰めて三日経った。これといった成果が出ないことによる精神的な疲労が一気に来たので、少々気分転換をすべくローガンは屋上で風に当たっていた。

秋になれば日も短くなり春や夏であればまだ燦々と照っていたこの時間帯には既に夕暮れになってきている。手に持っていた苦いだけの缶コーヒーを一気に飲み干すと、手摺に肘をついて沈んでいく太陽にローガンは目を細めた。

 

「ふ~……」

 

ぐしゃっと黒塗りのアルミ缶を握りつぶしてから癖になっている溜息を一つ零して空を仰いだ。

ローガンにはこうして一人、なにか思うことがあれば己の人生の命題といえるものを考えることがある。この世で生を受けて誰しもが生き続けていれば同じ命題に行き着くかもしれないが、二十年と五年程度生き続けているローガンの場合だと習慣のように頭に思い浮かべてしまう。『一体どこに、答えがあるのか』と。

今日まで鉄血などと戦い続けて勝って得られたのは次の戦いまでの生の時間。たしかな形や色がないものの、ローガンは人生は積み重ねという言葉になぞらえてそれを積み木のようだと思っている。勝ちを拾うということはつまり次に積み重ねることができる積み木を見つけれたことであり、それを上に重ねたことでまた新たに時を過ごすことが出来るのだとも。

幾度と誰かから奪って自分の生を維持してきたローガンの人生は統一性や親和性などが皆無でとても歪だ。大理石で作られたブロックを重ねてきた上々の人間とは違い、一度崩そうとすれば簡単にバラバラになって吹き飛ばされ、最後には塵となる。そうなってはもう、誰も『ローガン・ブラック』という人間を記憶に留めることはないだろう。ローガンも自分はそんな強くない、吹けば簡単に飛んでいく存在だということを嫌というほど知っている。

 

「…………」

 

ガリガリと頭を掻いて遠くに見える保護区の建物を眺める。僅かに響いてくる車のクラクションやエンジン音を耳にしながら、それらにさらに耳を傾けるようにローガンは目を閉じた。

こうしていると自分が子供の頃思い描いてた理想の自分とは何だったのか、どのような完成形を夢に見ていたのかということが、陽の光を反射して照らし返してくる遠方の建物と空色と橙色による鮮やかなグラデーションの空を見ていると時々わからなくなってくる。現実を突きつけられて諦めざるを得なかった理想と泡沫のように新たに浮かんでくるそれ。そしてまた消えては新たに生み出される。消える度に残されるのは虚しさと喪失感による胸の痛みだけで、今以上に失くしてしまったものよりも大きくて多い。

ローガンだってただ闇雲に戦っているわけでなく、様々な疑問を思い浮かべては自分なりの答えを得てそれを胸にしながら一歩ずつ着実に歩んできた。幾度も繰り返す自問自答の末に肥大化していく解答なき命題、それが『前に進むことで今以上に失っていく。その先には何があるというのか』だった。

こんな矛盾までもが複雑に混ざり合う命題に対する答えを誰が持っている?

ただここで切実に願うことあるとすれば、正しくなくていいから、迷っていてもいいから言って欲しいということだけ。せめてそうして、誰にも言えずにこうして悶々としてしまっている自分の事を泥沼から引き上げて欲しい。

 

「バカだな俺も……」

 

そんな都合よく誰かから助けてもらえるわけないというのに甘えたことを考えている自分に反吐が出そうになる。ローガンは再度大きく溜息を吐いて首筋を缶を持っていない手で撫でるまで、長い間思考の沼に嵌っていたらしい。背後に近付いてきている者の事に一切ローガンは気付かなかった。

 

「まあたしかにローガンは頭はよくないけどよく回るよね。なんでそんなことを考えられるのというぐらいに」

「時々感心してしまいそうになるわ。無茶をするしこっちから制裁を加えられているというのに口が達者に動くから逆に驚きよ」

 

突然のように近くから聞こえた声にビクリと驚いたローガンが振り返ると、そこには二人の少女がいた。片や一人は前者とは違う別部隊の隊長を支えながら己の力を出し惜しみすることなく振るう、生真面目で口煩いが仲間を想う気持ちは皆より人一倍強い少女。もう一人は素性が知れなかった一つの特殊部隊を率いていることで近寄りがたい雰囲気を出会った当初だけ感じこそすれど、対等な関係を築きさえすればネコ科の動物を連想させる少女である。ローガンにとっての関わりがある戦術人形の中でトップに当たるAR15とUMP45が、やれやれと頭に手を当てながら首を振っていたり肩を竦めていたりとしていた。

