魔女兵器†希望の光   作:天流

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ふ、筆が進んだ気がした

しかし短い
まだだ、まだ動けよわたしの筆ェェェ


Part.3 虚幻不実の真相

女性に案内された喫茶店は小綺麗で、空調も聞いていて快適な場所であった

 

「……あのぉ……」

「…………」

 

バットを持った黒髪の美少女、坂井 蓮(さかい れん)は目の前の目を閉じた女性の沈黙にソーっと声をかけた。

正直混乱気味である、朝目覚めると女の子になっていて、夢の中で戦闘したかといえば微妙だが、例の青バットが枕元近くに立て掛けられていたのだ。

しかし、手掛かりのありそうな研究所は気前のいい警備員のおじさんに帰される始末、途方にくれて帰ろうとしたところ

 

(この人、何で俺が男だとわかったんだ?)

 

一目で看破してきた女性に蓮は疑問を抱きつつも、女性の奢りと言われてから注文したオレンジジュースをチューっとストローで吸う。

控えめにいっても、…てか可愛いんだろう。

男としては嬉しくないけど、少なくとも今は女の子のはずでバレるわけないのにと蓮は思いながらも、そっと女性の外観を観察する

 

(それにしても、この人モデルみたいにカッコいいよな…まつげ長いし、眼は鋭かったけどエメラルドグリーンの瞳で凄い綺麗だったし、皮ジャンのヘソ出しとか……

なんていうかアクション映画の主役級にでてきそうな……意外とそうだったりして)

 

適当に女性の正体を連想しながらも答えは出そうになかった。

でも、尚更声を掛けられる理由が分からない。と蓮が諦めてうへぇーと机に突っ伏しそうな所、件の女性ー咲耶は眼をスッと開いた。

 

「ーすまないな、私も考えを纏めるのに必要だった」

「あっ!?はい!………考えですか?」

「あぁ、………私としても何処から話せばいいか分からんが…」

 

咲耶は顎に手を当て思考をすると、再び蓮へと目線を戻した。

 

「そうだな、私が君を少年だと思った理由ーあの時私も研究センターに居たとしたらどうする?」

「!?ッッまさか覆めーー」

「なわけないだろうっ……それなら君は今頃口封じされてるさ」

 

咲耶に呆れ顔でバッサリ自分の発言を切られて、あっ…そうかと頷いた蓮は自身の浅慮さに恥ずかしそうに顔を赤くしながら頰を掻く。

蓮が落ち着いたのを見ると、咲耶は同じく注文したアイスコーヒーを軽くミルクだけかき混ぜて口に含み、周りの様子を確認しながら呟いた。

 

「周りからは不審に思われかねん、静かに話すぞ?」

「………はい」

「フッ、そう肩を硬くするほどじゃなくていい。

ー簡単に言えば、私は君が少年の時、覆面に蹴り飛ばされるところにちょうど出くわしたー共通点はバットと男口調ぐらいだが…研究センターに来た時点で確認する必要はないだろう?」

「お姉さんも研究所に!?」

「………それなんだが、私も元男なんだ…」

「えぇ!?」

 

衝撃の事実に蓮は口をあんぐりとあけるが、咲耶も肩をすくめるしかない

現状解決方法がない以上諦めるしかないだろうと顔で語っていた。

 

「話を戻すぞ、…で私としては君が蹴り飛ばされる前に助けたかったが、丁度バットで返り討ちにあっていてな。

…普通銃を持った相手にバットだけで殴りかかるとか正気とは思えんが……」

「いやゲームみたいにいけるかなって、……マリルさんも普通に倒してたし」

「お前は何処の超能力少年だ………ッ!?…他に人がいたのか…

ーマリル?……マリル・フォン・ブラウンか …!?」

 

蓮から思わぬ所で出た情報に、静かに驚きを表す咲耶だったが、話を蓮に首で促し

蓮もこくりと傾いて話し出す。

 

「うん、…俺もいきなり研究センターでマリルさんに会って、覆面もマリルさんが拳銃を奪ってささっと倒しちゃって、壁際に蹴飛ばしたというか」

「それは…手慣れてるな、本当に科学者か怪しいものだが……私も大学の関連で彼女の講義の補助人員程度に来る予定だったんでな」

「そうなのか?…あっ!いや、そうなんですか?」

「無理に敬語にしなくていい、改めて自己紹介だ、御守 咲耶(みかみ さくや) 21歳でこの付近の大学に通っていた」

「俺は坂井 蓮。新豊洲市に住んでる高校生かな……小さい時7年戦争で両親を無くしてから一人暮らしをしている」

「……そうか、辛いことを思い出させてすまない。まぁ、私も同じ戦争で両親をなくしたがな」

 

