珈琲   作:おたふみ

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三十一話

一日の終わり。小説を閉じて布団に入ろうとすると、携帯が鳴る。

 

『あ、ヒッキー!やっはろー!』

「お前、こんな時間なのにテンション高いな」

『明日は暇だよね?』

「明日は、あれがこれでそれだ。そして、夕方からバイトだ」

『バイトまでは暇なんだよね?』

「…一応、図書館に行くつもりでした」

『買い物に付き合ってよ』

「雪ノ下は?」

『なんか忙しいみたい』

「は~、仕方ない。荷物持ちしてやるよ」

『じゃあ、明日10時に駅前ね』

「わかったよ。おやすみ」

『おやすみ~』

 

「暑い…、ダルい…、帰りたい…」

「お店に入ったら冷房効いてるから」

「リア充の巣窟…」

「早く行くよー」

「へいへい」

 

「冷房、最高。ここから動きたくない」

「いきなりベンチに座らないでよー」

「で、今日は何を買うんだ?」

「新しい水着♪」

「pardon?」

「水着♪」

「いや、何を買うんだ?って?」

「だから、水着!!」

「帰る!」

「なんで帰ろうとするし!」

「俺が女性物水着売り場に居たら通報される!」

「それはヒッキーが挙動不審になるからでしょ!私と居れば大丈夫だから!行くよ!」

「腕を掴むな~!」

(柔らかい!柔らかい!柔らかい!)

 

「ふぇ~、こんな紐みたいな水着あるんだ…」

「由比ヶ浜はチャレンジャーだな。こんなん選ぶとは…」

「ちちちち、違うし!見ただけだよ!」

「わかってるよ」

「ひ、ヒッキーは、こういう水着が好きなの?」

「いやいやいや、こんな水着着てるヤツは二次元しか見たことないし!それに、こんなん由比ヶ浜が来たら、こぼれ落とそう…」

「こぼれ落ちる…。ヒッキーのバカ!変態!マジキモイ!」

「バカ!デカイ声だすな!」

「あわわわわ、ごめん」

「ほれ、店の中見るんだろ」

「う、うん」

 

「あれ、ヒッキー?入らないの?」

「ATフィールドが…」

「なにそれ?早くぅ」

「あ、だから腕を掴むな」

 

「ヒッキー!これとこれ、どっちがいい?」

「えっと…」

「ちゃんと見てよ」

「…直視できません」

「服の上から当ててるだけじゃん」

「そ、それでもだなぁ…」

「ほら、ヒッキー!」

「ゆ、由比ヶ浜、布の面積少なくないか?」

「え~、優美子なんて、もっと際どいよ!」

(あーしさん、どんな水着選んだんですか!)

「わかった!」

「何がわかったんだ?」

「試着してみる」

「まてまてまて!」

「だって、着てみないとわからないじゃん。とりあえず、これかな」

 

「ヒッキー、どう?」

「あ、えっと、とても素晴らしいと思います…」

「ちゃんと見てよ!」

「見ろって言われましても…」

「似合うかどうかわかんないじゃん!」

「キモイとか言うかとなよ」

「言わないから」

「…すげぇ似合ってると思うぞ」

「えへへ。そうかな」

「胸元の小さい飾りとかもいいと思う…」

「胸元…。ヒッキーのエッチ!変態!キモイ!」

「やっぱり、キモイって言われたよ…」

 

「なぁ、由比ヶ浜」

「何?」

「昼飯、食べないか?」

「え?もうそんな時間?」

「もう2時です…」

「ごめんね、夢中になっちゃって」

 

「なぁ、由比ヶ浜」

「何?」

「この後、どうする?帰るか?」

「え~!もっと遊ぼうよ~」

「いや、俺は夕方から仕事だからな」

「そっかぁ」

「本屋でも行くか」

「何買うの?」

「ラノベと問題集」

「勉強してるんだね」

「一応な。由比ヶ浜は?」

「あ、うん、あはは」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ…。たぶん」

 

 

「さて、そろそろバイト行くけど、由比ヶ浜はどうする?」

「さっき、ゆきのんからメールがあって、お店来てだって。だから私も行くよ」

「ほう。仲の良いことで」

 

「こんにちは」

「やっはろー!」

「よう、雪ノ下。…平塚先生早いですね」

「こんにちは、由比ヶ浜さん、比企谷君」

「まぁ、君たちに話があってな」

「坊主、先に着替えてきな」

「うす」

 

「お待たせしました」

「マスター、話を進めても?」

「平塚さんに任せます」

「では、君たち、キャンプに行くぞ」

「…」

「…」

「…はい?」

「奉仕部の合宿と思ってもらってもかまわん」

「嫌ですよ」

「坊主、想像してみろ。夜になって、少し肌寒くなった時、夕食の残り火でお湯を沸かし、満天の星空の下で飲むコーヒー…。どうだ?」

「…行きます」

「まったく、貴方は…。平塚先生、行くメンバーは?」

「お前らと私とマスター。車にはあと3、4人は乗れるから、誰か誘ってもかまわんぞ」

「わかりました」

「はぁ、ゆ○△キャンでも見直すか」

「平塚先生、泳げる場所あるかな?」

「もちろん、あるぞ」

「じゃあ、さっき買った水着のお披露目だね、ヒッキー」

「あ、おま、バカ!」

「比企谷君、どういうことかしら?」

「い、いやぁ、由比ヶ浜の荷物持ちで買い物に付き合って…」

「ヒッキーに、水着選んでもらったんだ」

「比企谷君…」

「ナンデショウカ」

「明日、私の水着も選びなさい」

「俺が女性の水着を選ぶなんて…。そ、それに、雪ノ下だって俺なんかに見られたくないだろ…」

「比企谷君…」

「ハイ」

「いいわね」

「YES MY LORD」

「では、次の土日。遅刻しないように」

 

 

 




―――――――――――

ゆ○△キャンの聖地まで、車で1時間で行けます。

次回はキャンプ編です。

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