スキル:エロい事にのみ使える絶対遵守の催眠術   作:バリ茶

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【オリジナル日刊ランキング3位】……? そ、それに、調整平均のバーが『赤い』じゃあないか……何かが変だ。
──ハッ! 戻ってくださいブチャラティッ!! これはスタンド攻撃だッ!!!


自慰のクラスメイトと敗北

 

 謎の人物EROとして活動を始めた俺だが、水無瀬クルスとしての生活も忘れてはいけない。

 クラスメイト達が総出でダンジョンを攻略しているなか、俺一人だけ不在だと怪しまれてしまうのだ。

 

 この異世界に召喚されたときに、クラスメイトたちはそれぞれ特殊な適性やスキルを得た。

 戦闘に特化したスキル、サポートに適した力、それぞれの得意不得意を加味して、クラスでパーティを編成している。

 例えば俺の幼馴染である男子『天吹(あまぶき)イザナ』は、戦闘ステータスが高く適性は『聖騎士』なので、前衛で剣を振るって戦いつつ周囲をカバーする戦闘の際のエース。

 友人の女子『青月(あおづき)カグヤ』は回復魔法などの適性がある『聖女』のため、後方陣営で傷ついた味方のフォロー、など。

 

 

 ここまではいい、仲間が強いに越したことはないから。

 しかし、とても無視できない事態が、俺の前に降りかかっている。

 ナナミの適性が『光の勇者』だったのだ。数百年にひとり現れるという、奇跡のステータス。

 当然クラスメイトたちは、彼女に大いなる期待を寄せて、魔王討伐の希望として祭り上げようとした。

 

 

 それが分かった時、ふざけるな、と声を大にして叫びたかった。ナナミの体が弱いという事情を知らないクラスメイトたちはまだしも、俺の妹にそんな無駄な適性を与えたこの世界の神を、俺は殴り殺してやりたい。

 自分の身すらまともに守れない女の子に、他者を導く壮大な力を与えたところで、無駄に決まっている。これなら回復魔法などが使える聖女などのほうがまだマシだった。

 だが、できないことをいつまでもウダウダ言うのは時間の無駄。

 

 俺は必至にクラスメイトたちを説得し、適正など関係なくナナミは『体の弱い中等部の女の子』だという事実を、彼らの中に叩き込んだ。

 これでナナミを無理やり戦わせるような人間は、ひとまずクラス内からは居なくなったはず。この世界の住人たちはナナミに戦いを強いるだろうが、そんなことに従う道理はないから無視だ。

 

 だが。

 

『お兄ちゃん、もし私が皆さんのお役に立てるなら、この適正だって……』

 

『ダメだっ!』

 

 この妹は、まったくどこまで優しいのだろう。まさか光の勇者として、クラスメイトたちのために身を削るとでもいうのか。

 ──そんなことはさせない。身勝手な異世界に押し付けられた役割を遵守する必要など、どこにもありはしないのだ。

 

『ナナミにはナナミにしかできないことがある。でもそれは、決して押し付けられた希望として振る舞うことじゃないんだ』

 

『……う、うんっ、わかった』

 

 

 何とか納得させ、あの日からナナミはパーティのアイテム係になった。退避してきた仲間に傷薬を使ったり、状態異常を治す薬草などを配ったりするサポートポジションだ。

 戦いにだって来なくていいと俺は言ったが、何もしないのは嫌だ、という彼女の言葉に俺が折れた結果である。

 強い芯を持っている妹に、思わず勇気づけられた。絶対に元の世界に帰ろうと、その日改めて誓ったのだった。

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 俺たちが今いるのは、街から少し離れたダンジョンの中だ。

 この洞窟の奥に眠っているという聖剣を手に入れるため、クラスを5チームほどに分けて探索する、というのが今回の目的。

 

 ちなみに、なぜクラス全員でここに訪れたのか、という理由だが。

 確かにここは少々危険なダンジョンだが、既に魔王に支配されているあの街に残るほうが余計危険だ。

 それゆえに俺がうまく誤魔化して説得をし、クラスメイトが一人でも欠けないように連れてきたのだ。

 

 

