珈琲   作:おたふみ

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五十五話

「よお、会いたかったぜ。相模弟。残念だが、お前の目論見はハズレだ」

「どうして俺だとわかった…」

「最近、俺を一人にしないように周りが動いてくれていた。お前は目論見と違っていたから、自分で状況を確認をしようとして俺の周りをウロウロしていた。そんなお前を俺は見つけた。俺が一人になるタイミングで直接仕掛けてくる、そう確信していた。そしたら案の定…」

「くっ!何故だ!アンタは学校一の嫌われ者のはずだ!」

「確かに、そんな時期もあったが、最近は色々とあってな。そうでもないんだ」

「だ、だけど、あんな悪評が広がれば…」

「トップカーストの発信力ってすげぇよな。勿論、その中にお前の姉も含まれるんだがな」

「な、なんでだ…。アンタは姉さんを泣かせた…」

「そうだったな…」

「でも、最近はアンタの話ばっかりだ。しかも嬉しそうに…」

「まぁ、お前の気持ちがわからんでもないがな」

「アンタに何がわかる!」

「わかるさ。俺にも妹がいてな…。妹が変なヤツのことを楽しそうに話をするなんて思うとな…」

「そうだろ…」

「だがな、妹を信じてやろうとも思う。自分で確かめて、本当にダメなヤツだったら、全力で排除するがな」

「…」

「俺とお前の姉はな、色々あってだな、やっと普通に話が出来るようになったんだ。少年漫画じゃねぇけど、ケンカしてから仲良くなることもあるんだなと初めて思ったよ」

「…」

「お前の姉がどう思ってるか知らんが、俺はお前の姉と話が出来て嬉しく思ってる。俺のことは信じなくていい。だが、姉のことは信じてやれ。そして、こんなことをして、悲しませるな」

「…」

「今すぐ納得しろとは言わん。噂に流されず、お前の目で俺を見てくれ。それでも気に入らないなら、もう一度俺のところへ来い。話を聞いてやる」

「…わかった。今日のところは引く」

「そうしてくれると助かる。そうしないと、俺の周りの人間が何をしでかすか…」

「アンタのこと、しっかり見させてもらうからな」

「おう、そうしてくれ。それとホームページはこちらで削除させてもらう。いいな」

「…わかった」

「じゃあな、シスコン」

 

 

「さてと…。出てきていいぞ、雪ノ下」

「まったく、貴方って人は…」

「悪いな、色々してくれてたみたいだったが」

「本当よ。私がどれだけ心配したか…」

「あん?」

「な、なんでもないわ。で、何故私をここに呼んだのかしら?」

「危ないことをやっていないって証人が欲しかった。それと…」

「それと…なに?」

「今の俺のやり方を見て欲しかった…。少し前のおれなら、ヘイトを俺に集めて距離を取ろうとしただろうな。でも今は違うやり方が出来る、出来るようになったと言った方がいいか…」

「それなら、別の誰かに見てもらって、事後報告でも良かったんではないのかしら?」

「なんでだろうな?」

「私が聞いているのだけど…」

「見て欲しかったんだと思う。…雪ノ下雪乃に…」

「私…に?」

「いつだろうか…。変わることは逃げだと言った…。逃げてない変わり方を見て欲しかったのかもしれないな」

「…そう」

「それに、雪ノ下が変えた世界のほんの一部分だが、見て欲しかったのかもしれないな」

「そう…なのね…」

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「雪ノ下が変えてゆく世界を俺に見せてくれないか」

「え?」

「前に『世界が色鮮やかに見える』って言ってたよな」

「えぇ」

「雪ノ下の見え方が変わったのかもしれないが、世界も少しずつ変わっているはずだ。そんな雪ノ下から見える色鮮やかな世界を俺も見たい。だから、俺にも見せてくれ」

「それって…」

「ダメか?」

「いいえ。見せてあげるわ。でも…」

「でも?なんだ?」

「一人では出来ないわ。貴方も力を貸してくれるかしら?」

「お、おう。俺の力なんて些細なモンだがな」

「そんなことないわ。貴方は私の…」

「なんだ?」

「なんでもないわ」

「?」

「それで、この後はどうするつもりなのかしら?」

「あ~、放課後にみんなを集めてくれないか?俺から説明する」

「相模さんには?」

「言わんでいいだろ。相模だって、弟がシスコン拗らせてるなんて知りたくないだろうしな」

「それを貴方が言うのもどうかと思うのだけど…」

「俺は違うぞ。小町も大事だが、同じくらい大事なモノを見つけたからな」

「それは何なのかしら?」

「それは言えん。…まだな…」

「じゃあ、いつか教えてくれるのかしら?」

「あぁ、いつか…な」

 