危うく手に持っていた空き缶を手摺より外側に落として基地外側の方に落としてしまいそうになったがなんとか堪えてローガンは言い返した。

 

「心外だな二人とも。単に宥めようとコミカルなことを言ってるだけだっていうのに頭悪いみたいに言われれば俺も傷つく。まあ本当の事なんだけども」

「じゃあその点においては反論できないわよね事実なんだから。一人格好つけて黄昏ている人なんて私から言わせてもらえればダサいの一言に尽きるわよ」

「容赦ない物言いをありがとよ45。おかげでこの先もやっていける気がしなくなって涙がちょちょ切れてくるわチクショウめ」

 

何も言い返せなくなったローガンはくすくすと楽しそうに笑っている45に項垂れる。このところ料理の練習もあってAR小隊と過ごす時間が多いことで404と面々と顔を合わせるのはあまりない。カイルを通してグレイという人物に関した報告を受け取った日、あれが9も交えた久方ぶりの45との交流でもあったのかもしれなかった。

そう思うほどローガンもここのところ働き詰めでありながらAR小隊の手伝いを陰ながらしている。それを45がどう思っているのかはローガンにはわからないが、仲が良き友人としては歯痒く感じることがあったのだろうと思い内心溜息を吐いた。

 

「今ローガン、自分が情けないと思ってるような顔してたけどそこまで気に病む必要はないわよ。あくまで45のは我儘に近しいものだから」

「それでも人形(わたしたち)も時々は我が儘を言いたくはなるわよ。AR15は物事を非情に見ないといけない分の反動を受けたりしないのかしら?」

「私はそうストレートに発散できないわよ。精々トレーニングや訓練で払拭するように努めるだけ。自分の内面を誰かに簡単に曝け出すだなんてみっともない真似、私はしないわよ」

「あなたはそういった面でも頑固だね。強く在り続ける為にそう自分に言い聞かせるのは結構だけどそればかりだと疲れるわよ?自分の負の気持ちの捌け口を構築するぐらいの事をさせてもらった方が、その相手との距離が縮まったりもして一石二鳥よ」

「会話の内容から察するになんか俺が関わる話のようだけど当てつけにされるのは御免だぞ。話を聞くだけならともかく矛先を変えられて痛い目に誰かの代わりに受けるというのは何も得しないし」

 

二人の会話からしてAR15の鬱憤晴らしのルートを話しているようではあったが、急に八つ当たりの的にならないようにする為に釘を打っておく。すると45は後ろ手に組むと前屈みになってローガンを上目遣いで見上げて来た。

 

「ローガンもさ、少しだけでも女の子の我が儘を聞いてあげるなりしてあげてよ。感情に流されるのを律するのもいいけど、受け止めてあげてもいいんじゃない?ほら、AR小隊の猛犬とはじゃれ合ってるみたいに」

「SOPIIの場合は単に子供の相手をしているのと同じような感覚でしかないんだがな。お前の言いたいことはなんとなくわかるが、言ってくれない限りは察するだなんて俺には無理だ」

「だってさ、AR15。ローガンが言ってることは最もだけど」

「なんで私に振るのよ。別にいいと言っているのに……」

 

そっぽを向くAR15と楽しげな45にローガンは二人が何を考えているのかまったくわからず首を傾げたが、なんとなく気が紛れたので仕事部屋に戻ろうと歩を進めた。すると二人はローガンを追いかけるように後ろに付いてくる。

 

「俺について来てもなんも面白いことはないぞ」

「指揮官からの伝言を伝えるべき相手が移動しているのだもの。だったら私達だって当人が行く先に向かわなければならないじゃない」

「ハリーから?」

 

屋上から戻ろうとしていた歩をすぐに止め、首だけ振り返るとAR15が鼻を鳴らしながら両腕を組んでいた。ローガンはなにか伝えられるようなことがあったかと考えたが特に思い当たることはない。というところで通信機器を持ち出していなかったことに今更ながら気付いて余計に手間取らせてしまったことに如何せん申し訳なくなった。

 

