誰も助けてくれない -Can you hear me?- 作:麒麟犬
『その先には鉄血兵が集結していて交戦するのは得策じゃない、どうにかやり過ごすしかないよ。それにE.L.I.Dとの交戦に備えて鉄血も地下内にマンティコアを入れ込んでる。策がないままいけば負けるのは必至のはかわらないけど分が悪すぎるのも言わずもがなだ。絶対に見つかっちゃダメだよ』
オアシスからの情報を頭に叩き込みながら軋む扉を押して開かせると、ローガンは『AK-74』のサイトを覗きながら行く先を見た。オアシスの言う通りらしく、どこからか鉄血製の重装甲歩兵戦車の駆動音が聞こえてくる。だが音の響き具合だけでなく暗視処理をされている視野で得られる視覚情報からすると見える範囲に敵兵はいないようだった。
「……行くぞ」
ローガンは合図を出してから先頭に立ち、G11がすぐにバックアップの態勢に入りすかさず皆が出るまでの後方警戒に移行する。その次にバルソクが416を担ぎながら出てくると片手に『PP-19 BATON』を持って隊列の中央に入った。
このフロアもE.L.I.Dとの遭遇は十分にあり得ることであり、オアシスの探知網には引っかからない。あくまでオアシスが探知できるのは機械兵である鉄血であって、『崩壊液』で異形の物とかしていても生身の体であるE.L.I.Dは機械探知をするオアシスに気付かれないということだ。
それでも近辺にカメラなどの電子機器があればハッキングしてアクセスして電子伝いに偵察することは可能ではあるが、今回に至ってはかなり制限されている状態だ。ハッキングはともかく、本来なら非常回路が備わっていない旧式の電子機器に非常電源に無理やり繋げるような無茶なことすれば壊れてしまうのだっておかしくない。コップに注がれた水が零れる、だけでなく危うくバランスを保ってそのコップを乗せていたトレイのそれが狂ってしまって落ちてしまう、というのがわかりやすい例えだろう。だからこそオアシスはエレベーターの稼働は前向きに行い、三要素からの追跡からの振り切るのには回路を弄らなかった。
とはいえ、陣形や効率で圧してくる鉄血工造と数と稀有な変異体で押し寄せるE.L.I.D、両者のどちらかだけでも一歩前に出れるだけいいだろう。
『行く先約三百メートルにプラットフォーム。そこで鉄血兵は部隊を再編して意識としては戦闘態勢を維持したまま巡回を続けるみたいだね。複数のマンティコアの反応があることからあれを主体にするのかもしれない』
「本当に厄介なことになる前にお暇した方がいいな。皆疲れていて厳しいが仕方ない、ペースを上げるぞ」
『それとそのまま行くと三体の鉄血兵の反応がある。ずっと動いていないようだから多分、急ごしらえの前線、というところかな』
四層においての連戦、ならびに逃走による行為が立て続けに起こったせいで疲労が積み重なっているのが民兵達から見て取れたが、彼らとて生き残ってきた兵士。多くの仲間を失ったことによるショックは大きい筈ではあるが戦うことで自分の生をもぎ取る気力までは失われていないようではあった。彼らを率いるハルカはもちろんのこと、意外にもハモンドも思うことはあるらしく足を引っ張るようなことを何も言ってこない。
ローガンもまだ継戦して任務を続行するだけの体力と意志はあるが、手元に残っている装備は反比例して『ある』とは言えない状況になっている。精々『AK-74』の弾倉と『P226』のそれにスモークグレネードがあるぐらいで芳しくない。C4などの爆薬は数としてはある方だが場所が悪すぎる。使うとすれば最後の手段だ。
そう頭に上らせていたところでローガンは敵影を視認する。工事現場で道路を封鎖している従業員のようにこちらに背を向けており、まだローガン達は気付かれていない。
すぐにローガンは後方にいる仲間たちにハンドサインで制止を合図すると小声で報告した。
「オアシスが言った、鉄血兵のガードを三体視認。こっちには気付いていないから先制のチャンスではあるが、下手に銃をぶっ放せば俺達の存在を知らしめることになるぞ」
「ならやることはシンプルかつ大胆に行くぞ。ローガン、あんたとあたしで近接戦で一気に片を付けよう。一人、陽動を頼んだぞ」
416の暗視ゴーグルを借り受けたハルカが部下の一人にそう言ったところで、ローガンはハルカと左右に分かれて横一列になっている三体の鉄血兵に接近する。『AK-74』を野戦服のフックに吊るしておくことで両手を空いた状態にし、物音どころか自分の呼吸音まで無くす為に息を止めた。
細心の注意を払って接近したところで線路を挟んで対岸にいるハルカに合図を送る。彼女も頷いたところでローガンもすかさず一体に組みついた。
膝裏に蹴りを入れて鉄血兵の一体に膝をつかせると片手に握られているサブマシンガンのバレルを掴む。不意を突かれて現状を理解できていないうちに一息に奪うとそれでちょうどいい位置にある鉄血人形の頭部を殴った。まだ仕留めれていない、よろめいているだけなのでこちらに気付いた中央の鉄血兵に押しやる。押しやられた鉄血兵は何もできないでされるがままに覚束ない足取りのままに行き衝突、そして二体とも膠着した状態になった。