ポンポンと優しく頭を撫でてくれる咲耶の姿に、蓮は年上の兄か姉がいたらこんな感じなのかなと心が温かくなった気がした。

 

「それで私の方だが、まぁ……蓮に言っといてなんだが、私も覆面に殴りかかったんだ」

「ッ人のこと言えないじゃん!?」

「……うっ!……まぁ、なんだかんだ二人までは倒したんだが」

「めちゃつよ!?」

「そこまでは良かったんだが援軍の奴に、こうパァーンって胸撃ち抜かれてな。

……まぁ、ミイラ取りがミイラになったってわけだ。

そして出血多量から気づけば辺りは火の海、泣き叫ぶお前を最後に意識を失った。」

 

蓮はあの時の情景が思い浮かんだのか、顔を青くし口を手で抑える。それにいち早く気づいた咲耶は素早く駆け寄り背中を優しくさする。

 

「あくまであれは夢か現時点じゃ分からない……だからお前も研究センターに真相を確かめにきたんだろう?」

 

咲耶はゆっくりと撫で、静かに問う。蓮も咲耶の落ち着いた聞き方と人の温もりに徐々に落ち着きを取り戻すとコクコクと首だけ少し縦に振った。

 

「実はあの時ー「ニャン♪」……そうなんだにゃん♪……ってにゃん?」

「……………。」

 

自然と猫の語尾をつける蓮に咲耶は言葉を失っていた、ただそれは、蓮の可愛さなどでもなく只々目の前の光景に丸くしていた。

 

「どうしたんだよ?咲耶さぁ……うわっ!?なんだこいつ!?」

「にゃん♪」

 

咲耶の様子がおかしいことに気づいたのか辺りを見渡して、蓮はバッと自分の座っていた位置から大きく仰け反った。

そこに居たのは2頭身の人形というかマスコットのような猫である。もう漫画チックなデフォルメをしていて愛くるしい様子だ、手の大きなドクロマーク爆弾を除けば……

 

「ッ蓮!!!」

「へっ?……わっ、「にゃん!!」ーぁぁ!?」

 

思考ではなく反射的にソファからテーブルに素早く飛び乗った咲耶は素早く蓮を軽く手で抱き寄せると空いた場所に向けて跳んだーーー

 

グシャリッ!

重い音ともに2頭身の爆弾を持ったネコーボム猫が振り下ろした爆弾で咲耶達の居たテーブルを粉々に粉砕した

 

「ぇっ!?えぇ!?」

「次から次に何なんだ!?」

 

2人とも驚くが、素早く咲耶は椅子を蹴り上げ、窓側の方に浮いた椅子を蹴り込んだ。

ーガシャァァァーン

硝子特有の破砕音と共に蓮を抱えつつも、猫のように身を丸めて外側へと飛び出すッ

 

「ちょ、咲耶!硝子!?」

「馬鹿かお前は!?周りに人はいない(・・・・・・・・)!!さっきの生物が何かも分からんがな!?」

「人が!?……嘘だ、さっきまで女子高生やPC弄った男の人だってッッッ!?」

 

咲耶は怒鳴りながらも蓮が怪我しないように細心の注意を払いながら、抱えたまま駆け出す。蓮は蓮でさん付けを忘れるほどに慌てて咲耶の言葉を否定するように指差すが、ーーーーー無人だった

蓮はゾッとした……まただ、世界で自分だけが取り残されるような感覚

そんな中ギュッと抱きしめる力を強くされ、急速的に意識を戻される。

無意識に視線を写すとこちらを気遣わしげにみる咲耶の顔が間近にあった。

 

(そうだ、今は咲耶さんがいるーーーもう『1人』じゃない)

「……大丈夫か?」

「うん、…大丈夫!ありがとうッ咲耶さん!」

「追ってきているみたいだ」

 

タンタンタンと小刻みにしかし軽快に街中を駆ける咲耶は呟く、2人して視線を向けるとズドドドと追いかけてくるボム猫が3匹いた。

 

((増えてるし………!?)