 パーティーにはそれぞれ強力な適性を持った人間をバランスよく配置させたし、万が一の時は洞窟の入り口に瞬間移動できるように、特殊な魔石も持たせておいた。まだ攻略するためのレベルが足りないようなら、力をつけてから再挑戦すればいい。

 今回は慎重にダンジョンの様子を探っていく、危険の少ない冒険だ。

 

 

 ───そのはずだったのだが。

 

「ね、ねぇクル、ここ……どこかな……?」

 

 俺をクルというあだ名で呼び、袖を引いてきたのはクラスメイトの女子である青月カグヤ。

 心配そうにあたりを見渡す彼女に、俺は安心させる意味も込めて微笑みかけた。

 

「大丈夫だカグヤ。下層を探索しているメンバーもいたはずだし、彼らと合流できれば無事に戻れる」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

 なおも不安そうな表情のカグヤ。……まぁ、簡単に安心はできないか。

 

 

 俺たちは今、二人だけで薄暗い洞窟を彷徨っている。松明を持って先行する俺と、その後ろをついてくるカグヤ、といった構図だ。

 

 なぜこんなことになったかといえば──カグヤと同じパーティで行動しているときに大型の魔物と接敵、ヤツの攻撃で足場が崩れ、俺とカグヤだけがダンジョンの下層に落下。

 気が付いた時には、洞窟の入り口に転移するための魔石を含めた、持ち物全部が手元からなくなっていた。この洞窟には冒険者のアイテムを盗み出すサルがいるという話を事前に聞いていたため、恐らくはそいつらの仕業だろうと原因は理解できた。

 

 しかしながら、原因が分かっても解決ができない。もはや仲間と合流することしか助かる手段のない俺たちは、ダンジョン内に設置されていた松明をもぎ取り、魔物から身を隠しながらとにかく洞窟内を歩き回ることになったのだ。 

 

 

 モンスターと戦えばいいのではないか、とそう思うだろう。

 だがそういうわけにもいかない。なぜなら俺たちは戦う手段を持っていないからだ。

 カグヤは回復などの支援担当の聖女で、肝心な俺が持っているスキルは……『作成』という、戦闘では石ころよりも役に立たない代物。

 

 材料があれば武器や防具を作れるのだが、手元に何もなければ何もできない、そんなスキル。サナと契約してギアスキルを手に入れる前は、こんなスキルでどうやってこの世界で立ち回ればいいのかと、頭を悩ませたものである。

 

「しかし不幸中の幸いだな。この階層はダンジョン内で一番魔物が少ないらしいし、走れば逃げ切れるような奴らばかりだ」

 

 軽く笑いながら告げる俺を見て、カグヤはぷくーっとほほを膨らませた。いかにも『怒っています』アピールだ。

 

「もう何回走ったことか、クルなんて私より体力無いくせにっ」

 

「ハハハ、逃げるときに引っ張ってくれるのは、正直助かるよ」

 

 調子いいんだから、といってカグヤはそっぽ向いてしまった。彼女の言う通り、俺は運動神経が悪く持久力も皆無なので、逃げるときはカグヤに手を引いて貰っている。陸上部に所属するカグヤがいなければ、今頃俺は魔物相手にエロイ事を強制させていただろう。想像するのもおぞましい光景だ。

 

 談笑というほどではないが、会話で少しだけ彼女の緊張がほぐれたようでよかった。こんな時に仲違いなどしたくはないからな。

 それに彼女が魔物におびえて竦むような女性じゃなくて助かった。接敵すればしっかり逃げる、冷静に身を隠す、まったく肝の据わった女子高生である。

 

「あ、ねぇクル、あれ見て!」

 

「ん? ……あれはっ」

 

 カグヤの指差す方向には、光が。よく見ればそこは、俺たちが今いる細い道とは違い、広場のように開けている場所のようだ。それに明るいと言うことは、大き目の松明か、もしくはどこかの穴から外の光が差し込んでいるのだろう。

 狭い路地のような砂利道を歩く事にも疲れたし、あの広場で一旦休憩をしよう。そういった提案を彼女に聞かせ、同意の元その広場へ向かって小走りをした。

 

 

 予想通り、広場は明るかった。天井にとても大きいダイヤモンドのような宝石があり、それがこの明るさを発している。発光する宝石に気を取られていると、グイグイと袖を引っ張られた。

