不良優等生 上杉君   作:えぬに

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初日から苦労する上杉君

五月「それで私になんの用事ですか?」

 

あの後、五月の姉どもには先に学校へと向かってもらった。その際一花にこっそりと

『へぇ〜フータロー君って五月ちゃんみたいな真面目な子が好みなんだ?意外だなぁ。』

とかなんとか言われた。

…あいつ今度泣かす。

あと何?俺は?五月が?タイプ?

ぺっ!笑わせんな。俺にも選ぶ権利ぐらいある。

と内心で唾を吐く。決して照れ隠しなんかではない。

 

風太郎「お前は親から聞いてないか?俺がお前の家庭教師になったこと。」

五月「…」

風太郎「…」

五月「…」

風太郎「…」

 

 

 

 

 

 

二人「「…」」

 

 

 

 

 

 

風太郎「…いや何か喋れよ!」

五月「はっ!すみません。今受け入れ難い事実が聞こえてきたような気がしたので現実逃避してました…」

 

そんなに嫌か。奇遇だな俺もだ。

というか何も聞いてないんですねはい。貴方達姉妹の親は何をしてらっしゃるのかな?もしかして俺を雇った理由って親が馬鹿すぎてプロの家庭教師と高校生の家庭教師どっちがいいかの判断すら出来なかったからとかじゃないよな。流石にないか。無いことにしよう。

 

風太郎「気がしたじゃない。事実俺はそういった。」

五月「待ってください、新しい家庭教師が来ることは知っていました。ですが貴方とは聞いていません。確かに貴方の頭の良さと成績は認めますが、さすがに同級生が家庭教師ってどうかと思うんですが…あと見た目怖いですし。」

風太郎「やかましいわ。見た目は置いといて、それに関して疑問を持つことは当然だな。たけど一応、俺が家庭教師をするに値する理由はある。だがちょっと待ってくれないか?諸々確認したい。」

五月「確認とは?」

風太郎「お前の親御さんと今から電話で連絡取れたりしないか?」

五月「うーん…そうですね、お父さんに今から電話に出る時間があるか分かりませんがとりあえず今から電話するだけやってみますね。」

 

そう言い、五月はスマホを取り出して電話をかけ始める。

 

五月「…あ、もしもし?五月です、今お時間大丈夫ですか?…実は新しい家庭教師の方がお父さんとお話ししたいと…はい…分かりました。今代わりますね。」

 

…今聞き逃してはならないワードが出てきたな。"新しい"だと?

…ほーん。

と考えながら五月から携帯を受け取る。

 

風太郎「もしもし。ただ今電話代わりました。上杉です。」

『もしもし?君が上杉君かい?何か用かな。』

風太郎「はじめまして中野さん。それがですね、家庭教師の件でちょっと確認したいことが二、三ありまして。」

『ほう、なんだね?』

「まず一つですが、俺が教えるのは一人だけでは無いんですか?なんでも五つ子だとか。五つ子って本当なんですか?」

 

正直なところ五つ子とか信じられん。5人を育てるなんて母親はどんな強靭な肉体と精神をしていらっしゃるのだろうか。是非ともお目にかかりたい。

 

『ああ、彼女たちは間違いなく一卵性の五つ子だよ。それと教えるのはもちろん一人だけでは無い、5人全員だ。そのかわり報酬は5人分、相場の五倍は払うと約束しよう。』

 

…相場の5倍のカラクリはこれだったのか。とりあえず裏のお仕事ではなさそうで一安心。

いや何も安心じゃないけどとりあえず一安心。

 

風太郎「…わかりました。二つ目ですが、彼女たちの今の成績と最終的にどこまで学力を伸ばせばいいのか目安を知りたいのですが。」

『彼女達の成績はあまり芳しく無いね。具体的には彼女達から聞けばいい。それと最終目標だが、彼女達を無事に卒業させる事が最低ラインだ。それさえクリアしてくれれば僕からは何もない。』

 

ちょっと待てよ。五月は赤点取ってしまうほどに成績は酷い。最低ラインが卒業??卒業も怪しいってことか?しかもこいつの姉達も成績に関しては五月と同等レベルという可能性もある…でなければ5人全員教えてなんて言わないはずだ。

…この問題は後回しだ。頭が痛くなってきた。

 

