Fate/reselect 作:Fate/reselect出張所
ふと気がつくと、佐藤は見慣れぬ神殿の前で立ち尽くしていた。
太く堅牢な柱が並び立つその神殿を見上げる、空は雲ひとつなく、ギラつく太陽は柱をより白く輝かせていた。
佐藤は突然鳴り響いた背後の轟きに肩を浮き上がらせ、振り返った。神殿の前にはテレビでしか見たことのない石造りの都市、地鳴りのような音はその遥か向こうの地平線からだと思われた。
佐藤は何となく、この景色が古代のギリシャのものであることを理解した。そして、間もなく壮絶な戦いが始まるのだろうということも、確証もないままに理解できる。
佐藤はジッと、敵が来るであろう地平線を見つめていた。すると、その横を一人の少女が通り過ぎていった。少女は、背後に迫る敵を他所に決然とした振る舞いで神殿内へと歩を進めていく。
「……マカリア」
その言葉、彼女の名前を自分で言ったのだと、佐藤は言葉の後に気がついた。佐藤は振り返り、その美しい少女を呼び止める。
「何も、そなたである必要はないんだ。神託では生贄は女性というだけで、君を名指ししている訳ではなかった」
「ならば、私であっても良いはずです。他の……この都市に住まう、罪のない娘達でなくとも」
少女――マカリアはゆっくりとこちらへと振り返り、苦しげに言った。
「これ以上他の誰かを犠牲にするのが、私には耐えられない……」
「マカリア……」
「私は兄上達のような力はありません。しかし力及ばずとも、困難に挑む権利は誰にでもあるはずです。例えこの身を捧げることであっても、力なき私にとっては崇高な戦いなのです」
馬鹿者め。佐藤は呟いた。マカリアは、続けてこう告げる。
神々の思惑によって始まった戦いに勝つ為に、冥府の神への生贄に自ら名乗り出る。それでは、まるであの男のようではないか。神々に翻弄された彼女の父、あの非の打ち所のない大英雄の人生と……。
だが、彼女の勇気を否定する訳にはいかない。否、したくはない。
「……ならば私を、そなたの犠牲をもって誓いを立てようマカリア」
佐藤はマカリアのそばまで歩み寄り、跪いた。
「我が心は永劫に、そなたと同じ血が流れる者の味方だ。例えこの身に何があろうとも、私はその者らを守る為に力を尽くそう」
その言葉にマカリアは少し顔を緩ませ、頭を下げた。
「皆を頼みます……我らの導き手」
イオラオス。
その言葉を聞き遂げ、佐藤の視界は揺れ、暗がりへと落ちていった。
佐藤はゆっくりと、目を開けた。すでに正午まで寝過ごしていることが、身体の調子から分かる。
寝すぎのせいか、若干の頭痛に呻きながらベッドから佐藤は身を起こした。はだけたパジャマを直していると、ライダーが静かに実体化してきた。
「おはよう、嬢ちゃん」
「ライダー……ごめん、休みだからって寝すぎた」
「戦争中にそれだけ眠れれば大したもんさ」
「そう……かな」
そう言って笑うライダー……真名、イオラオス。
あの夢は、彼と関わりのあるものだったのだろうか。マカリアがこちらに向かってイオラオスと呼んだ以上、あの時の私がイオラオスだったのだろう。
彼の経歴はネットで軽くは調べた、彼は英雄ヘラクレスと共に多くの戦争や困難を乗り越えている。あの光景も、そのうちの一つなのかもしれない。しかし、なぜ自分がそんな光景を夢に見たか、それが分からない。
聖杯戦争、伝説に生きた英雄を現世に召喚し最後の一組になるまで戦う儀式。その勝者には、あらゆる願望を叶えられる聖杯が与えられる。
そんな戦いに不意に参加することになった佐藤には、未だ勝った後のビジョンも、願いも思い描けていない。強いて言えば、自分に何ができるか、何がしたいかを探していると言える。
しかし、その相棒たる彼はどうなのだろう?
