ゴールデンウィーク。それは、映画業界から発生した言葉で……。
「おい、八幡」
「なんだよ、人がモノローグにふけっている時に」
「お前、バイトしてこい」
「親父、俺は受験生だぞ」
「それは、ペンを握っている学生が言う言葉だ。お前が握っているのは携帯ゲーム機だ」
「ぐっ!親父のクセに正論を…」
「マスターの店に行ってくれ。勿論、勉強の合間でかまわん。予備校もあるだろうしな」
「マスターの店か…」
「技を盗むには、良い機会だろ?」
「わかったよ」
マスターに午後から行く旨を連絡しておく。
「おっ、来たな。奥に服が準備してあるから、着替えてくれ」
「うす」
「とりあえず、接客を頼む。余裕が出来たら、煎れ方を教える」
「わかりました」
程なく、女子大生3人組が入ってきた。
「めぐりは、この店初めて?」
「そうだよ」
(めぐり?)
「いらっしゃいませ」
「こんな格好いいボーイさんいたっけ?」
「アルバイトです」
「あ~!比企谷君だ!」
「城廻先輩、お久しぶりです」
「めぐり、知り合い?」
「高校の後輩だよ」
「高校生なんだ」
「はい」
「ご注文は?」
「比企谷君は何がオススメ?」
「俺はいつもブレンドっすね」
「じゃあ、それで」
「マスター、ブレンド3つです」
「坊主、知り合いか?」
「高校の先輩です」
「比企谷君、アルバイトはいつ入ってるの?」
「ゴールデンウィーク中限定で不定期ですね。勉強もあるんで」
「そっか~。比企谷君が居る時にまた来たいなぁ」
「めぐり、このコが好きなの?」
「大学で男を寄せつけないと思ったら」
「そ、そんなことないよぉ」
「顔が赤いよ」
「もう!!」
(城廻先輩特有のほんわか空気いただきました)
「じゃあ、比企谷君、また来るね」
「ありがとうございました」
「めぐりがまた会いに来るって」
「もう、違うよ!」
そして、夕方…。
「こんばんわ」
「雪ノ下さん、いらっしゃいませ」
「あ~!比企谷君、どうしたのその格好!」
「アルバイトです。雪ノ下さんはコーヒーを?」
「違うよ。ピアノを弾きに来たんだ」
「え?」
「お嬢さんには、たまにピアノを弾いてもらってるんだよ」
「へぇ」
「じゃあ、お邪魔しますね」
しばらく、雪ノ下さんのピアノをBGMに仕事をする。
「こんばんわ」
「川崎、いらっしゃい」
「比企谷、どうしたの?」
「アルバイトだ。どうた、この格好?」
「え?あ?うん、に、似合ってるよ…」
「ありがとよ」
「陽乃さんも、こんばんわ」
「沙希ちゃん、ひゃっはろー」
「え?」
「私と沙希ちゃんは名前で呼びあう仲なんだ。羨ましい?」
「羨ましいより、驚きですね」
「そうだ!比企谷君か沙希ちゃん、何かリクエストある?」
「雪ノ下さん、『FLY ME TO THE MOON』をお願いします」
「どんな曲?」
「大人気アニメのエンディングにも使われたジャズの名曲だよ。川崎も聞いたことあるかもな」
「任せて。弾き終わったら、お姉さんに惚れちゃうかもよ?」
「それはないと思いますけど、演奏は期待してます」
「もう、比企谷君はつれないなぁ」
♪♪♪♪
「比企谷君、どうだった?」
「すげぇ上手かったです」
「お姉さんに惚れちゃったかな?」
「あ、大丈夫で~す」
「もう!」
「比企谷、勉強は大丈夫なの?」
「空き時間には、裏でやってるから大丈夫だ」
「お姉さんが見てあげようか?」
「何もお返しできないんで、遠慮します」
「損得抜きって言ったら?」
「それこそ裏が有りそうで怖いです」
「じゃあ陽乃さん、私に教えてください」
「いいよ」
「いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?」
「それは秘密だよ。ね、沙希ちゃん」
「はい」
「よくわからん」
そんな感じで、アルバイト1日目は過ぎていきました。