『休日とは木の影で休む日である』なんて考えを巡らせている土曜日の朝…。
「おはよう、比企谷君」
「おはよう、雪ノ下」
「早く起きて着替えてくれないかしら」
「いや待て。まず、お前が俺の部屋に居ることを説明してくれ」
「小町さんに案内されたのだけど」
「そっちじゃねぇよ。理由の方だよ」
「今から私の実家に行くわよ」
「断る」
「それを断るわ」
「嫌だよ。だって、魔王と大魔王が居るんだろ?村人Aには攻略不可能だよ」
「大丈夫よ。父さんが居るわ。今日の目的は父さんと話をすることなのだから」
「あぁ、前に来いって言われたな」
「今日は珍しく父さんも時間があるから是非にと」
「ちなみに、由比ヶ浜は?」
「三浦さん達と遊ぶ予定があるそうよ」
「今、凄い悪い笑い方しませんでしたか?」
「気のせいよ。さぁ、早く着替えなさい」
「…なぁ、雪ノ下」
「なにかしら?」
「俺の着替え見たいのか?」
「!!!…ごめんなさい。すぐ出るわ」
「お待たせ…」
「カマクラさん。ニャ~♪うふふ」
5分経過
「ニャ~♪ニャ~♪うふふ」
「パンあったかな…」
10分経過
「ニャニャ?ニャ~♪うふふ」
「モグモグ」
15分経過
「大人しいわね♪ニャ~ン♪」
「さてと、歯を磨いて…」
20分経過
「モフモフモフ~♪うふふ」
「小町、そろそろ声かけていいかな?」
「あと少し待ってあげたら」
30分経過
「いい毛並みですね~♪うふふ」
「小町、もういいか」
「あんまり遅くなってもアレだから、いいんじゃないかな」
「あ~、雪ノ下。お楽しみのところを悪いが…」
「はっ!」
「そろそろ行くか?」
「え、えぇ。そうね」
「都築、行くわよ」
「かしこまりました」
「都築さん、駐禁切られませんでしたか?」
「パトカーは来ましたが、ナンバーを確認して通過していきました」
「これが忖度かぁ」
「御嬢様、比企谷様、到着いたしました」
「ありがとう、都築」
「都築さん、ありがとうございます」
「……」
「何か言ったらどう?」
「でけぇ」
「粗末な日本語ね。本当に国語学年三位なのかしら」
「平民がこんな豪邸見たらこうなるっつうの」
「父さんも待っているわ。行きましょう」
「ただいま帰りました」
「お邪魔しま~す」
「ようこそ、比企谷さん」
「…母さん」
「ご無沙汰しています」
「先日は陽乃がご迷惑を…」
「い、いえ、お気になさらずに…」
「比企谷君、姉さんと何かあったのかしら?」
「睨まないでください。ちょっとマスターの店で会っただけだよ」
「では、主人が待っていますので、応接室に」
「はい…」
応接室に入ると、雪ノ下父と陽乃さんが待っていた。
「比企谷君、よく来たね」
「比企谷さん、先日は大変失礼いたしました…」
「わ、わ、陽乃さん、やめてくださいよ」
「陽乃さん?貴方、姉さんを名前で呼ぶなんて…」
「仕方ないだろ、みんな『雪ノ下さん』なんだから」
「あのマスターも意地の悪いところがあるからな。お灸をすえたってところだろう」
「ご明察です。だから、陽乃さんも気にしないでください」
「ありがとう。それに、父さんにもフォローを入れてくれたみたいで…」
「まぁ、あれです。貸し1にしてください」
「もう、比企谷君は優しいんだから。お姉さん好きになっちゃうよ。あ!その貸し1で『俺の女になれ』とか言っちゃう?」
「言いませんから」
「姉さん、いい加減にしてくれるかしら…」
「雪ノ下、陽乃さん怒りながら、足踏むのやめてもらえませんかね?」
「まぁ、座りなさい」
「はい、失礼します」
程なく、雪ノ下母が紅茶を運んでくる。
「こういうのって、お手伝いさんとかがやると思ってました」
「紅茶に関しては女性陣がうるさくてね」
「でも、雪ノ下…。雪乃さんの淹れる紅茶は美味しいですから」
「雪乃ちゃん、良かったね」
「雪乃さんの淹れる紅茶は美味しい…、雪乃さんの淹れる紅茶は美味しい…、うふふ」
「雪乃!しっかりしなさい!」
「はっ!すいません、母さん」
「君は学校でコーヒーを煎れているらしいじゃないか」
「部活仲間に振る舞う程度ですが」
「是非、君が煎れたコーヒーを飲んでみたいな」
「あら?アナタは私の淹れた紅茶がお気に召さないのかしら」
「い、いや、そうじゃない。比企谷君が煎れたコーヒーを飲んでみたいだけだ」
「ふふふ、冗談よ」
(うわぁ…。雪ノ下にそっくりだ…)
「時に比企谷君、雪乃とはどうだい?」
「質問の意味がわからないのですが…」
「雪乃を嫁にもらってくれるかという話だ」
「父さん!」
「い、いや、それは…」
「陽乃は、それなりに社交的だから、大丈夫だと思うが、雪乃はご存知の通りだ」
「アナタ、まだ早いわよ」
「早くはないぞ。由比ヶ浜も娘を嫁にと言ってるからな。比企谷君には雪乃を選んでもらいたいからな」
「アナタ、雪乃の気持ちもあるのだから」
「わ、私は別に…」
「雪乃ちゃんがいらないなら、私が比企谷君もらっちゃうよ」
「そ、それはダメ!ダメよ!」
「あら、雪乃も満更ではないようね」
「いやいやいや。まだ高校生ですよ。この先、どうなるかわかりませんから。雪ノ下、なんか言ってくれ」
「比企谷雪乃…、雪ノ下八幡…。うふふ」
「雪ノ下!頼むから、帰ってきてくれ~!」
休日の雪ノ下家は賑やかでした。