8月31日からループするエンドレスなエイトもなく、夏休みも終わり、あっという間に通常授業。
「夏休み、終わっちゃったね」
「そうね」
「いろんな意味で充実した夏休みだったな」
「そうね」
「ゆきのん、お悩み相談メール来てるかな?」
「確認してみましょう」
雪ノ下がPC眼鏡をかける…。思い出してしまう…。
「ヒッキー、どうかした?」
「なんでもない」
「おかしなヒッキー」
「比企谷君がおかしいのは、いつものことよ」
(誰のせいでドキドキしてると思ってんだよ!)
「剣豪将軍から多数と…」
「それはヒッキーに任せたよ」
「へいへい」
「PN,ワンカラーさん。文化祭の実行委員になってください。特に先輩…一色さんね」
「断る」
「あはは…」
「文実委員は、懲り懲りだ。雪ノ下だってそうだろ?」
「そうね」
「ヒッキーは、クラスの方に参加?」
「働きたくないでゴサル」
「それじゃニートじゃん!ヒキニートじゃん!」
「人をクズマみたいに言うな!俺はひかれても死ななかったし!アイツひかれてないのに死んだし!…あっ」
「その…ごめんなさい」
「こ、こちらこそ…」
「せんぱ~い」
奉仕部の扉が開かれ、あざとい後輩の登場。
「やらん!」
「まだ何も言ってないじゃないですか!」
「文実委員だろ?絶対にやらん!」
「なんでですか!」
「去年の悪評知ってるだろ?」
「で、でも、あれは…。雪ノ下先輩もお願いします」
「私も断るわ」
「いろはちゃん、私がやろうか?」
「え~!お二人ともやってくれないんですかぁ」
「スルーされたし!」
「今年の文化祭は、静かにすごしたい」
「えぇ!」
「まぁ、一色。コーヒーでも飲むか?」
「いただきます…」
「ほらよ」
「どうも…」
「どうかしたか?」
「先輩方、奉仕部でお店出しませんか?」
「は?」
「先輩のコーヒーと雪ノ下先輩の紅茶を!」
「はっ?何言ってるの?」
「あ!面白そう!ゆきのん、ヒッキー!」
「それは、どうなのかしら…」
「働きたくないでゴサル!!」
「えぇ~、やろうよ」
「コーヒーと紅茶の、どちらが売れるか勝負とか…」
「バカ!一色、なんてことを…」
「勝負…。それは負けられないわね」
「あ~、火がついちゃった…。一色、わざとだろ?」
「さぁ?」
「雪ノ下の煽り方覚えやがって…」
「じゃあ、私はウエイトレスやる♪」
「由比ヶ浜さん、楽しみね。うふふ」
「はぁぁぁ、仕方ないな」
「後日、申請用紙持ってくるので、よろしくです」
「一色めぇ…」
「まあまあ、ヒッキー…」
「でも、楽しそうね」
「まあな。クラスでやるよりは、気心知れてるからな」
一色が爆弾投下した翌日。
「ウエイトレスが由比ヶ浜一人じゃ大変だろうから、戸塚に頼んだら、OKしてくれたよ」
「彩ちゃん、ウェイターやってくれるんだ」
「え?戸塚もウエイトレスじゃないの?」
「まったく…。戸塚君は男性よ」
「失念してた」
(戸塚、ウエイトレスでもよくない?)
扉をノックする音…。平塚先生ではない。
「どうぞ」
「はろはろー」
「姫菜~。どうしたの?」
「マン研に場所借りて、同人誌売るんだけど、比企谷君たちに見てもらおうかと思ってね」
(ヒキタニ呼びじゃない…)
「そうなんだ。見せて~」
「材木座の小説読むより数倍いいな」
「私はマンガは読まないのだけど…」
「まあまあ、雪ノ下さんも」
登場人物の名前こそ違うけど、これは…
「海老名さんこれは…」
「あ?気がついた?」
「姫菜…、これ…」
「こんなことだろうと思ってわ」
修学旅行の嘘告白の顛末…。
「嘘…。姫菜、これって…」
「私が知りうる限りの真実だよ」
「じゃあ、ヒッキーがしたことって…」
「そういうことだ。雪ノ下は薄々感づいていたがな」
「じゃあ、この最後に結ばれてるのも…」
「ん?あ!海老名さん、何改変してるの!何!付き合い始めてることになってるの!」
「あ!バレた?」
「比企谷君、どういうことなのかしら?」
「そこはフィクションだ!」
「まぁ、そうなんだけどね」
「まったく…。おい、海老名さん!」
「何?」
「これR18本じゃねぇか!こんなもん文化祭で売れるか!」
「え?」
「え?」
「あ~!間違えて、比企谷君に夏コミ版渡しちゃった。てへっ♪」
(わざとか!)
「これ、コミケで売ったの?」
「結構、売れたよ。うちの生徒が買ったかは不明だけどね」
「却下だ!一般向けでも、文化祭でこれを売ったら…」
「もう印刷あがってるよ」
「マジか…」
「差し止めするなら、買い取りね」
「はぁ~。三浦とか戸部にバレないように売ってくれ」
「ペンネームだからバレないよ」
「『プリンセス・シュリンプ』なんて、ベタな名前でバレない方がおかしい!」
「あ、そういう…」
「おい、由比ヶ浜…。今かよ…」
「はぁ、仕方ないわね」
「いいのかよ、雪ノ下」
「登場人物の名前も違うし、大丈夫じゃないかしら」
「だといいがな」
「今日は報告に来ただけだから、じゃあね」
「またね、姫菜」
「比企谷君、ちょいちょい」
「海老名さん、またなにかあるのか?」
「あの終わり方、冗談じゃないかもよ?」
「え?あ!は?」
「ではでは~」
海老名さんが去った奉仕部…。
「ヒッキー…」
「ん?」
「その…、ごめんなさい。あんなこと言って…」
「あれは、俺が暴走しただけだ。俺の方こそ、すまなかった」
「そうね。貴方は確かに暴走した。でも、理由があった」
「そうだな」
「私も、あんなこと言って、ごめんなさい」
「もう、いいんだ。俺が悪かったんだ」
「でも…」
「由比ヶ浜さん…。比企谷君はもうあんなことはしないわ。そして、私達も…。だから…」
「ゆきのん…」
「そうだな。マスターに教えられた。俺達はやり直しの真っ最中だ」
「うん!」
「そのためにも、文化祭の喫茶店、頑張ろうぜ」
「あら、比企谷君が頑張るなんて、明日は雪かしら」
「人が誤魔化してるのに…」
「高校最後の文化祭、楽しみだね」
「あぁ」
「そうね」