二乃「もうすぐ花火大会なのに…
なんで私たち、家で宿題やってんのよー!!」
風太郎「黙って刑務作業をやれ囚人番号2番」
二乃「番号!」
俺の名前は上杉風太郎。ただ今成績不振の五つ子どもに宿題をやらせている。
こいつらの文句は一切受け付けない。宿題をやらない学生ニートに人権は無いからな。
二乃「ねぇ…あいつなんとか出来ないの?」
一花「…無理だと思うよ?あれを見てよ」
風太郎「…」ゴゴゴゴッ
五月「いつか見た金色のオーラが出てますね…」
四葉「戦闘民族と化した上杉さんは誰にも倒せないよ…大人しく宿題終わらせるしかないね…」
三玖「そもそも宿題やってない私達が悪い気もするけど。」
言っておくがお前ら聞こえてるからな。
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四葉「上杉さん。」
風太郎「なんだ4。」
四葉「ちゃんと名前で呼んでくださいよ!?あ、宿題終わったんでみて下さい。」
風太郎「空白が多すぎるんだが…」
四葉「まじめにやりましたけど、これ以上分かりません…」
適当にやってたわけじゃないのか。真面目にやってこれとか尚更やばいけどな。
風太郎「はぁ、仕方ねぇ…。まとめて授業するか。」
5人「えっ」
風太郎「えっ、じゃねぇ。お前らどうせ殆ど解けないだろ。必要最低限のことは教えとかないとな。」
二乃「ちょっと!花火大会に間に合うの?」
風太郎「お前らが自力でやるのと俺の超親切な解説付きでやるのどっちが早く終わるかよーく考えるんだな。」
二乃「くっ…分かったわよ…。」
はぁ、俺もここまでくるとお人好しだな。別に宿題なんてやったという事実さえあれば中身で怒られることはほぼないし。(答え丸写しはバレたらあれだが。)
こうして花火大会前のミニ授業が行われた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一花「着いた〜!」
二乃「花火大会何時からだっけ?」
三玖「19時から20時」
やる気を出してくれたは良いが、成績の悪いこいつらの宿題の出来は非常に悪く、教えるのは毎度のごとく疲れる。
手を替え品を替え、なんとか宿題を全部理解させることができた。で、そんな俺の努力が実を結んで花火大会までには余裕で間に合ったのだが…
風太郎「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
どうにもだるい。帰りたい。
五月「なんですか、辛気臭くてやけに長いため息ですね。」
風太郎「誰のせいだと思ってやがる。」
そう言って俺は五月を見る。
ちなみに、さっきまでただの私服でいた五月も浴衣に着替えている。ただでさえ顔が同じなのに髪型を変えられるとますます見分けがつかないが、あのセンスのかけらもないヘアピン(☆←こんな感じの)があるおかげでかろうじて見分けがつく。
風太郎「…」
五月「な、なんですか、そんなに見ないでください…」
そう言って五月は頰を赤らめる。
風太郎「いや、馬子にも衣装だなって。」
五月「褒めてませんよね…」
まぁ、見てくれは悪くない。手に持ってるりんご飴も中々マッチしている。これでアメリカンドッグとか持って口に食べカスつけてたら台無しだったがな。こいつだと何故か容易に想像できる。
風太郎「…あ〜帰りてえ…」
一花「まぁまぁ、そう言わずに〜。それよりどう?私たちの浴衣姿、似合ってる?」
風太郎「おー、ニアッテルニアッテル」
一花「適当っ」
やけにテンション高いな。たかが炎色反応を見るだけなのに、何故こうも人が集まり、馬鹿騒ぎするのか理解に苦しむ。
一花「もっと女子に興味持ちなよ〜。ほら、浴衣は下着を着ないのとか興味ない?」
風太郎「それは昔の話な、知ってる。」
一花「本当かな〜?」
そう言って一花は胸元を見せてくる。
一花「なーんて冗談でーす。」
風太郎「…」
一花「どう?少しはドキドキした?」
風太郎「いや全く。」
一花「やっぱり不能…」
風太郎「違うって言ってんだろ!」
俺が全力で否定していると一花の電話が鳴る。
一花「あっ、電話だ。」
二乃「何してんの〜?置いてくわよ〜?」
一花「ごめーん、ちょっと電話。」
