珈琲   作:おたふみ

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十六話

ゴールデンウィーク。それは、映画業界から発生した言葉で……。

 

「おい、八幡」

「なんだよ、人がモノローグにふけっている時に」

「お前、バイトしてこい」

「親父、俺は受験生だぞ」

「それは、ペンを握っている学生が言う言葉だ。お前が握っているのは携帯ゲーム機だ」

「ぐっ!親父のクセに正論を…」

「マスターの店に行ってくれ。勿論、勉強の合間でかまわん。予備校もあるだろうしな」

「マスターの店か…」

「技を盗むには、良い機会だろ?」

「わかったよ」

 

マスターに午後から行く旨を連絡しておく。

 

「おっ、来たな。奥に服が準備してあるから、着替えてくれ」

「うす」

「とりあえず、接客を頼む。余裕が出来たら、煎れ方を教える」

「わかりました」

 

程なく、女子大生3人組が入ってきた。

「めぐりは、この店初めて?」

「そうだよ」

(めぐり?)

「いらっしゃいませ」

「こんな格好いいボーイさんいたっけ?」

「アルバイトです」

「あ~!比企谷君だ!」

「城廻先輩、お久しぶりです」

「めぐり、知り合い?」

「高校の後輩だよ」

「高校生なんだ」

「はい」

「ご注文は?」

「比企谷君は何がオススメ?」

「俺はいつもブレンドっすね」

「じゃあ、それで」

「マスター、ブレンド3つです」

 

「坊主、知り合いか?」

「高校の先輩です」

 

「比企谷君、アルバイトはいつ入ってるの?」

「ゴールデンウィーク中限定で不定期ですね。勉強もあるんで」

「そっか~。比企谷君が居る時にまた来たいなぁ」

「めぐり、このコが好きなの?」

「大学で男を寄せつけないと思ったら」

「そ、そんなことないよぉ」

「顔が赤いよ」

「もう!!」

(城廻先輩特有のほんわか空気いただきました)

 

 

「じゃあ、比企谷君、また来るね」

「ありがとうございました」

「めぐりがまた会いに来るって」

「もう、違うよ!」

 

そして、夕方…。

 

「こんばんわ」

「雪ノ下さん、いらっしゃいませ」

「あ~!比企谷君、どうしたのその格好!」

「アルバイトです。雪ノ下さんはコーヒーを?」

「違うよ。ピアノを弾きに来たんだ」

「え?」

「お嬢さんには、たまにピアノを弾いてもらってるんだよ」

「へぇ」

「じゃあ、お邪魔しますね」

 

しばらく、雪ノ下さんのピアノをBGMに仕事をする。

 

「こんばんわ」

「川崎、いらっしゃい」

「比企谷、どうしたの?」

「アルバイトだ。どうた、この格好?」

「え?あ?うん、に、似合ってるよ…」

「ありがとよ」

「陽乃さんも、こんばんわ」

「沙希ちゃん、ひゃっはろー」

「え?」

「私と沙希ちゃんは名前で呼びあう仲なんだ。羨ましい?」

「羨ましいより、驚きですね」

「そうだ!比企谷君か沙希ちゃん、何かリクエストある?」

「雪ノ下さん、『FLY ME TO THE MOON』をお願いします」

「どんな曲?」

「大人気アニメのエンディングにも使われたジャズの名曲だよ。川崎も聞いたことあるかもな」

「任せて。弾き終わったら、お姉さんに惚れちゃうかもよ?」

「それはないと思いますけど、演奏は期待してます」

「もう、比企谷君はつれないなぁ」

 

♪♪♪♪

 

「比企谷君、どうだった?」

「すげぇ上手かったです」

「お姉さんに惚れちゃったかな?」

「あ、大丈夫で~す」

「もう!」

「比企谷、勉強は大丈夫なの?」

「空き時間には、裏でやってるから大丈夫だ」

「お姉さんが見てあげようか?」

「何もお返しできないんで、遠慮します」

「損得抜きって言ったら?」

「それこそ裏が有りそうで怖いです」

「じゃあ陽乃さん、私に教えてください」

「いいよ」

「いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?」

「それは秘密だよ。ね、沙希ちゃん」

「はい」

「よくわからん」

 

そんな感じで、アルバイト1日目は過ぎていきました。

 

 

 


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