「……ライダー、ちょっと聞いて良い?」
「ん? 何だ、急に」
「貴方は聖杯を手にしたら、何を願うの?」
その言葉に、ライダーは面食らったように目を開いた。しかし、考えるように首を曲げると。
「大した願いはねえかな……」
勝ってから考えるさ。と、笑い飛ばす。
その回答に、佐藤は嘆息した。夢のように、彼は素直ではない。この様子では、夢の内容を話してもはぐらかされるのがオチだろう。英雄の本心を見抜くには、私はまだまだ小娘といったところか。
「……今日の嬢ちゃんは、何だか哲学者だな」
嘆息する佐藤に、ライダーはぽつりと呟いた。
誰のせいだと思っているのだろう。佐藤は脱いだパジャマをライダーの顔面へと投げつけた。
「言われて? ちょいとこっち専念して? それでランサー達が見つかりゃあ苦労しねえっての」
アホくさ。と、バーサーカーは鼻で笑う。その態度にムカつき、レオポルディーネは彼の脛を蹴り飛ばした。
「うっさい! そう上手くいくなんて……お、思ってなかったわよ!」
「はー、はー、そうかよ、ふーん」
大して痛がる様子もないバーサーカーはそう流し、缶ビールを片手にぼんやりと空を見上げる。その様子に毒気を抜かれ、レオポルディーネも視線を駅前を行き交う通行人に戻した。
レオポルディーネとバーサーカーは、日坂駅の前でランサーとそのマスターの姿を探していた。はたから見れば、小柄で上等な衣装を纏うイタリア人と、野暮ったいジャージとサングラスを引っ掛けた二メートル近い大男だ。その格差も相まって酷く目立っていることだろう。
鏡宮から命じられ、ランサーのマスターが持つ『欠片』とやらを追って二十四時間が経過していた。すでにバーサーカーは今の仕事に飽き、レオポルディーネもまた、この探索が不毛だという感情に囚われつつある。
「だいたい、この街にゃ人間が何人いるんだよ。増えすぎだろ人類、アホか。千年間ずっとお盛んしてたのか」
「人類の繁栄に、なんてケチを……でも、駅前に張り込んで見つかるような相手でもないのは、身をもって分かった」
「なあ? 俺の言った通りじゃねえか」
バーサーカーの言い草に苛立ちを覚えたが、全くもってその通りだったのでレオポルディーネは脛を蹴りつけたい気持ちをグッと堪えた。
ランサーのマスター、読水竜也の経歴は確認してある。
世界中に広がる亜種聖杯戦争の渦により、秘密裏に、そして確実に、魔術礼装や触媒を自身の工房に取り寄せることへの需要が高まった。それにより半ば必然的に生まれたのが、運び屋という存在だった。
敵は世界中の魔術師の目で、情報の漏洩を防ぐ為に雇い主にさえ殺されかねない。読水という男は、そんな死と隣り合わせの世界で五年間も生きているという。魔術師としては二流、三流であっても、隠れること、逃げることに関しては一流のプロだ。
片や自分、レオポルディーネはどうだ? そんな一流を見つけられる手段を持ち合わせているのか。答えはNOだ。
「……探知用のルーンは街中に配置しているんだ。連中が大きな動きを見せたら即座に察知し、追うことはできる」
聖杯戦争が正式に始まったのは、三日前のことだ。しかし戦争の準備はそれより以前に為されている。
この日坂市に拠点を置いたレオポルディーネは、この街のいたる所に探知用のルーンを刻んだ。ランサーと交戦した時も、ルーンの一つが彼らの戦闘を察知したからこそ工房から抜け出たのだった。
「レオよお、それまでは寝て待とうぜ?」
「レオって呼ぶな」
そう噛みつきレオポルディーネは唇に指を当て、バーサーカーの提案について考慮してみる。しかし、すぐに首を振った。
「……ダメね。仮にそれで探知できるとしても、向こうが動くって保証がないもの」
「そうでもねえ。俺達を含め、いい加減あっちこっちで動きが出てくる頃合いだ」
