Fate/reselect   作:Fate/reselect出張所

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第三十話『日坂聖杯戦争』

第三十話『日坂聖杯戦争』

 

 

 

 その『欠片』には、血塗られた歴史がある。

 中世ヨーロッパで発見されたそれは、見つかった時から既に一欠片の木片でしかなかった。しかし当時からそれは、聖杯の一部である、と伝えられていた。

 

 第二百七十四号聖杯。聖堂協会はその『欠片』を、そう命名(ナンバリング)した。

 

 ヨーロッパ諸国は、この『欠片』を巡って幾度の戦争を起こした。現在では後継者争いとして記されている戦争や謀略の中で、『欠片』は持ち主を変え続けた。

 そうして長い、長い時を重ねて『欠片』はドイツ第三帝国の手に渡った。しかし、第三次聖杯戦争にて『冬木の大聖杯』をダーニック・プレストーン・ユグドミレニアに奪われたドイツ第三帝国は大戦末期、他の遺産を失うことを恐れ世界各地にそれらを秘匿した。

 戦火の火種であり続けた『欠片』は、多くの遺産の中に埋もれるようにして南米へと渡り、欧州の歴史からは退場することになった。

 しかし、『欠片』は新しい聖杯戦争に再び姿を見せる――1992年、南米にて行われた亜種聖杯戦争が開戦、『欠片』はによって、触媒として使用されようとしていたのだ。

 隠された聖遺物を手に入れんという陰謀によって起こった、あるべき規定が無視された灼熱の激戦。そこで『欠片』は、触媒のレンタル業を行っていた野心ある二人の日本人――鏡宮悟と読水奏馬の手に渡ったという。

 彼らはそれから亜種聖杯戦争に関わることを辞め、故郷である日坂市にこの『欠片』を持ち帰った。

 そして2008年12月25日、第八秘蹟会のマリオ・アルバーニによって『欠片』の奪還作戦――『クランプス作戦』が計画、上位組織の聖堂協会の承認を待たずに強行された。

 

 

 

「……しかし、計画は失敗。『欠片』は読水奏馬の息子、読水竜也と共に姿を消した、か……」

 そう呟くと、シュウジはホテルの簡易なテーブルについたまま伸びをした。

 シュウジ達は早朝にウィリアムの死を確認すると、すぐにホテルへと戻り、シスター・セレネントーラから渡されたデータを目にしていた。

 十年前、ここ日坂市で起こったこと――聖堂協会が隠蔽している真実を、調べ上げてほしい。

 かつての同僚からの、無茶な依頼。それを現役を退いたとは言え、死徒を相手取っていた諜報戦のエキスパートのセレネントーラはたった二日でデータにまとめあげてくれた。

 無論、彼女が如何にエキスパートであっても、たった二日でこの情報量を調べ上げるのは到底無理だろう。

 つまり彼女は、事前に調べていたのだろう。あるいは……情報を流している、別の存在がいるのか。

 しかしそれは、考えても仕方のないことだ。今シュウジにとって重要なのは、友である彼女を信じ、情報を精査することだろう。

 それは同時に、マリオ神父――養父との決別、組織への裏切りを意味する。

「………」

 養父の教えに、組織に、この十年に背く。

 しかしシュウジの心は未だ凪いだように静かで、冷たい。

 シュウジは溜息をつき、ノートパソコンから窓へと視線を移す。気がつけば、すでに昼過ぎだ。朝から食事を取らないままランチタイムが過ぎてしまった。

「亜種聖杯戦争としては異例の、七騎揃っての召喚。これで合点がいったな」

 と、そう言うのはソファーに腰掛けてグラスを揺らし、揺れる赤ワインを見下ろすセイバーだ。こちらは疲れた様子のシュウジと比べると、ずいぶんとリラックスしている。

 そんな彼を一瞥し、シュウジは瞼を指で指圧しながらこう続ける。

「彼女の調べによると、この日坂は本来、英霊を七騎揃えるだけの霊脈は存在しないらしい。ということはセイバー、お前が現界できているのも、恐らく……」

 セイバーは肩をすくめ、皮肉そうに笑みを浮かべた。

「聖杯戦争……ハッ、なんてことはない。これも俺が生前、散々見てきたものの一つという訳だ」

 まったく、嫌になる。そう苦笑し、セイバーはシュウジを見つめる。

「それで、お前は何だ?」

「ん……」

「この亜種聖杯戦争が、その第二百何番って聖杯の霊力によるもので、主催者であるアーチャーのマスターも、お前の養父である神父も……あの読水竜也も、十年来の因縁があるのは分かった。しかし、そんな中でお前は何だ? どう関わりがある? なぜ十年前、お前は代行者の任を負えるに足る力を手に入れてしまった?」

