不良優等生 上杉君   作:えぬに

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プロローグ

風太郎「焼肉定食焼肉抜きで」

 

おばちゃん「はいよ〜」

 

この学校の食堂では皆、ライス200円が最安値だと思いがちだが、焼肉定食400円から焼肉皿200円を抜くとなんと同じ値段で味噌汁とお新香が付いてくる。

 

学生「おい、なんだよあれ(笑)」

 

学生「あんな注文ありかよ(笑)」

 

風太郎「あ"?」ギロッ

 

学生「「ひっ」」

 

おおっと、ついやってしまった。

いい加減この目つき直さないとなあ。生まれつきだから無理だが。

とりあえず謝っておこう。

 

風太郎「あ、いや、睨みつけてすまない…」

 

そう言って俺はセルフサービスのウォーターサーバーで水をくみ、いつもの席へと向かう。

 

自己紹介がまだだったな。俺の名前は上杉風太郎。さっきのやりとりを見たら分かるだろうが、少々喧嘩っ早い。見た目はそこそこの高身長に金髪、そして相手を怯えさせる目つきの悪さ。そう、俺は不良。あらゆる不良高全てを制圧し、不良の頂点を狙う…!

 

…なんて大層なものでは無い。不良なのに俺は不良高校ではなく、進学実績もそこそこある至って普通の学校に在籍している。この学校では善良な生徒でいるように心がけている俺は、無愛想で人付き合いは悪いが校内で暴力沙汰なんて起こしたことはないし校則もたいして破ってはいない。それと自慢なんだが、こう見えて学内試験では常に学年一位、模試でも常に2桁順位だ。ただ学校外で他校の不良と喧嘩はするが…ちなみに昨日も喧嘩して顔に絆創膏がいくつかある。だが好きで喧嘩をやっているわけではない。

まぁ、なんちゃって不良という言葉が一番しっくり来るだろう。

そんな文武両道?の俺ははっきり言って浮いた存在であり近寄る奴は誰も居ない。

…まぁ、いいさ、俺は孤独を愛する人間だからな。

なんて居もしない誰かに言い訳しながらいつもの席へ座ろうとしたその時

ガチャン

2つのトレイがぶつかった。

横を見るとそこには女の子がいた。

 

???「あの!私の方が先でした!隣の席が空いてるので移って下さい!」

 

…なんだぁ?このセンスのかけらもないヘアピンした女は。どっから湧いてきた。しかもうちの制服じゃないな。転校生か?

 

風太郎「ここは俺がいつも座ってる席だ。お前が移れ」

???「関係ありません、早い者勝ちです」

風太郎「あ"?」

???「うっ…そ、そんな怖い目をしなくてもいいじゃないですか…」グスン

 

やらかした。悪い癖が。さすがに泣かれるのはヤバイ。というか俺の目つきってそんな泣く程悪い?逆に傷つくんだが。

 

風太郎「あ、いやその、わ、悪い…俺が隣に移るよ。」

???「え、あの…ありがとう…ございます…」

 

ふぅ、危ない危ない。女の子泣かせたって噂にでもなったら学校生活終わるからな。

 

風太郎「その、なんだ…別に大して怒ってないし…よく目つきが悪いって言われるから気にしないでくれると嬉しい。」

 

そう言って俺は学校の定期試験の答案を見ながら味噌汁を飲み始める。ちなみに今は社会の復習だ。答えの用語だけを見て、試験はどんな問題文だったか想起するのはいい復習になる。

 

???「…行儀が悪いですよ?」

 

と復習してるとさっきのヘアピン女がビクビクしながら注意してくる。…怖いなら話しかけんなよ。あれだな、これ優しく話さないとまた俺の人相の悪さで泣かれるやつか。

 

風太郎「そんなに怖がるなよ…たしかに俺の見た目は金髪で不良っぽいが学校内で喧嘩も遅刻もしない至って善良な一般生徒だ。」

???「……」

 

信じてねぇな。まあいい。

 

風太郎「とにかく勉強してんだ、邪魔しないでくれ。あと怖いなら無視しとけ。」

???「…食事中まで勉強なんてよほど追い込まれてるんですね。テスト見せてくださいよ」

風太郎「あ、やめろ!見るな!」

???「どれどれ、上杉風太郎君、点数は…

 

100点…」

風太郎「あー!!めっちゃ恥ずかしい!!!」

 

ククク、どうだ、これで俺は成績優秀な一般生徒だとわかったか!