 

「ちょ、ちょっとクル! 魔物が!」

 

「なに……!?」

 

 焦って目の前を確認すると、そこには彼女の言葉通り、サルのような魔物たちが佇んでいた。先程までは見えなかったので、恐らくは岩陰にでも隠れていたのだろう。

 魔物の中には、大きいイノシシのような姿の魔猪や、小さなゴブリンや大きな棍棒を持ったオークなども数匹混じっている。

 

「カグヤ、すぐに来た道をもど──なっ、いつのまに……!!」

 

 カグヤの手を引いて後ろを振り返ると、そこにも前方と同じような魔物の集団が待ち構えていた。

 そして魔物たちは円を描くように広がり、前後左右、完全に俺たち二人を包囲してしまった。

 

 ──なんということだ、まさか俺たちは……最初から広場に誘導されていたのか? それともダンジョンの構造が、最終的に辿り着く場所をこの広場として設計されていた?

 頭の中で理由を考えていると、俺の握っているカグヤの掌が震えている事に気がついた。表情を見れば、冷や汗をかいて怯えているのが分かる。

 

 

「く、クルっ、これ……もう私達……!」

 

「……くっ、そうだな、完全に囲まれている。どこを見ても、逃げ出せるような隙間は見つからない……!」

 

 思わず舌打ちをしてしまう。完全に詰んでいるこの状況、もはや打破するためには──あの力を使うほかに無い。

 だが、俺のこの力は誰にもバレてはいけない禁断の秘密なのだ。

 

 エロい事限定とはいえ、相手を思うままに操ることのできる催眠術。そんなものを持ってると知られれば、完全に信用を無くして、誰とも協力できなくなってしまう。

 自分も操られてしまうのではないか? もしかしたら既に操られているのでは? そんな疑問が頭を巡ってしまい、仮に俺がどんな聖人であろうと信用することは不可能だろう。

 

 どうすればいい……! あともう少しだけ、考える時間が欲しい!

 

『グルルァ!!』

 

 巨大なイノシシが咆哮する。

 

 

(───くそっ!! 背に腹は変えられないか……!!)

 

 

 覚悟を決めた俺はギアスキルを発動し、左目に『Ψ』の紋章を出現させる。この瞳を見た瞬間、どんな生物であろうと我が手の中だ。

 

 俺は振り返り、まずは巨大なイノシシを凝視し、叫んだ。

 

「お前は『そのオークを犯せ』!」

 

『グ、グルル!?』

 

 俺のギアスキルは絶対遵守。その眼を見て指示を聞いた者は、なんであろうが従わなければいけない。

 イノシシはいきなりオークに後ろから覆いかぶさり、発情期の犬のように腰を振り始めた。「ブモォォ!!」というオークの悲鳴は、なんとも耐え難い雑音だ。

 しかし、まだ大量の魔物たちがいる、すぐさま次の行動だ。

 

「そこのサルは『自分のアレをしゃぶれ』! そっちのオークは『棍棒をアナルにぶち込んで悶絶絶頂しろ』!!」

 

 次々と命令を繰り出していく。体の硬いサルは自分のモノをしゃぶろうとして無茶な体勢を取って背骨が折れ、巨大なオークは排泄するためのデリケートな穴にバイクほどの大きさの棍棒をねじ込んで大粒の涙を流しながらアヘっている。

 だが、まだまだ足りない。あまりにも数が多すぎる。

 

「く、クル……? なにを、しているの……?」

 

「……っ!! 見るなカグヤ! 瞼を閉じて耳を塞いでいろ!」

 

「こんな状況でそんなこと!」

 

 だめだ、カグヤは俺のギアスキルを目の当たりにして、明らかに狼狽してしまっている。あの様子では俺の指示にも従ってはくれないだろう。

 それに彼女の瞳を見ながら命令口調で叫んだが、カグヤはそれに従わない。

 

 当然だ。先程の『瞼を閉じて耳を塞いでいろ』という命令は、一ミリも『エロくない』のだから。

 魔物たちに向けたギアスキルだって、この力が『誰もが従う絶対遵守の力』ならば、今すぐ『この場で死ね』の一言で片付くのだ。

 

 それなのにこんな回りくどい、相変わらず欠陥構造なこの力に、嫌気が差す……!