「………」

 シュウジは正面に向き直って押し黙り、ジッと手を見る。そして、掌に落としていた視線を、彼は目の前のモニターに、まだ目に通していないデータのフォルダへと移した。

 

 ――『第二百七十四号聖杯、霊力回収と聖杯復元について』

 

 シュウジは答えを求め、静かにカーソルをそのフォルダへと合わせた。

 

 

 

 キャスターと別れてから数時間、佐藤は交通機関を乗り継ぎ、読水達の隠れ家へと向かった。

 佐藤は自分以外乗客のいないバスを降り、徒歩で郊外の古い一軒家へ、読水の隠れ家へと向かう。

 アレクシアに拉致されてから、既に三日と半日。もう読水達があの隠れ家を使っているとは思えないが、しかし佐藤は読水の他の潜伏先を知らないし、あそこに置いたままの自分のケータイを回収したかった。

 あれさえあれば、どうにでもなる。佐藤はキッと通りの奥に見える一軒家を睨んだ。ケータイには、読水の連絡先が保存されている。あれさえ回収できれば、読水に直接会わなくてもアレクシアへの警告を行うことはできるのだ。現代日本に生まれ、不自由なく高校生活を行ってきた佐藤は、ここに来て文明の利器の有り難みを痛感していた。

 焦る気持ちを殺し切れず、佐藤は隻腕の身体に苦労しながら小走りで家屋の手前まで来た。

 そして、途中で気づく。平屋と、その周囲の異様さに。

 平屋の玄関は外され、立入禁止を示すトラテープが張り巡らされている。敷地を囲うブロック塀も叩き割られたように砕けた箇所が見られた。それに、家屋の手前の道路は何が起こったのか、地面が爆発したかのように砕け、未だアスファルトの破片がそこかしこに確認できた。

「………ッ」

 佐藤は確信した。あの後、戦闘があったのだ。

 相手はアレクシアか、またはバーサーカーか。いずれにせよ、相当激しい戦闘だったのだろう。読水とランサーは、無事だったのだろうか。

「あ……読水、さん……っ」

 思わず、口から溢れた言葉。佐藤はテープに手をかけ、破壊された家屋の奥へと入ろうとした。

 その時だった。誰かが背後から佐藤の肩に手を掛けた。

 不意の接触に、佐藤の心臓は跳ね上がる。反射的に、佐藤は背後へと振り返った。

 そこには、野暮ったいジャージに身を包んだ大男がいた。彼はサングラスで人相を隠していたが、サングラスの下には満面の笑みが浮かんでいる。

「………」

「お元気?」

 硬直する佐藤を他所に、大男は煽るように言って、佐藤の肩を強く掴む。そう、まるでもう二度と逃さぬように。

 以前、遠目に見たことがあった。あれは、確かこの亜種聖杯戦争が、本格的に始まった頃であったか。

 佐藤を掴んだ大男は、あのバーサーカーだった。

 

 

 

「あれだけの騒ぎになって、よく無事に帰って来られましたね」

「再配線層の監視役が公然と参加者を襲うなんて、常軌を逸してる。あそこで仕掛けられないのは、向こうも同じだ」

 その頃、読水達は佐藤が向かった場所よりずっと都市部に近い、日坂駅周辺のビジネスホテルにいた。

 数時間前、二人はウィリアムとアレクシアが激闘を行った倉庫で、この亜種聖杯戦争の監督役を務めるマリオ神父と出会った。そこでマリオは読水を挑発し、読水もまたマリオが狙う『欠片』を見せつけたが、結局そこで十年来の因縁に決着がつくことはなく双方押し黙ったまま別れる形となった。