いつもなら決定打としてナイフを抜いて止めを刺しに行くが、奪ったガードのサブマシンガンには銃剣が付いているので自分の武器を使う必要はない。
「ふっ……!!」
銃剣を構えたまま突貫し最初に攻撃した鉄血兵のコアがある位置にそれを突き刺した。一回だけではなく二回、同じ位置を刺してから捻じ込むように銃そのものを回転させて一体目を無力化すると用済みになった銃を手放して二体目の首を正面から片手で掴んだ。そしてローガンは大きく踏み出してからその鉄血兵の足を後ろからかけて一瞬だけ宙に浮かせ、重力だけでなく自分の腕力も加えて地面に叩きつけた。
倒れながらも盾を翳して時間稼ぎをしようとはしているので、最悪やられても銃声を鳴らしてこちらの存在を知らせようとしていることが考えられる。
そうなってたまるかと、ローガンはすかさずサブマシンガンがあるその手の内側、手首に拳を振り下ろして掌を開かせる。そうなったのは一瞬、ほんの数秒のことではあるが単に敵の銃を奪うだけであればそれだけで十分。
奪ってから逆手持ちに持ち替えると押さえ付けている鉄血兵の首元に銃剣を刺し込み、今度はそのまま抜くことなく推し進めていった。次第に銃剣の刃が貫通して人工血液が噴き出したが、完全に頭部のユニットとコアを切断して分離していないのでまだ抵抗がある。ダメ押しとばかりに盾の縁でローガンの腕を叩いてくるので少しばかりは我慢する必要があるぐらいだ。
そこでローガンは叩かれていた右腕を引いて首から手を離す代わりに盾諸共ガードを踏みつける。具体的に狙いをつけていたとすれば人間にとっても急所である頭部。全体重をかけていたことで足の裏に物越しに何かが砕けるような感触が伝わって来た。
メキメキリッ!と金属が破断されたような音がしたのは銃剣が刺さっている首元であり、踏みつけている頭部はローガンの体重で回転させられている。完全に動かなくなった時にはもう頭部と身体が別々になったときであった。
ハルカの方を見てみれば彼女は首の骨を折るのと同じように頭部を回転させており、息を吐きながらローガンが片した二体の鉄血兵を見た。
「こっちが一体をやっつけている間によくそんな手段で殺そうと思うな。最初にそうやろうと脳内でリハーサルしてんのか?」
「条件反射に近いもんだろうがどうだろうな。こうした方が効率よく殺せる手段が思い浮かんでそうするだけだが、そんなに引くことなのかよ」
「少なくともあたしはこいつらを仕留めるのにそう複数案を頭内に浮かべることはできないよ。精々事前に体にある程度の戦術を染み込ませるぐらいでそこまではさすがにな。まああたしもまだまだってことなんだろうさ」
ひらひらと手を振りながら苦笑いを浮かべているハルカは足元に転がっている鉄血兵の身体を蹴った。彼女も彼女で派手な音を立てることなく制圧しているのだからそう謙遜することでもないだろ、とローガンは思うが自分もこう振り返ってみれば敵を確殺するのに少しばかり異質なのかもしれないと少しばかり感じた。
「とにかく急ごう。オアシスが探知できていないE.L.I.Dが後方から来ていることだってあり得ない話じゃない。それにあの変異体がずっと四層にとどまっているとは限らないしな」
「それは考えすぎじゃないのか。あんなデカい図体の奴が登攀してくる、というかよじ登ってくるのは……」
『あり得ない話じゃないよ。奴はE.L.I.Dにしては珍しく知性がある個体であるのはあたいもローガンのHUDで窺えた。だったら野生動物は縄張りに餌が無ければ遠出する、なんてみたいにあの化け物だって欲を満たす為にやりかねない。何かを口にしている様子はなかったから食欲とかじゃなく、単純に他者を殺害したい、それだけで動いて来ても不思議じゃない』
「奴にそこまでの自覚があるかどうかはさておいてもまるで『アネクドート』みたいだな。奴らは奴らで確信犯ではあったが」
『その分凶暴性と脅威としての規模がとんでもないよ。でもなにか大きく動かされることがなければあいつとかち合うことはない。今はとにかくここから脱出しよう』
オアシスの言う通り、ここで考え事をしているばかりでは何も好転しない。ローガンは懸念を自分の内側に仕舞いこむと待機しているバルソク達に合図を出して前進を再開した。
それからどれだけの時間が過ぎたのかはわからない。明かりが一切ない空間にハルカと共に先行していってどれぐらいになったかははっきりしないが、距離としてはかなりの物になったと思われる頃。
鉄血兵が出している足音や駆動音がはっきりと間近に聞こえるようになった時には二層にいける道筋の中では近道である、運送として配置されている貨物用エレベーターが見えていた。
「……なるほどね、どうやってマンティコアが地下に入りこんだのかがわからなかったけどあれだったんだ」
『簡易的にあれのシステムチェックを行ってみたけど電力があそこだけに供給がされてる。地上か一層の方にある制御パネルに外付けのバッテリーを接続してシステムを迂回していないんだろうね』
「確実に増援を送り込めるように安全策を取った、ということか。あれにあたし達があやかるのは無理そうだな」