 

???「わ、ワザと見せましたね!?」

風太郎「いやお前が勝手に見たんじゃん。」

???「ぐぬぬ…勉強は得意ではないので羨ましいです…」

 

露骨に落ち込んでるがそんなに勉強ヤバイのか?俺から言わせれば成績が良くない奴なんてただ勉強してないだけだろ。スポーツなんかと違って才能関係なしにやればできんのに。

 

???「あ、そうだ!せっかくですし勉強のコツとか教えてくれませんか?」

風太郎「…」

???「あの、そこまで嫌がらなくても…」

 

おおっと顔に出てたかすまんな。でも嫌なものは嫌なんだがな。

 

風太郎「…お前に教えて俺はなんか得をするのか?見返りもなしに教えてとは図々しくはないか?」

???「では私のお昼を少し分けてあげましょうか?見たところ、体格の割に随分量が少ない気がしますが、金欠なんですか?」

 

確かに金欠だが…ん?こ、こいつ、よく見たら昼飯に1000円以上かけてやがる。うわぁ、海老天美味そう。

…ぐうぅ〜

 

2人「「…」」

 

風太郎「…そ、ソウダナー、タマニハヒトにオシエルノモヨサソウダナー。」

五月「決まりですね!あ、自己紹介がまだでしたね。私は中野五月と申します。転校生です。」

風太郎「あぁ、俺は、まぁ、知っての通り上杉風太郎だ。よろしく。」

 

そうして俺は中野とか言う、昼飯を爆食いしていた女から海老天をもらい、それと引き換えに放課後図書館で勉強を教えることとなった。

 

…ちなみに初めて食べた学食の海老天は美味しかった。その際上杉君やべえ女の子脅迫して飯取り上げてるぞと聞こえてきたがとりあえずひと睨みきかせて黙らせた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

昼食後、さっきの女と別れてトイレへと向かっている途中、俺の携帯にメールが来ていたことに気づいた。

開けてみると俺の妹、らいはからだった。時間があるなら電話してとの趣旨だったので、とりあえずトイレの個室に入って誰にも見られないように電話をかける。

 

らいは「もしもし、お兄ちゃん?」

風太郎「お、らいはか?話があるってメールにあったんだがなんか用か?」

らいは「そーだよお父さんから聞いた!?」

風太郎「うお!?どうしたらいは、とりあえずおちつけ?」

らいは「あ、ごめんね。うちの借金無くなるかもしれないよ!」

風太郎「は?」

らいは「お父さんがいいバイト見つけたんだ。最近引っ越してきたお金持ちの家なんだけど、娘さんの家庭教師を探してるらしいんだ。アットホームな職場で給料も相場の5倍!これはもうやるしかないね!」

風太郎「怪しすぎんだろそんなバイト!裏の仕事じゃないだろうな?」

らいは「家庭教師はいつから裏のお仕事になったの?まぁ、とにかくこれでお腹いっぱい食べれるようになるね!」

 

…そんな健気な声を聞いたら受けざるを得ない。

最悪腎臓が1つ無くなるぐらいだろ、はっはっは。

なんも面白くねぇ。

 

風太郎「はぁ、分かったよ。で?誰を教えるんだ?名前は?」

 

らいは「ええっと、確かお兄ちゃんの学校に今日から転入する人で中野さんて言うヒトだったはず」

 

世の中奇妙な縁がありますなぁ。HAHAHA…

 

 

…どう考えてもあいつじゃねえか。

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

まぁ、なんだ。あの女はなんと俺のクラスに編入することになった。いや、ここまで偶然が重なると神様のイタズラどころか悪意全開のイジメにしか感じない。まあいい。とりあえず家庭教師をやるからにはなるべく好感度を上げとかないとだよな。

などと考えながら図書室へ向かう。

 

五月「あ、上杉くん。今日はよろしくお願いします」

風太郎「あ、あぁ、宜しく。」

 

そう言って二人で図書室のつくえに移動する

 

「おい、上杉君女の子といるぜ」

「しかも女の子は可愛いぞ」

「まぁ、あいつ中身はともかくそこそこイケメンだしなぁ」

 

あいつラァ…。

 

五月「〜〜〜〜っ」

 

うわぁ、顔真っ赤。いや、なんか本当にすまんな。

 

風太郎「ま、まぁ、周りなんか無視して勉強始めるか!何を教えて欲しんだ?」

五月「あ、じゃあ数学を…定期試験では頑張って赤点は回避したいですから。」

 

…?AKATEN?なんだそれは。多分聞き間違いだろう。

 

風太郎「ごめん、今なんて?」

 

五月「え?ですから数学は頑張って赤点回避したいなと…」

 

…まじかよ。俺は赤点なんてとるやつに家庭教師として教えなきゃならんのか?