風太郎「了解しました。最後に、何故俺のような普通の高校生に頼んだのか理由をお聞きしてもいいですか?一応俺なりに理由は察してはいるんですが…」

『多分君が考えている通りだよ。むしろそれしか考えられないだろう。』

 

…なんてこった。俺の予測がハズレであって欲しかった…これは大変だぞ…。

 

風太郎「分かりました。今日から娘さんに勉強を教えに行きますが、このことは皆知っているんですよね?」

『ああ、家庭教師が来ることは知っているはずだ。ただ、五月君以外に家庭教師が君だとは知らないけどね。それと、すまないがもう時間だ。仕事に行かなければならないからこれで失礼するよ。』

風太郎「分かりました。お手間を取らせてしまってすみませんでした。失礼します。」

 

電話を切って五月へと返す。そして俺は満面の笑みでこう言う。

 

風太郎「なぁ、お前らの成績ってどうなんだ?」

五月「…」

 

なんだよ無言て。早く答えろよ。

 

風太郎「…大体察しはついてる。それとも問い詰められたいか?」

五月「漏れなく全員…赤点…候補…です…。」

 

と力を無くしたようちに五月は呟く。

やっぱりな。

なぜか先程から爽やかな笑顔が止まらないのだが。(ᴖ◡ᴖ)←こんな感じの奴。人間、いきなり窮地に立たされると笑いしか出ないって本当だったんだな。

 

5人全員を赤点回避させる。俺に出来るのか?

…いや、答えの出ない問題をいくら考えても意味はない。生活がかかってるんだ、やるしかない。

俺はそのまま爽やかな笑顔で静かに言い放つ。

 

風太郎「…今日から放課後は全員集まって毎日勉強会だ、いいな?」

五月「…はい…。」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

風太郎「はい、と言うわけで俺が家庭教師です。残念でした〜、今から勉強会で〜す。」

 

朝の一悶着から今は放課後、場所が変わって学校の図書室に居る。

五月に姉達全員を図書室に集めてもらった。

 

二乃「いやいや、何がと言うわけよ、もっと事情を説明しなさいよ!」

風太郎「お前らの父親から家庭教師が来るって知らされてただろ?それが俺。以上。」

 

シンプルイズベスト。

 

三玖「なんで同級生の貴方なの?この町にはまともな家庭教師は居ないの?」

一花「確かにフータロー君は頭が良いみたいだけど、人に教えるのはまた別だよね?」

 

言うと思った。この際だからはっきり言ってやろう。

 

風太郎「…じゃあ言うぞ。お前ら揃って赤点候補らしいな?」

三玖「それが何?」

風太郎「赤点だと進級が出来ず留年してしまう。お前らもそれはやばいと思うはずだ。そこで学校の授業がダメなら予備校、通信教育、家庭教師などのいずれかを始めるまでは予想がつく。」

 

風太郎「予備校、通信教育なんてものはやる気のある奴が始めれば効果はあるが、サボろうと思えばいくらでもサボれるからな。いくらプロ集団でもお前らにこの選択肢は無いだろう。自分から進んでガツガツやるようには見えないし。」

 

風太郎「なら家庭教師だ。マンツーマンだし、強制力もあるからやる気のない奴でもある程度は勉強はするだろう。」

 

風太郎「ところで、実は今朝、五月に頼んでお前らの父親に連絡を取って貰ったんだが、その時に新しい家庭教師というワードが五月の口から出てきた。つまり以前にも家庭教師は居たと言うわけだ。」

 

風太郎「じゃあなぜ今更、同級生の俺が家庭教師となった?…この先は非常に言いにくいんだがまだ言うか?」

5人「…」

 

そう、こいつらは余程の勉強嫌いの聞かん坊だったかいくら教えても伸びずに見捨てられたかのどちらか、もしくは両方だ。ただ、他の四人は分からないが少なくとも五月に関しては非常に真面目だと断言できる。自主的に俺に勉強を教わりに来るほどにはな。他の4人も成績が思うように伸びないことが原因でやる気がそこまであるわけではないが、全く無いわけでもないんだろう。現にこいつら、勉強自体やりたくないとは一言も言ってないしな。そのことを考えると多分後者だ。

 