「敵に全く見つからない隠密とか潜入についてはワタシもまだ勉強中だけど、これは不可能と見るべきだろ。エレベーター付近には物陰なんてほとんどないし見張りよろしく常に一体が動いてない。正面突破で辿り着けたとしても、きっと地上だとわんさか敵さんがいると仮定した方が良さそうだ」
「あれを使うとした時の賭けの要素が多すぎるし、俺も右に同じく、だな。オアシス、次の近道に行くにはどうすればいい?」
『……それよりも皆、まずいことになってきた』
他の誰かに聞かれることはないというのにも拘らず、オアシスは声を潜めて言った。声のトーンはさっきまで聞いてたものとは違って真剣みを帯びているどころではなく、危機的状況に陥った時に聞くようなそれだ。
目線の先のエレベーターが動き始めたことで新たに増援が来たのかと思い、ローガンは再度屈んで姿を隠す。そしてこの状況下ではなにもわからないのでそのままオアシスに聞いた。
「どうしたんだよ。今更鉄血兵の方にハイエンドの増援が来たぐらいじゃ俺はもう驚かねえぞ。まあ気持ち的には絶望するが」
『いや、そうじゃないよ。鉄血兵に新たな動きがあるにはあるけどそれはあたい達全員に対してのものじゃない。かといってE.L.I.Dが連携して襲撃してくる、なんてものでもないんだ』
「じゃあ一体何が検知できたのオアシス。そう言い惜しむことじゃなければさっさと言ってよ、こっちだって暇じゃないんだから」
G11がはっきりと言った事にハルカも同じようで頷く。バルソクがどうかはわからないが、ローガンはオアシスの一字一句を脳内え反芻していくうちに胸騒ぎを覚え始めた。
ウィイイインッ!とわかりやすい駆動音を鳴らしながら稼働しているエレベーターがまるで何かの宣告か、と思い浮かべた瞬間には停止しゲートが開き始めた音が聞こえてくる。もう一度だけ顔だけ覗かせて内なる騒めきを沈めようとした瞬間、エレベーターの内側から銃火が迸った。
ダララララララララララッ!!と長い銃声が鳴り響いて付近にいた鉄血兵を蜂の巣に、コマンド待機状態にあったマンティコアも反撃しようと交戦し始めたが、為す術もなく装甲に穴を空けて沈黙していった。
「な、なんだ?一体何が……!?」
「静かにしろバルソク!」
驚愕するバルソクを引っ込めさせて引き続き状況を観察していると、エレベーターからマシンガンを携えた何人かが降りてきた。しかしその者達はローガンから見ても異質である。
正規軍が兵器の一つとして運用している心を持たない機械兵とカラーリングは同じではあるものの、機械部が一切露出していないのがまず一つの特徴ではある。が、それだけでなく防弾だけでなく対爆も一つの機能としてあるスーツの一つ、ジャガーノートのように重装備なのが見て取れた。
さらにそれは目に見えての最新型であるのは間違いない。ヘルメットの横に装着されているヘッドライトや腕にある端末、さらには背にタンクのような物を背負っているのが見える。
「オアシス、あれはなんだ……!?」
『結論だけ言うよ。あたいには彼らがどうしてここにこのタイミングで来たのかはわからない。目的もなにもかも、あたいには何も把握できていないよ。だけど彼らの正体は――――――』
隊列を組みながら周囲を確認しだしたので、ローガンはすぐさま顔を引っ込めて息を殺す。とはいってもそれだけでは足りないような気がしたが、幸運なことにこちらの存在を察知された様子はない。
『彼らはアメリカの組織の中でも暗部に位置しているCIA直轄における闇の部隊だよ。その中でも最悪な部類だ』
――――――
世の中には人体による運動をアシストしているアシストスーツというものがある。脚が不自由な人がそれによって歩けたりするほか、貨物の運び出しや人命のレスキューにも使われたりと技術力さまさまな産物だ。技術の進歩によって誕生した宝石の一つがもたらした恩恵は民間にとってありがたいものであったに違いない。
しかしその一方で軍用に転用されているという一面がある。スーツがあれば人一人では負担が過多であって不可能である仕事をできるのだから、戦闘面に活かそうと考え付いてもなんらおかしなことではない。着地時においてのアシストは必要になるが、高く跳躍できるようになるだけでもいいだろう。または超人的な筋力を発揮出来たり、ローガンも交戦した『アネクドート』の兵のように腕からシールドを展開する機能もあれば尚良しだ。
そうしたものを世間では
『でもあの部隊が身に着けているのは装甲による防御や人工筋肉によるアシストは既存のものと同等でも、新素材による軽量化を実現し装備している人の感覚器官をブーストする小型システムが導入されている最新型の別系統。あれは純粋に銃撃戦のアシストに特化したモデルなんだよ』
「政府の補助が届きやすい正規軍ならではの装備ってことか。そうなると正面衝突することになればこっちが死ぬのは避けられないどころか逃げられない、か……」
貨物用エレベーターがあるエリアから退避して少し、オアシスのガイドによって行き着いた災害における避難場所でローガン達は腰を下ろしていた。警戒態勢は解かぬまま、気付かれないように話声を最少にしつつグリフィンの無線機を保有していないハルカの部下にも聞こえるように音声出力を端末のスピーカーホンに切り替え、オアシスの説明に耳を傾ける。
