珈琲   作:おたふみ

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二十二話

ゴールデンウィークも終わり、奉仕部も平常運転に戻る。

本日は珈琲たいむ。何、ヤク○トの製品?千葉はロッテでしょ。

 

「そろそろアイスコーヒーだな」

「そうね」

「アイスコーヒーって、煎れたあとに冷やすの?」

「それでもいいんだが、水出しにしてみようと思う」

「へ~。お水でも出来るんだね」

「マスターに聞いてみよう。それにあう豆とかもあるだろうしな」

「コーヒーも奥が深いのね」

「なら、取り込まれないようにしないとな『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ』か」

「何それ?中二?」

「ニーチェね」

「さすがユキペディアさんだ」

「その呼び方、やめてもらえるかしら」

「悪い。由比ヶ浜の意見もあながち間違ってないな。ラノベやアニメに多用されてるからな」

「へぇ」

 

来客を告げるノックがする。

 

「どうぞ」

「お邪魔します」

「さ、サガミン、やっはろー」

「ん?何か依頼か?」

「きょ、今日はその…」

「相模さん、とりあえず座ったら」

「ありがとう」

 

「んで、どうしたんだ?」

「どうして、学校だと気だるそうなの?」

「ハイテンションで挨拶したら『元気なのキモイ』って言われる。ソースは俺」

「うわぁ」

「うわぁ」

「うわぁ」

「んなことは、どうでもいいんだよ」

「そうだ、えっと…。比企谷、雪ノ下さん、結衣ちゃん、文化祭の時はごめんなさい」

「えっ!ちょ、待て待て。なんで相模が謝るんだよ」

「比企谷が謝ってくれた後、雪ノ下さんと話をしたの。それで…」

「雪ノ下、お前な…」

「過去のことを気にしない、貴方らしくないことをしたからよ」

「くっ!たしかに…」

「人は変わるものよ」

「それで、色々考えて…」

「相模、ちょっと待ってろ」

「えっ?」

 

「ほらよ。マスターほどの腕前じゃないが、それなりに旨いコーヒーのつもりだ」

「比企谷って、そんな笑い方するんだね」

「ん?」

「笑ってた方がいいよ。…その…いいから」

「何?」

「な、なんでもない!」

「むぅ!」

「ふん!」

「なんで由比ヶ浜むくれてるの?雪ノ下さん、睨まないでください」

「美味しい…。ありがとう」

「俺は相模に謝罪した。相模も俺達に謝罪した。それでいいだろ。な、お前らも」

「うん!」

「そうね」

「ありがとう」

 

 

憑き物が取れた表情で相模は席を立った。部室を出る間際に声をかける。

「相模、今年はお互いにいい文化祭にしような」

「…比企谷、その笑顔は反則だよ…」

「?」

「むぅぅぅ!」

「ふんっ!」

 

翌日から、相模と挨拶や一言二言ぐらい会話をするようになった。取り巻き二人も驚いていたが…。

何故か相模の顔が赤い気がしたが、気のせいだろう。


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