レディ・ライネスに捧ぐ   作:東方朔夜

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評価に色がついていてたまげました。
このような拙作を見てくださり、ありがとうございます。
今回も短くてすみません。


第二話

──夢を見た。

 

もう、10年近く前のことだ。僕はある人に師事していた。とはいえ、数ヶ月程度の短いものであったが。

“先生”からは色んなことを学んだ。魔術のこと、魔術師や魔術使いのこと、そして、戦うこと。

元一般人としては、どれも生きるためには知っておかなくてはならないことで、それを先生から学べたのは紛れもない幸運だったと思う。

まぁ、僕がそうしなければならなくなった原因の一端は先生にもあるはずなのだけど......いや、だからこそ、先生は僕を鍛えてくれたのかもしれない。

 

先生は魔術師として超一流だった。だからこそ、僕は今までなんとか生きてこれた。

 

そんな先生に師事していた僕だが、魔術の才能はなかったらしい。

魔力の質や、回路は悪くないらしいが、残念ながら、僕にできるのは基礎中の基礎の魔術に限られる。

故に、先生から習うのは、座学と戦闘訓練だけであった。勿論、殴り合いの喧嘩すらまともにしたことのなかった僕が、プロとも言える先生に、いくら手加減されたところで勝てる訳はなく、毎日気絶するまでボコボコにされていたが。

 

 

『お前の“ソレ”があれば、生半可な魔術じゃあ通用しないだろう。だが、それに慢心するな。思考を止めるな。魔術師は性根の腐った揚げ足取り好きな捻くれ者が大半だ。驕っていると直ぐに足を掬われるぞ。』

何度目かの戦闘訓練の時だったか、先生はそう言っていた。とはいえ、先生との戦闘で少しでもそのような慢心や油断、安心を抱けるような場面はなかったのだけど。

 

結局、先生に一撃当てることができるようになる前に、先生は僕の前から去ってしまったけれど。

──今は、あの時よりも、少しでも先生に近付けたのだろうか。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

目を覚まし、また昔の夢をみたなぁ、と感慨に耽ける。

ここまで頻繁に昔のことを夢に見るなんてことはなかったから、何かの予兆かと疑ってしまう。

 

昨日はあの後、ライネスが連れて出てきたグレイを寮まで送ってから、エルメロイの屋敷に帰ってきた。

ライネスの表情と、グレイの手を引いて出てきた事実からみて、どうやら彼女のお兄さんを揶揄って、逃げるように出てきたに違いなかった。

ライネスに準備とやらは済んだのか聞くと、どうやら、グレイの協力を得ることは出来たらしい。それと、本格的に拙そうになったら、電話を入れるからいつでも出れるようにしているよう、お兄さんに要請することも。

これで、認識外からの不可避の攻撃によって死ぬ以外ならなんとかなるんじゃないかな?なんて笑いながらライネスは言っていたけど、それはどれだけタチの悪い可能性なのだろう。まぁ、十中八九、彼女の愉悦の為の発言なのだろうけれど。

 

 

 

開催場所は遠く離れた地であるため、倫敦から電車で移動することになっていた。ウィンダミアの駅からは馬車を出してくれるらしい。

そのため、グレイとは駅のホームで合流することにしていたのだけど...ずっと山村で暮らしていたグレイはまだ電車に慣れていなく、最近採用されたらしい、非接触型ICカードの改札機を見つけてしまい、買った切符をどうすれば通れるのか分からずに固まってしまったみたいだ。──こんな時代からあったんだなぁ、この機械。

電車に乗り込み、グレイとライネスを同じコンパートメント席に向かい合うように座らせ、自分は隣のコンパートメント席を使うことにする。

ライネスには友人といえるものが限りなく少ない。それは彼女の境遇だったり、性格のせいだというのもあるんだろうけど。

この後厄介事に巻き込まれるとはいえ、折角グレイという同年代の女の子と遠出する機会を得たのだから、仲良くなって欲しいというお節介だ。

勝手に一仕事終えたような空気を出し、さて、到着するまでの数時間をどうしようかと考える。

恐らく今夜から数日間は寝られなくなるだろうから、今のうちに寝ておこうか。

そう考えて、僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

()からのライネスへの印象は、格好良くてできる少女、といったものだ。

実際に向かい合って座ったものの、どうすればいいか分からず、黙り込ん出しまった自分に、チョコレートを勧めてくれ、会話しやすい空気を作ってくれたのだ。

おかげで、今回の件について重要なことも訊くことができたし、なんとなくは理解することが出来た。

そこで、少し気になったことを訊いてみることにした。

 

「あの、オウロさんは、どういった方なのでしょうか。」

 

自分と彼との接点はあまりなく、どのような人なのか掴みかねている。なんとなく、自分と同じような感じや、どことなく懐かしい感じがするのだが。

 

「オウロがどんな人か、ね。本人のことは本人に直接聞けばいいと思うが...」

 

そこで1度言葉を切って、ふむ、と1度考えるような素振りを見せてから、続きを話し始めた。

 

「まず、オウロは魔術師ではない。魔術の才能も微妙だ。だが、色々と事情が重なって私の護衛役とすることにしたんだが。身体能力は高く、君と同等はあると思う。性格は魔術師のように歪んではいないから程々に善良ではあるかな?」

 

こんなものかな、と彼女は言葉を切った。オウロのひととなりに関することはわかったが、結局、何故自分が懐かしさや近しさへの答えは与えられなかった。

うーん、と難しい顔をしていると、苦笑しながらライネスは言った。

 

「求められた答えではないことはわかっているのだが、いやはや、私も正確にアレの過去を知っているわけではなくてね。未だに訊いてもはぐらかされたりするんだよ。」

 

そこまで知られたくない過去、事情というのが存在するのだろう。

──それとも、自分のように、自分でもよくわかってないことが起きていたのか。

 

「そうだ、君ばかりが質問をするというのもなんだから、私からも質問することにしよう。そうだな、先ずは我が兄の私に対する愚痴あたりからどうだろうか?」

 

ライネスが名案だとばかりに言い出して、もう暫く、二人の会話は続くこととなった。

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