珈琲   作:おたふみ

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六十七話

奉仕部

 

「もうすぐクリスマスだねぇ。パーティーしたないなぁ」

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「由比ヶ浜は現実に戻した方が良くないか?」

「あら、奇遇ね。私もそう思っていたわ」

「なぁ、由比ヶ浜」

「聞きたくない…」

「由比ヶ浜さん」

「聞きたくない…」

「クリスマスの前に期末試験」

「いやぁぁぁぁ」

「はぁ、雪ノ下。由比ヶ浜の勉強見てやれよ」

 

コンコンコン

「どうぞ」

「比企谷居る?」

「おう、あ、え~と…」

「もう、そのネタいらないから」

「んだよ、川崎」

「今日、予備校だよね?」

「ああ、そうだが」

「そのあと、話あるから顔かしな」

「お、お金なら、ないでふ…」

「カツアゲじゃないから。じゃあ、頼むね」

「あいよ」

 

「なんだろうね?」

「また家のことかもな」

「それならいいんだけど…」

「ゆきのん?」

「いえ、なんでもないわ」

 

コーヒーショップ

「悪いね」

「いや、大丈夫だ。で、どうした?」

「あ、あのさ…。期末試験まであと少しだよね」

「ああ、そうだな」

「それでさ、私の気持ちの問題というか…」

「どうした?歯切れが悪いが…」

「その…、比企谷は、さ…。好きな人とかって居るの?」

「どうしたんだ?藪からスティックに?」

「茶化さないで!」

「お、おう。悪い…」

「で、どうなの?」

「い、居る」

「そう…、なんだ…」

「その人ってさ…」

「すまん、それ以上は言えない…」

「こっちこそ、ごめん…」

「川崎…、お前…、泣いてるのか…」

「ごめん、泣く…つもりはなかったんだけど、比企谷の顔を見て…、好きな人が…私じゃないとでもな、わかったら…」

「すまん…」

「謝らないで…。泣いたら、比企谷は優しいから…。人の痛みがわかっちゃうから…、泣きたくなかったんだけど…」

「…す、」

「謝らないで。お願い…、そんな、辛そうな顔しないで…」

「だが…」

「私は…、大丈夫…だから…」

「川崎…」

「私は…、そんな、優しい…比企谷のこと…、大好きだから…」

「ありがとな」

「うん…。私こそ…、ありがとう…」

「ひゃっはろー…。て、あれ…」

「雪ノ下さん…」

「比企谷君」

「…はい」

「君はもう帰りなさい」

「で、でも…」

「沙希ちゃんのことは、私にまかせて」

「…」

「私じゃ頼りない?」

「いえ、そんなことは…」

「じゃあ、任せなさい」

「わかりました…」

「じゃあ、帰った帰った」

「川崎…」

「なに?」

「ありかとな、俺のこと…好きになってくれて」

「バカ!私も…ありがとう…」

 

とある公園

(なんとく、もしかしたらと思っていたら、川崎もだったか…)

「あれ?ヒッキー?」

ワンワン

「由比ヶ浜…」

「サブレ、大人しくして。ごめんね、サブレもヒッキー大好きだから」

『優しい比企谷のこと大好きだから』

「っ!」

「ヒッキー、どうしたの?」

「だいじょ…」

「大丈夫じゃないよね?」

「…」

「えっと…、『沈黙は肯定』だよ」

「どこで覚えたんだよ…」

「ヒッキー、凄い辛そう…。サキサキとなにかあったの?」

「…川崎に告白された…」

「…そっか」

「そう…だ」

「えいっ!」

「ゆ、由比ヶ浜!な、なにを!」

「え?抱き締めてるんだよ」

「それはわかる!わかるが、何故だ!」

「落ち込んだりしてると、ママがしてくれるんだ」

「だ、だからって…」

「ヒッキーは、他人の痛みがわかっちゃうから、辛いよね。だから、傷つけたくなかったから…。ヒッキーは優しいよね。だから、皆好きなるんだよ、さわさわも姫菜もかおりんも…」

「知ってたのか?」

「うん、三人に聞いた」

「そうか…」

「三人とも後悔してないよ。もちろんサキサキも」

「そう…なのか…」

「そうだよ。だから、ヒッキーも、ね?」

「あ、ああ…」

「えっと…。『大丈夫?おっぱい揉む?』」

「誰に聞いた?」

「姫菜」

「揉みません」

「…ヒッキーだったら、私は…」

「いやいやいや。結構です。大丈夫です!」

「そう?」

「ああ。ありかとな、由比ヶ浜。サブレもありがとよ」

ワンワン

「じゃあ、帰るな」

「私も散歩の続きに行くね」

「またな」

「またね」

 


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