月曜日。授業が終わり放課後。
覚悟を持って挑む。
「ヒッキー!部活行こう!」
「おう」
「何?その荷物」
「部室に着いてからの、お楽しみだ」
「ふ~ん」
「興味ねぇのかよ」
由比ヶ浜と共に部室へ入る。
「やっはろー!」
「う~す」
「こんにちは、由比ヶ浜、比企谷君」
由比ヶ浜はいつもの席へ。八幡は二人の正面へ…。
「比企谷君…」
「ヒッキー?」
ひとつ深呼吸してから
「ここで、二人にコーヒーを煎れたいんだが、いいか?」
「え、ええ。いいわよ」
「うん」
「雪ノ下、お湯沸かしてもらえるか?」
「ええ」
コーヒーカップなどを準備しているのを由比ヶ浜がじっと見つめている。
「この荷物だったんだね」
「そうだ」
「このコーヒーカップはヒッキーの?」
「いや、借りてきた」
「この道具は?」
「この辺りのは自前だ」
「コーヒーメーカーでゴボゴボやってると思った」
「それでも適度に美味いコーヒーにはなるんだがな…。今は俺に出来る最高のコーヒーを煎れたいんだ…」
「ヒッキー…」
「比企谷君…」
ほどなくお湯が沸き丁寧にドリップしていく…。家で練習した行為を実践する。豆と対話をして、努力してきた成果…。
「…よし!出来たぞ」
雪ノ下と由比ヶ浜と、そして自分に…。
神妙な面持ちでコーヒーを口にする三人。
「ひ、比企谷君…」
「ヒッキー、これ…」
「うん。今までで最高の出来だ!」
三人の顔が綻ぶ。
意を決して、話し出す。
「こんな話をするのもなんだがな…」
二人が彼に向かう。
「俺は、コーヒーが上手く煎れられなかった」
「え?でも、こんなに美味しいよ」
「それには理由があるんだ」
「コーヒーの煎れ方に慣れていて、おざなりに煎れていたんだ。雪ノ下にも経験ないかな?流れで紅茶を淹れることが」
「ええ、あるわ。その時は確かに美味しくないわ」
「そんな時に、俺の師匠ともいうべき人に相談したんだ。そしたら、『理解したつもりでいたんだろ』ってな。そして、『人付き合いも同じだ』と」
「比企谷君…」
「ヒッキー…」
「俺は口下手で会話が下手だ。それでいて理解したつもりでいた。努力を惜しんだ。そして、あのザマだ。その人はこうも言った『もう一度煎れなおせ』と…」
「俺は、この空間が…、この三人の関係が好きだ。手離したくない。もう理解したつもりで動かない、努力も惜しまない。だから…、だから…、俺ともう一度やり直してくれないか!」
しばらくの静寂の後、雪ノ下が口を開く。
「比企谷君…。それは私にも当てはまるのよ」
「雪ノ下…」
「私は父のことを、まったく理解してなかったわ。家族なのにね」
「ゆきのん…」
「私は比企谷君と申し入れを受け入れるわ」
「ありがとう、雪ノ下」
「私も…。私も一人じゃ出来ないけど、三人なら…。この三人なら出来ると思う」
「ありがとう、由比ヶ浜」
「ふふっ。これで一歩前に進めたわね」
「そうだな」
「比企谷君、これだけは約束して」
「ん?なんだ」
「自己犠牲で問題を解決するのはやめて。その行為で心を痛める人が居る…。私や由比ヶ浜さんは、それを見るのが辛いわ。だから…」
「そうだよ、ヒッキー」
「わかったよ。でも、それは雪ノ下もだぞ。潰れるまで一人で抱えこむな」
「そうだよ、ゆきのん」
「わかったわ」
「それに、由比ヶ浜。お前は思慮深くなれ」
「しりょぶかく?」
「すまん、難しかったな」
「難しくないし!えっと…、あれでしょ?あれ」
「由比ヶ浜さんは、もっと考えてから発言・行動するようにしましょう」
「ヒッキー、最初からそう言ってよ」
「いや、そういう意味だからね」
ふりだしに戻ったのか、やっとスタートラインに立てたのか、それともリセットなのか…。
とても、清々しい顔でコーヒーを飲む三人…。
「ヒッキーの師匠に会ってみたい」
「そうね。是非、その人が煎れたコーヒーを飲んでみたいわ」
「あぁ、三人で行こうぜ。俺の比じゃないくらい、美味いぞ」
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次は、話に絡んでこない人です(笑)