端末の画面に浮かび上がったのは先程見た強化服。所々に機能面における説明があるが膨大で、ローガンからすれば全てが頭に入る気がしない。
『強化服『ヘビータンク』。正式名称は『コンバットモデル バージョン47』。装甲の厚さは三十ミリ、各関節部を中心に衝撃吸収ユニットが搭載されていて本人にはガトリングを撃ちながら移動しても負担はほとんどない。システムAIが搭載されていて着用している人が考えていることを脳波で読み取って味方の位置や銃器の弾薬数もHUDに表示される。背負っているユニット部の電源を入れればホバーを開始して高所への到達も容易にできる、公開されている情報だけでもはっきりわかるぐらいの優れものだよ』
「思いつく要素を詰めれるだけ詰めて実用化させましたって感じではあるが、自動処理機能が備わった重装甲であるだけじゃないようだな。この画像でもあるように管が口元へと伸びているしガスだとかの対策もされている。防護服そのものの役割もしていて別側面からの攻撃にも対応しているが……これを着ている奴を無力化するには圧死させるか焼夷弾かなにかで焼くぐらいじゃないと駄目か」
『有効手段が極限なまでに限られる、それがこれの最大の特徴だよ。テストモデルが開発されたのは最下層にいた時から知ってたけどこんなにも早く実用化に移っていただなんて……』
こうして見てみれば並の火器では対抗できないのは最早目に見えている。白兵戦に持ち込んでも十分な兵器がない以上敗北は必至で、相手が悪ければ死する想像は難しくない。
「CIAがこんなのを持って現地入りねぇ。随分とこの地下にご執心のようだけど、たぶん目的としているのはワタシ達とそう変わらないだろう」
『油断しちゃダメだよ。連中がここに寄越して来た部隊はCIA内でも秘匿されていて特務を専門としてる。だけどなによりも恐れられているのは、目撃者がどのような存在であっても必ず抹消する、ということなんだ。隊員の一人一人が元正規軍の手練れであるからだけじゃなく、彼らが組織でも都市伝説のように語られているのはその特異性を有しているからなんだよ』
だがこれだけではオアシスが言った『まずいこと』というのに理解できない。たしかに最新鋭の装備が正規雇用の人間にあるだけでも厄介だが、相手も人間ならやりようがいくらでもある。オアシスから提示された情報資料を見ている限りでは自身が誰かに視られているのを察知できるわけでもないので、あくまで着用者がHUD越しに目視による索敵を行うことが大前提となっているらしい。であれば、最新の注意を払いつつやり過ごすなり迂回すればかち合うことにはならない。
「連中が俺達の後を嗅ぎまわってここに来る、なんて予想は416がしていたがまさか本当に来るとは驚きだが……オアシス、お前が懸念しているのは何なんだ」
『皆も知っての通り、CIAはいわゆるアメリカの情報局であり情報と実行力をもったエージェントで任務を遂行する組織。映画でもあるように人々が謳歌する日常の陰で命のやり取りをしていたりもするそんな彼らが一番の武器は前者だ。それを得る方法として彼らが用いる手段としては色々とあるけど、大雑把にでも敵の位置情報を把握できる、政府に公認されている組織ならではのそれを駆使できる手段。それは何かわかる?』
国に認められている組織が可能とする方法としてはいくつかあるが、オアシスの言う事に該当する方法としてはローガンが思いつく限りでは一つだけある。それをローガンが言う前にG11が黙して閉じていた口を開いて言った。
「人工衛星による観測、だよね。そうなると……あぁそっか、たしかにこれはまずいことになった……」
「ちょっと待て、こっちはてんで理解できねぇぞ。てめぇらだけでわかってねぇで教えやがれ」
ハモンドがガリガリと頭を抱えながら偉そうに言ってくるがそれにイラつく以前に事の重大さにローガンも気付いたが眩暈が生じてきた。額に手を当てながらも思い当たった推測が他の皆との認識に相違ないことを確定させるべく、答え合わせも兼ねてハモンドを見た。
「目的ははっきりしていないが、このタイミングで連中がここに来たってことはCIAが人工衛星で俺達を見てたんだろ。俺達がフロリダに現地入りしてもう六時間以上経過しているし、時間としてもそこまでおかしく思うことはない。そんで現在進行形で活動を開始しているわけだから地上の衛星観測は続いてる。そんな現状で地上に俺達が出れば何かしらかの事案に関係している、ということを自白しているようなものだ。あんな見るだけでもヤバい奴からの『追及』は俺達だけでなく協力関係にあるお前達にも及ぶ。ここから出た直後に捕捉されて追跡される、なんてだけじゃない。俺達はまだ組織としては大きいからまだいいが、お前達の制圧は正規軍の手にかかれば赤子の手を捻るようなものだろうよ」
あの強化服をまとった連中が班としての規模でハルカ達の拠点に攻め入った場合は間違いなく彼女達が全滅する。組織の規模が小さいハルカ達が全滅しても世界の誰も気にしない。世の中は鉄血に対抗するだけに限らず、弱い者から搾取して自分は生き残る、弱肉強食の生存戦争だ。今更ハルカ達のような民兵の集団が与り知らぬところで死んでいても誰も気にしない。そんな事例などもう溢れ返っているのだから。
