アルバイト2日目。雪ノ下の弁当を食べ、午後に備える。
「そんなに構えるな。疲れちまうぞ」
「はい。でも、なんかすげぇ見られてるんで…」
「何かしら?」
「なんでもありません」
「そう…」
「なんで帰らないんだよ…」
「何か言った?」
「何でもありませんです、はい」
「よろしい」
「マスター、比企谷君、ただいま」
「戻りました」
「あ~!雪乃ちゃんだ!」
「こんにちは、お二人さん」
「どうして、雪ノ下が」
「比企谷君にお弁当を届けにきたのよ。ね、比企谷君」
「あ、え、お、おう」
「ふ~ん、雪乃ちゃんがぁ…」
「ひ、比企谷!」
「お、おう、どうした?」
「あ、明日は私がお弁当作るよ」
「大丈夫よ、川崎さん。私が小町さんから依頼を受けているのだから。ゴールデンウィーク中は毎日、私が届けるわ」
「お、おい、それは悪いから…」
「貴方は黙りなさい」
「比企谷は黙って」
「…はい」
「じゃあ、間を取ってお姉さんが作ってあげる」
「勘弁してください」
「あんまり騒ぐなよ。ほかの客が入りにくくなるだろ」
「すいません」
「すいません」
「すいません」
「じゃあ沙希ちゃん、勉強再開しようか。比企谷君、コーヒー頂戴」
「かしこまりました」
「マスター、あとでピアノ弾いてもいい?」
「あぁ」
「ピアノ?」
「奥にあるんだ。雪ノ下さんがたまに弾いてる」
「私も弾いてるみようかしら…」
「雪ノ下も弾けるのか?」
「えぇ、一応…」
「雪乃ちゃんは、お堅いクラシックでしょ?」
「いけないかしら?比企谷君、何かリクエストはあるかしら?」
「リクエスト?そうだな…」
「葬送行進曲でいいかしら?」
「いや、死んでないからね。ゾンビじゃないから」
「あら、違ったの?」
「違うわ!雪ノ下は『猫のワルツ』とか得意そうだな」
「猫…。え、えぇ、弾けるわ」
「マスター、弾いてもいいかしら?」
「いいぞ」
♪♪♪♪♪♪
「…」
「比企谷君、どうだった?」
「…」
「比企谷君?」
「あ、すまん。見惚れてた…」
「え?」
「あ、いや、違う…、いや違わなくて…、その、すげぇ上手かったぞ」
「そ、そう…」
「雪乃ちゃんも比企谷君も顔が真っ赤だよ」
「…」
「…」
「チッ」
「坊主、今日はもういいぞ」
「はい、ありがとうございます。さて、帰るか…」
「比企谷君、何を言っているのかしら?」
「ほら、家で小町が待ってるから…」
「小町さんにはメールで連絡済みよ」
「ですよね…」
テーブルを借りて、陽乃さんのピアノをBGMにクタクタになるまで、理系の勉強会になった…。
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