 

2人は考えがシンクロしつつ、顔を見合わせるが対抗策などあるわけもない。

 

「ちぃ、キリがない!身体能力は正直いうと上がっている感じだが、正直勝てるかって言われると珍生物だし分からない」

「俺もこのバットぐらいだし………あんな化け猫…………へ?なんかバット光ってんだけど!?」

「ハァッ!?これ以上イベントはいらんぞ!?早く捨てッ………

ちぃぃ!?」

 

蓮の発言にうんざりする咲耶だが、突如横の細道から現れた4匹目のボム猫に驚きながらもキュキュっとバッシュのように靴を鳴らしながら、サイドステップで咲耶は攻撃を回避する

 

ゴシャっ!ー突撃したボム猫は標識にあたるが、パイプがぐにゃりと折れ曲がっただけボム猫は痛そうにしながらも損傷はあまり見受けられない。

そんな中蓮は熱に浮かされたかのようにバットの紋様に触れていた。

 

「れっ!?(無警戒すぎる!?いや無意識か!?)』

「………ぁ」

 

蓮がバットの紋様から手を離した時、変化が起きていた

 

「ん、ようやく出てこれた!!貴女が私を出してくれたんだね!」

「へ?………女の子?」

「どうなって……しまっ!?」

 

いきなり明るいライトブルーの髪色でツインテールの女の子が出てきたのだ…2人が呆気に取られていると油断していた咲耶が突撃してきたボム猫の突進を受け、電柱に激突する

 

「ッガハッ!?……ぁぐぅ」

「咲耶ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「マズっ!?やばい状況じゃん!」

 

コプっと口から血が溢れ、脇腹の痛みに咲耶は顔を歪め、蓮は叫びをあげ近寄ろうとした。

しかしツインテールの女の子が咄嗟に手で静止をかけ、蓮は間にボム猫軍団が集合していることに気づいた

ーー追いつかれたッッ!!

 

蓮は泣きそうだった、このままじゃ咲耶が死んでしまう。

折角自分を唯一知っている存在、兄のような、姉のような存在……

 

「離してくれッッ!!俺は咲耶さんを助けないと!!」

「待って!!今言っても二の舞になるだけだよ!?

私が力を貸すから!言う通りにして!!」

「……ちか…ら?君は一体………いや、頼む!咲耶さんを助けたいんだ『アニー』!!」

「ッッ!うん!いっくよー!その装備じゃ心細いし、ケンカ衣装用意したっげるんだからぁ!」

 

 

ーーー

 

(いてぇ

 

………これ骨折れたか?

 

はは、またかよ。覆面の次はブサ猫か?勘弁してくれよ……)

 

薄れ行く視界、痛みに意識が飛びそうになりながら咲耶はガリッと抵抗するかのように下唇を噛む、血の味がする、ズキズキと痛みと脇腹から下腹部にかけて燃えるような熱さを感じる。

 

(れ…ん、逃げろ……なんでバット構えてやがる

お前だけでも……逃げ……ろよッ)

 

まただ、と咲耶は自嘲しながら腹に触れる、ヌチャリと感触がする

ー腹も衝撃で損傷している、内出血ってレベルじゃないなと何処か他人事のように思う。

 

(なぁ、何してんだよ御守 咲耶

………今度こそ護るって決めてたじゃねーかよ

 

またッッ、またッッッ!!!)

 

護れないのか、そんな言葉が脳裏に浮かぼうとした瞬間

 

『諦めないでください、マスター』

 

「ッッッッ!?」

 

その瞬間ガバッと上半身を勢いよく咲耶は起こした

 

「ぁ?……なんで痛みが??」

「……動かないでくださいマスター、まだ治癒は完治していません」

「!?」

 

痛みを感じなくなってきていること、青い膜に包まれていることに咲耶は呆然としていると、突如降ってきた声に惹かれるように視線を向け、言葉を失った。

 

「ようやく………漸く逢えましたねマスターッッ、…私はシズク……貴方の声に応え参上致しました!」

「………」

 

金の紋様が刻まれた漆黒の修道女服に身を包み、黄金色に輝く糸のような腰までなびく金髪と、燃える紅玉のような瞳の彼女は、とても綺麗だと咲耶は思った。

 

「きみ……は?……俺は生きてるのか」

「えぇ、危ないところでしたが間に合いました!……マスター御命令を!