 

「クソっ、そこのゴブリンは『後ろのメスザルの性器をガバガバにしろ』っ、お前は──」

 

「あっ、クル! 後ろ!」

 

「──ぐぅっ!?」

 

 死角だった後ろからサルに思い切り蹴飛ばされ、ゴロゴロと地面に転がってしまう。

 

(しまった、後ろからとは……はっ! カグヤ!!)

 

 魔物が群がってくる自分よりも、戦う(すべ)を持たないカグヤに意識が行った。

 まずい、オスのサルやゴブリンに囲まれている!

 

「やめろ──っ!!」

 

「い、いやっ、クル──!」

 

 足や腕を魔物たちに掴まれるカグヤは、一心に俺を叫ぶ。そんな彼女を救わなければいけない俺は、とんだ愚行を犯してしまった。

 『やめろ』などという指示は、全く持ってエロくはない。今俺がするべきだったのは『その女以外をレイプしろ』などといった明確な命令だったのだ。

 

(駄目だ、駄目だ駄目だダメだっ!! やめろ、その子に手を出すな!) 

 

 サルに口を押えつけられてしまい、喋ることが出来ない。

 

(クソ、こんなところで、こんなところでぇ……!!)

 

 心の叫びが現実に反映されることは無く、次々と衣服を破られていくカグヤ。恐怖に怯えて泣き叫ぶ彼女を助けることが、俺にはできない。

 そして棍棒を持ったゴブリンが、俺の方へ歩いてくる。アレで殴られれば、一巻の終わりだ。

 

(情けない───!)

 

 たまらず俺は、目をつむってしまい───

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

 突如鳴り響いた男の叫び声で、再び瞼を開いた。

 

 いつの間にか、俺を取り囲んでいた魔物たちの首が無くなっており、赤いペンキをひっくり返したかのように地面が赤く染まっている。

 急いで顔を上げ、目の前を確認した。

 

 

 そこには光り輝く剣を振るう、一人の男がいた。あいつは──

 

「イザナ!?」

 

「しっかりするんだクルス! 早く青月さんを安全な場所へ!」

 

 驚愕する俺に一括したのは──幼馴染のクラスメイト、天吹イザナだった。気がつけば、カグヤを取り囲んでいた魔物たちも地に伏している。

 そうだ、驚いている場合ではない。

 

「カグヤっ!」

 

 彼女を抱き上げて声をかけたが、返事が無い。どうやら魔物たちに襲われる恐怖で、気絶してしまったらしい。

 カグヤを背負い、その場を走り出す。チラリと後ろを確認すると、イザナが『聖剣』で無双をしていた。

 

 そうか、俺たちが彷徨っている間に、あいつは最奥で聖剣を見つけたのか。そしてそれを、ぶっつけ本番で使いこなしている。……相変わらず規格外な男である。

 

「クルスっ、これを受け取るんだ!」

 

「っ! これは……」

 

 イザナが俺に向かって投げ渡してきたのは、紫色の魔石。これは事前にクラスメイト全員に配った、ダンジョンの入り口前に転移するための魔道具だ。

 それを握りしめ、未だ戦闘中のイザナの方へ向いた。

 

「すまんイザナっ、先に戻らせてもらう! 一人で大丈夫か!?」

 

 そんな俺の言葉に、イザナは不敵な笑顔で返してきた。

 

「この程度の魔物たち、造作もないさ!」

 

 かっこつけたイザナのセリフを信じ、俺は魔石を発動させた。

 昔からの馴染みで分かる、あの男はやるといったら必ずやり遂げる、そんな男だ。それにあの聖剣があれば、間違ってもザコ魔物たちに後れを取ることは無いだろう。

 

 

 

 気がつけば、俺は明るい空の下にいた。

 そしてカグヤを背負い直し、拠点としている宿へ走るのだった。

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 俺の前にいるのは、ベッドに座りながら上半身だけを起こしている、意識を取り戻したカグヤ。

 幸い外傷はなく、傍から見れば無事な状態だ。

 