 

風太郎「まぁいい。とりあえず今日の授業の復習から始めるか。今期の数学は確かベクトルだったはずだが授業はしっかり理解出来たのか?」

 

五月「うぅ…ノートはちゃんととったんですが…」

 

できてないか…無理もない。うちの学校は全体的に授業ペースが早いからな。ノートを取るので精一杯だったんだろう。

 

風太郎「まぁ、そう落ち込むな。定期試験で赤点回避なんてさほど難しくはないはずだ。基礎から教えてやる。数学なんて基礎的な解法を暗記してそれを組み合わせるだけだ。」

 

五月「は、はい!」

 

こうして俺は教科書レベルからベクトルを教えるのであった。

 

風太郎「まずはベクトルの基礎からだな。ベクトルっていうのは_______」

「90度で内積0のパターンは頻出だから暗記な。」

「この問題は2乗すればこうして内積が現れて____」

「同一平面上のものは文字を使うんだ。すると____」

「平面ベクトルは基準となるもの2つで表すことが大切なんだ。空間の場合は_______」

「これは発展的だが、正射影っていうのは_____」

「____とこのように実は立体図形はこのようにとくんだ。」

 

とかれこれ教えているともう下校時刻になっていた。

 

風太郎「お、もうこんな時間か。今日は切り上げるか。」

五月「つ、疲れました…そうですね、上杉君のおかげで勉強のコツが掴めた気がします。」

 

まぁ、こんだけ教えれば余程のことがない限りベクトルに関しては赤点は回避できるだろ。

 

その後、俺たちは途中まで帰りが一緒だったので途中まで一緒に帰ったのちに別れた。

 

あ、家庭教師の件聞き忘れてた。まぁいいか、明日言えば。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

風太郎「…」

 

翌朝、家を出て学校へ登校していると五月を発見した。

が、

なんと友達といやがる…

この後の展開は目に見えている。五月が俺に気づいて声をかけて、五月の友達に紹介されてうんぬん、とかいう面倒なシチュになるに違いない。家庭教師について話そうと思ったが、そうだな、今日の昼にでも呼び出せばいいか。と都合よく無視できる理由を作り、俺はあいつを見なかったことにして素通りしようとした

 

 

五月「あ、上杉君!」

 

そこは無視しとけよ。昨日俺の顔見て泣きかけただろ!なんなんだあいつは、友達と楽しく登校しとけよそして俺に気づくなよ!

 

風太郎「……………」

五月「あ、あれ?上杉君?無視しないで下さいよ!」

 

めんどくせぇな。

…逃げるか

上 杉 風 太 郎 は 逃 げ 出 し た!

 

五月「あ!!」

???「行け四葉!君に決めた!」

四葉「イエッサー!!」

 

なんか後ろから来てんな。ウサギ耳をつけたポケ○ンが約1匹ほど。まぁ流石に俺より速いなんてことは無いだろう。俺だって喧嘩でそこそこ鍛えてんだ。

 

と思ったのが間違いだった。なにあいつ、アホみたいに速いんだが。俺、一応50m走は6秒9とかなんだけど?おいつくとか流石ポケ○ン。

 

四葉「てやぁー!!確保ぉー!!」

風太郎「ぐおぉ?!」

 

捕まったわ。うん。完全に油断した。というかタックルしてくるとか普通に危ねえな。

 

風太郎「なんだよ、離せよ。」

四葉「まぁまぁ、そー言わずに逃げないでくださいよ〜上杉さん。」

 

後ろから四葉とか言う奴に抱きつかれて動けないでいるうちに五月と何故だかわからないが不愉快と感じてしまう仲間たちがやって来た。

あぁマジめんどい。

 

四葉「ただ今上杉さんを確保しました!一花軍曹!」

一花「うむ、ゴクローだった四葉二等兵。」

 

このポ○モンをけしかけてきたこのピアスした大人っぽいのが一花とか言う奴か。

 

一花「君が上杉フータロー君?なんで逃げたのかなあ〜?」

風太郎「…人違いだ。」

五月「間違いようがありません…」

 

五月が呆れたように言う。

とりあえず密着してるのはいろいろまずいので四葉に解放してもらう。この子、人との距離感おかしくね?初対面の男に抱きつく(タックルか?)とか普通はやらない。

 

五月「人の顔を見るなりいきなり逃げるなんて失礼じゃありませんか?」

風太郎「これには事情があったんだよ…」

五月「へえ、どんな事情なんです?」

風太郎「…女子の、しかも知らない奴ばっかの集団に入りたくなかったんだよ。言わせんな恥ずかしい。」

五月「そんな事私たちは気にしませんよ?」

風太郎「俺が気にするわ!」

 

馬鹿いってんじゃねえ。

 