二乃「…確かにあんたの言う通りよ。その先は言わなくてけっこう。私達は見捨てられたのよ。でもそれはあんたが家庭教師になる正当な理由にはならないと思うんですけど?」

風太郎「理由はいくつかある。まず1つに消去法だ。さっきも言った通り唯一の選択肢だったプロの家庭教師がダメなら同級生に教わるという普通ならあり得ない選択しか残されてなかったからだ。」

 

風太郎「2つ目に、プロの連中とは違う目線から教えてやれることだ。0から始めてまだ高校の勉強を1年とちょっとしかやらないで学年主席になった俺がどうやって勉強したか直々に教えることができる。」

 

風太郎「3つ目にいろんな意味で距離が近い。時間の都合も合うし大人より話やすいだろ。まぁ、そこは同級生だから言うまでもないが。」

 

三玖「でも、フータローじゃなくて、以前より良いプロの家庭教師を見つければいいだけ。」

 

次女と三女めっちゃ反抗してくるな。

四葉と五月なんて空気だぞ。

 

風太郎「じゃあ、その家庭教師はどこにいる。いつ見つけられる。お前らにピッタリな家庭教師がそう何人もいるとは思えんがな。不確定要素が多すぎる。どちらも不確定ならもう素直に俺で妥協しとけ。」

 

大分適当言っちゃったけど大丈夫か?揚げ足とりにくるんじゃねぇぞ。

 

5人「…」

 

…流石に追い詰めすぎたか?ダメだ、家族以外とこんなに長く話すのが久々すぎて加減がわからない。

 

風太郎「…まぁ、かくいう俺もそこまで自信があるわけではないし、お前らの不安もわかる。だからお試しということで今日から1週間、いや、3日間だけでいい!俺に家庭教師をさせてくれないか?それでお前らがダメだと判断したら俺は大人しく辞めることにする。それでいいか?」

 

しばしの沈黙の後…

 

一花「んー、私は賛成かなぁ?とりあえず3日間だけならいいんじゃない。期間も短いし。」

 

お、ナイス一花。これに釣られて皆賛成してくれれば儲けものだ。朝に俺を困らせた罪はこれで不問にしてやろう。

 

四葉「はい!私も賛成します!同級生の上杉さんなら楽しく勉強出来そうですし。」

 

…四葉、朝のタックルの罪を不問にしてやろう。よく見たらお前のリボン、センスいいな。俺にファッションは分からんが。ごめんな?悪目立ちリボンとか内心思ってしまって。

 

五月「私も賛成ですね。上杉君に教えてもらった経験がありますけど、誰のどの説明よりもわかりやすかったですから。」

 

五月、ごめんな、センスのないヘアピンとか、爆食い女とか内心悪口言って。お前のヘアピンよく見たらとっても素敵だ。これから勉強はしっかりと見てあげるからな。

 

三玖「…わかった。3日間だけ受けてあげる。でもそれでダメだと思ったら素直に辞めてよね?」

 

よしよし、こいつは何考えてんのかよく分からないがとりあえずはよしとしよう。

 

風太郎「…二乃もそれでいいか?」

二乃「…はぁ、分かったわよ。3日間だけだかんね!」

風太郎「決まりだな。」

 

こいつらも人の子。妥協点を出せば素直に応えてくれるってもんよ。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

風太郎「」

 

絶句。言葉が出ない。覚悟はしていたがまさかここまでとは…。俺が昨日のうちに準備した五月用の小テストやらせてみたのだが…(一枚だけしか用意してなかったら昼休みに5枚複製した。)

 

風太郎「5人全員合わせて100点て…嘘でしょ?」

五月「おかしい…勉強したはずなのに…」

二乃「うへぇ〜疲れたぁ〜…」

三玖「…」ズ-ン

四葉「あはは…」

一花「‪( ˘ω˘ )‬スヤァ…」

 

…なるほど、これは確かにヤバイ。芳しくないどころの話ではない。しかも何これ?川の名前を答えさせる問題で答えはガンジス川なんだが、四葉の野郎、何がマイケル川だ。わからないからって適当すぎんだろ。舐めてんのか。

 

ちなみにに点数は一花12点二乃20点三玖30点四葉8点五月30点。

 

…ん?五月、俺が昨日教えたベクトルはしっかり正解してるな…。ちゃんと復習してくれたんだな…。あれ?なんだろう涙が…。何でだ…?