「そんな……そんなことに……!!」
「連中が俺達グリフィンのどこまでを把握しているのかはわからないが、動いていることがバレているのはある意味想定内といえる。ハリーも隠しようもないと言ってたぐらいだしな。だがもしこの件にフロリダ内に居を構えているお前達が関係していることまで知られていたら、ていうことだ。このまま脱出して今はいいだろうが、俺達全員、その後はどうするのかをきちんと考えておかないとならない」
ハモンドが壁に拳を打ち付けてながら打ちひしがれているが、彼だけでなく民兵全員が似た反応を示している。そう壁にぶつかった気分になるのはローガンも同じだが、規模だけでなく属している組織が違う以上は彼らほどじゃない。あくまでこちらは口裏を合わせての言い訳を考えておけばいいだけであり、彼らのように生死の問題に直結するわけではないからだ。その違いによる影響は後々に圧し掛かってくる問題として出てくる。『責任』か『命』、その二つを天秤にかければ重いものとして示されるのは言わずもがな。そのどちらを選び取るのかなど、地に這いつくばって生きている人間であるローガンからすれば躊躇せず後者を掴み取る。それは今も足掻き続けているという点に限っての話で一番近しいハルカからすれば同様のことだろう。
「……そうか、とりあえずあたし達が危機的状況に陥っていることは了解した。いずれにしてもあそこには長居できなかったことだし帰還次第、撤収の用意をさせるから心配しなくていい」
「いや……こんな事態になった責は俺達にもあるし、できるだけの支援ができるようこっちの指揮官に掛け合ってみる。俺にはそれぐらいしかできないが……」
「気持ちだけ受け取っておくから気に病むなよ。こんな辺鄙なところにまで足を運ぶことになった経緯まで聞いた限りじゃ仕方ないさ」
「怒らないのか?」
「何にだよ。あたし達は元々
ニカリと笑ったハルカはこちらの胸の中央に拳を軽く当ててくる。それだけで自分の内で膨れ上がろうとしていた罪悪感が縮小し、存在が確認できる程度の最少サイズになったのを感じた。
気恥ずかしさを誤魔化す様に頭を掻きながら顔を逸らすと礼を言った。
「まあサンキュー、そう言ってくれたおかげで気が楽になったよ。お前になんで人がついて来ているのかがなんかわかった気がするし、
「お、なんだったら今からでも移籍してくれたって良いぞ?あんたが来てくれるならあたしからしても大助かりだしハモンドのいい薬にもなる」
肩に手を回されたこと背中を丸めると、続いて帽子を外されて頭を掻きまわされる。言われたことを脳内で反芻する前に身体の半分がハルカの胸に当たって顔が赤くなるのを感じて言葉が霧散する。はっはっは、と笑う彼女がそれに気付いている様子はないのでわざとやっているのかと思うぐらいだ。
「お、お気づきですかハルカ殿?今ちょっと付き合いが浅い人間、それも男を相手に結構なレベルのスキンシップを為さっていますことよ!?」
「そう遠慮するもんじゃねぇぞローガン。ようやくわかったがあたしはあんたが気に入ってきてんだ、それも性別云々の話も含めてな!」
いぃ!?と話の方向が急激におかしな方に振り切っていることにローガンは変な声を上げる。わっしゃわっしゃと引き続きこちらの頭を笑いながら掻きまわしているハルカから助けを求めようと見える範囲で周囲を見渡したが、リーダーである彼女に従うという意思に溢れている民兵はもちろん、自身を奮い立たせようと自分だけの世界に入っているハモンドには無理だと感じた。部下である彼らはともかく、ハモンドに至っては今日一日で二度ハルカに打ちのめされているのでアテにできない。
「ていうかお前の髪って本当に白いのな。染めてしまった方がこの先も本当に困ることはないんだしやってしまった方がいいだろ~」
「いいんだよ、いつもはなにか暗色系の帽子を被ってるんだし。最近の染料はそうではなという話だけど、そんなのを使って髪抜けやすくなるのが俺は一番嫌なんだよ」
「ふ~ん……まあそれはいいとして、どうするんだよローガン。あたしはあんたが来るなら歓迎するつもりだが、グリフィンからこっちに来る気はないのか?」
「……あくまで俺が言ったのはイフの話だよ。今じゃグリフィンの中に俺が居場所とさせてもらっている場所があるのだし恩もある。だから俺はいまいる『ここ』からそっちに行くことはできないし、あいつらをちゃんとした理由もなく蔑ろにしたくない。だから無理だ」
そう言ったローガンの脳裏にチラつくのはこちらに手を振ってくる二小隊の面々。違った過去や苦難をもっている彼女達は自分とは違う存在ではあるが、同様に『闘争』に強く結びつけられてしまった、そんな宿命を背負わされている。小隊それぞれは表と裏、コインのそれのようであるが小隊メンバーの個性を比較してみれば反転しているほどかけ離れたものではない。精々物事における価値観が違うぐらいで、それでもシビアな見方を必要であるのを理解しているのは一致している。