???「五月、昨日言ってた五月を泣かせた上に勉強教えてくれたっていうのがこの人??」

風太郎「ちょっと待て、怖がらせたのは確かだが泣かせてはいない。誤解を招くようなことを言うな。あとなに?お前わざわざこいつらに俺のこと喋ったの?」

五月「何か問題でも?」

風太郎「ありまくりだ!何が泣かせただ!お前絶対わざと誤解されるように言っただろ?!ちょと睨みつけたらびびっただけだろ!」

 

社会的に殺す気か。

 

???「ふぅ〜ん。たしかにあんたの目つきちょっと怖いわね。でも全体的に顔は結構あたしのタイプね!」

一花「へぇ〜、二乃ってこんな悪い感じの人がタイプなんだ〜」

 

なんだろう。顔がタイプとか言われても何も嬉しくないな。そしてこの一番お洒落?しているこいつは二乃と言うのか。

 

???「…なんで金髪なの?あと、顔の絆創膏は喧嘩でもしたの?不良?」

風太郎「え、ふ、フリョウ?ナニイッテルンダイ?オレハタダノイッパンジンダヨ。」

???「動揺しすぎ。」

 

ヘッドホンを首にかけた気だるそうな女がなんかとんでもないこと言ってきたんだが。

マジでやめて。俺の学校生活終わるから。

 

一花「おやぁ?これは怪しいですなぁ〜?三玖の言う通りフータロー君は不良なのかなぁ〜?」

四葉「えっ!上杉さん不良だったんですか?!」

風太郎「…あのなぁ、これは自慢だが、俺は学年一の成績だ。果たして不良にこんな点数取れるかな?なぁ、五月。」

五月「そこは謙遜しましょうよ…自慢て…でも、確かに上杉君はテストで100点を取ってしまう程には頭が良いですね。そんな人が不良とは思えません。」

 

三玖「それほんと?…人は見かけによらないね…」

二乃「へぇ、凄く頭いいんだ。ギャップが凄いわね」

四葉「上杉さんの第一印象は"怖そう"に"一匹狼"でしたけど新たに"天才"加えておきますね!」

 

不思議なことにこれもまた全く嬉しくないな。

まぁ、おれでも思うよ。実際はそれにプラス若干不良だけど。とにかく俺の不良疑惑を解消出来て良かったぜ。

 

一花「あれ?じゃあ顔の怪我はどうしたの?」

 

こいつ、余計なことを言いやがって。

 

風太郎「い、いや〜昨日帰る途中運悪くヤンキーのカツアゲにあってな、財布は死守したが殴られてそのまま地面に顔をぶつけてしまってなあっはっは!」

 

とりあえずアドリブで嘘をついてみたが、我ながら酷い言い訳である。

 

二乃「ダサ…ちょっとだけガッカリ。」

三玖「やっぱり見かけによらないね。」

四葉「上杉さん…それはお気の毒な…」

五月「別れたあとそんなことがあったんですか…」

一花(…ん?五月ちゃんが怖がるほどに目つき怖いのにカツアゲなんかに会うかなあ?怪しい…)

 

五月蝿えなんとでも言いやがれ。なんか一花はまだ疑ってるようだが頼むから余計なことを言わないでくれ。そんな俺の考えを察したのか一花は俺ににやけた顔を見せてくる。弱みを握ってやったようなドヤ顔うぜぇ。

 

風太郎「ちょっといいか?実は五月に用があるんだ。だから友達の4人は少し先に行っててくれないか?」

 

五月「え、私に用ですか?あと私たちは友達じゃないですよ?」

風太郎「は?」

 

…何それこわい。一緒に仲良く登校しててそれでもなお友達じゃないだと?女って怖いな。

 

三玖「…なんでそんな畏怖の目で見てるの?勘違いしてるようだけど、私達家族だから。」

 

え、家族…だと…?

そういえば、顔よく見たら…

 

…?!!

まさか、うそだろ…?!

ありえねぇどんな確率だよ…!

 

五月「言ってませんでしたっけ?私たち、五つ子ですよ?」

 

一花「改めて自己紹介、長女の一花だよ。よろしくね?」

 

二乃「私は次女の二乃よ。」

 

三玖「三女の三玖。よろしく。」

 

四葉「四女の四葉です!よろしくです!」

 

五月「そして私が末っ子の五月です。」

 

このとき俺は、夢にも思わなかっただろう。

このままいけば喧嘩に勉強だけで糞みたいにつまらない残りの高校生活が俺を待っていたはずなのに、この五つ子との出会いによって地獄のような高校生活になるなんてな。

そして俺自身、身をもって知ることになる。

 

風太郎「…冗談キツイぜ。」

 

平凡な生活より地獄の方が万倍楽しいってことをだ。

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