「……そんなことより、今はアレクシアだ」

 読水はそう言うと、安っぽい机に鞄をドスンと置き、身につけていたガンホルダーも外してその脇に寝かせる。

 数時間前、読水はコンテナで、読水家伝来の魔術――辿跡術を行い、戦闘の経緯を探った。

 そうして、掴んだ。ウィリアム・シンがアレクシア・ブロッケンとどう戦ったか。あの天才が、怪物を相手にどんな勝機を見出していたのか。

「あの強大な異形と同化しつつある為に、生命維持だけでも英霊以上の莫大な魔力を必要とする……その魔力源が、まさか召喚術の際に使っていた令呪とはな」

 そして肝心なのは、現存する勢力でこの情報を握っているのは誰か、ということだ。

 アレクシアの弱点を看破したウィリアムらキャスター陣営は、マスター亡き今、聖杯戦争を生き残るのは絶望的と言っていい。そしてどうにかこの世界に留まっているキャスターはこの情報を託せる仲間はいないだろうし、あのウィリアムがこの情報を誰かに漏らしているはずもない。

 そう、アレクシアの弱点と残りの令呪とを鑑みて、彼女が既に起死回生の一手を打たない限りは人知れず自滅していくという事実を利用できるのは、読水達だけということになる。

「散々辛酸を舐めて、今日で十四日目……いや、十年と十四日か?」

 ようやく、運がこっちに向いてきた。と、読水は口端を上げ、笑わずにはいられなかった。

 しかし、準備は怠らない。読水は机の上の鞄を開け、中から鈍い光を放つ銃弾を横一列に並べていく。銃弾は読水が持つ拳銃より遥かに長く、大きかった。

「マスター、その弾丸は……」

「ああ。ホテルで拾った……そんな苦い顔するなよ」

 そう指摘されたランサーは、それでも苦々しい顔を浮かべ、読水が並べている銃弾を睨んでいる。無理もない、彼女は昨夜この銃弾に何度も撃たれ、苦戦を強いられたのだ。

「7.92×94……古い対戦車ライフルに装填されていたのに、弾頭がホローポイントになっているな」

 どうみてもアダムの手製(ハンドロード)だ。読水はそう呟き、苦笑いを浮かべて銃弾の一つを手に取る。

 彼が言うように、銃弾の弾頭部分は先端が尖っておらず、真ん中に空洞が開けられている。これは読水が使っているマグナム弾と同様、銃弾が目標に命中した際に効率良く衝撃が与えられるよう加工されたものだ。

「……流石アダムだよ。代行者相手に効果の薄かった俺のマグナムに対し、しっかりと最適解を残していきやがった」

「しかしマスター、その弾を使うには、銃の大きさが……」

「その点は考えてある……正直、やりたくはないけど」

 ランサーの疑問に読水はそう答えながら、手にした銃弾を手のひらで転がしたり、握り込んだりを繰り返す。

「……でも、用意してきた魔術礼装はほとんど失った。もう、なりふり構っていられない」

「………」

「……ランサー」

「は……はいっ」

「……勝つぞ」

 読水は銃弾を机に置き、ランサーに向き直った。

「聖堂協会相手に大見得切って、確証が得られた……聖杯はとっくに、俺達の手にある」

 そう言って、読水は胸元のロケットペンダントを開け、中に収められている木製の“欠片”をランサーに見せた。

「これからは、俺と、お前と、そしてこの『聖杯の欠片』、この三つを守れ。あのアレクシアが暴れ回って、連中の共食いが終わるまで生き残ればこの戦争……俺達の勝ちだ」

「……はいッ!」

 ランサーの覇気ある応じに、読水は頷く。

 そしてカチャンと音を立て、ペンダントを閉じた。

 

 

 

 カチャンと、レオポルディーネが置いたティーカップが長い沈黙を破った。

「……なるほど。じゃあ、貴方はキャスターと別れて、読水竜也について警告しようとあそこに行った訳ね?」

 レオポルディーネの言葉に、佐藤は頷く。

 バーサーカーに捕まり、佐藤は都市部にある彼のマスター――レオポルディーネ・ミローネの屋敷へと連行されてしまった。そして現在は、レオポルディーネに自身が経験したことと、そしてアレクシアのこれからの行動についての予想を彼女に話している。

