珈琲   作:おたふみ

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五十八話

奉仕部部室

 

「なんとなく、いつもより静かだね」

「2年生が修学旅行だからかしらね」

「一色が厄介事をもってこないから、心に余裕があっていいな」

「修学旅行かぁ…」

「はぁ…。忘れようぜ」

「そうね」

「三人でもっと楽しみたかったなぁ」

「そうだな」

「あら、貴方でもそう思うのね」

「まあな。芝居とはいえ、振られるという黒歴史が増えたからな」

「はぁ、もう一回行けたらいいのになぁ…」

「ジャジャーン!話は聞いたよ!」

「ね、姉さん、何をしに来たのかしら」

「まぁまぁ。で、もう一回三人で京都をまわりたいということだね?」

「まぁ、そういうことですかね」

「なるほどね…。お姉さんに任せなさい。明日の放課後、例のコーヒーショップに来てね。じゃあね」

 

「なんか、嫌な予感しかしないな」

「誠に遺憾だけど、比企谷君と同意見ね、遺憾だけど」

「なんで、二回言ったの?大事なことなの?」

「あはは…」

 

翌日 放課後

 

「そういう訳で、ここで待ち合わせなんです」

「雪ノ下の上の嬢ちゃんがなぁ…。ま、大丈夫だろ」

「マスターは、あの人を知らないから…」

「ここで変なことは出来んだろ。前のこともあるしな」

「まぁ、そうかぁ…」

「前のこと?」

「ヒッキー、何かあったの?」

「俺の口からは言えん」

「まぁ、俺がお灸を据えたんだよ」

「ひゃっはろー!」

「いらっしゃい。三人がお待ちかねだぞ」

「は~い。ブレンドください」

「はいよ」

 

「お待たせ」

「姉さん、呼び出して遅刻とか、どういうことかしら」

「いや~ん、雪乃ちゃんが怖~い。比企谷君、助けて~♪」

「なんで俺が助けるですか。むしろ雪ノ下に助成しますよ」→助勢

「私も雪ノ下だよ」

「くっ!」

「それで、姉さん。何を企んでいるのかしら」

「次の連休は三人とも空いてるかな?」

「私は特に何もないわ」

「私もないかな」

「俺は…」

「比企谷君は答えなくていいよ。小町ちゃんに聞いたから。空いてるって」

「小町~!」

「じゃあ、これを見てくれるかな」

「これは新幹線の切符…。京都までの…」

「ピンポ~ン♪」

「姉さん、これは…」

「三人で楽しんで来て。ホテルも取ってあるからね」

「そ、そんな、悪いですよ」

「大丈夫よ、ガハマちゃん。これは純粋に好意だから」

「なんでですか?」

「ほら、隼人が迷惑かけたでしょ。だから」

「でも、それは雪ノ下さんは関係ないじゃないですか」

「隼人の教育も私の範疇だからね。葉山のおじさまに頼まれてるし…」

「ね、姉さん。本当にいいの?」

「雪乃ちゃん、比企谷君、ガハマちゃん。楽しい思い出作ってきなよ」

「ありがとう、姉さん」

「雪ノ下さん、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「お金はお父さんからだから、顔見たらお礼言ってね」

 

「あ、雪乃ちゃん。ちょっと耳貸して」

「なにかしら?」

「お父さんが『がんばれ』だってさ」

「な、な、何を!」

「雪乃ちゃん、わかるよね?」

「うぅぅ…」




――――――――――――

次回、京都旅行編

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