私は貴方の盾であり刃となりましょうー」

 

雫の白い陶磁器のような手に触れるとクンっと軽く引き寄せられるように立ち上がる、それどころか

 

「これはー?(身体が軽い、傷が癒えたどころじゃない……さっきまででも男の時より身体能力が成長していたのに……力が漲っている、これなら………!!)

ッそうだ!蓮は!?」

「大丈夫ですよマスター♪」

 

ニコッと笑顔を浮かべたシズクが指差した方向を見ると横にフルスイングをしてボム猫をホームランする蓮がいた!!

 

「なっ!?」

「だりゃあああああああああ!!」(カキーン

「ギニャー!?」

「一球入魂ッッスーパーアニーちゃんボォォール!!』(ビシュッ

「ニャゴ!!?」

 

驚く咲耶の目の前で、襲いかかるボム猫よりも素早く蓮はバットで吹き飛ばし、アニーちゃん?と自分の名前を呼称する少女は人外とも言える豪速球でボム猫をボールで場外まで持っていく

そして残されたように落ちてくる爆弾はシズクがサッと手を振り払う事で、右手から先端にペンデュラム付きの鎖が発生し、全てを搦めとるように回収し爆破する。

 

BOMB!!ーーコミカルなアメコミのような音を立てたあと、辺りはさっきまでの戦闘が嘘のように静寂に包まれた。

 

「やった、大勝利!」

「うんうん♪いいスイングだったよ!!才能あるぅ!」

「戦闘終了、損傷なしーマスター、お疲れ様です♪」

「………………あっ、あぁ…」

 

自分が起きた瞬間ピンチがあっさり終わり、シズクの声に生返事しか返せない咲耶に対して気づいたのか、蓮が勢いよく飛びついてくる。

 

「ッと!?……蓮?」

「…しゃくヤッッ、……ひぐっ……よかった………よがったよぉぉぉぉ」

「「……………」」

 

ボロボロと涙を流しながら、強く抱きついて泣き叫ぶ蓮に咲耶は心配かけたなと声をかけ、そっと壊れ物を扱うようにそっと抱きしめ返し、このピンチを助けた謎の2人は暖かい眼差しで見守るのだったー。

 

 

 

 

ーーー暫くして、蓮も落ち着いて恥ずかしくアニーの後ろに隠れたところ、2人はアニー達から説明を聞いていた。

 

「………は?魔女?」

「そうだよ?もう一度自己紹介!私はアニー・バース……蓮達は特別なんだよ」

 

蓮は訳がわからないとばかりに、青いハート模様のあるファーコートをきたライトブルー色のツインテール少女アニーは八重歯を見せながら人差し指を立てた。

咲耶もそんなアニーの言葉に先程の出来事を思い返しながら、隣の女性に確認の為に尋ねた

 

「あーー、うんシズク…だったよな?」

「はい!マイマスター♪」

「あ、いや君みたいな可愛い子に言われるのは私も光栄だが、マスターはやめてくれないか

?」

「では……?咲耶さん?」

「うっ!/////

あ、あぁ……それでいい////」

 

流石にシズクみたいな大人びた同年代の雰囲気を感じさせる女性に話しかけられると余裕も崩れる咲耶だった。

 

「えと……それで魔女って異質物研究の『魔女』だよな?……実在したのか」

「仰る通りです、咲耶さん。私達は魔女と呼ばれる神秘の存在で異質とされますーそして此処も今や、現世とは隔離された異質の世界」

「…………異質…つまり人がいないのはその境界線内にいる、又は取り込まれたからということか?」

 

情報をシズクから聞いて咲耶が整理していると、蓮が手を上げて疑問の声を上げた。

 

「じゃあさ、さっきの化け猫倒したじゃん?なんで此処にまだいるんだ?出る場所があるのか」

「確かにな……2人とも何k「その必要はございません」ッッ!?」

「咲耶さん!」

「「えっ!?」」

 

いきなり聞こえた第三者の声にバッと咲耶は周りをいち早く見渡し、背後をかばうようにシズクがすぐに構えて移動する、戦闘慣れしてなさそうな蓮とアニーはおろおろしながら周りをキョロキョロするばかりだ。

すると隠れる気がないのか、声がしたところに淡い光が舞い、そこから豪奢な着物を着た濡羽色の髪に絢爛とした髪飾りをつけた女性が現れた。

 