親しかった友人たちと変わりない彼女らを裏切ることはローガンにはできない。だからここでハルカにどのように条件を揃えられた上で誘われても突っ撥ねるつもりだった。
ハルカによるアームロックから解放されて痛み始めていた腰を摩っていると、彼女亜h落ちていた帽子を拾い上げた上で言った。
「そっか、ならこれ以上食い下がらないでおくよ。あんたが日系アメリカ人で日本人の血が入ってるからかもしれないけど言動からして謙虚な面もありそうだ。それでいて不幸なことがあれば尾を引いてしまいそうだし余計なことを言わないようにするよ。後ろのお二方が怖いことだしな」
笑みを浮かべているハルカからそれを受け取ったところで振り返って見てみると、苦笑いをしているバルソクとジト目になっているG11の二人がいた。負のオーラが立ち上っている二人にローガンがぎょっとしていると、普段の七割増しに目つきが悪くなっているG11がローガンの腹を指でぐりぐりしながら主張を述べた。
「ねぇローガン。あたしは別にローガンがどこの誰と親密になっても構わないけど、後々になって面倒になるのも嫌だし少なくともこのことは45に報告しておくから」
「なんでそこで45が出てくるの?別に疚しいことだって何もないというのになんで処刑台に吊るされるようなことになってるのよ?そこまでの悪いことをしたのかしらん?」
「自覚あるなしに限らず、本人に見られたらとりあえず笑ってない笑顔を向けられていたんじゃない?ローガンのことだから胸倉を掴まれるようなことに発展してるかもしれないし。だって満更じゃなかったでしょ、顔に胸が押しつけられるのは」
「わお、俺もなんとなく察していたけどあいつそういったコンプレックスがあったのね!気のせいか殴られた鼻がズキズキと痛んできた!」
イフの話をしている最中に45のある一点に視線が止まった、カフェでの一件のノーモーション・ノックアウトパンチを思い出す。一日の事件とその後の現場収拾などによる疲労で痛みを感じつつも即座に眠りにつけたわけだが、ローガンだってさすがにあれを毎日受けていたいと思わない。
黒笑顔を浮かべる45が目に浮かんできて肝がストンと落とされたような気分になった。
「とりあえずさマスター、AR15にもこのことは言っておくぜ?あの特殊部隊の隊長さんだけじゃなく仲間思いの参謀も知っとかないとフェアじゃないしな」
「あれぇ~、あいつにも絡む話だという要素はどこにあったのです?もしここにいたとしたら蔑まれるかもしれないけど、出来事の一つとして片付けられることじゃないの?」
「出来事であるのなら話のタネとして言っても構わないよな?あいつだってマスターの事を気にかけている、その最初の『当事者』なんだし。ていうかさ、AR15がマスターの仕事を手伝っているのは何故だか考えたことはあるか?書類仕事にパトロールとかとか、仕事だけじゃなく普段のコミュニケーションも全部、マスターがグリフィンに馴染んで欲しいと思っているからなんだぜ?」
「帰ったらそのありがたみに感謝して礼の一つでも返そうと思うよ。てかお前の目も据わってて怖ぇよバルソク!」
陰ながらサポートしてくれていたAR15の行いにそうした意味を考えていなかったわけではないのだが、とりあえず有言実行をすることを示しておく。それでも目の前で青筋を浮かべているバルソクの機嫌が良い方に転がってくれることはなく形だけの笑顔による恐怖が増してきた。
見た目だけの話であれば十代半ば、もしくは後半になっている少女に気圧されている大の男という情けない図が出来上がっているが、そんな感想を抱けるのは事情を知らない奴だけだとローガンは思う。
『まあとりあえず今のやり取りは録音しておいたから、その二人に報告するのなら活用するといいよお二方。映像まではさすがに無理だったけど、二人の証言も合わされば疑われることないと思うしね』
「なんでそんな手際の良いことをしてくれちゃってんのオアシス?お前さんはあれなの、元戦術人形ってことで気持ちが分かるあっちの味方なの?」
『う~ん、それはどうかな~。叶う事なら以前のように自分の手足で動いて顔の器官系モジュールを駆使したいとは思うけど執着はしてないよ。でもあたいはエクスキューショナーが言ったように事実を見て見ぬフリをすることはしたくないんだよ』
「たしかにそれは大切なことではあるけどそれだけじゃお前の本心の一部しか聞けてないな。そういった後付けの真面目な面だけじゃなく、実のところはなんでそんなことをしたんだ」
『面白そうだから☆』
「愉快犯かてめえ!!」
オアシスが目に見える相手であればローガンは掴みかかってヘッドロックを仕掛けていたであろうが、相手は長らく付き添った自身の戦術端末に入っている電子生命体である。言葉で意思を伝え合うことはできてもそう物理的に交流を交わすことはできないので歯ぎしりの音でこちらの憤慨を表現するしかない。
『そう怒ることはないじゃんか~。こうでもしてあたいがそう物騒なばかりの代物じゃないんだってことを知って欲しいんだからこれぐらいは許してよ☆』
「被害を食らうのは俺じゃねえか!つうかそんなのただの盗聴としてしか処理されねえよ誰も得しねえよ!こうなったら無理やりにでもデータを消去して……!」