そう言って一花は立ち止まる。一人だけ置き去りもかわいそうだし待つか?と思ったが、先に行ってて、とジェスチャーを送られたため、俺は早歩きで妹集団に合流する。
風太郎「どこに向かってんだ?」
二乃「どこでもいいでしょ。まったく、なんであんたまで居るのよ…。」
風太郎「俺はらいはと来てるだけだ。」
らいは「ねえねえお兄ちゃん!これ四葉さんにとってもらったんだ!」
そう言ってらいはは大量の金魚が入った袋を見せてくる。…金魚が酸欠になりそうだな。というか、
風太郎「それ家じゃ飼えないぞ…」
らいは「あっ!そうだった…どうしよう。」
四葉「なら、私達の家で飼いましょうか?水槽ならまだありますし、いつ観に来てもいいですよ。」
そういえばこいつらどデカイ水槽で熱帯魚飼ってたな。
らいは「ほんとですか!?四葉さん大好き!」
らいはは四葉に正面から抱きつく。
四葉「〜〜〜っ!あーもう本当にらいはちゃんは可愛いです…そんならいはちゃんにこれもあげます!」
そう言って四葉はらいはに花火セットを渡す。
風太郎「それ今日一番要らないやつ!」
四葉「待ちきれなくて買っちゃいました。」
らいは「お兄ちゃん、帰ったらやろうね!」
やっぱり今日一番必要だったわ。らいはと花火が出来る。
風太郎「四葉マジありがと感謝してる。」
四葉「あはは…喜んでもらえて何よりです。」
らいはは貰ったものがよほど嬉しいのかはしゃぎまわる。
風太郎「おいらいは、あんまはしゃぐとはぐれるぞ、俺の服に掴まれ。」
らいは「は〜い。」
二乃(…お兄ちゃん、ねぇ…)
風太郎「にしてもゴミが人のように混み合ってんな。」
三玖「逆。」
風太郎「こんなんで花火見れんのか?」
四葉「二乃がお店の屋上を貸し切ってるので大丈夫ですよ。」
風太郎「ブルジョワかよ…」
今時本当にいるんだな、貸し切りなんてする金持ち。住んでる世界が違いすぎる。
風太郎「なら、早いとこそこに行こうぜ」
二乃「待ちなさいよ、お祭りに来たのにあれも買わずに行くわけ?」
風太郎「あれってなんだよ。」
三玖「そういえばあれ買ってない…」
一花「あ、もしかしてあれのこと言ってる?」
四葉「早くあれ食べたいなぁ〜」
五月「あれやってる屋台ありましたっけ…」
風太郎「だからなんだよ。」
あれあれあれあれ五月蠅いな。さっさと具体的な名前を言え。あと一花はいつのまに戻ってきてたんだ?
そう思っていると、五つ子が一斉に言う。
5人「せーの」
一花「かき氷」二乃「りんご飴」三玖「人形焼」四葉「チョコバナナ」五月「焼きそば」
風太郎「…」
らいは「…?」
四葉「全部買いに行こー!」
風太郎「なぁらいは、あれって本当に五つ子だよな。」
らいは「あれだけで五つ子か疑わなくてもいいと思うけど…」
まぁ性格もバラバラだし、食べ物の好みが分かれていてもちっとも不思議じゃない。でも、誰も食べたいものが被らないってのも面白いな、この五つ子は。
こうしてそれぞれ食べたいものを買うべく一旦解散した。
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五月「む〜〜っ」
一花「機嫌直しなよ〜」
風太郎「どうしたんだ?そんな不機嫌そうにして。」
五月「思い出しても納得いきません!あの店主、一花には可愛いからおまけしたのに、私には何もないなんて!」
風太郎「そんなにおまけが食いたかったのか?あのなぁ、店主も商売でやってんだぞ?少しは遠慮しろ。」
五月「ちがいます!!同じ顔なのにってことです!そんないつも食い意地張ってるみたいに言わないでください!」
いやいつも張ってるじゃん。
風太郎「ああそっち。」
一花「フータロー君わざと言ってるよね?」
風太郎「まぁ、店主の好みがショートカットだったってだけで、別にお前の見てくれが悪いってわけじゃないだろ。」
五月「…貴方でも気の利いた言葉を言えるんですね。」
風太郎「どーゆー意味だ。」
一花(五月ちゃんの顔赤いなぁ〜…我が妹ながらチョロい…)
しばらくして、全員が目当ての物を買えたのでまた合流したのたが…
三玖「複雑な五つ子心だね…」
五月「うぅ…まったくです。」
一花「これ食べて元気だしなよ。」
四葉「らいはちゃん、次はくじ引きやりましょう!」
らいは「あ、スイッチ欲しい!」
