珈琲   作:おたふみ

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三十三話

「到着だ。各自、荷物を下ろしてくれ。私はテントの設営場所を確保してくる」

 

平塚先生の号令で車を降りる。

 

「八幡、あっちに釣り堀があるよ」

「戸塚、後で行ってみよぜ」

「八幡、我も行くぞ」

「ヒッキー、西瓜どうしよう?」

「川で冷せば…」

「ヒッキー、どうしたの?」

「な、なんでもない(西瓜と由比ヶ浜のメロンのコラボレーション!!)」

「比企谷君…」

「はひっ!」

「どこを見ていたのかしら?」

「ミテマセン」

「先輩、目がエロい…」

「ゴミぃちゃん…」

「ひ、ヒッキーが見たいなら…」

「場所が決まったぞ。荷物を運んでくれ。それが終わったら昼食だ」

(助かった…)

 

「雪乃さんのサンドイッチ美味しい!」

「小町さんのおにぎりも美味しいわ」

「雪ノ下、ジャリって…」

「それは由比ヶ浜さんね」

「えへへ」

「えへへじゃねぇ」

「先輩、私が作った唐揚げも食べてください」

「おう…」

「どうですか?」

「普通に旨いな」

「でしょ」

「その、あざとい笑顔がなければ完璧だったな」

「あざとくないです!!」

「マスター、テントを設営したら、どうしますか?」

「暗くなるまで、自由行動だ。晩飯は俺がカレーを作ってやる」

「ヤバい、すげぇ旨そうです」

「私達に手伝うことはありますか?」

「う~ん、平塚さんには手伝ってもらうとして…。誰か飯盒で米を炊いてくれ。出来るか?」

「ならば、我に任せよ」

「材木座、お前出来るのか?」

「同胞にサバゲマニアがおってな」

「うむ、飯炊きは材木座に任せよう」

「俺は来る途中にあった無人の野菜売り場に行って、野菜を調達してサラダでも作りますよ」

「比企谷君、私も行くわ」

「いいよ、雪ノ下。俺だけで」

「私はトマトが食べたいけど、貴方は買ってこないでしょ?」

「ぐっ、確かに…。わかったよ」

「ヒッキー、私も行く!」

「先輩、私も」

「八幡、モテモテだね」

「おのれ…、爆発しろ」

「材木座、聞こえてるぞ」

 

「では、こうしよう。私とマスターでカレーの準備。材木座は飯炊き。比企谷・雪ノ下・由比ヶ浜が野菜の買い出し、戸塚・一色・小町君で水汲み。では、行動開始!」

「材木座、ちょっと…」

「うむ、なんだ?」

「実はな…」

「な、なんと!我も馬に蹴られて死にたくはないのでな。了解したぞ」

 

「ヒッキー、中ニと何話してたの?」

「平塚先生の邪魔するなって言っただけだ」

「貴方は、変なところで気がきくのね」

「ほっとけ」

 

「ヒッキー、見て!キュウリがこんなに曲がってる」

「由比ヶ浜、こっちのナスもすごいぞ」

「まるで、誰かさんみたいに捻れてるわね」

「ほっとけ」

「あら、自覚があったのね」

 

「買って来たよ~」

「おかえりなさ~い。すごい捻れたキュウリですね。まるで先輩みたい」

「お前もかよ!」

「結衣さん、あっちで女子高生がキャンプしてましたよ!コーギーが可愛かったんで、あとで行きましょう!」

「行く行く!」

「材木座、どうだった?」

「八幡、我完全に空気だった…」

「そ、そうか…」

「心の中でエクスプロージョンを…」

「それは爆発じゃねぇ、爆裂だ」

 

「よし出来た!明るいうちに晩飯食べちまおうか」

 

「マスター、旨いです」

「だろ」

「米も上手く炊けてる」

「我にかかれば造作もない」

「このカレー…。どうやったら、この味が出るのかしら…」

「嬢ちゃんには、あとで教えてやるよ」

「私も聞きたいです」

「このキュウリ、味が濃い」

「ナスも美味しい」

「比企谷君、トマトをどうぞ」

「なんの嫌がらせだ…」

「とっても美味しいわよ、はい」

「目が怖い…」

 

「ご飯食べ終わったら、花火しようよ」

「由比ヶ浜、準備がいいな」

「えへへ」

「俺は一杯やらせてもらう」

「お付き合いします」

「俺はコーヒーでも煎れようかな」

「ヒッキー、花火やらないの?」

「コーヒー飲んだらな」

「早く来てね」

 

ひとしきり花火をしたあと、テントに入る。

 

(眠れん…)

 

「まだ飲んでるんですか?」

「好きなモ○ルスーツについて語っていた。坊主も混ざるか?」

「結構です。どうせ、マスターがケ○プファーで、平塚先生がゴッドガン○ムでしょ?」

「ぐっ!何故わかった…」

「ふっ…。俺は散歩してきます」

「あまり、遠くへ行くなよ」

 

(月が綺麗だなぁ。普段、月なんて興味ねぇのに)

 

(…誰か居るなぁ。幽霊、オバケ?)

 

(雪ノ下か…。月明かりに照らされて…)

 

「綺麗だ…」

「え?」

「え?」

「比企谷…君?」

「お、おう。雪ノ下、こんなところでなにやってるんだ?」

「ちょっと夜風にあたっていたところよ」

「そうか…。邪魔したな」

「待ちなさい」

「なんでしょうか?」

「少し…、話をしない?」

「俺でよければ」

 

「比企谷君」

「ん?」

「修学旅行の時は、ごめんなさい」

「な!あれば俺が暴走したから、俺が悪いんだ」

「初めて部室でコーヒーを煎れてくれた時、もう一度やり直してくれと言われた時、嬉しかった…」

「雪ノ下…」

「私も冷静になって思い返してしたの。貴方のことを信じると言ったのに、やり方が嫌いなんて…」

「だから、そのことはいいんだって」

「良くないわ。貴方は意味もなくあんなことはしないわ」

「まあな」

「…海老名さんかしら」

「…」

「沈黙は肯定よ」

「守秘義務だ」

「葉山君と戸部君が出た後に海老名さんが来た…。出来すぎよね?」

「さあな」

「あくまで、答えないのね。それは、そのうち、問い詰めるわ」

「怖ぇよ」

「でも、一つわかったことがあるわ」

「なんだ?」

「貴方に特別な感情があること…」

「は?」

「でも、この感情の名前がわからないの…」

「それは俺にもわからんな」

「この答えは私自身で出すしかないの。この答えが出たら聞いてくれるかしら?」

「その時は聞いてやるよ」

「ありがとう」

「おう、どういたしまして」

「それと…」

「まだあるのか?」

「貴方、私を見つけた時、なんて言ったのかしら?」

「なんか言ったか?」

「えぇ」

「気のせいじゃねぇか」

「そう…」

「そろそろ戻ろうぜ」

「…」

「その…、一緒に戻ると…」

「あぁ、悪い」

「でも、…途中まで一緒に…」

「はいよ」


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