珈琲   作:おたふみ

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七十話

1月3日。

奉仕部三人で初詣。

 

「ゆきのん、大丈夫?」

「大丈夫よ。人混みに酔っただけだから…」

「凄い人だよな。無双乱舞したくなる」

「?」

「悪かった…。なんでもない…」

「とりあえず、一旦帰ろう。パーティーは夕方からだから」

「えぇ、そうしましょう」

「ヒッキーが迎えに行くからね」

「待て。初耳だぞ」

「だって、今初めて言ったもん」

「大丈夫よ。この男が迎えに来なくても、一人で行けるわ」

「エスコートだよ。ダメ?」

「はぁ、由比ヶ浜さんがそこまで言うなら」

(チョロいな)

(チョロいね)

 

比企谷家

「お兄ちゃん、雪乃さんのお迎えよろしくね」

「おう。悪いな、準備手伝えなくて」

「雪乃さんのお迎えは大事な仕事だよ」

「わかってる。それと…」

「何?真剣な顔して…」

「由比ヶ浜は絶対に料理に触らせるな」

「結衣さん、料理上手くなったよ」

「そうなのか?」

「うん」

「まぁ、小町が言うなら大丈夫だろ」

 

雪ノ下マンション

「待たせたかしら?」

「いや、今来たとこだ」

「嘘つき…」

「たとえ、嘘であっても、そういうモンだろ?」

「そういうことを言ってしまうのが、貴方らしいわね」

「まあな」

「では、行きましょうか」

「おう」

 

コーヒーショップ

「happybirthday!!」

「みんな、ありがとう」

「これで、ゆきのんも同じ歳だね」

「そうね」

「一緒に免許取りに行く?」

「それもいいわね」

「雪乃ちゃん。それとも婚姻届出しに行っちゃう?」

「姉さん!」

「ごめんごめん」

「姉さん、今日のことを母さんに言ってくれたんでしょ?ありがとう」

「ゆ、雪乃ちゃんが、素直に…。お姉ちゃん嬉しい」

「姉さん、抱きつかないで」

 

「ゆきのん、これプレゼント♪」

「これは、クッキーかしら」

「いろはちゃんと小町ちゃんと三人で作ったんだ。本当は一人で作りたかったけど、不安だったから…」

「由比ヶ浜さん、ありがとう。嬉しいわ」

「俺からは、これだ。画面見てくれ」

「スマホの画面なんか見せて…。比企谷君、これは…」

「プライズのパンさん諸々だ。かさばるから、後で届け…」

「どこにあるの比企谷君。早く行くわよ」

「ま、待て。ちゃんと届けるから」

雪ノ下に次々とプレゼントが贈られていく。

奥から一色と川崎が次々と料理を出してくる。

 

「楽しんでるか?」

「ええ。こんなに楽しい誕生日は初めてかもしれないわね」

「それはよかった」

「ねぇ、比企谷君…」

「ん?」

「あと少しで卒業ね」

「そうだな」

「私達、どうなるのかしらね…」

「わからん。望むにしろ望まざるにしても、前に進むしかない。時計の針は戻せない。少しでも自分の望むカタチになるようにするしかないだろ」

「驚いた。貴方から、そんな前向きな言葉が出てくるとは…」

「ほっとけ。これもあれだ…。雪ノ下が変えた世界の一部だ…」

「…そ、そう」

 

「諸君、楽しい時間ではあるが、そろそろ高校生は帰る時間だ」

平塚先生の号令で終了となる。

 

「ヒッキーは、ゆきのん送ってね」

「片付けはいいのかよ」

「私達に任せて。…ヒッキーは、ゆきのんのこと…、お願い」

「お、おう。わかった」

 

「う~。寒いなぁ」

「そうね、寒いわ」

「…おい」

「なにかしら?」

「腕を絡めてくるな」

「寒いのよ。それに…」

「それに?」

「今日は私の誕生日なのよ」

「そうか。なら仕方ない」

「そうよ。…あ」

「雪か…。どうりで、寒いと思った」

 

雪ノ下が『雪の華』を口ずさむ…。

 

「いい歌だな」

「ええ」

「比企谷君、私…幸せだわ」

「そうか」

「幸せ過ぎて、少し怖い…」

「そうか」

「比企谷君、少しでいいの。少しでいいから、抱きしめて…ほしい…」

「仕方ない。誕生日だから」

「…ありがとう」

「心配すんな」

「え?」

「俺はここに居る」

「ええ、そうね」

 

 

 

 

 

 




―――――――――――――

あと何話になるか…。2~3かなぁ。
もう少し、お付き合い、よろしくお願いします。

歌詞の掲載のご指摘をいただきましたので、修正しました。歌詞書きたかった…。

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