 しかし、佐藤にとってこれは予想外ながらも悪くない展開だった。キャスターの考えでは、アレクシアが令呪を狙う相手は現段階で生き残っている参加者の中で比較的に弱い部類に入る読水か、彼女――レオポルディーネだったのだ。

 貴方は弱いから、アレクシアに令呪を狙われるかもしれない。そう真正面から言わず、自白という体裁でバーサーカー陣営に警告できたのは行幸と言える。

「だからミローネさん、アレクシア・ブロッケンにだけは注意してください。アサシンも仲間も失っているけど、彼女は彼女だけで、サーヴァントだって倒せる」

「そう……ありがとう、佐藤さん」

 レオポルディーネは佐藤の言葉に、ニッコリと笑った。しかしその笑顔は、若干引きつっている。寝間着の下に包帯を巻き、ベッドに腰掛ける彼女の容態が原因か。いや、きっと違うだろう。

「っていうか……」

 そして、レオポルディーネの身体が小刻みに震える。いや、それ以前にカップを持つ彼女の手先がとっくに震えていたのに、佐藤は気づいていた。

 いよいよかと、佐藤は口端を曲げて覚悟を決める。

「バーサーカァァァッ! 何で相談もなく連れてきたぁッ!?」

 レオポルディーネは堪えきれないようにテーブルにその小さな拳を叩きつけ、部屋の隅、壁に背を預けて座り込んでいるバーサーカーに叫ぶ。

「……はぁん?」

「Huh? じゃないのよ、このバカっ! 何が警告よ! 人のベッドルームに敵かどうかも分かんないの連れてきてーっ! 首根っこ持って部屋に入ってきた時は正気を疑ったわよ!?」

「狂化E-のバーサーカーだよ……行方不明だったライダーのマスターを確保してやったんだぞ! 文句を言われる筋合いはねえ!」

「文句しかないわぁ! ただでさえ事が上手くいってない時に、こんな不安要素拾ってくんじゃないわよ!」

「だぁもう、うっせーッ! 要らねーなら奴隷にでもして売れば良いだろッ!!」

「倫理的にアウトじゃオラーッ、このクソヴァイキングーッ!!」

「アーッ!?」

 声を張り上げ立ち上がるバーサーカーと、そこに怒りのドロップキックを叩き込むレオポルディーネ。瞬く間に二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。