『へっへーん、そうされてたまるかとプロテクトをかけておいたもんねー!それにもし消されてもすぐに複製データができるようにも細工しておいたし諦めて頂戴な!』
「なんも誇らしくねえからなおい!ああもうちっくしょう本当にパスワード入力とか余計なことしてくれやがって!これ絶対に俺が決めているコードじゃなくてお前が決めた奴だろ!!」
『たっのしいな、たっのしいな♪人をおちょくるのはたっのしいな~♬』
電子生命体様はローガンが頭を抱えていることでご機嫌の様子である。悲しきことかな、状況的に四面楚歌に近い状況で誰にも助けを求められない。オアシスはもちろん、それぞれの理由を持ってチクる気満々のバルソクとG11にトラブルの発端であったハルカはそそくさと部下たちを勇気づけているのでローガンの救済者は誰もいないのは明確だ。
どうにか音声データを消去しようと端末で悪戦苦闘していたが、望んでた結果は得られないとして諦めざるを得なかった。溜息を吐きながら項垂れ、画面を最初の『ヘビータンク』に戻したところでふと気付いた。
「話題は戻るがオアシス。こんな強化服が開発された理由だが、これって単純に鉄血やE.L.I.Dとの戦闘を主目的に置いて開発された、って考えていいのか?」
『……そう思いたいけどどうだろう。正規軍が相手取る敵がこっちと全て同じとは限らない。その二つだけじゃなくテロリストだとかの反政府組織という名の集団はいくつかあるわけだし』
「これは俺の嫌な妄想だが、戦術人形との戦闘を重点にした兵器じゃないか?戦闘用強化服で対鉄血兵、そんなテーマはあくまでカモフラージュで、グリフィンが統率しているI.O.P製の人形をターゲットにしている、という可能性は?」
これといった大きな根拠はない。ローガンの推測だって技術は日々進歩しているのだから、白兵戦による大規模戦闘を有利に働かせるべく開発したと言われてしまえばお終いだ。
だがもしもの話、これの開発目的が自分達が最初に思い浮かべるのとは別のところにあるのだとしたら。
『ない、とは言い切れない。政府側の彼らがグリフィンを対等に見ているのかというとそうとはあまり思えないし。人々の生活の確保だとかの仕事を委譲されてはいるけど、それは
「……そうか。とりあえず今はそれでいい。CIAの連中に鉄血、それにゾンビ共に見つからずに抜け出すというのは至難だがここから脱出しよう、休憩は終わりだ。お前のデータを元にした先のことの推察とかはまた今度にするしかない」
こんな暗く汚れていて状況的には芳しくない現在ではなく、確たる情報をちゃんとした場所で整理できるようになるまではするべきではないとして、立て掛けていた『AK-74』を手に取る。
目的を達するまでの手段、それに必要な思考と意識はクリアで体力と気力も尽きていない。地獄を見させられて、その中を潜らなければならない、切り拓かなければならない経験はこれまでにも幾らでもあったことでありこれぐらいであればまだ生温いと言える。頼れる武器も道具も何一つなかった時に比べれば、まだ希望はある。
今一度区切られている扉を少しだけ開けて外部を聞き耳を立てながら確認。どこか遠くの方から銃声が聞こえはするが近隣にいない。
そこでローガンは振り返って他の面子の準備が済んだか、視線を外から内へと移すと皆が銃を持っては隊列を組みなおしていた。
「こっちの『燃料』補給も終わった、行けるぞ」
「ワタシたちの方は言わずもがな、だ。まだビキビキ来てはいるんだがな」
「んじゃそれは敵にぶち当たった時に解消してくださいな。俺はサンドバックになるのは御免なんで」
「嫌だよ。帰るときには即座に枕にさせてもらうから」
G11にばっさりと切り捨てられたところでローガンは顔を顰めたものの、自分に何ができるのかわかっていないのでどうしようもないとケリをつける。後のことは生き残れたという結果を確定させた後で考えればいい、と未来の自分に放り投げて外に出ようとした。
しかしその瞬間、数十分前まで肌で感じていたどす黒い悪意のある空気が刺さった気がした。冷たく鋭利な刃物の切っ先が毛穴の一つ一つに入りこんで体の内側から傷つけてくる、そんな比喩が咄嗟に浮かんでくるぐらいなまでの殺意が向けられているようで。
咄嗟にローガンはその主を目による索敵で探ったがサングラスのHUDにはそれらしい人影が見当たらない。
「ローガン?」
「ちょっと待ってろ……」
一人でゆっくりと外部に身を晒してみると『負』そのものを全身で感じ身の毛が逆立ち鳥肌になった。ここ地下三層目であればこの下ほどまだ死臭は薄く常時プレス機に負荷を掛けられている気はしなかったはずだ。ここからローガン達の目の前で犠牲が出てきて予断を許さぬ状況になったものの、ここまでこの場に留まるの拒否したくはならなかった。
であればその原因はなにか。違いを生じさせている原因の特定を行うのなら目についたりする物を元に一から辿っていくのではなく、過去と現在で比較をする方が手っ取り早い。環境、位置、そして敵と洗いざらいに全てを比べてみて今回のケースに該当する『違い』を絞り込んだ。
(強化服部隊のCIAが原因、だとしてもこうも明確に殺意が来るわけない。じゃあ別の何かが……?)