「あ~……すまん。なんか面倒なことをさせてしまったみたいで」

「みたいじゃなくて本当にそうなんだけど……まあいいわ。頭がいっぱいいっぱいになっているようだし考え事もずっとしていれば仕方ないだろうから」

「それで、あいつからはなんて言われてるんだよ。飯時じゃなければ基本つまらないことを言わない、基地内の奴であればニュートラル男のことだから小言を伝えに来たわけじゃないだろ」

「連絡を受け取ったM16からのメモによるとだけど、『頼まれていた事項についての調査結果はシロが濃厚。過去を振り返ってみても特にこれといった動きはない』だって」

「……そうか、アテが外れたってことか」

 

その伝言を聞いてローガンはガリガリと頭を掻いて推測が外れたことに溜息を吐く。また一から考え直しかと思いやるべき仕事がまた積み重なったことに対してもまた気を重くしていると、AR15に述べられた伝言の意味があまりわからないらしい45が聞いてきた。

 

「二人で何を調べていたのかはわからないけど、概要としては『オアシス』のことよね?」

「まあそうなんだが……そうか、シロだっていうのなら振り出しに戻らないとだな……」

「ずっとうんうん唸りながら出てきた推察が外れるというのはやっぱり堪えるものよね。それもどうでもいいような謎かけじゃなくてこれからの行動を左右するものだもの」

「ふ~ん……ねえローガン、問題なければ私にも教えてくれない?ひょっとしたらなにか見落としがあれば気が付けれるかもしれないから」

 

少々ハリーと共有している情報について話していいものかと迷ったが、元々機密でも何でもなければ緘口令まで出されているわけでもない。ハリーのみならずグリフィン上層部からも『オアシス』に関した事項を口外しないように言われていない。

暗黙の了解、やら組織内の常識として云々と後から喧しい小言を聞かされるのだとしても、45のように電子機器のクラッキングが長けている戦術人形を誤魔化すのはあまり得策ではない。その気になれば交渉材料になり得る情報を抜き取って保有し、時が来ればそれを持ち掛けて最後に切り札として切り出す。そうやりかねない人形であるのがUMP45という戦術人形で、とある界隈で恐れられている存在だ。

とはいってもローガンにとってはAR15と同位と言えるほど信用できている存在であることは間違いない。

なのでローガンは決心し、屋上に設営されている自販機からまた同じ銘柄の缶コーヒーを購入した後に、二つ分の微糖のそれを続けざまに買って二人に放り投げた。

 

「まあとりあえず長くなるだろうからそれを持って下で話そう。季節の影響もあってそろそろ寒くなってくるからよ、どうせならゆったりと話そうや」

 

時はもう終業時間に差し迫ってきている。あと三十分程度なのだし、偶にであればこれぐらい許されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<同日>

 

 

 

「……それで、どういった経緯があった訳なの?」

 

機密事項でないにしてもさすがに大っぴらかつ堂々と話せることではないので、ローガンはAR15と45を連れて基地内の休憩室をに入っていた。幸い中には誰もおらず周囲にも行き来している人や人形がいなかったので、聞き耳を立てられることはないだろうと思って扉を閉めて振り返る。AR15は休憩室内に備え付けられているソファ背もたれに腰掛け、45は真向いのそれに座って微糖のコーヒーに口をつけている。そんな二人を見ながらローガンは壁に寄りかかって二人とは違う缶を開けて一口飲んでから言った。

 

「まずは整理も含めて説明しようか。俺達が追いかけている『オアシス』というのはグリフィンのデータベースどころか正規軍のにもない、『アッシュ』っつう鉄血の奴が追いかけろと言ってた代物だ。初めは敵が残したメッセージということで鵜呑みにせずとも捨て置かない、そんな曖昧な感じで頭の隅に置いていたんだが、この間の『アネクドート』が暴れたあの事件の最中に聞いた話で確保しなければならないという話が現実味を帯びた。ここまでならお前にも話したよな?」

「ええ、『オアシス』を探しあてて持ち替えるには『座標』に『地図』、それと『鍵』が必要だってことも聞いたわ。それ聞いた時はデータの整理もあってこれ以上は話せないとかでは話は終わったんだけど進展はあったの?」

 

ローガンの頭の中で蘇ってくるのは相棒であった友を弔ったその数日前に送信されてきたボイスメッセージ。話している当人の性別を判断させないような、男性と女性の混合した声に乗せられた言の葉を聞いてないことにするなど到底できないあれを、今でも端末内のパスワード必須のフォルダ内にて保存している。