 

 

こいつらの出来なさ具合のせいだな。

五月の成長度のプラスなんて誤差の範囲でしかない程に元々がマイナスすぎる。

御託を並べても仕方ないな。もうやるしかない。

 

風太郎「…テストの復習するか。おい四葉、そこの寝てる一花(バカ)を起こせ。」

四葉「分かりました!」

 

素直でよろしい。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

風太郎「モンテスキューは三権分立を唱えたことで有名だ、じゃあ、この三権分立ってなんだ、分かるか?」

 

風太郎「この漢字、漢文において超重要な。耳って書いて"のみ"だ。おい寝るなそこ、一花。おい四葉、そいつの耳引っ張ってやれ、体で覚えさせるぞ。」

 

風太郎「お次はベクトルの問題だ。五月、お前が説明しろ。この前教えただろ?定着度をチェックしてやる」

五月「ええ?!」

 

風太郎「電池の問題は難しいが頑張れ。まずはイオン化列を暗記しろ、その次は_____」

 

風太郎「空白の後ろは前置詞で、補語も目的語もない。てことはこの空白には自動詞が入る。この4択問題の自動詞はしっかり暗記な____」

 

と、かれこれ教えていたら下校時刻となっていた。

 

風太郎「お、もうこんな時間か。まぁ初日はこんなもんか。」

 

5人「」チ-ン

 

屍累々だな。初日から飛ばしすぎたか?だがこれくらいは付いて来てもらわないと困る。

 

風太郎「お前ら、今日はよく頑張ったと言いたいが、家に帰ったらしっかり復習しとけよ!」

 

五人「は〜い…」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

帰り支度を終え、今はそれぞれの家へと向かうため歩いている。俺は前に先行して楽しく会話している五月の姉達4人をぼんやりと眺めながら隣に並んでいる五月に話しかける。

 

風太郎「なぁ。」

五月「はい?」

風太郎「今日の俺の教え方はどうだった?」

五月「分かりやすかったですけど付いていくのがやっとでした。」

風太郎「ふむ、やはり進度は落とした方がいいか…」

 

明日はどんな授業をやろうか考えていると五月は

 

五月「必死なんですね、やはり給料が他より断然良いからですか?」

風太郎「…まぁ、そうだな。詳しくは言わんが事情があってな。」

五月「事情?」

風太郎「気にしないでくれ。とにかく俺はお前らの成績を上げるための努力は惜しまないつもりだ。たとえダメだと判断されて首になろうとも、この3日間が無意味だったなんて事にはしたくない。」

 

事実、これは俺の本心である。確かに5人まとめて教えるなんて相当な労力だが、相場の5倍という時給の良さは圧倒的だ。せめて貰う報酬分くらいの物は残していきたい。

 

五月「…そうですか。期待してますよ?」

 

そう言って五月は俺に優しく微笑む。

…なんだ?こいつのこんな顔を見てるとなんかむずむずしてくるな。多分気のせいだが。

 

風太郎「といっても首の皮一枚であるこの状況はなんとかしたいな。今のところ非協力的なのは二乃と三玖だが、これは恐らくだが一花もあれでいて結構内心めんどくさがっている。お前と四葉が協力的なのは本当に助かるよ。」

五月「別に貴方の為ではありません。勉強は自分のためにやるものですから。」

 

…自分のために、か…

 

五月「…?どうかしました?」

風太郎「いや、何でもない、そうだな、お前らは全力で自分のやるべきことだけ考えて勉強すれば良い。サポートはしてやる。」

五月「…ふふっ、わかりました。」

 

 

 

 

 

 

一花「お熱いねぇ、二人とも♡お姉さん妬けちゃうなあ。」

二人「?!」

 

こ、こいつ、いつのまにか後ろにきてやがった。全く気づかなかったぞ…

 

風太郎「おいこらちょっと待て、今の会話のどこにお熱い要素があった。詳しく言ってみろ。」

一花「貴方の為ではありません!全力でサポートしてやるよ。期待してますよ?」

風太郎「はいもういいです頼むからやめろ!」

 

地味に物真似が上手いところと若干捏造されてるところがまた一段と鬱陶しい。あとω←こんな感じの口してにやけてるのもな。改めて言われるとガチ恥ずかしいこと言ったな俺。五月なんて顔真っ赤にして黙っちまったじゃねえか。妹はもうちょい大切に扱いやがれ。

 

一花「それはそうとフータロー君、酷くない?私結構やる気あったんだよ?なのに私の内心はめんどくさがってるなんて思ってたんだ?心外だなぁ。」

 

聞かれてたのかよ。

 

風太郎「ほ〜う?俺の講義中うたた寝してたやつはどこのどいつだっけなぁ。」

一花「誰だろ〜?なんせ同じ顔だから誰が寝てるかなんてわからなiごめんなさい私です謝るから睨まないで…」

 

いや毎度の事ながら俺の目つきそんな悪い?狙い通りなんだが何か失った気がしてならない。そろそろ泣くぞ?