 だが、精神はそうではない。

 魔物に襲われた恐怖、目前に迫った死の感覚、そして何より……エロい事を強制させるという謎の力を持った俺の存在。

 そんな多すぎる情報量が、彼女の中でミキサーにかけられているかの如く混ざり合っている。

 

 しかし意外にも、心配そうに見つめる俺の目を、彼女は見つめてきた。思わず、話しかけてしまう。

 

「……怖く、ないのか」

 

 そう告げると、カグヤは俯いた。それは否定か、それとも肯定なのか。

 答えを待つ俺に、数秒置いてから彼女は返事をした。

 

「怖くないって言ったら、多分嘘になっちゃう。クルが使ってたあの眼……きっととても、危ないものだって分かってるから」

 

「……っ」

 

「で、でも私、みんなには言わないよ! クルが優しい人だってことは、だっ、誰よりも……私が……っ」

 

 悲しそうに呟く彼女を見て、自責の念がこみ上げてくる。

 とんだ失態、大失敗だ。ダンジョンに入る前に、もっと必要以上に転移の魔石を持っておくべきだった。そうでなくても、もっと慎重に行動して、ギアスキルを使わない道を模索するべきだったんだ。

 

 安全を保障していたはずなのに、危険な目に会わせてしまった、最低な男だ。

 

 

 ──そして、これからすることは、もっと最低だ。

 

「カグヤ」

 

「……?」

 

 俺の呼びかけで、()()()を見るカグヤ。

 

 

 

「キミは『ここで自慰行為を行え(オナニーをしろ)()()()()()()飛んでしまうほど……激しく何度も絶頂するんだ』」

 

 

 

 静かにそう呟いた。

 彼女が見つめている俺の眼には『Ψ』の紋章が浮かんでいる。

 

「……っ、ひぅ、あっ、あれ……♡」

 

 次第に顔が火照り始めるカグヤは、お腹をさするように右手で下腹部を抑えこむ。

 俺は椅子から立ち上がり、彼女に背を向けた。

 

「まっ、まっへぇ……♡ なにっ、こっれ……、んぅ、はふぅ♡」

 

 

「───すまない」

 

 ただ一言を、心からの謝罪を告げ、俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 自室のベッドに倒れ込み、右腕を顔の上に置いた。心を破壊するような罪悪感が脳内を支配し、油断すれば涙が出そうな程に精神が弱ってしまっている。

 ついに、使ってしまった。仲間に、みんなには言わないとすら誓ってくれた俺の味方に、ギアスキルを。

 

 違う、彼女を信用していないわけではない。それどころか、クラスメイトの中で一番に信用しているのはイザナでもなく彼女だ。

 とても優しくて、人当たりが良くて、明るくて……そんな彼女は、誰より信頼できる友人だ。

 

 だが、しかし。彼女の意思は関係なく『ギアスキルを記憶している』事が問題なのだ。もしカグヤが敵に捕まり、自白剤などを投与されれば、どんなに強固な彼女の意思であろうとたやすく破壊されてしまう。

 それほどまでに、このギアスキルという力は、秘密でなくてはならない。これは俺の主要武器でもあり、逆に切り札でもあるのだ。

 

「浮かない顔だね」

 

 俺の耳に入ってきたのは、聞くのも億劫な甘ったるい女の声。十中八九あのサキュバス女だろう。今一番見たくない、憎たらしい顔だというのに。

 

「黙れ」

 

「しょうがないとは思うけどね。……まぁでも、本当にやるなんて、やっぱりキミは人としては最低だ」

 

「……黙れ」

 

 強く言い返すこともできないほど、疲弊していた。それにサナの言うことは間違いではない。

 俺は──本当に、最低だ。

 

「キミがどんな人間であろうと、半身である私は絶対に味方だよ。……今は、一人になりたいのだろうが、ね」

 

 その言葉の後、羽ばたくような音が聞こえた。どうやら鬱陶しい魔物女はいなくなったらしい。

 

 

 静寂が、部屋を支配している。まるで虚空な、自分の心を表しているように感じた。

 

 

 ───そう、この日。

 

 

 異世界に訪れてから、俺は初めて敗北した。

 

 

 

 

 

 




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本当にめっちゃありがとうございまふ
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