バーサーカーの言葉に、レオポルディーネは怪訝な顔をする。
「そう上手くいくものかしら」
「新選組、つったか? あのサムライ共は良い仕事したぜ。あれが口火になった……上手くも下手もねえ、もう誰にも止められねえんだ」
バーサーカーはそう言って、顔を伏せる。その口端は釣り上がり、犬歯を覗かせていた。掛けたサングラスであっても隠せない戦いへの愉悦と狂気が、そこから伺いしれた。
「欲をかく、本性を表す、方針や信念を揺らがせていく……人間は混沌とした戦いの中で口当たりの良い台詞を吐いて、身を狂わせていくものだ」
「……読水竜也も、そうするってこと?」
「野郎の顔を、俺はこの目で見ている。奴は恥も外聞もなく逃げる野郎だが、誰より聖杯を求めている……貝みたいに、篭ってはいられねえはずだ」
そういうものか。レオポルディーネは一瞬納得しかけ、慌てて首を振った。戦場で身を狂わせる、その最もたる存在はこのバーサーカーじゃあないか。
もっともらしい言葉で人を駆り立てつつ、そんな理性も一度戦いが始まるとボロボロとメッキのように剥がれていく。それがこの英霊だ。
ならばこそ、自我をしっかり保たねばならない。手綱を握るのは、マスターである自分であるべきなんだ。
「じゃあ、私達も動くに越したことはないじゃない」
「じゃあ帰って、どう鏡宮の鼻っ面へし折るか検討し……」
「そうじゃない! 鏡宮にサボっていると思われないよう、せめてこうやって出回るって言ってるの!」
そうかよ。と、バーサーカーは面倒臭そうに溜息をつき、歩き出す。
「あー……聖杯が寄越した知識にゃ、そういう保身はサラリーマン根性って……」
「保身!? 上等でしょッ! こちとら現代人だ、この中世人ッ!」
レオポルディーネはそう叫ぶとバーサーカーを追いかけ、その背中を殴った。その硬さに手首が内側へと曲がり、激痛で彼女は泣き叫ぶ。
その光景は、駅で何よりも目立っていた。
夕刻、シュウジは山の麓に来ていた。
山に沿うように作られた道路。都市部の方へは住宅地が広がるが、その逆、シュウジが見つめている山の方面には何も建てられてはいない。生い茂った草や石ばかりが転がる、空き地となっている。
人の住まう土地と、放置された土地を隔てるアスファルトの道路。それはどこか、境界線を思わせた。
「……ここか、シュウジ」
シュウジの横でセイバーが実体化し、聞いた。
「お前が言う、始まりの場所というのは」
シュウジは静かに頷き、空き地へと足を踏み入れる。
「ここらにも、本当は住宅が何軒も建っていた。私の家も、そのうちの一つだった」
だが十年前、それらが土砂で潰された。
シュウジはそう言うと、屈み込んで土を手で掬い上げた。
「ちょうど、これくらいの時間だったな。部活帰り、幼馴染の子と何の心配もなく帰路についていたのに……突然地面が揺れたんだ。物凄い音がして、目の前が真っ暗になった……」
「……シュウジ」
「気がつくと、グチャグチャになった木切れの上に横たわっていた。何が起きたか分からなかった……もう空は真っ暗で、土砂にから煙と炎が出てきて、なぜか泥塗れの幼馴染が抱きついてるんだ」
シュウジは無感情に言葉を重ねていたが、やがて顔を歪め、掬った土を握り締め、せきを切ったように声を荒げる。セイバーは止めようとしたが、その剣幕に言葉を詰まらせた。
「……俺、あいつが守ってくれたんだって、土砂崩れが起きたんだって分かった……周りから聞こえるんだ、助けて、怖いって小さな声や悲鳴が、足元や地面の中から……ッ! あいつ、まだ息をしてた! でもどんどん息が弱くなっていくんだ! 何とか助けようとした! 必死に声をかけながら、あいつを抱えて這い回って……! でも、助けてくれる人も、あいつの下半身も……どうしても見つからなかった……」
