卒業式当日。
式典も無事に終わり、奉仕部に集まる三人。
「終わったわね」
「終わっちゃったね」
「ああ」
「色々あったわね」
「そうだね」
「黒歴史ばっかり増えた気がするよ」
不意にドアが開く
「失礼するぞ」
「平塚先生、ノックを…」
「このやりとりも最後だと思うと感慨深いな」
「それで、どんなご要件ですか?」
「うむ。君たちの勝負の結果を伝えようと思ってな」
「そういえば…」
「あったかも…」
「あはは…」
「では、発表するぞ…」
「…」
「…」
「…」
「勝者は、雪ノ下だ」
「で、その理由はなんですかね?」
「比企谷の更正だな」
「うん、それなら納得だね」
「一番の大仕事でしたから」
「いや、俺は変わらん。ボッチをやめ…」
「『雪ノ下が変えた世界の…』」
「うわ~!更正しました!変わりました!」
「?」
「?」
「何でもいうことをきかせられる権利だが…」
「私は辞退します」
「ん?理由を聞こうか?」
「この二人は、もう私の願いを叶えてくれているからです」
「ゆきのん…」
「なるほどな。次点の由比ヶ浜はどうするかね?」
「わ、私も辞退かな…。理由はゆきのんと同じです」
「仕方ない。比企谷はどうだ?」
「仕方ないって…。俺も別にないですかね」
「では、こうしよう。私からの命令を聞いてもらおうか」
「いや、平塚先生それは…」
「三人とも、これからも、それぞれを補って交流していってくれ。あと、結婚式にも呼んでくれよ」
「平塚先生、確かに承りました」
「俺は…、ほら、あれがこれで忙しいから…」
「この男は、私が責任を持って交流します」
「あはは…」
「俺の意見は…」
「あると思う?」
「何その怖い笑顔…。あと恐い」
「私からは以上だ」
「では、行きましょうか」
「うん!」
「平塚先生、後程パーティーで」
「うむ」
コーヒーショップ
「マスター、毎回ありかとうございます」
「なに、かまわないさ」
「助かります」
「そのかわり、バイト頼むぞ」
「うっす」
「お、おい…、材木座。お前痩せたか?」
「うむ。訳あってな」
「理由を聞いて大丈夫か?」
「その、だな…。ダイエットに成功して、一緒にコスプレ出来るようになったら、お付き合いしてくれると海老名女史が…」
「いつのまに…」
「挿し絵イラストも描いてくれると…」
「至れり尽くせりじゃねぇか…」
「我、死ぬのかな…」
「お前は簡単には死なねぇよ」
「海老名さん」
「なに?比企谷君」
「材木座と…」
「うん。…なんか趣味の話とかコミケの手伝いとかお願いしてるうちにね…」
「なるほどね」
「趣味の話が出来るって重要だよ」
「まぁ、そうだな」
「それに、材木座君は浮気しなさそうだしね」
「だな」
「もし比企谷君と付き合ってたら、気が気じゃないよ」
「…」
「ふふっ。沈黙は肯定だよ」
「うるせぇよ」
「比企谷先輩。卒業おめでとうございます」
「ありかとな、藤沢」
「いえ。比企谷先輩と出会えて良かったです」
「そうか?」
「そうですよ」
「早く行けよ。俺は本牧に殺されたくないからな」
「はい!」
「比企谷」
「んだよ、葉山。なんな用か?」
「いや、パーティーだから、見かけたら、声をかけるだろ?」
「そんな、リア充ルールは知らん」
「でも、君も立派なリア充じゃないのかな?」
「う、うるせぇよ。ほら、三浦が呼んでるぞ」
「じゃあ、またな」
「葉山、一つ言い忘れた」
「なんだい?」
「俺はお前が嫌いだ」
「奇遇だね。俺も君が嫌いだ」
「ヒッキー!なにやってるの?」
「何って、邪魔にならないように、すみっこぐらしを…」
「ほら、そっちに座って!」
「おいおい…」
「雪ノ下先輩、なんでそんな隅っっこにいるんですか」
「私は、ここでいいから…」
「向こうへ、行ってください」
「あ、あの…」
「なぁ、雪ノ下…」
「なにかしら、比企谷君…」
「何で、お前が隣に座ってるの?」
「誠に遺憾だけれども、貴方と同じことを考えていたわ。遺憾だけど」
「なんで、二回言ったの?大事なことなの?」
「ゆきのんも、そういうこと言わないの!」
「先輩だって、嬉しいんだから、わざわざ言わないでください。当て付けですか?」
「いや、なんというか、ほら…」
「はぁ…。諦めなさい」
「お、おい、雪ノ下。腕を絡めてくるな」
「い、いいじゃない。わ、私は、恋人と腕を組みたいのよ」
「うわ~。ゆきのん大胆」
「やっぱり当て付けじゃないですか」
「一色さん、そんなことないわ。こんな男なんて…」
「じゃあ、先輩もらっていいんですか?」
「ゆきのんがいらないなら、私が貰う!」
「雪乃ちゃん、私にちょうだい!」
「じゃあ、私が連れて帰る。京華も喜ぶし」
「じゃあ、ウチが!」
「ダ、ダメ~!!私の八幡は誰にも渡さない!!」
「…おい、雪ノ下」
「な、何かしら、比企谷君」
「見ろよ、みんなニヤニヤしてるぞ…」
「聞いた、いろはちゃん」
「聞きましたよ、結衣先輩。『私の八幡』だって」
「雪乃ちゃんたら…」
「お兄ちゃん…。小町は嬉しいよ。あれ、涙が…」
「暑い暑い…」
「そろそろ、いい時間だ。帰るか」
「ヒッキーは、ゆきのん送ってね」
「いや、俺は小町と…」
「はぁ、これだからゴミぃちゃんは…」
「ひ、比企谷君、送ってくれないしら」
(袖つかんで、上目遣いとか可愛いんだよ)
「雪ノ下、一色の技を使わなくても、ちゃんと送るよ」
「最初から、素直に送りなさい」
「へいへい」
帰り道
「ねぇ、比企谷君」
「なんだ?」
「手を…繋いでも…」
「ん」
「…嬉しい」
「雪ノ下と手を繋いで帰る日が来るとはな。あの時の俺が見たらなんで思うかな」
「たぶん、リア充爆発しろよ」
「違いない」
「ねぇ、比企谷君」
「どうして、私を選んだの?」
「さぁな。気がついたら好きになっていた…。恥ずかしいこと言わすな」
「私も同じなの…。気がついたら、目で追っていて…、好きになっていたの…」
「凄く似ていて、全然似てない。そんな感じだったのかな」
「すごい矛盾ね。でも、そうね」
「雪ノ下…」
「何?」
「好きだ」
「私もよ、比企谷君」
「ラブコメの神様に感謝だな」
「ふふっ、そうね」
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一応、本編終了ですが、あと少しお付き合いください。