「突然驚かせてすみません、人の子よ

私の名は月讀命(つくよみのみこと)、月夜見尊とも呼ばれますがーー日本三大主神の一角です…』

「………なっ!?ツクヨ……ミ?あの日本神話の」

「か、神………さまってえぇ?えぇぇぇぇぇぇ!?」

「すっごい綺麗ー!」

「アニーさん、そこじゃないかと………」

 

三者三様というべきか、それぞれの感想が並ぶ中、ツクヨミは紅い瞳を細め、静かに話し出す。

 

「私が此処に現れたのはお告げの為」

「お告げ……?」

 

年齢的にも代表して、咲耶が前に出て聞き返すと、ツクヨミは左様と頷く、

 

「私が訪れたのは主神の中で自由が効きやすい身だからです、人の子よ

 

ーーー今のこの世界をどう思う?」

「ど、どうと言われてもな…』

「質問を変えよう……何があった?」

「ーーーぉぃ、まさか………嘘だろ」

 

流石の咲耶も可能性に思い至り、顔を青褪める。

蓮達も、シズクを除いて不安そうな表情で咲耶とツクヨミを交互に見る。

 

「な、……なぁ咲耶さん、一体どうしたんだよ」

「………蓮、私達は……いや俺達はあの地獄の光景を見たよな」

「ッッ!?………咲耶さん、まさか」

「あれが現実に起きた可能性が限りなく高い………」

「ま、待ってくれよ!?それなら俺達が今生きているこの世界は何なんだよ!?」

「其処ですよ、人の子よ………そなたたちは生きている………

 

否、ーーーーそれは真実であろうか?(・・・・・・・・・・)?ーーーー」

 

スゥっと射抜くように細められるツクヨミの目線に蓮は腰をぬかしアニーはそんな蓮を心配そうに支え、咲耶も沈痛そうに黙る。シズクはただだんまりと咲耶に寄り添うだけだ。

そんなシズクにツクヨミはチラリと視線を定める

 

「そなたは何故落ち着いておる?…何か理由があるのであろう?」

「私は………」

 

シズクはキュッと咲耶の手を両手で握りしめて、ツクヨミを真っ向から見返す。

 

「私には記憶がございません、あるのはシズクという名前だけ……咲耶さんの強い呼声に惹かれ、消えそうなのに熱く、眩く点滅する星に惹かれた魔女です。

私がすべきことは咲耶さんを助けること、そのことに意味があると思っておりますー!」

「……なるほど、定めとでも申すか。………人の子よ、この世界は滅びた……………と言えるかは分からぬのです」

「「「え?(何?)」」」

 

ツクヨミは黒い扇子をバッと広げ、軽く扇ぎ、虚空を見つめる。

 

「私は夜之神、

月が交差するのをずっと見届けてまいりました。しかし異質物なる物は私が産まれ落とされる前から存在しております…」

「ーーーー。」

 

 

ツクヨミは呟き終えると、パチンと扇子を閉じ、咲耶達に先端を向け言霊を紡ぐかのように厳かに言ったーーー

 

 

人の子よ………

探しなさい……此の虚構世界ノ真実ヲ

探しなさい……此処ヲ此処足る存在をーーー

 

ー絶望しようとも

ーー先が見えなくなろうとも

ーーー避けてはなりませぬ、潰えてはなりませぬ

 

アァ、人の子よ…愛しき子達よ、妾が照らしましょう

天照様が表を照らすならば

妾は暗路を照らして活路へと変えましょう

 

………日ノ本の神々は動いております、私からの神託は以上ですが

また因果の果てに会うでしょう………」

 

ザザッ、とツクヨミは影に消えるように姿が乱れていくと

やがて静寂から喧騒が舞い戻った……

 

都市部の工事音、車の走る音、活気ある人の声

いつもの(・・・・)日常風景だ

 

「………虚構世界の真実、……あの日、あの時ナニカが世界を変えた………変わった」

「探さないと………此の世界で真実を知る俺達がッ!!」

 

 

雲一つない青い空、しかし何処か遠くを見つめるように2人は睨みつけるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました!
ついに私登場です(名前は

今回活動報告にかいたとおり、かなりオリジナル強くしてます
今後も私の世界観にお付き合いいただければ嬉しいです!

2019/5/25
思い出さして→思い出させて。誤字修正いたしました

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