助けられなかった。シュウジは絞り出すようにそう締めくくると、握り締めて固まった土を足元に落とした。
「……それから、奇跡の子扱いされた。少しして、病院に聖堂協会が来た。俺が神から力を授かったとか、後天的な魔術回路だとか……奴らが何を知ってるんだッ!? なあッ!?」
シュウジは振り返り、噛みつくようにセイバーへと詰め寄った。
「奴らはあいつが何もせずとも、俺が助かったって言いたいのか!?」
「………」
シュウジは荒い呼吸を続けていたが、やがて黙り込むセイバーから顔を晒し、深呼吸をして自身を落ち着かせていった。
「すまん……どうかしていた」
「気にするな」
セイバーはそう言うと、彼が冷静さを取り戻すのを待った。人の営みによる音も遠い山の麓、二人の間に静かな時間が流れていった。
「……聖堂協会が言うには、私の体には後天的な魔術回路が埋め込まれているらしい。それは正に、神からの贈り物だと」
シュウジはゆっくりと、そう切り出した。事故の後、沢尻周路としての人生を捨てて代行者となったシュウジは、それが現在の魔術ではありえない、それこそ魔法と呼ばれるような現象であることを知った。
「俺は聖堂協会に言われるままに、代行者になった……だが私はそもそも、神を信仰してはいなかったんだ」
だから、偶に信じられなくなる。シュウジはそう言って自分の手のひらを、浮かび上がった令呪を見つめた。
「本当にこのままで良いのか……私がやっていることは、創造主が私に力を与えたのは、本当に正しいことなのか……?」
「………」
「教えてくれセイバー……レコンキスタの騎士、エル・シド。私達が神に仕える剣なら、その騎士道とは一体何なんだ? 騎士道や信仰に縛られて、戦って、本当にそこに名誉や栄光があるのか?」
セイバーは顔を伏せ、しばしの間黙ったが。
「神の意思を真に理解できた者など、この世にいない。だから人は、祈ることしかできないんだろうな」
そう告げると、騎士道をこう断言した。
「騎士道とは、戦いを『何でもあり』にさせない為に共有した戒律であり、美学にすぎないさ。名誉や、栄光も、その有り様を讃えたもの……騎士道の本質じゃあない」
その言葉を、シュウジはゆっくりと飲み込んだ。そして、ボソリと口を開いた。
「……じゃあ、なぜそんな重苦しいものを守る必要がある?」
「必要は……ないのだろうな。言ってしまえばそれは、下らん意地や見栄だ。ただ、覚えておけ」
セイバーはシュウジの肩に手をおき、こう諭した。
「真の強者とは、自身の正義や美学を守ったうえで戦いに勝てる者だ。お前は強い、下らん意地や見栄に悩める自分をもっと誇れ」
「………」
しばし霊体化している。と、セイバーはマントを翻した。
「前にも言ったが、道はお前自身で考えた方が良い。自分の正義や与えられた使命であれ、その力を奮うのも、結果に苦しむのもお前に他ならないのだからな……」
俺のようになるな。そうセイバーは慈しむように告げた。
「………ッ」
夕日に煌めき、霊体となって消えるセイバー。その背中に、シュウジは黙って頭を下げた。それは感謝と言うよりは、自身の信念と思い、信仰をもって剣を握る強者への敬意であった。
そしてゆっくりと顔をあげたシュウジは、夕日が落ちる時までずっと、赤く照らされた始まりの地を見定めていた。
河川沿いにある、開けた空き地。そこにアレクシア・ブロッケンはいた。
薄着の女――ミア・ブロッケンは歩道から下り、一斗缶を使って火を熾している彼女に小走りで駆け寄る。彼女もミアの存在はすでに気づいているだろう、だが振り返ることはない。彼女はどこから拾ってきたのか、錆びたパイプ椅子に腰掛け、揺らめく炎を見つめている。
時折、これをするのだ。ミアは溜息をついた。彼女なりの精神統一、あるいは趣味とでも言うべきものなのだろう。しかし炎が爆ぜる音、そして何より、燃え上がる炎の明かりとは目立つのだ。できれば止めてもらいたい。