放課後

奉仕部部室

 

「…と、いうわけで、お前らが動いてくれたことで、犯人をあぶり出すことが出来た。で、そいつも反省して、もうやらないと言ってくれた。その…、なんだ…、みんな…、あ、ありが…とう…」

「ヒッキー、危ないこととか、ヒッキーが一人で抱え込むことしてない?」

「それは私が保証するわ、大丈夫よ」

「なんで、雪ノ下がそんなこと言えるんだ?」

「それは…」

「それはな、川崎。たまたま、雪ノ下が通りがかって、話を聞かれたからだ」

「ふ~ん、たまたまね」

「んで、ヒキオ。犯人て誰だったの?」

「それは言えない。次になにかあった時に先入観でソイツを見ちまうからな」

「比企谷、君はそれでいいのかい?」

「葉山。お前がそれを言うのかよ。お前の好きな『みんなを仲良く』だ」

「くっ」

「ヒキオ!」

「冗談だ。まぁ、俺にも思うところがあってな。あまりソイツを責められん」

「あ~、なんか消化不良でムシャクシャするし!」

「三浦、なんか気が合うね。私もだよ」

「三浦さん、川崎さん…」

「結衣、海老名、カラオケ行くし!川崎さんも行くっしょ?」

「あぁ、付き合うよ」

「こ、怖ぇ…」

「ヒキオ、今回は勘弁してあげるから、カラオケオゴリね」

「お、おい…」

「隼人、戸部行くよ」

「比企谷、悪いな」

「比企谷くん、ゴチで~す」

「葉山!戸部!」

「比企谷君、よろしく~」

「ヒッキー、お願いね」

「海老名さん、由比ヶ浜…」

「生徒会も参加しますからね。先輩」

「悪いな、比企谷」

「比企谷先輩、すいません」

「お前ら、俺は手伝いしてるだろ」

「お兄ちゃん、小町に言わないなんて、ポイント低いけど、これで勘弁してあげる♪」

「お兄さん、ゴチっす」

「こ、小町~!…あと大志、お兄さんと呼ぶな」

「八幡、無事だったから良かったけど、気をつけてね。あ、カラオケ僕も参加するから」

「戸塚、心配してくれたのは嬉しいけど、止めてくれないのね…」

「我も参加するぞ。俺の歌を聞け~!」

「なんで、お前も参加するの?バサラなの?」

「比企谷、無茶しなかった?」

「相模、ありがとな。大丈夫だ」

「良かった…」

「そうだ、弟に会ったぞ」

「ウチの?」

「おう。姉思いのいい弟だな」

「そ、そんなことないよ」

 

「さぁ、今日は何を歌おうかしら?」

「はぁ…。雪ノ下もかよ…」

「みんなに心配かけたんだから、これくらいは当然よ」

「ATM寄らないと…」

「私も少し出すわ」

「そうしてくれると助かる…」

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「なんか、私達『リア充』みたいね」

「かもな」

「貴方の更正は順調のようね」

「根っこはボッチだよ」

「まだそんなこと言ってるのね」

「事実だから仕方ねぇだろ」

「まだまだ、私が調きょ…教育しないとダメね」

「今、調教って言いかけたよね?」

「その代わりに、貴方にも色鮮やかな世界を見せてあげるわ」

「あぁ、頼む。俺もそれまでには…」

「なにかしら?」

「なんでもねぇよ」

 

「ヒッキー!ゆきのん!早く行くよ~!」

「はいよ」

「今、行くわ」

 




――――――――――――

何回も再考しましたが、今はこれが精一杯。

皆さんが、納得する結末ではないかもしれませんが、ご容赦くださいm(__)m


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