そして時が流れて気付かぬ間に『オアシス』確保に必要らしいピースを集めていた現在。大欲怨霊事件にてバーンズから聞いた話でローガンの中で『オアシス』の存在が情報が詰まった膨大なものとなり、状況証拠ではあるが現実味を帯び始めた。

 

「AR15も参加した元アメリカ陸軍基地の任務達成と回収したデータが『座標』、そんでワシントンD.Cでイントゥルーダーに殺された元アメリカ政府の職員であったVIPが所持していたのが『鍵』であることが確定したのが方針会議の五日ぐらい前だ。だがまだ『地図』が見つけられていないから、最近は思い当たり次第ハリーと連携して片っ端から調べてたんだよ」

「それでここのところ執務室で根を詰めていたのね。私達が声掛けても生返事だし何か思いつけばPCに飛びついて調べては落胆してて忙しそうだったから何かと思ったわよ」

「おかげでM4やらSOPIIから頼んでもいないのに栄養ドリンクを置かれたり肩を揉まれたりやらであいつらには特に悪かったと思う。それにまだ報われないというのは増々くるものがある……」

「反省会はまた今度にしてあなたと考えた推測そのものを聞かせて。あなたのことだから勘に任せた、そう考えた根拠がないことはないだろうしそれも説明して頂戴」

 

AR15からの催促されたので、ローガンはどのような順序で話すか思案した後に45を見る。彼女も言わずともそうして欲しいというようにこちらをじっと見つめていたので何も隠すことなく話すことにした。

 

「まず最初に俺はお前達にも以前話したある奴に『『地図』と『座標』は既に手の内にある』という残されたメッセージから考えた。その言葉の通りに考えるのであればもう俺達はその二つを手に入れているんだということだってな。実際の所『座標』はもう確保できていることだし、単に『地図』は俺達が気付かない間に手に入れていると考えるのは筋が通ってる、ここまでは言いたい事があるか?」

 

口を挟まずに静聴している二人は首を横に振って否の意を示す。

ローガンが話している推測は別の可能性があるかもしれないことで視野を狭めないよう留意しながらのものであり、これが最も正解に近しいのではないかと考えている。それを伝え漏れや誤りがないように気を付けながら続けて話した。

 

「帰還した当初、俺はAR15から言われたようにイントゥルーダーから取り返したあのUSBメモリが『鍵』じゃなく『地図』なのかもしれないと思っていた。が、実際には違って該当する機器に接続すれば自動的にセキュリティロックを解除するプログラムまで組まれていたことから『地図』じゃないことがほぼほぼ確定して困窮したよ」

「でもそこからどう糸口を探したのよ。オアシスなんていうのは砂漠の緑地と言われてたりするだけでそれが私達が追い求めている『オアシス』に繋がるわけでもない。あの男(バーンズ)もどれがどこにあるかだって知らなかったようだったし」

「『オアシス』なんて名前にした由来を思い返してみろ。奴は戦争の傷跡がある地を『砂漠』、俺達だけでなく難民や民間人にも襲い掛かる鉄血だとかの連中を『砂漠化』として揶揄していた。そう例えたのはオアシスというのが本来なら乾燥地帯にあるものだからだったのかもしれないが、現実に置き換えてみれば戦いの傷が絶えず人類の居場所が巣食われている場所なんて世界を見渡せば無数にある。だから敢えてシンプルに調べることにした」

「……バーチャルや仮想空間でもなく、私達がこうして生きているこの現実世界の砂漠地帯に目をつけた、ということね?」

「その通り」

 

45の言葉に肯定してからローガンは缶コーヒーで一度喉を湿らせてから壁から背中を離し、向かい側の窓の方へと歩いた。そこからはこの基地の演習場が見えていて、誰がどのような訓練をしているかを見渡せるようになっている。今ではキルハウスにてバルソクが『PP-19 BATON』を手にしながら演習を開始し、ランダムに現れるホログラムターゲットに向かって撃ち始めている。

こちらから教えたことを忠実に守りながらも、銃の撃ち方だけでなくナイフによる自己流の戦い方を模索している彼女に密かにエールを送ったところでまた自分もいる室内の方に意識を戻した。

 