「……ミア、報告は?」
アレクシアは炎を見つめたまま、ミアを促した。横風でチロチロと瞬く光炎に照らされた彼女の横顔を見ながら、ミアは口を開いた。
「学生服から、どこの学校かは特定しました。明日は月曜ですし、私みたいな不良少女でもなければ見つけられると思うっス」
「そう……アダム、いえ、人形の方は?」
「明日やると難しいですねー……死霊術師に任せちゃってますが、明日やるには時間が足りないかと」
その辺、専門外なんでちょっと……。と頭を下げるミアをよそに、アレクシアは考えるように黙ってしまう。
「あのー……姉さん、アダムが守ろうとしていた、例の三下なんですがね?」
ミアは顔だけを上げてみせ、そんな彼女に言った。
「何か、まだ黙ってるんで……何なら遊ばせてもらっても良いです?」
恥ずかしそうな笑みを浮かべて頭を掻くミア、アレクシアはやれやれと首を横に振った。
「死霊術師はいずれ壊れる。その時にはアレと、人形が駒として必要になる。我慢しなさい」
ですかー。と、ミアは頭を垂らした。確かに死霊術師――スティーブ・フォスターをアレクシアが拾ってきた時には驚いたが、今ではその有用性にミア自身助かっている。
聞くところによると彼は聖杯戦争の最初期に失敗し、英霊に斬り殺されたらしい。自身をゾンビ化させ何とか生きているようだが、あのアメリカ人は聖杯の力で生還できると、否、そもそも聖杯の力をアレクシアが微かにでも譲ってくれると本当に思っているのだろうか。ひょっとしたら、体良く利用されているのだと気づける脳味噌さえ、もうないのかもしれない。
ま、あの人形も含め、最期までしっかり使ってやろう。ミアはあっけらかんと、そう結論づける。そしてできればあの少年は、どこかのタイミングで遊びたいもんだと願った。
「……しかし、本当に勝てますかね?」
会話が途切れ、しばしの沈黙を裂いてミアはアレクシアに言った。
「相手は英霊……冗談でなく、マジ者のバケモンですよ?」
「……確証はない。だけど、だからこそやる価値がある」
アレクシアは目を閉じ、ミアの疑問にそう答えた。
「魔術師では英霊には勝てない……魔術師共は、常識のようにそう語る。だからこそ良い、私達が
ブツブツと、まるで呪文を唱えるようにそう語るアレクシア。そしてゆっくりと瞼を開いた時の彼女は、地獄に住む悪魔のように、瞳と唇から覗く歯を炎に輝かせていた。
「そう……この聖杯戦争は、奴らは、その犠牲になる……我々がコロンブス、奴らは打ち立てられる卵だ」
揺らめく炎でチラつく光と影、そこに垣間見える彼女の野心と渇望。そこにミアは、思わず身を竦ませる。
だが、これなのだ。ミアがアレクシアに付いてきたのは、この恐ろしさにあてられたからに他ならない。
悪魔と契約した時、堀井深秋という名前を捨てた。そしてミア・ブロッケンとなった彼女は更に、ブロッケンの魔女でも最も悪魔的な彼女、アレクシア・ブロッケンに付いていく生き方を選んだ。
碌な教育を受けていないミアであっても、悪魔との契約がいずれ破滅をもたらすことは理解している。ならば行く所まで、堕ちる所まで堕ちてやる。この命を燃やして、私を必要としなかった世界の度肝を抜いてやる。この世界が焼ける様を、地獄に堕ちながら嘲笑ってやる。
「……じゃあ姉さん、次はどうします?」
ミアの期待に満ちた言葉に、アレクシアは令呪の浮かぶ右腕を挙げてみせた。
「夜明けと共に、使い魔の猫を放ちなさい……日が沈む頃合いに、ライダーを血祭りにあげましょう」
やっぱ最高っスわ。アレクシアの宣言に、ミアは無邪気な笑みを浮かべた。やはり、彼女に付いていって良かった。
これでまた一つ、このクソな世界に仕返しができる。