「……すみませんね」

 呆然とその様子を見守っていた佐藤にそう謝るのは、椅子に座る佐藤の左脇で跪くこの屋敷の使用人らしい男性――轟木だ。

「あ、いや……あの、もう帰って良いですか?」

 佐藤の言葉に、轟木は笑って首を振る。どうやら主人に代わって、彼は佐藤をまだ警戒しているらしい。

「アレクシア・ブロッケンは令呪を狙っている、この警告は有り難く頂きますよ。その御礼と言っては何ですが……ほら」

 できました。と、終わったとばかりに工具を置き、轟木は立ち上がって数歩下がる。

 その様子に、佐藤はしばらく見ないようにしていた左側――取り付けられた義手を見る。

 オレンジ色に塗装された、金属製の筋電義手。佐藤はそれを見つめながら、取り付けられた義手の手を動かしてみた。

「……痛みや、重さを感じたりは?」

「いや……訓練もなしに、こんな風に動かせるんだ」

 夢中になって左手を動かす佐藤に、轟木は微笑み答えた。

「元々、亜種聖杯戦争に参加されるお嬢様の為に用意した物ですので、すぐに物を掴めるくらいのことはできるよう作られています」

 何なら、頭部以外ならご用意できますよ。と轟木は両手を広げる。その言葉が冗談か判断しかね、佐藤は曖昧に笑った。

「ただまぁ、お嬢様のサイズに合わせておりますので、少しサイズが合わないかとは思いますが……」

「それでも、ないよりずっと良いよ。本当にありがとう」

「いえいえ……それと、お探しだった貴方の携帯電話ですが」

 轟木はそう言って、佐藤の前にポリ袋を見せる。佐藤は一度右手を伸ばし、それを受け取ろうとするが思い直し、左腕でそれを受け取ってみせた。

 ポリ袋の中には、佐藤のケータイが入っていた。瓦礫にでも押し潰されたのか、画面が割れ、真ん中の辺りで曲がってしまっている。

「ああ……」

 佐藤は悲痛な声を上げ、半身のようにさえ感じていたケータイを袋から取り出す。また腕の一本でも、失ってしまったような気分だった。

「鞄も回収できましたが、我々があの家屋から見つけた時には、こちらはご覧の有様でして……ご要望でしたら、データの復元だけでも致しますが」

「お願いします……」

 佐藤は悲痛な声でそう言うと、頭を下げた。

「心中お察し致します。魔術師は電子機器を軽んじる傾向にありますが、私はこの通り普通の使用人ですので……ところで」

 轟木はそう言うと、ジッとこちらを見る。

「キャスターの方ですが、彼はいつ、最後の攻勢に出ると?」

「……それは」

 分からない。そう言おうと、佐藤は口を開く。

 その時だ。首筋に鋭利な……刀のような刃の冷たさを、佐藤は感じた。

「………ッ!?」

 目を見開き、窓を見やる佐藤とバーサーカー。反射的な二人の行動は、ほとんど同じタイミングだった。

 直後、遠雷のような音がカーテンの向こうで響く。そして音は振動となり、ガタガタと窓を揺らす。

 バーサーカーはレオポルディーネを押し退けて窓へと向かい、カーテンを開け放った。佐藤は遠く見える郊外の一画から、稲妻のように青く輝く光が溢れ出しているのを発見した。

 それはまるで……色こそ違えど、幼少期、十年前に佐藤が見た大火事の遠景のようだった。

「あの方角……」

 佐藤は気づき、窓辺へと駆け寄る。あの方角は、数時間前にキャスターと別れた方角と一致している。

「……キャスターか?」

「方角は合って……ううん、間違いない」

 佐藤は窓に手を当ててその光を凝視し、バーサーカーの言葉に応じた。あの光の根源こそ、キャスターがいたパーキングエリアだ。

「そうか……くくっ、始まるのか」

「………」

 佐藤の言葉にバーサーカーはクツクツと笑い、レオポルディーネは腰に手を当て不安そうに唸った。

「……キャスター」

 そして佐藤は歯噛みし、窓枠を軽く叩いた。

 始まってしまった、読水達と再開することなく。

 佐藤は確信していた。今の時間が、この聖杯戦争の最後の安息であると。

 しかし、その時間はアレクシア達のテロから一日と待たず、終わってしまった。これから再び、戦いが始まる。そして今回こそ、この戦争の決定打を与える気で仕掛ける戦いとなる。

「キャスターッ、早すぎるよ……ッ!」

 

 

 

 十年の時を経て、再開された日坂聖杯戦争。

 模倣の陰に隠れ、聖杯の欠片を求める真の聖杯戦争。

 十と三つの夜を超え、残存勢力は尚も多い。

 セイバー陣営――国土回復の英傑、ロドリーゴ・ディアス。奇跡の代行者、シュウジ・アルバーニ。

 アーチャー陣営――迷妄の弓手、逢蒙。復讐の主催者、鏡宮悟。

 ランサー陣営――龍の守護者、ランサー。“欠片”の運び屋、読水竜也。

 キャスター陣営――妄執の魔狼、永倉新八。

 アサシン陣営――異形、アレクシア・ブロッケン。

 バーサーカー陣営――鬼才のベルセルク、エギル・スカラグリームスソン。イタリアのルーン魔術師、レオポルディーネ・ミローネ。

 そして第八秘蹟会――監督役、マリオ・アルバーニ。

 そして元ライダー陣営――若きヘラクレイダイ、佐藤真波。

 これから始まるは、日坂聖杯戦争最大の戦い。一夜限りの大戦争。

 生き残りが保証される者は、もう誰一人としていない。

 

 

 

 

 

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