 

風太郎「はぁ…そこまで怒ってないから気にすんな。」

一花「うう、フータロー君の睨む顔、本当に怖かったよぉ〜…お姉さん泣きそう。」

風太郎「悪かったよ!でもお前も調子にのりすぎだ。」

一花「反省しまーす…」

 

やっぱりこいつはいつかお灸を据えてやらねばならんな。

 

一花「あ、五月ちゃん。ちょっとフータロー君に話があるから二人きりにしてもらえないかな?」

五月「え?はい、わかりました。」

 

と言ってて五月は少し走って前の集団へと混ざっていく。

 

風太郎「なんだ話って。」

一花「んー、ちょっとフータロー君とお話ししたいなぁって。」

風太郎「は?」

 

話の内容を聞いてるんだが。

 

一花「内容は何でもいいよ?例えばフータロー君は姉妹の中で誰が一番好みかとか。」

風太郎「帰る。」

一花「冗談だって」

 

やっぱりこいつ何がしたいのかよく分からん。

なんでも見透かしたような態度とりやがって。

 

一花「やっぱりフータロー君、不良なんだよね?」

風太郎「違う!」

一花「おやおやぁ?さっきと反応が違うなぁ。何かあるのかなぁ?」

風太郎「何にもない。」

一花「まぁ、フータロー君が喧嘩してるところ、以前、たまたま見ちゃったんだけどね。」

 

今なんt…っ!

ちょっとまて、こいつがカマをかけしようとした可能性もあるな。

 

風太郎「…なんのことだ?」

一花「…ちぇ、ダメか〜」

 

やっぱりな。

…ほんとにこいつ面倒だな。やはりこいつは他の姉妹と違うな。馬鹿だが間抜けではない。細かいとこまで見てやがる。

 

多分、俺に最も欠如しているであろう、他人への関心、人を見る目。こいつにはそれがある。

…少し羨ましいな。

 

風太郎「はぁ、そういったカマかけならお断りだ。」

一花「あはは、ごめんね?フータロー君見ると少しいじめたくなっちゃうんだよ。でも、そうだなぁ、

 

私達の以前のこと知りたくない?」

 

風太郎「…」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

翌朝またあの五つ子どもとばったり会ってしまい、逃げようとするもまた四葉に捕まったりとお疲れの俺は、昼休みに学食でもあいつらに会うのが嫌だったためこうして学校を抜け出してワクドナルドで買ったハンバーガーとチキン○リスプを屋上で食べている。ちなみに合計で200円だ。

俺はいつも焼き肉定食焼き肉抜きを食っていると思ったか?だがこうして俺もたまには肉が食いたくなる時もある。学生はワックかサイ○リヤと相場が決まっているからな。200円で腹を満たせるワック最高。

 

学校抜け出すなんて悪い奴だって?不良だもの、しょうがないね。

 

風太郎「あ〜一人最高。」

 

大切だからもう一度言うと一人最高。

至福の時間を謳歌しながら俺はハンバーガーを食べる。平和だ。

 

風太郎「…」

 

だが、俺の内心はすぐに平和ではなくなってしまう。昨日の一花との会話内容を考えれば気苦労は増えるばかりである。あいつ、どうしてあんなことを俺に話した。本当によく分からん。

 

風太郎(一花が言うには、以前の学校は厳しいとこで、赤点常連で留年しかけたからこの学校に来たとか…他にも色々あったらしいが詳しくは聞けなかったな…)

 

だが、あいつに限って無意味なことを意味ありげに話すようなことはしないだろう。流石に俺でもわかる。

 

にしても留年しかけて転校とかありかよ。裏技にも程がある。

 

風太郎(こりゃしばらくは喧嘩は無しだな。時間がない。)