「だが現代じゃアメリカの半分以上が砂漠になってしまっていて、精度を良くしての情報収集するにはまだ絞り込みが必要だった。当たり前の話だが、調査するにしても道具だけでなく金も必要だ。ましてや砂漠なんて人がいないのに等しい地帯から情報を探すのだからUAVや衛星を駆使する必要だってある。徒歩で確かめるにはあまりにも危険すぎるし時間も多くない。もし俺が自分で行こうものならお前達が止めてくるんじゃないかと思うぐらいだよ」

「それはそうよローガン。私達よりもローガンの方がヤワなんだし水分だって多く必要とする。私達にはオーバーヒートのリスクが強く付き纏ってくることにはなるけど脱水症状よりもまだなんとななるものだから、ローガンが行くことになるのなら私が代わりに行くわよ」

「そりゃどうも……まあ本筋に戻してだが、それで俺が次に考え着いたのは鉄血やロシアの特殊部隊の動きだ。後手に回ることにはなるが奴らだって根拠もなく調査することはないだろうし、わざわざ危険地帯に人員を派遣することはしたくないだろうからな」

 

これに関して鉄血はともかくスペツナズ(ロシア)には当てはまることだろうと思われる。派閥云々は置いておかなくても鍛え抜かれた精鋭を失うのはロシア政府の人間とて好ましくないだろうし、ロシアのように国の中では地球の最北端に位置する人間からすればおいそれと砂漠なぞ送り込めるような地帯ではない。

いつになく真剣な面持ちの45は顎に手を当てながら言った。

 

「ダメ押しさせてもらうけど、それだけだけでも絞り込むには至らないわよ。砂漠で徘徊している鉄血兵の数なんてたかが知れているし奴らだって隠蔽する術を持っていてもおかしくない」

「もちろん俺もそう考えたんだが、結果を急いているグリフィン上層部からの圧力がかかって探査せざるを得なかったんだ。基地内のドローンオペレーターに探索区域を指定するにしても限定的に一部の州しかできなかったし、探査の間は俺も立ち会えなかったりとだな……」

「それは難儀だったわね……一つ提案だけどさローガン、『座標』のデータを見れたりしないのかな?今日はもういいとして明日ぐらいにさ」

「ハリーに申請する必要があるとは思うが事情を話せばまあ大丈夫だろう。一体なにを確かめるつもりだ45」

 

缶を一気に空にした45は立ち上がり、ストレッチをすると挑戦的な笑顔を浮かべる。そしてローガンに近付くと自分の拳をこちらの胸に正拳突きをするように当てて言った。

 

「最近はローガンにいいとこ見せられていないんだもの。怨霊相手の時だって陰ながら成果を出していたぐらいで肩を並べて戦っていたわけじゃない。だったら今回の情報収集で役立たないと私だって立つ瀬がなくなっちゃうわよ」

 

百点満点の笑顔を浮かべながら45はご馳走様と言って空き缶を捨てて休憩室から出ていく。助力はありがたいが、屋上の時といい妙に機嫌が良い彼女が何故そう言ったのかわからずローガンは首を傾げる。

その日で印象的だったのは45の笑顔と、それ以降AR15がいつも以上にムスッとしていたことだろうか。




タンクバスター無理じゃね?てな感じで少々諦めムードになってきてしまっていますが、皆さんはどうですかねぇ……。自分はまだ前に踏み出せないまま、416の専用装備とかの周回とかをして終わらせましたが、できれば期間中に特異点をクリアしてみたいなと思っているんです。でもあそこまで陣形を操作して敵戦車を撃破するの、私苦手っぽいんですよ。このゲームでそれは致命的なのでしょうけど、あのような理由あっての順序を踏まえた操作はう~ん……ていう感じです。え~い、いっそのこと私にPS4のコントローラーを貸してください!敵戦車の撃破役を担っている人形の操作を直接させてくれるのでしたら文句も言わずやってやりますとも!
まあそんなのが叶うはずもなく、なんとかしなければならないのが現実なんですけどね。AR15とM4の二人をMOD化させること出来ましたし、AK12も製造できたりと美味しい思いはそれなりにさせてもらえました。これからもまだまだ私のドルフロに対するモチベも維持できそうです。それはそうとAN94ことアバカンはいつになったら来ますか。あなたの使命を果たす対象はもう既にいるのですけども(迫真
というわけで今回はこの辺で――――――
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