珈琲   作:おたふみ

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七十二話

卒業式当日。

式典も無事に終わり、奉仕部に集まる三人。

 

「終わったわね」

「終わっちゃったね」

「ああ」

「色々あったわね」

「そうだね」

「黒歴史ばっかり増えた気がするよ」

 

不意にドアが開く

 

「失礼するぞ」

「平塚先生、ノックを…」

「このやりとりも最後だと思うと感慨深いな」

「それで、どんなご要件ですか?」

「うむ。君たちの勝負の結果を伝えようと思ってな」

「そういえば…」

「あったかも…」

「あはは…」

「では、発表するぞ…」

「…」

「…」

「…」

「勝者は、雪ノ下だ」

「で、その理由はなんですかね?」

「比企谷の更正だな」

「うん、それなら納得だね」

「一番の大仕事でしたから」

「いや、俺は変わらん。ボッチをやめ…」

「『雪ノ下が変えた世界の…』」

「うわ~!更正しました!変わりました!」

「?」

「?」

「何でもいうことをきかせられる権利だが…」

「私は辞退します」

「ん?理由を聞こうか?」

「この二人は、もう私の願いを叶えてくれているからです」

「ゆきのん…」

「なるほどな。次点の由比ヶ浜はどうするかね?」

「わ、私も辞退かな…。理由はゆきのんと同じです」

「仕方ない。比企谷はどうだ?」

「仕方ないって…。俺も別にないですかね」

「では、こうしよう。私からの命令を聞いてもらおうか」

「いや、平塚先生それは…」

「三人とも、これからも、それぞれを補って交流していってくれ。あと、結婚式にも呼んでくれよ」

「平塚先生、確かに承りました」

「俺は…、ほら、あれがこれで忙しいから…」

「この男は、私が責任を持って交流します」

「あはは…」

「俺の意見は…」

「あると思う?」

「何その怖い笑顔…。あと恐い」

「私からは以上だ」

「では、行きましょうか」

「うん!」

「平塚先生、後程パーティーで」

「うむ」

 

コーヒーショップ

「マスター、毎回ありかとうございます」

「なに、かまわないさ」

「助かります」

「そのかわり、バイト頼むぞ」

「うっす」

 

「お、おい…、材木座。お前痩せたか?」

「うむ。訳あってな」

「理由を聞いて大丈夫か?」

「その、だな…。ダイエットに成功して、一緒にコスプレ出来るようになったら、お付き合いしてくれると海老名女史が…」

「いつのまに…」

「挿し絵イラストも描いてくれると…」

「至れり尽くせりじゃねぇか…」

「我、死ぬのかな…」

「お前は簡単には死なねぇよ」

 

「海老名さん」

「なに?比企谷君」

「材木座と…」

「うん。…なんか趣味の話とかコミケの手伝いとかお願いしてるうちにね…」

「なるほどね」

「趣味の話が出来るって重要だよ」

「まぁ、そうだな」

「それに、材木座君は浮気しなさそうだしね」

「だな」

「もし比企谷君と付き合ってたら、気が気じゃないよ」

「…」

「ふふっ。沈黙は肯定だよ」

「うるせぇよ」

 

「比企谷先輩。卒業おめでとうございます」

「ありかとな、藤沢」

「いえ。比企谷先輩と出会えて良かったです」

「そうか?」

「そうですよ」

「早く行けよ。俺は本牧に殺されたくないからな」

「はい!」

 

「比企谷」

「んだよ、葉山。なんな用か?」

「いや、パーティーだから、見かけたら、声をかけるだろ?」

「そんな、リア充ルールは知らん」

「でも、君も立派なリア充じゃないのかな?」

「う、うるせぇよ。ほら、三浦が呼んでるぞ」

「じゃあ、またな」

「葉山、一つ言い忘れた」

「なんだい?」

「俺はお前が嫌いだ」

「奇遇だね。俺も君が嫌いだ」

 

「ヒッキー!なにやってるの?」

「何って、邪魔にならないように、すみっこぐらしを…」

「ほら、そっちに座って!」

「おいおい…」

 

「雪ノ下先輩、なんでそんな隅っっこにいるんですか」

「私は、ここでいいから…」

「向こうへ、行ってください」

「あ、あの…」

 

「なぁ、雪ノ下…」

「なにかしら、比企谷君…」

「何で、お前が隣に座ってるの?」

「誠に遺憾だけれども、貴方と同じことを考えていたわ。遺憾だけど」

「なんで、二回言ったの?大事なことなの?」

「ゆきのんも、そういうこと言わないの!」

「先輩だって、嬉しいんだから、わざわざ言わないでください。当て付けですか?」

「いや、なんというか、ほら…」

「はぁ…。諦めなさい」

「お、おい、雪ノ下。腕を絡めてくるな」

「い、いいじゃない。わ、私は、恋人と腕を組みたいのよ」

「うわ~。ゆきのん大胆」

「やっぱり当て付けじゃないですか」

「一色さん、そんなことないわ。こんな男なんて…」

「じゃあ、先輩もらっていいんですか?」

「ゆきのんがいらないなら、私が貰う!」

「雪乃ちゃん、私にちょうだい!」

「じゃあ、私が連れて帰る。京華も喜ぶし」

「じゃあ、ウチが!」

「ダ、ダメ~!!私の八幡は誰にも渡さない!!」

「…おい、雪ノ下」

「な、何かしら、比企谷君」

「見ろよ、みんなニヤニヤしてるぞ…」

「聞いた、いろはちゃん」

「聞きましたよ、結衣先輩。『私の八幡』だって」

「雪乃ちゃんたら…」

「お兄ちゃん…。小町は嬉しいよ。あれ、涙が…」

「暑い暑い…」

 

「そろそろ、いい時間だ。帰るか」

「ヒッキーは、ゆきのん送ってね」

「いや、俺は小町と…」

「はぁ、これだからゴミぃちゃんは…」

「ひ、比企谷君、送ってくれないしら」

(袖つかんで、上目遣いとか可愛いんだよ)

「雪ノ下、一色の技を使わなくても、ちゃんと送るよ」

「最初から、素直に送りなさい」

「へいへい」

 

帰り道

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「手を…繋いでも…」

「ん」

「…嬉しい」

「雪ノ下と手を繋いで帰る日が来るとはな。あの時の俺が見たらなんで思うかな」

「たぶん、リア充爆発しろよ」

「違いない」

「ねぇ、比企谷君」

「どうして、私を選んだの?」

「さぁな。気がついたら好きになっていた…。恥ずかしいこと言わすな」

「私も同じなの…。気がついたら、目で追っていて…、好きになっていたの…」

「凄く似ていて、全然似てない。そんな感じだったのかな」

「すごい矛盾ね。でも、そうね」

「雪ノ下…」

「何?」

「好きだ」

「私もよ、比企谷君」

「ラブコメの神様に感謝だな」

「ふふっ、そうね」

 

 

 

 

 

 

 




――――――――――――――――――――


一応、本編終了ですが、あと少しお付き合いください。

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