 

などと考えていたら突然、屋上に誰かがやってきた。頭にはウサギ耳の形をした悪目立ちリボン。あんなリボンしてるのは1人しかいない。

 

四葉「あ!上杉さん、ここに居たんですね!」

 

めんどうなの来ちゃったよ。どうしよ。

 

風太郎「…なんだ四葉。俺になんか用か?」

四葉「はい、見てください!この英語の宿題!」

 

そう言って四葉は俺に宿題を見せてくる。

 

四葉「全部間違ってました!あはははは!」

 

笑い事じゃねぇこの馬鹿が。チンパンジーなのはその無駄に高い身体能力だけでいいんだよ。頭までチンパンジーかお前は。

 

風太郎「お前、ほんとにウルトラバカだったんだな。」

四葉「今頃気付きました?」

風太郎「自覚はあったのね。」

四葉「流石にありますよ!」

風太郎「で、そいつがどうした?」

四葉「宿題教えて下さい!」

風太郎「…」

 

…やる気があるだけマシか。とりあえず家庭教師存続のためにも味方は増やした方がいい。

なんて打算していると

 

四葉「…だめ、ですか?」

 

と、少し落ち込んだように聞いてくる。

 

風太郎「はぁ…ほら、見せてみろ」

 

それを聞いた四葉はパァっと笑顔になると

 

四葉「はい、よろしくお願いします!」

 

と元気よく敬礼してきた。

…流石に中途半端な教えは出来ないよな。

こんなに嬉しそうにしてくれてるし。

 

風太郎「単語の確認からだな、これは______」

 

しばらく屋上で四葉に教えていたら予鈴がなった。

 

風太郎「時間か。終わらなかったところはまた今度な。」

四葉「うう、疲れました…」

 

…さっきから思ったんだけど、こいつのリボン生きてんの?四葉(本体)のテンションと連動してるんだが。

まぁ、細かいことは気にしないでおこう。これ以上追求してはダメな気がする。

それは置いといて、俺はこいつに聞きたいことがあるんだ。

 

風太郎「なぁ、四葉。ちょっと聞いていいか?」

四葉「いいですよ。何ですか?」

風太郎「その、前の学校について何だが…」

四葉「!…」

 

四葉は少し俯いた後、

 

四葉「あはは、もしかして誰かに何か言われました?」

風太郎「ああ、一花から少しだけ聞いた。でも詳細はあまり教えてもらえなかった。話せないような事なのか?」

四葉「いえ、特別言えないことではないんですが…」

 

 

四葉「…実は以前の学校で、私だけ唯一、進級出来なかったったんです。」

風太郎「…」

四葉「そのせいで、進級するはずだった四人は私のために全員で転校する道を選びました。みんなに迷惑をかけてしまいました。」

 

…なるほどな。

 

風太郎「お前が最初から俺が家庭教師をやることに賛成だったことや、今宿題を教わりに来たのはまた同じ過ちを繰り返したくないからか…」

四葉「流石上杉さん。大正解です。」

 

と、少し寂しそうに笑う四葉。

なんだこれ、こいつのこんな顔見てるだけでなんて居心地が悪いんだ…。

 

風太郎「まだ小テスト一回に昨日の授業一回だけだが、確かに一番ヤバそうなのはお前だな。点数一番低いし。」

四葉「うぅっ…」

風太郎「だが安心しろ、お前がやる気なら大丈夫だ。俺がお前を進級出来るぐらいの点数は取れるようにしてやる。」

四葉「…!はい!よろしくお願いします!」

 

と、四葉は満面の笑みを俺に見せてくる。

 

 

…こいつの笑顔に一瞬安心した自分に腹が立つ。

 

 

 

あと一花にお礼言っとかなきゃな。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

風太郎「すげぇ。一体家賃いくらするんだ…?」

 

放課後、昨日は図書室で勉強していたが、何日も机を占領して授業してたんでは迷惑になる。というわけで今日は五月、一花、四葉に連れられて五つ子の家に来ていた。

が、

こいつら、薄々感じてはいたが本当に金持ちのお嬢様なんだな…

 

五月「上杉君?何してるんですか、置いていきますよ?」

風太郎「あ、ああ、悪い、今行く。」

 

そう言って俺はエレベーターに乗る。

 