風太郎「やめとけやめとけ、どうせ当たんねぇよ。」
一花「なんかYouTuberが良くやるよね、当たりがあるか検証するやつ。ヒ○ルとか。」
四葉「夢のないこと言わないでよ〜」
二乃「あんたたち遅い!!」
二乃は早く目的の場所に行きたいのか周りの店などには目もくれず、逆にそれ以外はよそ見ばかりで距離ができてしまっていた。
風太郎「二乃のやつはりきってんな…お前らもずっとテンション高いし。」
祭に来るとテンションが上がる気持ちも分からなくはないが。
三玖「…花火はお母さんとの思い出なんだ。」
風太郎「思い出?」
三玖「うん。お母さんは花火が好きだったから、毎年揃って見てたんだ。お母さんがいなくなってからも、毎年…だから、私たちにとって花火は思い出なんだ。」
風太郎「…なるほどな。」
どうりであいつが張り切るわけだ。しばらく家庭教師をして思ったのだが、二乃は凄く姉妹を大切にしている面がある。毎年花火を見るという行為はこの姉妹の目に見える絆なのだろう。それを大切にしないわけがないか。
風太郎「なら始まる前にさっさと行こうぜ。」
三玖「うん、そうだね。」
二乃「…あれ?四葉と妹ちゃんは…?」
『まもなく、開始いたします。』
放送がかかった瞬間、人混みが大きく動き始める。
「どっちだっけ?」「はやく場所とらないと!」「もう上がってる?」
二乃「え、ちょっと、みんな…四葉!
一花!
三玖!
五月!
………フ…」
風太郎「掴んでろ。」
二乃「…!」
本当に世話の焼ける。張り切りるのはいいが一人で先に行き過ぎないで欲しい。
二乃「…なによ、私はあんたの妹じゃないんですけど。」
風太郎「あ?なんの話だ。」
二乃「な、なんでもないわよ!」
風太郎「ひとまず予約した店に行くぞ。あいつらも多分固まってくるだろ。」
二乃「あんたなんかお呼びじゃないわよ。」
こいつ本当に可愛くないな、助けてやったのにこの態度かよ。このまま人混みの中に放り込んでやろうか。
だが、そこはぐっと堪える。あんな話を聞かされた後で見捨てるほど俺も鬼じゃない。
風太郎「はぁ、5人で花火見んだろ?さっさと行くぞ。」
二乃「……っ。」
それから二乃は大人しく俺に掴まったまま、二人で人混みを抜け出した。
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二乃「やっと抜けたわ、あんたが道間違えるから遅れたじゃない!」
風太郎「あ?お前の説明能力が足りないからだろ。あと歩くの遅い。」
二乃「ちっ。まぁいいわ、ここの屋上よ。きっともうみんな集まってるわ。」
そう言って階段を駆け上がるが……
ヒュルルルルル〜
二乃「あっ。」
ドォォォン!
花火が打ち上がると同時に、二乃は重大なことを忘れていたのに気づいた。
風太郎「なんだよ。」
二乃「よくよく考えたら…」
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四葉「始まっちゃった…」
らいは「きれ〜い。」
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五月「うぅ…電話も繋がらないし…みんなどこに行ったんでしょう…」
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三玖「あぅぅ…人混みで疲れた…」
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一花「…みんな、ごめんね…」
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二乃は苦笑いしながらこう言う。
二乃「…今年のお店の場所、私しか知らない…!」
風太郎「…………………」
俺も思わず苦笑い。
やっぱこいつらと関わるとダメだ。一難去ってまた一難。せっかくの休日なのに、最高にめんどくさい一時間を過ごす羽目になるなんて誰が予想できるだろう。
探すだけならそんなに手間じゃないんだが…どうやら運命の神様はその程度で許してくれないらしい。
刺激的でハードな五つ子救出作戦の始まりだ…。
ーー花火大会終了まで残り59分と10秒ーー