珈琲   作:おたふみ

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十話

比企谷家

 

「たで~ま」

「おかえり~」

「疲れた…」

「どうしたの?お兄ちゃん」

「やはり俺の青春ラブコメがまちがったのは親父のせいだ!」

「なにそれ?」

「説明するから、マッカンくれ」

 

「あぁ、疲れた体と心と脳に糖分がしみわたる…」

「お兄ちゃん、キモイよ」

「うるせぇ」

「しかし、雪乃さんと結衣さんのお父さんがウチのお父さんと同級生だったとは…」

「しかも、事故の話をまとめてた…。あのクソ親父め」

「でも、結衣さんはウチに来たよね。お茶菓子持ってさ」

「あれは、由比ヶ浜の独断だろうな」

「お兄ちゃんさ…」

「なんだ?」

「さっき、『ラブコメ』って言ったよね?」

「ん?い、言ったかな?言ってないんじゃないかな?」

「お兄ちゃん!」

「ひゃい!言いました」

「て、ことは…。お兄ちゃんには好きな人が居る!! 」

「なん…だと…」

「そんなこと言って、とぼけてもダメだよ」

「ちっ!」

「ただいま~」

「ほら、母ちゃん帰ってきたぞ」

「お兄ちゃん、今度話してもらうからね」

 

「なあ、母ちゃん。親父が俺の事故の話をまとめたのは知ってるか?」

「あぁ、あれね。説教してやったわ」

「親父が正座させられてる姿が目に浮かぶ…」

 

 

ほぼ同時刻

雪ノ下雪乃のマンション

 

(まったく、父さんも困ったものだわ。勝手に話をしていたなんて。私のモヤモヤしてたあの時間を返して欲しいわ)

(…でも、比企谷君のお嫁さんなんて…。比企谷君も満更でもなさそうだったし…)

「比企谷雪乃、雪ノ下八幡…。うふふ」

「雪乃ちゃん、どうしたの?」

「ね、姉さん!いつから居たの!」

「さっきから声かけてたのに、まったく気がつかなかったのよ」

「そ、そう」

「雪乃ちゃ~ん」

「な、なにかしら」

「今のところ独り言は何かなぁ?」

「きょ、今日、たまたま父さんに会ったら、比企谷君に私を嫁になんて言ったから…」

「ほほう」

「そ、そうだ!姉さん!父さんと比企谷君のお父さんと由比ヶ浜さんのお父さんが友人って、知ってた?」

「え?初耳だけど…」

「やっぱり」

「雪乃ちゃん、どういうこと?」

「あの事故の話、父さん達でまとめたのよ」

「そうゆうことか」

「姉さん、どうかしたの?」

「事故の後、しばらくして、父さんが母さんに怒られてた。しかも、正座して」

「まったく…」

 

 

ほぼ同時刻

由比ヶ浜家

 

「ただいま~」

「お帰りなさ~い」

「パパにあったよ」

「へぇ~、どこで?」

「ん~と、喫茶店?」

「たぶん、いつものところね」

「そしたらね、ヒッキーとゆきのんのお父さんも居てね、三人が友達だったんだよ。知ってた?」

「ヒッキー君の事故の時に聞いたわ」

「それでね、ゆきのんのお父さんが、ゆきのんをヒッキーのお嫁さんにって言ったら、パパが結衣をお嫁さんにって…」

「パパ、よく言ったわ!結衣も雪乃ちゃんに負けちゃダメよ」

「それと、パパが事故の話をしてたの知ってる?」

「パパが勝手に話をしてきたから、お説教しちゃった。テヘッ」

「テヘッって…」

 

 

父親達は奥さんに頭が上がらないのでした。

 

 

 




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