風太郎「お前ら、マジのお嬢様だったんだな…」

一花「あはは、でもお嬢様はやめて欲しいかな」

四葉「お父さん、お医者さんだからね〜」

 

なるほど、どうりで。さぞかし年収も高いのだろう。しかし医者か…俺の成績なら問題なく医大に進めるからな、国立なら学費も払えなくはないし、医者を目指すのも悪くないかも…動機は不純だが…。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

風太郎「広…」

 

中野家に入るとそれはそれはオシャンティな空間が広がっていた。

 

…経済格差とはこれほどなのか。まぁ、その分IQ格差も酷いがな。勉強にIQが関係あるかは知らんが。

 

五月「飲み物準備してきますので、適当に座ってて下さい。」

風太郎「あ、ああ、お構いなく…」

一花「ちょっと制服から着替えてくるね。」

四葉「あ、私も!」

 

そう言って二人は自室?へと入っていった。

一人取り残された俺!完全にアウェイ!

 

…まぁいい、今日の授業は日本史だ。ちなみに三玖の小テストで最も点数の良かった科目だ。一番何を考えているのか分からない&難攻不落なあいつを説得するには奴の得意科目での授業で圧倒的なわかりやすさと知識量を見せつけるしかない。

 

…ん?肝心の三玖はどこにいる?あとついでに二乃も…

 

と、ここで五月が飲み物が乗ったトレイを持って戻ってきた。

 

五月「麦茶ですけど良いですか?」

風太郎「ああ、ありがとう。いただくよ。」

 

そう言って俺は麦茶を一口飲むなり五月に問う。

 

風太郎「なぁ、二乃と三玖は今どこにいる?」

五月「え?あの二人なら私たちより先に学校を出たので部屋にいるかと…」

風太郎「玄関に俺ら以外の靴ってあったっけ?」

五月「…」

風太郎「…」

ピロリン♪

五月のスマホが鳴る。メールか。

五月「あ、二乃からのメールですね。内容は…」

 

無言で俺にスマホを見せる

 

内容はこうだ

 

今日サボるから上杉にはバレないようになんか上手いこと言い訳しといて!

 

安心しろ二乃、お前が信頼していたであろう妹はすんなりお前を売ったからもうバレてる。良かったな言い訳考えずに済んで。

 

一花「おまたせ〜」

四葉「早速始めましょう!そういえば三玖と二乃は?」

 

…ブチっ

 

一花「あれ、今なにか切れた音g…」

 

 

風太郎「…一花、四葉、五月、すまんなちょっと用事思い出したわ。」

 

 

四葉「う、上杉さんから金色のオーラが見える!!」ダラダラ

五月「はわわわわ」

一花「え、ふ、フータロー君…?どうしたの…?髪が立ってるよ…?」

 

安心しろ一花、ちょっとの間、戦闘民族になるだけだ。

 

風太郎「お前らは先にこのプリントで予習しておけ。すぐ戻る。」

3人「お、お気をつけて〜」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

二乃「うん、このクレープ美味しいわね!五月がハマる理由も分かるわ!」

三玖「…」

二乃「あによ、あんた食べないの?」

三玖「…ううん。食べるよ。」

二乃「…まさか、サボったこと気にしてるんじゃないでしょうね。」

三玖「サボって良いのかな。私たち以外の3人は真面目にやろうとしてるのに…」

二乃「あんたは家庭教師があいつで良いって言いたいわけ?」

三玖「そうじゃないけど…でもフータローはフータローなりに頑張ってる。」

二乃「…そんなの最初だけよ、どうせあいつ、サボった私たちを見捨ててそのまま辞めていくわよ。パパにダメだったって報告するまでもないわ。」

三玖「そうだね…」

二乃「それにあんなスパルタな授業もうこりごりだわ。上手いこと五月が言い訳してくれてるだろうし、今日はパーっと遊んであいつのことは忘れるわよ」

三玖「…うん、そうだね。」

風太郎「楽しそうだな!俺も混ぜてくれよ!」

二乃「ええ、良いわy…」

風太郎「ん?どうした?」

三玖「な、なんで…」ガタガタ

風太郎「さぁ!今から鬼ごっこな。喜べお前ら遊べるんだからなぁ!捕まったら強制連行だ!