あくまでローガンは兵士であって超能力者ではない。この嫌な雰囲気というものは自分の思い込みによる影響の可能性が大きい。それでも他人の悪意を歳が十代になる前から日常茶飯事で向けられていたので人一倍に敏感になってしまっているのだから無視はできない。心臓を鷲掴みにされるような恐怖感、という偶に読んでいる小説にあった表現はこういうものなのかもしれないが読者である限りは、それが執筆者の実体験であるかどうかなどは知る由もない。
目星を利かせて周囲を見渡した瞬間、異変が起きた。
ボコリッと肉が泡立つような音が聞こえたのでローガンは音の発生源である目の前にフラッシュライトを当てる。全神経を総動員させて目を凝らしてみると、そこにいたのは一体の鉄血兵だった。全身が白と黒の二色で統一されていて近未来的なヘルメットで頭部のほとんどを覆っている、戦場で見かけるヴェスピドタイプ。だがなにかにもぎ取られたように両腕を始めとして身体の至る所がない。
それが一歩ずつ歩いてくるのでローガンは『AK-74』を構えたが、その鉄血兵は襲い掛かってくることなくうつ伏せに倒れる。不意打ちで急に動きだすことはないか、恐る恐る近付こうとした時、倒れたヴェスピドが来た方向から足音が響いた。
「……あ~あ~……まったくよぉ……手下の奴のモジュールをもぐことになるとは思わなかったっ。同類を殺して自分の血肉にするっ、こういうのをてめぇらはなんて言うんだったかなぁ?」
聞き覚えのある声ではあるがノイズが酷い。まるで十分な修理もせずに繋げ、出力させたスピーカーから出た音声のように掠れてブツブツと雑音が混じっている。それでも誰がそこにいるかなど、ライトを照らして確認する前にその者の名がローガンの口から出た。
「……エクスキューショナー」
「あぁっともうちっとここを弄れっば……っとこんなもんか」
ガチャリッと何かをはめ込んだ鉄血兵が暗闇から姿を現す。ガチガチとサイズがあっていないように見える腕を鳴らしながら首元を摩った次に、目元と耳に機器を押し込んでは調子を確かめてはもう一度外してはまた押し込む。その動作を終わらせた鉄血のハイエンドモデルの一体、エクスキューショナーが内部機関や骨格を体の半分以上も露にしながら言った。
「そんじゃ第四ラウンドといこうぜ、ローガン・ブラック。『狼王』だかなんだか知らねえが、確実に皆殺しにしてやるよ」
人間、欲が前面に出ているとやっぱり望んでいる代物って来てくれたりはしないんでしょうね。この間地元のボードゲーム喫茶というものに行って来て色々なゲームをしてきたのですが、欲しいカードを思い浮かべているとやっぱり来ないものだと思いました。それで一緒に来た友人の一人が『自分はリアルの運命力は良い方なのですが、スマホゲーとかの方は高くないんですよねぇ』とか言ってました。この友人とは私と同じゲームをやっていて、新しいガチャが来れば一緒に引いてたりもする仲で結果を見せ合ったりしているのですが、たしかに彼女の言う通り私のと比べてみると『……うん、ドンマイ』としか言いようがないものだったんです。が、その日のボードゲームでは良い手札を多く引き当てたりとしていて、確かに運命力が極端に割り振られているのかもしれないと感じました。……え、私?多分ですが私自身はその逆かもしれません。や、必ずしも最高レアリティのキャラを引き当てているわけではないのですが、その友人にわかりやすく妬まれるぐらいにわりと高い可能性で来ちゃってたりしています。だから反逆小隊の二人を先に揃えた時に私は殴られたわけです、はい。
とりあえず今回はこの辺で。あと二話程度で終わらせられるかな――――――