 

 

(地獄の勉強会)にな。」

 

二乃「や、こ、来ないで…」

三玖「」ガタガタ

風太郎「覚悟は…いいな…?」

 

俺はなるべく怖がらせないように全力で笑顔を作る。逆に怖いって?気のせい気のせい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

二乃「う、ひっぐ。怖ごわがっだよぉ〜」

四葉「おーよしよし、怖かったねぇ〜」

 

三玖「フータローは、怖い…怖いよ…」

一花「あはは…」

 

二乃と三玖はよほど怖かったのかそれぞれ四葉と一花に抱きついて泣いている。

 

五月「女の子を泣かせるなんて…最低ですね」

風太郎「うるせえ!サボろうとしたあいつらが悪い!!」

 

俺を炉端のごみを見るような目で見るな。

 

一花「でも、やり過ぎなんじゃない?女の子は優しくしないとだよ?」

 

いや、確かに怖がらせてしまったのは事実だが…

 

五月「貴方の目つきはただでさえ怖いんですからね?その上追いかけられるとか、下手したらトラウマものですよ?」

風太郎「…」

 

これって俺が悪いの??正当な罰だろ。

…だが、怖がられたままだと授業もままならないか…謝るのは癪だが、ここは心の広い俺が折れてやろう。

 

風太郎「その、なんだ、二乃に三玖、怖がらせてすまなかった…謝るから授業を受けてくれないか?今日は三玖の得意な日本史にしたんだ。」

 

二乃「ふん!」プイッ

三玖「…」

 

やべえどうしよう。勢いであんなことしなければ良かったかも。

 

三玖「…わかった。ちゃんと受けるよ。」

風太郎「!本当か!」

三玖「うん、そのかわりダメだと思ったら辞めてもらうから。」

風太郎「ああ、それでいい!」

 

危ない危ない。三玖はイマイチ何考えてんのか分からないが案外素直なとこあるじゃないか。

 

風太郎「二乃も受けてくれないか?明日はお前の得意な英語にするつもりなんだ。」

二乃「嫌よ、本当に怖かったんだからね!」

風太郎「それは本当に悪かったよ…」

 

ダメかもしれない。三玖よりこいつの方が厄介だったとは…。

 

三玖「二乃、3日間は受けるって約束したのにサボろうとした私たちにも非はある。だから今回のことは忘れて、一緒に授業受けよ?」

 

やべえ、なんか今ジーンと来た。あと私たちにも、じゃなくて、私たちに、だろ?訂正しなさい。

 

二乃「…ふんっ、こいつもすぐ辞めていくわよ。どうせこいつも目先の給料に釣られてやってるだけじゃない。」

五月「…二乃、そんなことはありませんよ、彼は確かに見た目怖いですし人付き合いは悪いですしデリカシーのかけらも無いですしクラスでは浮いてますし成績自慢をしてきます。」

 

誰だよそいつ酷いな。俺かよ。

 

五月「それに、何か事情があるようなので給料が良いというのも理由にあるのでしょう。ですが、それだけということはありません。彼は、しっかり私たちに向き合ってくれていますよ?」

 

…。俺なんかしたっけ?

 

一花「ねえねえフータロー君。五月ちゃん、こんなにフータロー君のこと信用してるよ?それに応えることが出来るのかなぁ〜フータロー君に。」

 

…はぁ、こいつはいつもなんてタイミングで煽ってきやがる。ここまで言われたら仕方ねぇ。

 

風太郎「はぁ、仕方ねぇ。…確かに最初の動機は給料だったよ。五月のいった通り事情があってな。だが、それとこれとは別だ。もうここまで首突っ込んだんだ。とことんまで付き合ってやる。そして、俺は絶対にやり遂げてみせる。お前らの成績を上げて、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「5人全員、仲良く笑顔で卒業してもらう!!」

 

 

ごめん、俺今なんて言った?ねぇなんて言った?

なんてこと口走ってんだ。

 

 

 

…実際、この宣言をしてからなんだろうな。俺がこいつらを、こいつらが俺を意識し始めたのは。

もちろん恋愛的な意味で。最も俺の場合、自覚するのは大分後の方になるが。

 

 

一花「あはは、やるじゃん♪」

二乃「…ふんっ!」

三玖「…私にも…出来るかな…」

四葉「私も精一杯努力します!」

五月「ふふっ、お願いしますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この宣言は後に人生最大の後悔になるのは言うまでもなかった。

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